射出成形体の強度は、C-C結合の強度から計算される値よりも低い。ゆえに引張試験を行ったときの破断強度が他の要因により低くなっていることを想像できる。
欠陥がその一つの要因だが、欠陥以外に様々な歪や巨大化した球晶も強度を低める要因だ。例えばPPSを200℃で6時間熱処理すると強度は低下するが、これは球晶が成長したためである。
弊社で開発したPH01という添加剤を添加してやると球晶の成長を抑制するので強度の低下を抑えることができる。また弾性率は下がるが、カオス混合により6ナイロンを10%程度相溶させても同様の効果が得られる。
また、シャルピー衝撃試験も改善される。この高分子の結晶成長で強度が低下する現象はあまり知られていないのか21世紀でもポリ乳酸の劣化問題について球晶の巨大化であると考察した論文があった。
結晶成長はX線の小角散乱を行えばその成長をモニターできるので強度低下との関係を論じやすいが、樹脂内部に生じた歪については研究が難しくなることがある。
この場合は電子顕微鏡でうまく破断面の写真を撮る技術が必要になる。また、どのような電子顕微鏡を使用するのか選択眼とその顕微鏡に適したサンプル作成技術が必要になる。
射出成形体の強度を測定するだけであれば簡単に見える作業だが、そのデータの背景を詳しく知ろうと思うと途端に難しくなる。
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お茶碗のようなセラミックス材料は、割れやすいというイメージがある。一方、ゴムは割れにくいというのが普通の感覚だろう。
ところが、ゴムでも架橋密度を上げて硬くするとセラミックスのように割れやすくなる。一方セラミックスにも部分安定化ジルコニア包丁のように割れにくいセラミックスも存在する。
この材料の割れやすさには、硬さとのトレードオフのようなイメージが存在する。すなわち、硬い材料は割れやすく、柔らかい材料は割れにくい、というイメージである。
硬さ、すなわち弾性率と割れやすさは、見かけ上このような関係となるが、割れやすさを支配しているのは、材料内部に存在する欠陥である。
材料をプロセシングにより成形体とする過程でどうしても欠陥をはじめとした不均一な構造が成形体内部にできる。不均一な構造の中で欠陥は、材料の割れやすさを大きく支配している。
弾性率の高いセラミックスや金属では、この欠陥と割れやすさの関係が比較的わかりやすく、線形破壊力学に基づく割れやすさの予測、すなわち材料の寿命について考えやすい。
しかし、高分子材料について割れやすさと欠陥の関係が分かりにくい。そのため高分子材料ではセラミックスや金属のように寿命予測が難しくなる。
高分子材料では欠陥と割れやすさの関係が分かりにくいが、それでも金属やセラミックスのようにやはり一定の関係が存在する。
ただし、高分子材料の壊れやすさでは、他の要因も欠陥同様に割れやすさと関係してくるのでそれが不明確となるだけである。
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ロシアーウクライナ戦争のニュースが連日報じられており、ロシアの戦争犯罪も明らかにされた。さらにこれはプーチンの戦争、という意見まで出ている。
ところがロシア国内は反戦どころか逆にプーチン氏の支持率が80%を越えたという。国内では、徹底したプロパガンダだけでなく放送局で反戦を訴える放送事故も起きているのに、反戦ムードとならないのは、今回の戦争を見ている国民の視点が我が国や欧米とずれている可能性が高い。
かつて、第二次世界大戦は日本国民の熱狂的支持により始まった、というNHKの番組があった。信じられない内容であったが、戦争に突き進んだ時代の日本を学ぶには良い番組だった。
今の平和ボケした日本人は戦争反対が世界の常識であると信じているが、戦争を政治の最後の手段として認めている国民も未だ先進国で存在することを知る必要がある。
情報化時代であり、それなりのリテラシーもあると思われたロシアでそのような考え方の国民が多いことに驚くが、企業風土を考えてみればわかる。
民間企業やお役所にはそれぞれの組織風土が存在する。この風土の違いでモノの見方や考え方が変化することは転職を経験してみると理解できる。
大企業ならば部門ごとに異なる風土となっている会社もあるかもしれない。この風土が公序良俗に反することを容認するような組織であると健全な精神の社員は悩むことになる。
例えば、当方はゴム会社で社長方針に従い新規事業を起業したが、研究のための研究こそ重要と考え、それを快く思わない組織風土の中でFDを壊されたり様々な業務妨害を受け、組織ぐるみで隠蔽化された苦労を経験している。
