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2022.03/20 遺された声

朝寝坊をして6時に目が覚めた。支度を整えて本欄を書こうとしたら、NHKで表題の番組を放送していた。1972年2月にグアムから帰還した横井庄一氏の話である。


彼が雑誌社に頼まれて一人テープに吹き込んだ声を中心に番組が構成されていたが、当方の文章では表現できないほどの壮絶な体験がそこに記されていた。そして彼が語り部としての使命感だけで生き延びていたこともそのテープから理解できた。


まだ二十歳前の当方にとって横井庄一氏の帰国シーンは衝撃的だった。当方だけでなく日本全国が彼の帰国に沸いた。彼のグアム生活の展示会では長蛇の列ができたことからも、その関心の高さを理解できる。


帰国してから彼はその体験を語り始めたが、ある日突然語るのを辞めてしまった。これは今の時代でも想像できるように、彼の語った内容に対する批判からである。


この放送で紹介されたテープは公開しない条件で録音されたものであるが、一人の人間がジャングルで戦争が終わっても苦労して生きてきた体験談は、戦争というものを知ることだけでなく、人が生きるとは何かを知る意味でも重要である。


記録を見る限り、彼と小野田氏以外戦後のジャングルで壮絶な人生を生きた人はいないのである。彼らの人生を学ぶ意味は、まさに「戦争」と「命」を学ぶことかもしれない。


敗戦が濃厚ならば投降すればよい、あるいは兵士でなければ逃げ出せばよい、という意見が今起きているロシアとウクライナの戦争において安易に語る人がいるが、彼の声を聴くとそれでは命をつなげない甘い意見であると理解できる。


ひとたび戦争状態になれば人道など保証されないのだ。それだけではなく、グアムでは部下を見捨てて戦争が終わっていないのに投降した上官の話などが彼の語りから飛び出した。

カテゴリー : 一般

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2022.03/19 成形体の均一性(2)

高分子材料の成形体を製造するときにペレット状のコンパウンドが用いられる場合が多い。この時ペレット一粒一粒の組成が均一であっても成形体で品質故障が現れることがある。


射出成形体では目立たないが、押出成形やインフレーション成形で発生する。そこで故障部位をケミカル分析してみると組成が均一なので分析結果に現れず、原因不明となる。


ところが故障部位のレオロジーを測定してやると故障部位が他の部分と異なる特性であることを発見できる。


あるいは、結晶性樹脂ならば故障部位の結晶化度を測定することにより他の部位との差異を見出せるかもしれない。


このように組成が均一な原料を用いても、成形体を製造するときに原料を一度溶融させる必要があるので溶融が不均一だったと思われる品質故障が発生する。


溶融の不均一性であれば、成形時にダイに至るまでのシリンダーの中を均一にする努力をすれば解消できる、と考えて努力すると、努力が報われて、品質故障の発生頻度が下がる。


しかし、発生頻度が下がってもなかなかゼロにできない。このじれったさは、実際に経験してみないと分からない。


成膜されたPETフィルムを体育館に広げて15名ほどの研究者で品質故障部位をマジックで印をつけてみた。ゼロにできたと思ってもどこかに数10個は品質故障部位が見つかっただけでなく、ラインの検出器をすり抜けた部分も存在した。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.03/18 成形体の均一性(1)

高分子材料の成形体を大別すると、射出成形に代表される材料へ圧力をかけて金型に押し出して注入し、さらに圧力をかけて固めて製造された成形体とフィルムのように金型から押出し、高い圧力をかけることなく成形された成形体に分かれる。


PETボトルはブロー成型と呼ばれる方法で、材料を膨らませて金型に押し付けるように成形して製造されるので、成形時に圧力がかかる成形法である。


すなわち、高分子材料の成形体には、押し出されて製造されただけの成形体と高い圧力がかけられて成形された成形体とがある。


押出成形でも一方向に延伸したり、縦と横に延伸(二軸延伸)されたり、して応力がかけられるので成形時に何らかの力が材料にかかっており、まったく材料に力をかけずに一定の形状で製造された成形体は無い。


