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2025.08/29 オブジェクト指向による配合設計(5)

評論家は、セレンディピティーで解けばよい、という答えで良いかもしれないが、技術者はモノを作り出さなければいけない。トランスサイエンスの問題を解決する方法が必要になってくる。


パーコレーションの問題については1950年代から数学者によりいろいろ議論されて現象が明らかになったが、それは数理モデルとしてであり、この数学者たちの結論を勉強しても今回の問題は解けない。


数式があるから、それでシミュレーションを行い、データ駆動で、と頑張ってみても、恐らく答えは得られないかもしれない。


このような問題では、現象のふるまいに着目しオブジェクト指向で解く以外に方法は無い。たとえそれが非科学的な方法であっても、答えを得る方法としてオブジェクト指向がだれでもその方法を理解し共有化できる唯一の方法かもしれない。

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2025.08/28 オブジェクト指向による配合設計(4)

1980年代にセラミックスフィーバーが起きた時、「セレンディピティーで問題を解きなさい」というのが流行った。これは答えを言っているわけではないのに、皆は答えを聞いたように思い、とりあえず実験を行い、データを出して当たりを引けるように頑張った。


その段階で、データ駆動で行っていることに気がついていない。そのうち、気の利いた人が、コンビナトリアルケミストリーという言葉を言い出した。


これは「組み合わせ論」に基づいて列挙し設計された一連のケミカルライブラリーを系統的な合成経路で効率的に多品種合成する為の実験手法とそれに関する研究分野」とWIKIに説明されている。


早い話が、総当たりで組み合わせた配合を検討し、当たりを見出す方法である。この段階で非科学の領域に足を踏み出したことに研究者は気がついていない。


コンビナトリアルケミストリーそのものを効率的に行う方法を研究する分野が、アカデミアで研究として成立しているのも笑える。

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2025.08/27 オブジェクト指向による配合設計(3)

科学の方法で考えて解けない問題は、非科学的な方法で解かなければいけない。仮説など設定している暇に少しでもいろいろな条件で実験を行い、データを出して考えておればいずれ正解にぶち当たる。


そこから生まれたのが、1980年代に流行したセレンディピティーという概念である。トランスサイエンスという概念で困ったからセレンディピティーという概念が生まれたのだ。


偉い先生たちは、非科学的という言葉を使いたくなかったのかどうか知らないが、セレンディピティだけを流行らせた。自分で分からない問題を、セレンディピティで解きなさい、としたり顔で説明される先生もいた。


不思議なのはこのような先生に頭を下げる経営者が多かったことだ。何も答えを出していないのに、偉い先生は印籠を出せば、答えたことになったのだ。裸の王様と同じである。

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2025.08/26 オブジェクト指向による配合設計(2)

昨日の問題の難しさは、科学的に解こうとすると解けないところにある。すなわち、科学で問うことができても、解けない問題である、ということだ。


このような問題をトランスサイエンスといい、1970年代のアメリカで生まれた概念である。その後セレンディピティーなる概念も生まれているが、何故かセレンディピティーだけ当時日本に伝わり、トランスサイエンスが日本で注目されるようになったのは21世紀になってからである。


1980年代の日本はバブル景気であり、どちらかと言えば後ろ向きの印象があるトランスサイエンスという概念を嫌ったのかもしれない。


このトランスサイエンスの問題を日本の高分子材料トップメーカーが6年間研究開発しても解けなかった。すなわち、科学的に攻めていても解けない問題は、どんなに頭の良い人でも科学的に解けないのである。


頭のよい人たちの問題点として、自分たちが考えてできなかったから誰もできないだろうと考えるところである。問題というものは、解き方を変えれば簡単に解ける、というよりも、解かなければ技術ができないのであれば、非科学的な方法で解決しなければいけない。


科学が唯一の問題解決法ではないのだ。ちなみに産業革命は科学誕生以前に始まって現在に至る。科学が成立していなくても産業革命は始まったのである。

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2025.08/25 オブジェクト指向による配合設計(1)

昨日の続きである。PPSは脆い材料なので動的部品に使用するためには高靭性化を目指した配合設計をしなければいけない。一つの方法として6PAをブレンドする技術があった。


