扇風機を2台つけただけの空調服が2万円台の価格で販売されている。これだけの価格ならばペルチェ素子を用いたエアコンジャケットの方が快適である。同じ価格帯で供給可能である。
ただ、問題はペルチェ素子をただつけただけでは、エアコンジャケットとならない。そもそもペルチェ素子だけでは体を冷却することはできない。もう一工夫必要である。
弊社ではこのひと工夫に成功し、ペルチェ素子を用いたエアコンジャケットの試作に成功している。ただ残念なことに開発依頼主の本業がコロナ禍のあおりを受けてエアコンジャケットの事業がペンディングとなった。
特許は3件出しており、そのうち重要な1件については弊社から出願し、出願時審査請求を行っている。開発依頼主からは弊社が新たな事業先を探してよいことになっているので、もしエアコンジャケットの事業を希望される方は弊社へお問い合わせいただきたい。
ちなみに扇風機を2台つけただけの空冷服の問題は、外気を体に直接吹き付ける点である。ペルチェ素子を用いたエアコンジャケットでは、外気と体表面とは遮断されて冷却されることになる。さらに冷却しすぎも無く快適である。
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かつてブランドが付加価値の一つと言われ、企業のブランド価値を上げる努力がなされた。しかし、市場の変貌あるいは縮小等の要因により、ブランド価値が高くても企業の存続が難しい時代でもある。
例えば、オーディオスピーカーのB&WやJBLは、かつてのオーディオ市場では高級ブランドの一つであるが、今企業の存続すら難しい状況に陥っている。
音工房Zという10年ほど前に起業したスピーカーメーカーの実験で、300万円のスピーカーと聴感上同じ品質のスピーカーを40万円前後でできることが示されている。ここで同等品質とは、多数の人のブラインドテストを行ったときに差がない、という意味においてである。
ギターのマーケットでは、倒産しかかったギブソンがブランド戦略でその立て直しを図っている。カスタムショップでビンテージ感のある製品を市場に投入しており、高いものでは100万円をこす製品もある。
新製品も同様で、同じ型式の新製品の価格が100万円程度異なることもある。これは品質管理を学んでいたなら、品質のばらつきが大きい商品を販売するメーカー、とか品質管理のできていないメーカーと言う烙印を押したくなるような状態だ。
例えばES335という型式のギター(注)では、安くても25万円前後から130万円前後まで存在し、このギブソンよりも高い品質の製品をアイバニーズブランドならば7万円前後で入手できる。アイバニーズは名古屋に本社のある星野楽器のブランドだが、今世界3位のブランドといわれており、ギブソンと同等以上のブランド価値である。
アイバニーズは安いギターばかり作っているのではなく、ES335タイプで40万円前後の製品も存在する。40万円前後の製品と7万円前後の製品との違いは、主に材料の違いと生産場所の違いである。
40万円前後の製品は日本製だが、7万円前後の製品はインドネシアや中国で生産されている。驚くのは40万円前後の製品と7万円前後の違いは、トヨタのレクサスとカローラほどの品質の差がないのである。
自動車と異なり、楽器では付加価値の差を生み出すところが少ないので、比較として正しくないことは承知しているが、日本製でないことを我慢できるならば、7万円前後のギターでも十分練習できる。
なぜなら、エレキギターに使われているピックアップやその他電装品は同じで、弦も同じである。演奏者の力量に40万円と7万円の差をみいだすことを求めるのは難しいだろう。
アイバニーズというブランドを世界3位まで押し上げた原動力は、高い品質とコストパフォーマンスにあると思われる。これはトヨタのブランド価値とよく似ている。
トヨタはレクサスという高級車ブランドを持っているが、日本ではクラウンの位置づけを悩んでいるという記事を以前WEBニュースで読んだ。当方の世代ではレクサスよりも「いつかは、クラウン」と思っている人が多い。クラウンにはレクサスと異なる付加価値があるように思うのだが。