このように高分子材料の成形体では、大なり小なり応力がかけられて成形されるので、その応力分布を均一にできない限り、どこかに歪が残る。


このような成形時の応力分布の不均一性以外に組成の不均一性が高分子材料の成形体には存在する。ゆえに品質管理技術が重要となるが、研究開発段階でこれを忘れている企業が多いのではないか。故田口玄一先生は、川下における品質のロバスト確保のために研究開発段階からタグチメソッドの使用を勧めていた。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.03/17 混練技術の難しさ

高分子の混練技術の難しさは、混練されたコンパウンドがどのような状態になれば完成したと言えるのか不明確だからである。そして不明確であることを理解していない技術者が多いのも問題である。


高性能加硫ゴムの混練では、バンバリーとロールが未だに用いられているが、この理由を理解している技術者も少ない。


そもそも二軸混練機があれば高分子の混練ができると安直に考えている人が多い。顔料の分散程度ならば、一軸混練機でもなんとかなるが、高性能のコンパウンドを混練したいならば、プロセシングの設計から始めなければいけない。


この時、そもそもプロセシングの設計とは何ぞや、と質問していては駄目である。ゴールである成形体の高次構造設計から始まり、それを実現するためのプロセスを設計することなのだが、このやり方は科学的に一つと決まっていない。


恐らく技術者の数だけその方法はあるのだろう。問題はそれが分からない、あるいは意識していない技術者が多いことだ。15年以上前にPPS無端半導体ベルトを担当した時に頭ごなしに当方の見解を否定されたことがある。


科学的に何が正しい、と一義に決められない分野では、他の技術者の見解を大切にするのが正しい技術者の姿勢である、という理由で、その方は技術者ではなかった可能性が高い。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.03/16 日本は大丈夫か

今回のロシアとウクライナとの戦争がいつ終結するかわからないが、台湾有事の問題だけでなく、日本が中国とロシアに攻められたら、という意見が目立つようになってきた。


ウクライナのケースと異なるから、それは考えなくても良い、という意見もあるが、説得力が乏しい。まだ、ウクライナで戦争が継続されていることに納得できないからだ。


そもそもウクライナの戦争は、プーチン大統領のNATOに対する脅威から始まっている、と言われている。そして戦争が始まる前から、ロシアのウクライナ侵攻がささやかれて、それが現実となった。


連日放送される戦場の様子を見る限り、ロシアが仮にこの戦争に一時的に勝たとしってもクリミア併合のようにはうまく進まないように思われる。なぜなら国民の大半が高い士気を持った状態では占領政策がうまくゆかないことは過去の歴史から自明である。


それよりも、ロシアが勝った状態を連日のニュースから想像できない点も心配だ。ロシアの国営放送では戦争反対の映像が流され、主犯の女性は罰金刑となった。もうすぐロシア国内で何らかの変化が起きるのかもしれない。


さて、多くの期待通りに、日本においてウクライナのような他国による侵略の心配はないと思いたいが、北方領土以外にもすでに他国の侵略を受けている。竹島は未だに韓国に占領されたままだし、尖閣諸島も風前の灯火状態だ。


沖縄に米軍基地があっても北方領土や竹島問題に米国は何もしてくれない。これで尖閣諸島も中国に占領されたなら、さすがに危険だと思わなければいけないが、橋下氏のようにそうなったら逃げ出せばよい、などという考え方では国家や民族は成り立たない。


もっとも震災同様に自分の命を守ることがまず大切、という自己責任論を理解できないわけではないが、そのような視点に立ったときに国家や民族をどのように次の世代に説明してゆけばよいのか。ちなみに世界史の視点で眺めたときに日本民族のように永く国家を維持している民族の例は少ない。