PPS/6PAは、χが正のポリマーブレンドなので海島構造となる。このポリマーブレンドコンパウンドにカーボンを分散させると高靭性で半導体の性質を有する材料になる。


これを押出成形すると、カラーレーザープリンターに用いられる中間転写ベルトを製造することができる。ここまでは誰でも考えが進むが、絶縁体高分子に導電性粒子を分散するとパーコレーション転移が生じる。


このパーコレーションという現象を正しく理解していないと問題が発生した時にそれを解決できない。6PAのアミド基にカーボン表面のカルボン酸を反応させて、とかその親和性を利用して、とか仮説設定して実験を行っても、発生するであろうばらつきの問題を解決できない。

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2025.08/24 素材と生成物の関係

コロナ禍前に終了したある国研のホームページに、素材と生成物とが1:1対応関係の材料技術開発を目指す、というよくわからないプロジェクトがあった。


こんなプロジェクトを誰が企画したかどうか知らないが、そのようなプロジェクトでも税金が10億円ほど年間使われるのである。理事長にやんわりと皮肉を言ったら、理事長はよく中身を理解していない。


このあたり、あまり書くと嫌われるので本題に入るが、機能材料と言うものは、素材の配合設計とプロセス設計が1セットである。同一配合でもプロセスが変化すれば、生成物も変わる。


ゆえにプロセス抜きで配合だけで1:1に対応する技術の研究開発は、意味が不明である。有機合成ならば、プロセスが決まれば、生成物は、仕込みの原料で構造は一義的に決まる。


しかし、高分子のコンパウンディングや無機材料では、配合と生成物との1:1対応をプロセス抜きで語ることはできない。無機材料で結晶材料を目指す場合には、高分子のコンパウンディングよりも1:1対応を取りやすい。


しかし、高分子のコンパウンディングでは、混練機のスクリューセグメントによりコンパウンドの高次構造が変わり、結果として配合が分かっても混練技術が無ければ、同一コンパウンドを製造できない、ということが起こりうる。


当方は20年ほど前に、国内樹脂トップレベルのメーカーと6年間研究されて開発されたコンパウンドの配合をそのまま変更せず、混練プロセス設計だけを変えて、半年で、似て非なるコンパウンドの開発に成功し、製品を立ち上げている。


トップレベルと言われたコンパウンドは海島構造だったが、当方の開発したコンパウンドは、χが正の値であっても相溶したマトリックスのコンパウンドであり、その成形体は全く異なる物性を示した。

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2025.08/23 混練技術の難しさ

高分子の混練技術の難しさは、公開されている技術書の形式知が、実用的でない点である。少なくとも当方は5冊ほど10万円前後の書籍を読んでみてそのように感じた。


材料開発の体系の中で位置づけるときに間違っている、とぐらいに言いたいが、大半の教科書の内容が同じ体系を用いているので、逆に当方の知識が疑われることになりかねない。


実際に、20年前、某有名な高分子材料の会社部長から、素人は黙っとれ、と言われたので、発言については、セミナーの中だけで当方の考え方を述べている。


少なくと知とは、それを活用すると何か生きてゆくときによいことを生み出すものでなければならない。分散混合と分配混合の考え方では現象を見誤る可能性がある。


また、この考え方から強練りとか弱練りとかいう経験知を語る人もいる。高分子材料の混練では、分散だけでなく材料の変性まで起きているので、レオロジーを中心とした知が重要になってくる。


9月上旬に複数の講師による伸長流動のセミナーが技術情報協会主催で開催されます。詳細情報ご希望の方はお問い合わせください。

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2025.08/22 科学の研究は難しいか?

高純度SiCの半導体治工具事業は、担当者が当方一人となった時に、住友金属工業とのJVとして立ち上がったが、それまでは迷走状態で、毎年のように上司が代わった。


その時最後に上司となられた方は、グループのリストラを推進するとともに、当方は特命担当とされた。すなわち、SiCの担当からも外され、35歳で窓際となったのである。


その方から、研究をまとめるように言われた。高純度SiCに関する当方が行った実験については、すべて社外発表して良いとも言われた。そして学位を取得するために東北大学を紹介されたのだが、これが問題の種となった。