(注)20年ほど前に閑職となった時、たまたま降りた御茶ノ水駅で店じまいをしている楽器屋で新品展示品19万円のES335を見つけて衝動買いした。ほどなくして豊川へ単身赴任し忙しくなり、ES335は埃をかぶることになったが、これを2年ほど前に断捨離した。16万円で売れたので本物だったのだろう。コロナ禍となり、友人が高価な手工ギターをオーダーし楽しんでいる、とメールに書いてきた。それならその1/10の価格で満足できるギターを買おうとしてオークションで楽器店から新品展示品定価14万円相当のアイバニーズのES335タイプのギターを7万円で落札できた。驚いたことに16万円で売却した本家ES335よりも品質が高いのだ。指板に使われているローズウッドは素人がみても高級と分かる緻密な木目模様である。またフレットの角の処理もギブソンのように引っかかるところが無い。また、ボディーの杢目もトラメがきれいに出ており最高級品のメイプルが使われている。生音はギブソンのES335よりも大きいだけでなく、音の出口のfホールの小口にもアイバニーズのギターは装飾がなされている。木口むき出しのギブソンの製品とは大きく異なるところだ。ピックアップを通した音色もアイバニーズの方が好みの音である。ギブソンは特有の図太い音で4万円の安いエレキギターにありがちな音色だった。ギターのプロではないのでこのあたりの評価が正しいかどうかは不明だが、少なくとも工業製品として見たときに、どちらが7万円のギターかわからなくなる。ただ思うのは、19万円のギターを売却して16万円もらい7万円支払って19万円よりも高品質のギターに交換できた、すなわち閑職の時に衝動買いしたおかげで9万円以上儲かった可能性がある、と言う事実である。ギブソンと言うブランド力はすごい。
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低分子有機化合物の構造解析には、UVやIR,NMRが使われる。化学系の大学では卒業までに構造解析の実習あるいは、試験があるので皆身に着けている。ところが高分子に関する構造解析について当方の時代には低分子に準じるとごまかされていた。
確かにIRやUVにより高分子に含まれる官能基を知ることができるが、NMRを計測しても低分子のようにわかりやすいスペクトルは得られない。また、高分子では分子量分布も問題になる。分子量だけならば粘度測定でおおよそ知ることができるがやはりGPCを計測しその分布も知りたい。
分光学的方法と比較すると熱分析は大学でも分析の授業で触れられるだけで、それを使用した解析方法は詳しく授業で取り扱わない。少なくとも当方の時代には熱分析装置の原理までで高分子材料の分析への展開について説明はなかった。
しかし、TGAやDSC、TMAは、実務で活用分野が広い。TMAについては粘弾性を測定可能な装置も発売されている。当方はポリウレタンの難燃化技術開発でこれら熱分析装置の威力を学んだ。
もし高分子の種類が分かっているならば、分光学的方法よりも熱分析手法の方が実務では役立つのではないかと思っている。ただJISでこれらの測定法を読むと残念なのは、TGAとDSCで昇温速度が異なっていることだ。
確かにDSCでは20℃/minでも情報を得ることができるが、TGAではこの昇温速度では早すぎて一部の情報を得ることができない。TGAの昇温速度は速くても10℃/min前後が限界と考えた方が良い。
JISに従って測定データを取得していると、TGAとDSCで異なる昇温速度のデータを比較することになる。これは熱分析では不都合なことなのだ。このあたりを解説すると長くなるので、これ以上説明しないが知りたい方は問い合わせていただきたい。
JISにDSC測定の昇温速度が20℃/minと書かれていても10℃/min.で計測されることをお勧めする。それは何か問題が起きたときにTGAを10℃/minで測定することになるからだ。同じ昇温速度のデータで熱分析結果は比較すべきである。
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現象をシミュレーションする方法には、現象のモデルを数値解析し得られた数式で行う方法とコンピューターの中でモデルを動作させて計算を進める方法がある。
科学の世界では現象について数学で記述することを目指している。現象を数式で表現できれば未来予測も簡単である。数学を得意とする人ならば数式と現象がダイレクトにつながり、理解できるかもしれないが、凡人にはそれが難しい。
