先週からPCR検査を増やせコールが盛んになり、今週にはノーベル賞学者からもPCR検査を徹底して行えとのメッセージが出された。
以前この欄では、PCR検査の信頼性などの問題から重症患者を見つけ出すために対象を絞っているのではないかと書いた。昨日感染症に関する二つの学会からPCR検査について次のような見解が出された。
「検査対象を改めて「入院治療の必要な肺炎患者で、ウイルス性肺炎を強く疑う症例」と規定。同時に「軽症患者」に対しては、現状の帰国者・接触者相談センターを介した検査体制の中では「基本的にPCR検査を推奨しない」と明記した。」
以上は昨日の時事通信社の記事をコピペしたものだが、感染症の専門家はやはり今でもPCR検査をやたら行うことに反対のようである。
理由は、重症患者を救いコロナウィルスによる死亡者を少なくすることが重要なゴールであり、そのために軽症の感染者まで入院させていては医療崩壊の危険があることを危惧している。
一方PCR検査を増やすことを主張している人の言い分は、感染者を早く見つけて隔離することに着眼している。すなわち解こうとしている問題が異なるために異なる答えが得られている状態だ。
今回のコロナ問題で最も重要なのは、やはり感染症学会が解こうとしている問題「いかにして医療崩壊を防ぎ、重篤な患者を早期に見つけて治療し、死亡者を減らしたらよいか。」だろう。
一方、「感染拡大を防ぎ、早期に感染者のピークを終わらせるには」という問題の解答は、「PCR検査数を増やして感染者を早期に見つける」ことも正しいのかもしれないが、もう一つ「行動変容」という解答があることを忘れてはいけない。
また、軽症の感染者の中にはそのまま完治して陰性になる感染者もいることを忘れてはいけない。コロナ感染の騒動では、正しい問題を考える、とはどのようなことかを学ぶチャンスである。
ドラッカーは、名言「正しくない問題の正しい答えとはいかなるものか」とか、「頭のいい人ほど成果を出せない。それは、すぐに問題を解き始め、正しい問題を探そうとしないからだ。」と、正しい問題を探すことの重要性を指摘している。
その時に二律背反となる問題が二つある場合には、科学的に解くことができなくなる。その時には人間の自然な営みの中で最良の選択をして正解を求めることになる。必ずしも論理ではないのだ。倫理も考えなければいけない。
すなわち、死亡者を少しでも少なくする、という解答を正しくないと否定する人はいないと思う。
(注)企業の開発を担当している人の中には、担当していない人たちがそれぞれの立場で、意見を述べられることに辟易されている人が多いのではないか。姑、小姑のから騒ぎ、と表現される方もおられる。その時一度立ち止まり、自分が解こうとしている問題と、周囲の人たちのアドバイスが出てくる背景となっている問題を考えてみるとよい。もし、これが一致していたなら、次に自分の考えが正しいかどうか謙虚に考え直す作業が必要である。大抵は、自分が解こうとしている問題と周囲が考えている問題が一致していない場合が多い。なぜこのような場合が多くなるのかというと、開発対象を見る視点が違うからである。ドラッカーは、「異なる見解は、異なる問題から生まれている」と表現している。ゆえに姑や小姑がうるさいようであれば、自分が考えている問題について、彼らに丁寧に説明する作業が必要になる。
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コロナ対策は、都市封鎖など経済にダメージを与えるような手段を取らないように試行錯誤しながら進めている、とNHKの特番で語られていたが、20世紀には科学こそ命のような狂信的な科学者ばかりでこのような言葉を科学者から聞いたことが無かった。
21世紀になり、科学が成熟し、ようやく科学の方法に対する見直しを行うような動きが出てきた。マテリアルインフォマティクスもそのようなムーブメントの一つだ。
ところで、高純度SiCの前駆体を合成するときに、フェノール樹脂とポリエチルシリケートとのリアクティブブレンドを行う。
このリアクティブブレンドで問題となるのが、非相溶系を均一にどのように混合するのか、という点である。
有機高分子と無機高分子のブレンドであり、フローリー・ハギンズ理論のχは、反応の温度領域で1以上になる。フェノール樹脂の最大耐熱温度450℃までポリエチルシリケートが安定と仮定しOCTAでΧの温度依存性シミュレーションを行っても1より下がらない。
実際に液状のフェノール樹脂とポリエチルシリケートとをスタティックミキサーでブレンドしても組成比がばらついた不均一な液状物が出てくるだけだ。
剪断力によるブレンドでは粘度比が1を越えるとキャピラリー数が増大化し、微細で均一なブレンドが困難なことが知られている。
混練に関する教科書にはこのグラフが載っている有名な形式知であるが、2000年に推進されたNEDO高分子精密制御プロジェクトの成果によると、1000回転以上の高速剪断攪拌を行うとナノオーダーまで微細化されるという結果が示された。
生産用の二軸混練機ではこのような高速剪断攪拌が不可能なので、混練の教科書を書き直す必要はなさそうだが、科学の形式知とはこのような側面があることを学ぶ必要がある。
