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2022.11/26 データサイエンスとトランスサイエンス(7)

30年以上前だが、電気粘性流体の耐久性問題は典型的なトランスサイエンスだった。高偏差値の大学卒工学博士など数名で1年間取り組み、「あらゆるHLB値の界面活性剤を用いても解決できない」という否定証明の結論を導いている。


そして、電気粘性流体を封入するゴムとして、加硫剤も何も添加されていないゴム開発というテーマを設定して、住友金属工業と高純度SiCの半導体治工具事業をたった一人で立ち上げ忙しい当方に担当するよう命じてきた。


当時実務肌のU本部長から学者そのもののI本部長に代わり、当方の身の回りでは不思議な事件が起きるようになった。このゴム会社でありながら、絶対に実現できないテーマが当方に割り当てられたのもその一つである。


当方は1週間だけ時間が欲しい、と願い出て、データサイエンスを用いて電気粘性流体の耐久性問題をたった一晩で解決した。


MZ80KとPC9801の二台が当方の書斎で稼働しており、この二台はパラレルインターフェースでつながれていた。MZ80Kで走らせた主成分分析のプログラムから出力されたデータはPC9801へ送られた。


PC9801ではLOTUS123が動作し、そのデータをグラフ化する。こうして界面活性剤の物性値を主成分分析にかけたデータはグラフ化された。第一主成分と第二主成分の平面には界面活性剤が数種類のグループに分類された様子が描き出された。


もっとも大きいのはHLB値の寄与が80%以上の第一主成分の軸の周りに集まったグループである。面白いのは、そのグループから大きく離れた位置に存在したグループである。粘度の寄与が大きい第二主成分に並行に存在していた。


このグループの界面活性剤を耐久試験で増粘した電気粘性流体に添加したところ、増粘が解消され、初期の特性に回復した。興味深いのは界面活性剤の粘度は高いにも関わらず1%しか添加しないのでその影響が観察されなかったことだ。


この結果は特許として出願され実用化されたが、トランスサイエンスの問題をデータサイエンスで解いたところ、ますます住友金属工業とのJVを推進しずらくなった。

カテゴリー : 一般

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