ゆえに現象をすべて数学で表現するのではなく、現象をモデル化して、出来上がったモデルを少しずつ変化させて計算する方法が直感で理解しやすい。
有限要素法では、物体を三角形の要素に分割し、例えば応力がかかった時の変形については、三角形の変形した座標を頼りに計算を積み上げてゆく。
現象についてすべて数式で記述されるよりもこの有限要素法的シミュレーションの方が凡人は理解できるかどうかは別にして安心できる。
ただし、この方法はコンピューター無しではシミュレーションは難しい。換言すればコンピューターが登場したから可能となった現象理解の方法である。
高分子も分子1本の解析結果を積み上げシミュレーションする技法が開発されている。ただ、複雑な分子になってくるとコンピューター資源が大量に必要となるので複雑な部分を簡略化して計算を進める手法が開発されている。
高分子とコンピューターとの関係などどうでもよい、と思っている人は時代遅れである。マテリアルインフォマティクスでは人間の頭でやったほうが良い場合があるのにAIを使ってデータマイニングする方法が検討されている。
昔TRIZやUSITが流行った時代があったが当たり前の結果しか出ないので相手にされなくなった。マテリアルインフォマティクスもAI一辺倒だと当たり前の結果しか得られなくて誰も相手にしなくなる、という懸念がある。
何でもコンピューターに放り込む、という姿勢もどうかと思う。昔電卓で微分方程式を解かれていた方は、大型コンピュータを操作できるスキルを持っていた。しかしそれでも電卓を使った理由は、それを使うことにより新しいアイデアが湧くからと言われていた。この言葉は今の時代にも参考になる。
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日本人の低賃金が話題になっている。正規雇用でも給与が上がらず低賃金化が進んでいるという。情報化が進展する中で日本にその中核となる企業が育たなかったため、という説明も聞かれる。
高度経済成長末期のバブル崩壊直前に「Japan as No.1.」という著書が世界的なベストセラーとなった。またセラミックスフィーバーも日本発であり、これに驚いたアメリカクリントン政権はナノテクノロジーブームをアメリカに起こしている。
日本の素材産業が世界をリードしてから30年以上経った。今環境問題から脱石油の流れが起きており、20年ほど前のオイルリファイナリーからバイオリファイナリーの兆候がようやく現実のものとなってきたが、日本企業の関心は薄い。
当方は10年前に多糖類ポリマーの可能性に着目し、ミドリムシから1個体あたり50%程度の収率で得られる多糖類を利用した特許を出願してみたが、企業の関心は薄かった。
現在の高分子産業は石油のクラッキングから製造されるモノマーを重合したポリマーに端を発し伸びてきた。そしてそれが環境問題を引き起こしたのだ。少し考えただけで新たな高分子産業がどのような形態になるべきか想像がつく。
この想像ができない人は弊社へご相談いただきたいが、せっかくのチャンスが到来しても夢を描けなければ賃金など上がらない。新たな付加価値を生みだしてこそ利益が上がるのである。賃金が上がらないのは企業トップも含め仕事のやり方が悪いのだ。
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40年以上前に化学系の学部で学んだ高分子科学は重合反応が中心で高分子物性論の授業が無かった。おそらく今の化学系の学部ではOCTAの話なども出てくるのではないかと思う。OCTAでは、高分子の分子1本からの積み上げでシミュレーションを行っている。
20世紀末に分子1本のレオロジーに関する研究報告を聞いた。当時、ダッシュポットとバネのモデルによる粘弾性論が破綻し、新しいレオロジーについて議論が活発化していた。
新入社員のときの指導社員はレオロジストであり、ダッシュポットとバネのモデルで粘弾性解析を行うのを得意としていた。電卓で微分方程式を解かれている姿はかっこよかった。
その指導社員が自分の行っている方法はもうすぐ学問ではなくなる、と予言されていた。その20年後高分子のレオロジーに関する研究ではダッシュポットとバネのモデルが時代遅れとなった。