すなわち、従来の科学の形式知は、「できた」事実によりひっくり返るリスクが存在し、否定証明だけが唯一の完璧な科学の結論を導き出す方法だというイムレラカトシュの言葉を思い出すとよい。完璧な否定証明による科学の結論でも「できた」事実には否定されるのだ。
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新型コロナウィルスの問題が解決するためには、ワクチンが完成するか、あるいは70%の人類が感染して集団免疫を獲得するか、という二通りしかないと科学的にわかっているらしい。
もしワクチンが今あるならば、感染していない人にワクチンを接種すればよい。ところが開発中なので、年寄りはひたすら感染しないように努力しなければいけないけれど、あの「不倫は文化だ」と言った石田氏が感染したとのニュースが流れた。
少なくとも重症化して死亡する人を最小限とする行動が求められているにも関わらず、沖縄へ行ったそうだ。奥さんは若くても石田氏は老人だ。彼については仕事をキャンセルするのが正しい判断である。
当方は本日から出張業務を5月10日まで受け付けないことにした。長い休暇となるが、メールだけは対応している。また、活動報告も休日ではあるがこれまで通り書き続ける。
当方は石田氏と同年代であり、コロナに感染した時に死亡リスクが高い。ゆえに5月10日まで出張業務をすべて停止、事実上休暇とした。正解かどうかは知らないが、正しい判断と思っている。
行動変容によるウィルス対策が日本で取られているのだが、これがいつまで続くのかは、ワクチンができるまで、あるいは集団免疫を獲得するまでとなる。
しかし、人類の経済活動を考えたときに、この解答だけでは不十分である。人間の命がまず大切、というのは誰でもわかっているが、経済活動を壊さないようにしてウィルスに立ち向かう方法と問題解決までの期間が明確になってとりあえずの正解となる。
働き方改革が数年前から叫ばれているが、今回の騒動で一気に進むかもしれない。すなわち生産活動も含めた経済活動を1年間止めることは考えられないからだ。
ただし、少しでも経済活動を進めようとするならば、感染しない働き方を工夫しなければいけないので、働き方の工夫も考えなければいけない。
ああだ、こうだと考えていると、なかなか正解が見えてこない。これが今の正直な気持ちではないだろうか。
このような問題では、それぞれのケースについて正しい問題をまず設定しなければ、正解など見つからない。
換言すれば、それぞれの事業なり仕事について短期と長期に分けて考えて問題設定し、答えをそれぞれが出してゆかない限り、問題解決できない。
ワイドショーでは政府の問題を取り上げているが、政府の対策が実効化されるのは、これまでの経験から早くても3ケ月後である。
政府の対策に頼る前に、まず自分たちで対策しなければいけない問題を設定し解決するのが、今求められている。
二番目は政府の対策に頼れる場合がくるかもしれないが、少なくとも6月まで行動変容し事業継続できるように対策することはそれぞれの責任であるのが日本の現状だ。マスクさえ、まだ届いていない。
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京都産業大学の女子学生が、新型コロナウィルの猛威著しいヨーロッパへ旅行し、ウィルスに感染して帰国した。そして彼女たちの故郷にそれをまき散らしたことがネットで2週間以上話題になっている。
卒業式を中止するような事態になっているのにヨーロッパ旅行に行った女子大生の感覚あるいは価値観にはびっくりするが、ニュースによれば発熱しても3密パーティーに参加していたというから、少し異常にも思われる。
さらに彼女たちの一人は、卒業後教員になるらしいが、このような先生に指導される生徒たちのことを思うと十分に今回のことを彼女たちが反省していることを期待したい。
ところが、入院先の病院からは彼女たちの素行の悪さがネットに漏れており、それに尾ひれがつけられて拡散されている。
積極的にリスクを選択しウィルスに感染しただけでなく、感染しているかもしれないことが分かっていても3密に飛び込んでゆく感覚や価値観に驚いている人が多いのでこのような拡散が続いているのだろう。
一方で京大や慶応大の研修医が打ち上げパーティーを行い、慶応大学医学部では18人の感染を公表し、京大では自宅謹慎が命じられた。
慶応大医学部研修医に関しては、パーティーにおける破廉恥な写真まで週刊誌に公開された。
ところが意外にもこちらの異常さはネットであまり話題になっていない。
京都産業大女子大生については、彼女たちがまき散らしたウィルスに感染した人で死者が出たためと思われるが、週刊誌の報道を見る限り、社会への影響度は京大や慶応大の研修医の事件の方が大きいように思う。
新型コロナウィルスの世界的流行で、世界中で起きている異常な行動がネットで多数報じられている。
それらと比較すると女子大生や研修医の行動が些細なことに見えてくる。歴史に残るであろう今回のウィルスの猛威で、どこまで冷静にかつ賢明に行動できるかは、人類の進化を知る一つのバロメーターだろう。