この経験から今のロシアの国内の様子を心配する。ロシアにはアメリカよりも核弾頭の数は多い。ロシア国民が暴走しないことを祈りたい。
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4月10日に行われたロッテーオリックス戦で佐々木朗希投手(以下佐々木投手)の完全試合についてニュースが絶えない。この欄で取り上げるつもりが無かったが、これだけ世の中で騒がれていると書きたくなる。
完全試合の記録においてバッテリーの合計年齢の最年少記録は恐らく永遠に更新されない可能性がある。佐々木投手の記録であり、大半は彼を取り上げているので、ここではあまりニュースとなっていない側面を。
彼の高速ボールを受けていたのは18歳の松川虎生捕手で、名前の由来はタイガースが優勝した年に生まれたからとか書かれていた。プロ野球の申し子のような人物である。紀州のドカベンという愛称があるそうだ。
愛称が示すように筋肉質であり、当方の年代ならば伴宙太のほうがしっくりくる。星飛雄馬の速球を受けられる唯一の人物として星一徹から指名された元柔道部員である。
3日ほどニュースを読んでいてもこの話はどこも書いていない。時速160kmを越える速球を受ける筋肉質の捕手ならば「伴捕手」を思い浮かべる現役のスポーツ記者がいないためか。
星飛雄馬と伴宙太との間には壮絶な友情物語が展開されたのだが、おそらく向こう十年このバッテリーもプロ野球の星としていろいろな話題を提供する活躍を期待したい。
その前に忘れていけない師弟愛の物語がある。3年前、花巻東高校との甲子園をかけた試合(決勝戦)で監督が佐々木選手のケガを心配して登板回避した話である。
3年前、この判断を巡っては賛否分かれた。当方は賛否分かれた話題よりもこのような判断ができた監督の人柄に惚れた。並みの高校野球の監督ではできない判断である。
おそらく当時無理を推して登板していたなら、花巻東を0点に抑えられた可能性が高い。しかし、その結果どこか故障をしていた可能性はさらに高かった可能性がある。なぜなら県大会でずっと連投してきたのである。
今回の快挙で過去のこの監督の判断を思い出したファンはどれだけいたのだろうか。高校野球で活躍しながら故障のためプロで成績を残せず去っていた投手は多い。最近ではハンカチ王子がいる。
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河瀨直美氏の東大入学式における祝辞が問題となっている。まず本件、大量に人が亡くなっている今、入学式の祝辞をこの人に述べさせたのが間違っている、と結論を書いておく。
映画作品を素晴らしく描くことができても思考方法がおかしいとこのようになるという典型例である。今男性映画監督に文春砲がさく裂しているが、これらの男性映画監督と比較しても負けない思考方法である。
また、この方の作品をよく理解したならば、ロシアとウクライナとが戦争をやっている最中の東大の入学式で語らせたら何を言うのか、おおよそ理解できたはずである。もしそれを期待して河瀨氏を招聘したとしたならば、内部批判でも言われていたように東大などいらないのである。
この人の目からは侵略戦争を単なるヤクザどおしの殺し合いにしか見えていないのである。代表的な作品と東大生に語った内容をよく読むとそのようにしか理解できない。
東大生の中にも祝辞を聴きそのように感じた人がいるかもしれない。ロシアとウクライナの戦争は、単なる殺し合いではなく、武力による現状変更を禁じる価値観が世界標準となった時代におけるヨーロッパで起きている戦争であり、どのような視点で見てもロシアの侵略戦争である。
実験でも同様であるが、まず目の前で起きている現象を先入観なく見ることが大切である。そして現象をそのまま評価したうえで、考え方を整理していろいろとアイデアを展開してゆくことが重要である。
ロシアとウクライナとの間の戦争を単なる殺し合いとして捉えたならば、「ロシアと言う国を悪者にすることは簡単で、悪を存在させることで安心していないだろうか」という問いかけとなるかもしれない。
ところが、今日の世界は、それなりのリテラシーのあると思われたロシアと言う国が平気で侵略戦争を始める悪であることが分かったので、安心どころか大慌てしているのである。
また、「自分たちの国がどこかの国を侵攻する可能性があるということを自覚しておく必要がある」どころか、ロシアが北海道に侵攻してきたらどうするのか、第九条をよく議論しなければいけない時代なのだ。先日北海道はロシアの領地と言う発言がロシアの重鎮から飛び出したばかりである。