しかし、高分子材料を設計するときにこのダッシュポットとバネのモデルを頭に描くと便利なことが多い。特に粘弾性試験機で測定されたデータを理解するときには、このようなモデルは重宝する。
高分子材料の表に現れる物性は、分子1本づつの積み重ねの結果であるが、力学物性の場合には高次構造が関係している場合が大半である。するとダッシュポットとバネのモデルでとらえた方が理解しやすくなる。
もっとも、今の若い人は大学でダッシュポットとバネのモデルを学ばないだろうから、意味のない話ではある。しかし、経験知としてこのモデルは大切にした方が良いと思っている。
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フックの法則は、バネに力を加えると歪が正比例の関係で変化する、という法則である。ただしこの時バネに大きな力を加えると正比例の関係から崩れる。正比例の関係が成り立つ領域を線形領域と呼び、そこから外れた場合には非線形領域と呼ぶ。
金属のバネでは線形領域が大きいが高分子は狭い。さらに架橋したゴムと樹脂では、架橋したゴムの方が線形領域は広い。これについて、頭に組み紐が思い浮かんだ人はすぐに理解できるかもしれない。
すなわち、高分子材料では、分子の一次構造の方向に動きやすいので、分子どおしが架橋されていない場合に滑りが生じ線形領域が狭くなる、とすぐに理解できる。また、加硫ゴムよりも樹脂のバネばかりの方が壊れやすいことも理解できる。
また線形領域でバネばかりとして使っていても、金属よりも高分子材料のバネばかりは緩和速度が速いので、線形性が崩れるのが早くなることを容易に理解できる。
クリープとは物質に一定の外力を加えることにより変形(歪)が進行する過程を言う。また応力緩和とは、物体に一定の歪を与えることにより生じた応力が低下する過程を言う。高分子材料の力学物性を考察するときに緩和速度を意識することは重要である。
また応力をかけて一定歪を与えたときに応力が初期の1/eになる時間を緩和時間と称するがこうした用語も現象と結び付けて正しく記憶しておくことは品質問題の解決にあたる時に役立つ。
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高分子材料について組み紐を用いて説明している。この組み紐が重なっているところを糸でしばり、ほんの少しだけ一部を動かしてみる。するとほかの部分も動き出し、力が伝わる部分まで変形する。
最初に動かす量を大きくしてゆくと全体の構造が変化する。組み紐では、変形したまま元に戻らないが、これがゴム分子であると、糸で結んだ以外のところは一次構造が変形するので、分子が切れない限り、元の状態に戻ろうとする。
ところが、大きく引っ張った時に一次構造が最初の状態よりも安定な状態になったならば、分子は元の状態に戻ろうとしなくなる。これは積み将棋をやってみると理解しやすい。
積み将棋は、最初箱の中に入っていた将棋を将棋盤の上にばさっとあけた状態から始める。1個ずつ指一本で将棋を動かしつつ自分の手元まで寄せる。この時将棋の山が少しでも変形したならば、取り出そうとした将棋を山の上に積み上げる、という単純なルールだ。
小生が藤井聡太氏と将棋をやって勝てる可能性があるのはこの積み将棋である。少し自信がある。山積みとなっている中から、それを取り除いてもほかに影響を及ぼさない将棋を探し、神経を集中してほかの駒を動かさないようにゆっくりゆっくりと引っ張り出すのだ。
この時引っ張り出そうとした駒以外が動いたならば、引っ張り出そうとした駒はそのままとするので、次の人はその駒を引っ張り出すときに有利となる。すなわちその駒を動かしても他の駒が動きにくくなるように安定状態となるよう他の駒が動いたからだ。
もし、それでも不安定状態の駒があったとすると安全と思って動かした駒により不安定状態だった駒が安定状態へと動く。このようにして取り出しやすい駒が必ず一つできる。このゲームの面白いところは、ただ取り出しやすいところだけを探してもそれができなくなることだ。
二手三手先まで見込んでチャレンジし、相手にとらせないように自分のところに駒を貯めるのが極意なのだが、この一部分の変化が他に影響を及ぼし変化してゆく、そしてその時変化が安定方向に動く、という現象は、自然現象として重要である。
