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2023.12/16 燃料ポンプの故障

ホンダ車のリコールが発表され、部品を供給しているデンソーからは、故障原因と謝罪の説明があった。以前にも書いたが、材料系の品質問題が起きた時の部品供給側と自動車メーカーとの阿吽の呼吸のようなものを感じる今回の発表である。


すでにこの問題で1名死亡事故が起きているので迅速なリコール対応となったのかもしれないが、できれば品質管理技術を向上しリコールの撲滅を目指すのがあるべき姿だろう。


この点に関しては、1月に開催される日刊工業新聞のセミナーで弊社のコンサルティングの姿勢も含めてお話ししたい。弊社では、研究開発(注)あるいは開発設計段階から品質管理を徹底する指導を心掛けています。

https://corp.nikkan.co.jp/seminars/view/6917


さて、このリコール問題について特許を調べたところ、PPSで製造されていた部品をフェノール樹脂で置き換える発明がデンソーから2017年に出願されている(特開2017-82116)。この発明は住友ベークライトとの共同出願となっている。


もし、今回のリコールの原因となった燃料ポンプのインペラーがフェノール樹脂で作られていたならば、この発明が技術に用いられており、住友ベークライトが部品供給先と思われる。


インペラーの材料はPPS製も考えられる。しかし、東レからPPS製インペラーの発明が単独出願され権利化されているが、年金の支払いが2021年以降無く権利が消滅している。


このような特許の状況から推定されるのは、PPSの高価な部品を安価なフェノール樹脂製の部品で置き換えて、そしてその品質管理に失敗し今回の事故が起きた、というシナリオが見えてくる。


ただし、当方は、今回のリコール対象部品がPPSなのかフェノール樹脂なのか知らないので、このシナリオは「妄想です」とコメントを残しておきたい。


注意しなければいけないのは、フェノール樹脂とPPSでは、故障の原因となるメカニズムが少し異なるところである。前者は架橋型の樹脂であり、後者は熱可塑性樹脂だ。


この両者で耐久性を議論する時に注意しなければいけない点(例えばフェノール樹脂にはOH基があり、これは親水性なので耐久試験を行う時にガソリンに含まれるわずかな水をどのように考えるのかーーー。)があり、1月のセミナーではそこを詳しく説明予定である。ご興味のあるかたは、弊社へお問い合わせください。


なお、過去に当方が講師を務めるこのセミナーですでに時間温度換算則の問題や自由体積その他を説明しているので、熱可塑性樹脂と架橋タイプの樹脂で異なる点について今回の事故原因を気がつかれたと思います。今回のクレームがどちらの樹脂でおきているのかは不明だが、これまで樹脂部品を使ってきて問題が起きていなかった、と過去情報に書かれている。


カテゴリー : 一般 高分子

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