カテゴリー : 一般

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2022.03/15 今月セミナーご案内

各セミナー会社からご案内が出ておりますが、弊社へお問い合わせいただけますと特典がござます。弊社へ詳細をお問い合わせください。


1.高分子の環境問題の関するWEBセミナー

(1)タイトル:カーボンニュートラルに対応するためのプラスチックとゴムの環境問題とその解決策

(2)日時:3月25日10時30分ー16時30分

*R&D支援センター主催、講師1名のセミナーです。



2.高分子の混練に関するWEBセミナー

(1)タイトル:プラスチック、フィルム分野における「伸長流動」に対する考え方とその応用

(2)日時:3月30日10時30分ー16時30分

*技術情報協会主催、講師3名のセミナーです。

カテゴリー : 一般 学会講習会情報

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2022.03/14 e-Power

表題は日産自動車で開発されたハイブリッド機構の商標だが、トヨタ自動車のようなエンジンとモーターを協調動作させる複雑な機構ではなく、単純にエンジンを発電機として使い、動力はモーターだけで走る車である。


20世紀に、エンジンで発電し、その電力を使ってモーターで走行する車はエネルギー効率が悪いという理由で、トヨタ自動車のようなハイブリッド車が開発された。


これはエネルギー保存則を考慮すると正しく、e-Powerは、科学的な視点から燃費の観点で不利な仕組みとなる。しかし、自動車が等速で走る時の現象の説明としては正しいのだが、自動車はいつも等速で走っているわけではなく、時には赤信号で停車する。


その時ブレーキを踏む代わりに、発電する負荷を利用してスピードダウンし停車する技術が開発された。すなわちエネルギー回生システムである。さらに、内燃機関を発電機として利用するときには、エネルギー効率の高いところだけで運転できる。


これらの技術を合わせると、トヨタのような複雑なハイブリッド形式ではなく、単純な機構のe-Powerでも遜色のない燃費となる。


実は、1か月ほど前に日産自動車オーラ4駆を購入してその燃費の良さに驚いている。今までジューク4駆に乗っていたのだが、ターボ車だったために1lあたり10kmを切る燃費だった。


ところがオーラをスポーツモードで乗っていても15km以上の燃費で、遠出をすれば20kmまで伸びる。少なくとも1.5倍以上の燃費で加速感、特に発進時はターボ車よりも刺激的である。しかも静かだ。


科学的に考えると実用化アイデアとして20世紀に否定された技術だが、e-Powerは、100%電気自動車としての味わいもあり、自動車用動力として面白い仕組みである。燃料をバイオディーゼルあるいは水素とすればそのまま環境対応動力となる将来性を感じさせる技術だ。

カテゴリー : 一般

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2022.03/13 ウクライナ事変

ロシアによるウクライナ侵攻から16日が経過した。連日各放送局のニュースで状況が報じられており、プーチン大統領の暴走という見方が形成されつつある。さらにロシアからウクライナにおける米国が関わった細菌兵器の話が飛び出した。


戦争では昔から誤った情報で敵を攪乱する戦法が使われてきた。日本の戦国時代にも情報戦の記録があり、さらに「勝者により歴史は作られる」という名言があるように、戦争における真実はその後の学者による研究成果を待たなければいけない。


今確かなことは、ウクライナへのロシアの侵攻という事実とそれに対して国連に加盟する140ヵ国以上がロシア側の非を認め、その一部の国にによる経済制裁が厳しくなってきたことだけだろう。


TVやネットに映し出される戦闘シーンも真実かもしれないが、どのような視点で撮影されているのか明確でなければ、映像からの安直な判断は危ないのかもしれない。これだけ情報が公開されている戦争は初めてだ。


ただ国際世論において戦争を決断することそのことが悪いという見解が多いのは21世紀の光明だろう。そしてそのような国際世論があるにもかかわらず、ロシア人の大半が、ロシアの仕掛けた戦争を容認していることが不気味である。


あのプルシェンコのツイッター発言がいろいろとり沙汰されたりしているが、おそらくロシア人の多くがプーチン氏を支持しているらしいことは、16日間のデモ参加人数から真実かもしれない。


