2025.06/04 フローリーハギンズ理論
当方が学生の時、高分子の授業で使用した教科書には、数行の説明しか出てこなかった。またゴム会社で高分子の相溶を論じる時には、溶媒法で求めたSP値で議論するように指導社員から教えられた。
当時最先端の樹脂補強ゴム(今はTPE)を開発するにあたり、樹脂とゴムのSP値を溶媒法で毎日測定していた。面白かったのは、ロール混練において、SPが多少異なっていても均一になる系が存在したことである。
すなわち、高分子を相溶させるために、必ずしもSPが一致する必要が無いことを学んだ。この経験から25年後にカオス混合を発明するのだが、フローリー・ハギンズ理論をいい加減な理論と位置付けていたからアイデアを発展させることができた。
ノーベル賞を受賞している研究者の理論だから、という理由でありがたがって、これをうのみにして現象を眺めると、チャンスを見落とすことになる。
それでは、この理論を間違った理論として無視してよいのかというと、そうではない。この理論は、高分子の相溶について考え方を示す重要な理論であるが、いい加減である、未完成の理論であるとみなしながら現象を観察する努力をしている。
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科学の進歩で形式知の体系が完成しつつある。一方で高分子のように未だに結晶成長の速度論さえも満足に議論できない状態である。球晶はラメラの集合体であるが、アモルファス部分を含み複雑な構造である。
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形式知は、技術の伝承を容易にし、問題解決にも必要であるが、それらがすべて完成された知であるかどうかは、注意する必要がある。
カテゴリー : 一般
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