争いごとが起きると「どっちもどっち」という無難な意見をしたり顔で述べる人がいる。しかし、やってはいけないことを明確に指摘し批判することは、秩序を保つために必要な努力である。
21世紀、領土の現状変更を戦争という手段で行おうとする行為は、理由や背景はどうであれ、絶対にやってはいけないことである。
ゴム会社で社長方針に従い新規事業を立ち上げたところ、研究所の同僚に業務を妨害されるという事態に、被害者が転職し無難におさめ新事業を守ったことを河瀬氏はどのように評価するだろうか、聞いてみたい。
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昨日は怪しいボイドの話を書いたが、結晶性樹脂の結晶成長により力学物性が低下する研究は多い。例えば環境対応樹脂のポリ乳酸は、加熱して耐久加速試験を行うと球晶が成長し、力学物性は劣化する。
すなわち、結晶成長により靭性が低下し強度が低下する。このような強度低下でも劣化したと判定される。PPSも同様で、例えば200℃で放置すると2-3時間で強度低下する。
PPSについて弊社が開発したPH01という添加剤を添加するとこれを防止できる。PH01以外にもカオス混合を用いれば対策手段は増え、用途に応じてこの10年材料開発を進めてきた。
興味深いのは、このような結晶成長抑制剤は、ある程度の量を添加しないと効果が発揮されないところである。結晶化促進剤は少量でも効果が出るが、結晶成長の抑制のためには5%以上の添加が必要である。
5%以上の添加となると、添加剤による可塑化効果が出始めるので、用途に応じて手段を変えることになる。結晶性樹脂の耐久劣化防止の技術を難しく感じるのは球晶やボイドの成長により力学物性に影響を与えているときである。
高分子の自動酸化や光劣化の研究データは多く発表されているが、このような球晶の成長やボイドが力学物性にどのような影響を与えるのかという体系的な研究は少ない。
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射出成形体にボイド(穴)が存在することをご存知ない方が多い。射出成形条件を最適化し0にできるかどうか知らないが、巣の入ったペレットを使ったりしたときに多数発生することがある。それ以外でもナノオーダーのボイドは0にできないのでは、と思っている。
この10年機会があれば射出成形体の破断面を観察し、このようなことを考えている。ナノレベルのボイドならば力学物性に影響しないが、このボイドが成長する可能性が出てくると、ボイドに対する考え方が変わってくる。
20年近く前にレンズ材料でこの現象に遭遇し、この現象がレンズ機能の耐久性と相関したので特許を出願している。光学的にも影響のないボイドなのだが、アニールしてやるとこれが大きく成長する。
科学的な研究を行っていないので空想のような話になるが、高分子材料には自由体積が存在する。もしアニール前後で自由体積の変化があればこのようなボイドの成長を理解できる。
おもしろいのはこのボイド観察を行った樹脂のDSC測定で得られたTg部分のエンタルピーを比較してやると、ボイドの変化と相関が出たのだ。
このような面白い現象が話題にならない点が不思議だが、その気にならなければ見つからない現象なのでご存知ない方が多いのかもしれない。
また、ボイドの成長の仕方は樹脂により異なる。もしこのようなボイドが経時で力学物性に影響を与えるほどの欠陥まで成長する可能性があるならば、射出成形体の劣化メカニズムの一つとしてとらえる必要が出てくる。
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高分子成形体の寿命について、その予測方法がいろいろあることがあまり知られていない。大別すると統計手法による方法と時間・温度換算則を用いる方法が知られている。
詳細は本日と金曜日のセミナーで解説するが、寿命予測というとアーレニウスプロットという考え方では研究開発に失敗するリスクが高くなる。
また、アーレニウスよりもラーソン・ミラー法の方が精度がよい、と言っていては駄目である。両者とも時間・温度換算則の方法なので特有の問題を抱えている。
具体的にクリープ破壊を取り上げて説明すると、セラミックスでSiCのように拡散クリープで進行することが科学的に明らかな場合には、寿命予測精度をそれなりに高くできる。