話が長くなったが、高分子材料を扱う時に緩和という現象を説明するために積み将棋を持ち出した。応力が緩和するとは、ある応力を高分子材料にかけて歪を与えると、歪が変化しないように保ったときに時間とともに応力は次第に減少する。
これが応力緩和と呼ばれる現象である。逆に応力を取り去った時に歪が元に戻らなくなる時も緩和現象である。肥満体の人のトランクスのゴムひもは緩和してゆるゆるとなるのが早い。これは緩和速度が速い、と表現される。
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高分子は多成分系であり多分散系、と言う話をしたが、天然高分子は単分散系である。例えば天然ゴムのGPCを測定するとシャープな分子量を分布を示す。
高分子量で分布が狭い系に添加剤を分散しようとすると、その組み合わせにより分散しにくい場合が出てくる。多少は低分子量のものが存在してくれていると他の分子を分散するのに好都合であることは、妄想として頭に描くことが可能である。
タイヤ用のゴムの混練はバンバリーとロールを用いるが、バンバリーで混練する前に天然ゴムだけをロール混練するノウハウがある。すなわち天然ゴムの分子量分布がシャープなためバンバリー中で添加剤が分散しにくい場合にこのノウハウが使われる。
このノウハウが使われている場合のゴムの混練プロセスは、ロール→バンバリー→ロールとなる。教科書には、ゴムの混練ではバンバリーでノンプロ練を行い、ロールでプロ練りを行う、と書かれていたりするが、実際の現場ではコンパウンドの性能を上げるために様々な混練プロセスが工夫される。
面白いのは樹脂のコンパウンドを開発されている方にこのような発想が乏しいのだ。二軸混練機一発で行うのが高分子のプロセシングだと勘違いしている人もいる。確かに生産性やコストを考えるとそうなるが、高性能の樹脂を製造しようとしたならばプロセシングを工夫しない限り良いものを作れない。
どうしても二軸混練機が命と考えておられる方は、カオス混合装置を検討してほしい。弊社が特許を保有しているのでご相談いただきたいが、10kg/hの吐出量ならば300万円前後であり、今中国で500kg/hクラスのカオス混合機が稼働している。これは少し高い。
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合成高分子は、モノマーを重合しモノマーがひも状につながったポリマーとして活用されている。ゆえに多数の組み紐を手の中で揉んでぐちゃぐちゃにし、放り投げてできた構造に近い、として話をしている。
しかし、合成高分子は大半が結晶性高分子なので、このモデルでは高分子の結晶である球晶をうまく表現できないので、そこは妄想で補ってほしい、と話を進めている。
また、モノマーが重合してできたひも状のポリマー1本の構造を一次構造と呼び、これが集まった構造を高次構造と呼ぶ呼び方が昔から行われてきた。
一次構造からいきなり高次構造まで飛躍するのでわけがわからなくなるが、昔の研究者は、二次構造とか三次構造とか研究で見つかった時のことを考えて、高次構造と呼んだのだろう。
ところが、昔の人の忖度は外れ、今高分子の研究者は、階層的に構造をとらえて研究し、中間の領域をメソフェーズと言ったりしている。こうした言葉の氾濫が、高分子を難しくしている。
また、モノマーが重合してポリマーになるので紐の長さは正規分布となるはずだ。これを触媒などうまく制御し、様々な分布の制御が最近はできるようになったが、ポリマーが様々な紐の長さの集合体になるということを知っておくべきである。これを多分散系と呼んだりしている。
有機化合物を眺めたときに、低分子では分子量が異なると異なる分子として区別する。例えば天然の有機化合物では同じ構造が二つのものや3つのものなどが存在しているが、これは皆区別する。この観点に立つと、高分子は多成分系とみなすことができる。
すなわち、高分子は多成分系であり多分散系の性質をもち、一次構造から高次構造まで存在する。そして、樹脂は高次構造として球晶と自由体積、非晶質相の3つの構造が必ずできる。射出成形体の物性がばらつくのはこうした言葉の説明からでも十分に理解できる現象である。
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