ここからは当方の推定になるが、この戦争はロシア人の大半が戦争反対という見解にならない限り終わらないのではないか、という懸念である。


攻め込まれているウクライナがどのような形で勝利するのか見えてこないが、ロシア国内で国民総意による戦争反対運動が起きない限り終わらないと仮定した場合に、戦争状態が長引く可能性があり、世界経済へ与える影響は大きい。


興味深いのは、ロシア寄りの中国が控えめの見解を述べている点である。ロシア支持を表明しているが積極的にこの戦争支持の見解を示していない。


中国とウクライナとの現代版シルクロード関係を指摘する意見があるが、それよりも国際世論への配慮が大きいように思われる。ロシアと同じ穴の貉に見られるのを避けているようにも感じられる。


ただ、ウクライナが追い詰められてゆく状況でも、欧米各国が第三次世界大戦だけは避けたいという思いが伝わってくるのは、救いである。

カテゴリー : 一般

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2022.03/12 ゴム屋と樹脂屋(6)

ゴム屋が一番びっくりするのは、樹脂屋のコンパウンドに対する考え方である。一言で表現すれば極めておおざっぱなのだ。ゴム屋は成形体の目標機能を実現できなければコンパウンド技術が未完成と捉えている。


しかし、樹脂屋はコンパウンドの分散混合さえ実現されておれば、それでコンパウンドの完成として満足している。それもペレット1個のほんの一部分の領域における分散状態で判断している。


押出成形でボツがあっても、押出機のフィルターワークが悪いからだという。その結果、小生が前任者から半導体無端ベルトの押出成形を引き継いだ時に押出機には、立派なフィルターがついていた。


前任者は、これはノウハウだから社外秘だという。恐らく完璧と思われるフィルターと思われたが、それでも正体不明のボツが発生していた。PETフィルム成膜で発生する目玉故障に近いボツだった。


原因が不明だが、コンパウンドが怪しい、と当方は疑っている。もう少し明確な事例として、半導体無端ベルトの周方向における抵抗ばらつきがある。


これは、パーコレーション転移のばらつきのために現れるので、コンパウンド段階でパーコレーション転移を制御し、安定化しておかない限り解決ができない問題である。


しかし、このような視点を素人だというのが樹脂屋である。組成で機能が決まる、などという間違った考え方をしている。高分子材料では、高次構造で機能が決まるので、コンパウンド段階で十分に高次構造を造りこんでおくのがゴム屋の作法であり思想である。


この辺りは、議論をしてもゴム屋と樹脂屋では議論が平行線となる。成形技術者は、コンパウンダーとしてどちらにコンパウンドの設計を依頼しますか?ゴム屋でも樹脂のコンパウンドを製造できます。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.03/11 割れた殺生石

「九尾の狐(きつね)伝説」で知られる栃木県那須町湯本の国指定名勝「殺生石」が真っ二つに割れたことが分かったそうだ。先日5日のニュースでこれを知ったが、本欄で取り上げる問題ではないと思っていた。


しかし、TVニュースでも昨日扱われ、無視できない話であることを知った。この石の伝説についてはネット記事を読んでいただきたいが、割れた石の写真を見て、この話題をセミナーで使おうと考えた。


すなわち、石の破断面を見ると長年にわたりヒビが大きく成長し、今回自然に割れたということがよくわかる、フラクトグラフィーの題材になる、と思った。


すなわち、破断面には最初からひび割れていたところから次第にそこが大きく成長したと思われる汚れがきれいに残っているのだ。ニュースに掲載された写真でもそれがわかる。


ゆえにこの石の破壊は、九尾の狐が、復活しようとして暴れて割れたわけではないのだ。割れるべくして割れたのである。


実はN社のF100というハイアマチュア写真家に人気のあったフィルムカメラの裏蓋フックが防湿庫に保管中壊れた。その破壊機構は典型的なクリープ破壊であり、格好のセミナー題材となっている。


しかし、これは当方の体験談であり、もう少し一般的な話でフラクトグラフィーに使えないか題材を探していた。今回殺生石の割れた写真が何枚かネットで公開されていたので今後セミナーでこの話題も紹介してゆこうと考えた次第。

カテゴリー : 未分類

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