しかし、高分子成形体ではクリープのメカニズムが科学的に解明されていない。さらにレオロジーについてWLF式による時間・温度換算則が考案されたが、20世紀末にダッシュポットとバネのモデルが破綻し、現在再構築中である。
このような科学的に未解明な部分を抱えている状態で寿命予測を行うとどうなるか。これは説明の必要は無いと思うが、予測された結果が非科学的であることを覚悟しなければならない。
それならば、統計学による方法の方がまだ信頼性が出てくる。金属材料でも、例えば御巣鷹山の飛行機事故のように寿命予測を失敗した事例が存在するのだ。高分子材料の寿命予測についてもう少し慎重に熟考した方が良い。
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高分子の成形体は金属のそれよりも信頼性が低い。結構おおざっぱな表現だが、品質管理の視点から多くの技術者が持っている印象だと思う。
それではセラミックスと比較した時の信頼性は、どちらが高いか、という問題は回答が難しい。セラミックスの成形体技術には金属並みの信頼性を持たせる技術が存在するからだ。
電気・電子特性に限定するとセラミックスの方が信頼性が高い。ゆえに有機半導体が一時期ブームになったが、有機ELなど一部の製品化に限定されている。
無機ELも存在するが駆動方式の差異から表示装置用素子として扱いにくく、扱いやすい有機ELが普及したが、電球に関しては、寿命の長い無機材料のLED電球が普及している。
電球を有機ELで作ろうとした会社があったが、そもそも企画段階で寿命が短いと分かっていても事業化したので苦労している。
当たり前の話だが有機材料と無機材料とを比較した時に熱的安定性が大きく異なる。空気中で有機材料はどう頑張っても270℃を越えて安定でいることができない。
人間なんて45℃以上の熱湯さえも我慢できない。一世を風靡した熱湯コマーシャルは、皆その結果が分かっている馬鹿な試みを真面目にチャレンジしていたので注目された。
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昨日リーグトップの本塁打数9を誇る日ハムと楽天の試合があったが、TVではどこも放映していなかった。人気の無いカードかもしれないが、注目されてよいカードだったと思う。
かたやわずか2敗の楽天とたった2勝の日ハムの試合である。その戦いぶりは注目されてもよい。何といってもホームラン数がリーグトップを誇りながら最下位の日ハムだからである。
今朝、記事が出ていないかヤフーを検索しても木曜日までの記事が上位に出てくるだけで、金曜日の試合結果が1ページ目に出てこない。日ハムー楽天といれて、ようやく地方新聞の記事を見つけることができた。
記事を読むまでもなく日ハムが負けたのだろうと、検索結果から想像がついた。清宮が1本でもホームランを打っていれば各社が取り上げるような記事になったのかもしれないが、日ハムは0点だった。
おそらくビッグボスのパフォーマンスも話題とならないさみしい試合だったのかもしれない。せっかく検索したニュースだから読んでみたが、華となるようなプレーは無かったが、両チームの現在の状態を示す典型的な試合運びだったようだ。
三回早川は1-0の守りの段階で走者2,3塁のピンチを招いた。しかし、難なくWプレーとしたらしい。日ハムはそれなりに攻撃していたようだが、貧打4本で3点を取った楽天が3-0で勝った、とあるから、日ハムの問題が見えてくる。
野球という競技はサッカーと異なり、チームプレーの要素が少ないように見えるが、バッターボックスでどのような覚悟をしなければいけないのかという点で、サッカーよりも選手一人ひとりが厳しい試練に立たされるスポーツである。
そこでチームのことを考えて1本打てるかどうかがチームの強さを決める。イチローがアメリカで注目され成功したのはこの点である。大リーグの野球は大谷が話題となっているようにホームランを打つ選手が注目される。
しかし、イチローがアメリカで見せた野球は、チャンスでチームに貢献するヒットだった。個人の力量が注目されやすい野球だが、一人ひとりの覚悟のベクトルとその強さを最大限にするマネジメントが勝敗を左右するゲームである。高度経済成長期に野球がもてはやされた理由の一つがこれである。
今どちらかと言えばサッカーがマネジメントの模範とされたりするが、強い企業となるためには野球で勝てるようなマネジメントが重要となってくる。ただし、その時に昔の星一徹のようなパワハラは厳禁と時代が変化したことを忘れてはいけない。
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