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2024.02/29 熱分析

高分子材料の分析に熱分析は重宝する。分光分析のように分子構造の同定まではできないが、コンパウンドが同じものかどうか、ばらつきはどうかの分析ができる。


TGAやDSC、TMA、動的粘弾性を駆使すると、ゴムやプラスチックのトラブル解析で迅速に結果を出せることをご存知ない方が多い。


ここで問題となるのは、ペレット一粒一粒のばらつきである。同じロットの中で調べてみると、密度は結構ばらついている。DSCでTgのエンタルピーをこの密度と相関を調べてみると、相関のある場合と無い場合があったりする。


TGAで重量減少カーブを調べるとある温度領域の重量減少カーブのところで差異が観察されたりする。こうしたデータを積み上げると、ペレットの生産においてトラブルがあったかどうかが見えてくる。


20年近く前の話だから少し詳しく書くと、某大手の樹脂メーカーが中国のローカルメーカーに委託生産していたコンパウンドの射出成形体でボス割れというトラブルがあった。


外装部品を固定するボスが出荷して1年も経たず割れて外装が外れるトラブルが起きた。コンパウンドにエラーがあって発生しているとおもわれたのだが、コンパウンドメーカーはケミカルアタックを原因として主張してきた。


当方はデータからコンパウンドにエラーがあるので改善を要求したのだが、無視されて同じロットのコンパウンドを納入してきたので、一袋についてペレット一粒一粒検査した。


このようなことを若い人にお願いしたら嫌がることが分かっていたので、土日に当方が実験したのである。単身赴任だったので暇つぶしに楽しめた。数粒評価したところでスが入っているペレットを見つけた。そこで、袋から全部のペレットを床に広げ、すの入っているペレットを拾い出した。


約1割ほどすが入っていたペレットを見つけたので、月曜日にコンパウンドメーカーの営業を呼び、すの入ったペレットだけ見せて意見を聞いた。


さすがに山積みされた劣悪ペレットを前にケミカルアタックとは言えなかったようだ。技術担当と調整して、と言い始めたので、工場の監査をやりたい、と要求した。


詳細を省略するが、中国ローカルメーカーの工場は、5Sに問題は無かったが、熱電対が1本壊れた状態で生産をやっていた。これ以上書かないが、熱分析データから予想されたばらつきだけでなくスが入る原因も理解できた。

カテゴリー : 一般 高分子

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