この話は以前ここに書いているが、アイデアも何も出さず実験をやっていない助教授が小生のまとめた研究内容を勝手に投稿してしまった。


すでに日本化学会年会で高純度SiCの反応速度論については発表しており、これを証拠に訴えることも考えたが、高校の先輩であることと、事業への影響を考え、耐えている。


この時の上司が、科学の研究ができるのは大学を卒業していないと難しい、誰でもできるものではない、と小生に科学の研究を指導しようとされた。


そこで小生は、大学4年から大学院修士までの研究で書いた論文6報の束をこの上司に見せたら、黙ってしまった。おそらく小生が研究のできないスタッフと思っていたのだろう。


当方は当時科学の研究と、オブジェクト指向によるデータ駆動の方法の研究を行っていたが、これを説明したところ、それは高卒のスタッフが行っている方法だと笑われた。


恐らく、この時の上司が今のマテリアルインフォマティクスの研究発表を聞かれたら、大笑いされるに違いない。


恐らく知を得るのに科学の方法が唯一と思われている方は多いと思うが、産業革命は科学誕生以前に起きていることを忘れてはいけない。科学による形式知は、伝承性に優れ、技術開発を加速したが、それ以外の知を得る方法を駆逐してしまった。


アメリカでは1970年代にトランスサイエンスという概念が生まれ、第一次AIブームなども起きているのだが、この動向が当時正しく日本に伝わっていなかったように思う。


オブジェクト指向についても議論が始まっており、1982年以降ソフトウェアーの分野でオブジェクト指向のイノベーションが起きているのだが、これについても無頓着な日本人が多い。


科学の研究は、形式化しており、実は誰でもできるのだ。だから、論文捏造と言う問題が起きたりする。科学の研究よりも美しいオブジェクト指向の設計のほうが難しい。

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2025.08/21 靭性

今大学のカリキュラムがどのようになっているのか知らないが、当方が学生だった4年間そして修士まで含めた6年間に、表題のパラメーターは聞いたことが無かった。


線形破壊力学についてまったく学ばなかった。また、そのような学問があることを知ったのは、神様のような指導社員に3か月間のご指導を受けていた時である。


工学部では材料力学しか教えないが、線形破壊力学についても勉強するように言われた。そして、その初歩的な話と何故有機材料を学ぶ学科でカリキュラムとして採用されないのかと言う私見も学んだ。


神様のような指導社員は、京都大学大学院出身のレオロジストであり、材料物性論の大家だった。この方以上に材料物性について広く詳しい方に未だ出会ったことが無い。


年齢不詳だが、これだけの知識がありながら昇進が遅れていることにも興味がわいた。当方が初めての部下だったそうである。また、初めての部下が当方でかわいそうな上司だった、とその後反省したのだが、午前中3時間の座学以外は、全く自由に実験をさせてくれた。


防振ゴム用配合を1年間かけて見出すのがテーマだったが、それを3か月で完成させて、報告書まで完成させている。報告書で靭性の話題も盛り込んだが、そこは指導社員から実験データが少ない、という理由で削除された。


結局報告書は、研究データもそろっていた、樹脂補強ゴムの弾性率に関する内容だけに絞られ、科学の研究としてまとめられた。

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2025.08/20 日本で唯一行く価値のある大学

「大学にはブランドとしての価値しかない。だから、東大以外に行く必要はない」と堀江貴文氏は8月19日配信PRESIDENT on line で述べているそうだ。


昨年は、どこかのインタビューで彼は大学不要論を語っていた。彼の見解は、どこにでも勉強をする場所があるので、今の時代は大学は不要と言う見解である。


確かに多くの大学の現状を見れば、堀江氏の見解となるのだろう。また30年以上前でも、学位取得を理由に言われ、草案をT大の某先生に提出したら、そこから勝手にその先生は論文発表して、国際会議などで自分の研究として発表された。


あまりの出来事で、当方は丁重にお断りして中部大学で改めて気持ちよく学位審査を受けている。このような大学の先生が増えていたりしたなら堀江氏の意見は正論に思えてくる。


しかし、そのような先生ばかりでないことを当方は業務上知っている。しかし、日本のアカデミアの堕落は、大学の国際的地位低下にも現れているので堀江氏の意見を指示する人は今後多くなってゆくだろう。


だからと言って、大学は不要にはならない。AIの時代では、益々アカデミアの役割は重要になってゆく。この意味を知りたい方は、お問い合わせください。


ちなみに中部大学は、ゆく価値のある大学の一つだと思う。有名国立大学を定年になられた一流の先生が集まっている。

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