ところで、明日から5月6日まで弊社は原則お休みとさせていただきます。但し、この活動報告は、社長が引退するまで毎日書き続けます。
弊社のお休み中はメールの問い合わせには応じていますが、出張は致しませんのでご了承ください。5月7日以降につきましては、本日との比較で決めさせていただきますが、出張は10日以降とさせていただきます。
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新型コロナウィルスの猛威が世界中でおさまらない。中国ではすでに収束化し、武漢の都市封鎖が解除されたというが、現地も含め信じている人が少ない。
さて、ウィルスに対して科学的な対応は、人類がそのウィルスに対して免疫を獲得することだと言われている。
さらに、全員が獲得する必要が無く、免疫者の無限クラスターができる約7割の人類が獲得すればよいことが研究により示されている。
またこの研究については、他のウィルスで実証されており、真理として定着しているという。
この科学の真理に従えば、皆が感染するような行動が求められるが、ウィルスに感染すると一定数の割合で死者が出たり、重篤な肺炎を引き起こすということで、感染しないほうが良い。
免疫を獲得するためには、ウィルスに感染する必要があるが、ウィルスに感染すると病気になったり死んだりする可能性があるので、感染しないほうが良い、このような矛盾した事象の対立を二律背反と言う。
人類は、これまで科学の真理と二律背反となる事象に対して、技術を開発して対応してきた。ただし、科学で解明されていない問題でも、技術が生まれている事実に気がつく必要がある。
例えば、ウィルスの流行に対する二律背反を解決するためにワクチンを開発しているが、これは唯一の方法ではない。
ワクチンを科学の成果と思われている人がいるかもしれないが、これは二律背反を解決するための一つの技術成果である。技術成果だから、本当に効果があるかどうか慎重に科学的審判を下せるように実験を行う必要がある。
科学の成果は、ワクチンにより免疫が獲得されるメカニズムを明らかにしたことである。
ゆえに、ワクチンが効果的と分かっても、科学の真理を導き出すようにすぐに開発できず、時間がかかる。
ウィルスの代わりに、流行しているウィルスに対応可能な免疫を獲得できるようなワクチンを開発するにはどうしても試行錯誤的になるのだ。
すなわち、新型コロナウィルスに対抗できるワクチンを作るためにある期間の技術開発が必要になる。
ところで、ウィルスに人類が対抗する方法はワクチンしかないように思われているが、今回の新型コロナウィルスでは不思議なことに、感染しても重症化しない人が一定数、しかも7割以上いることが分かってきた。
やや荒っぽい方法になるが、この機能に着目すると、感染して重症化する人を選別して隔離し治療を行うが、感染して重症化しない人を放置して無限クラスターを形成する対策がある。
これをうまく行うには、感染している人を見つけようと積極的に感染しているかどうかの検査をしないで、発熱して重症化しそうな人だけを探し出して検査すればよいのだ。
ところが一定数の重症化する人が集中的に現れると医療崩壊を起こすので、満遍なく救済するにはどうしたら良いのか。
これはドッジボールと同じで、可能な限り人類がウィルスから逃げ回ればよい。うまく逃げ回る方法の一つが、今回の場合は壇蜜ならぬ3密なのだろう。
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退職前中間転写ベルトと呼ばれる複写機用機能部品の生産技術を担当した。製品化まであと半年という状況で歩留まりがとんでもなく低い状態だった。
コンパウンドは外部の一流メーカーから購入しているのであとは押出成形技術の完成だけ、というのが前任者から当初説明されていた内容だった。
(簡単な仕事であれば前任者は最後まで担当していただろう。頭のいい前任者は失敗が見えてきたので窓際にいた当方に依頼してきたことは十分にわかっていた。しかし、どのような優秀な技術者でも成功するには時間が少なく、成功できるとしたら写真会社には当方しかいないことを前任者は知っていた。)。
しかし、PPS/6ナイロン/カーボンという配合において6ナイロンをPPSに相溶させて単相としなければ解決できない問題、と現場を観察していて気がついた。
これは直感ではなく、日本化学工業協会から技術特別賞を頂いたパーコレーションのシミュレーションの経験知のおかげである。
しかし、PPSと6ナイロンを相溶させる、という現象はフローリー・ハギンズ理論から否定される。すなわち科学で否定される現象を技術で成功させない限り、事業の成功はない状況と理解した。
ただし、科学で否定されるので、国内一流メーカーの技術者からは馬鹿にされて当方のコンパウンド改良提案など却下されただけでなく、部下の課長からも事務所で仕事をしていてください、と優しく言われる始末だった。
すぐに上司のセンター長にこのままでは必ず開発に失敗します、と申し出た。すると、センター長は失敗しないためにはどうすればよい、と聞かれたので、コンパウンドを当方が作る以外にない、と応えている。
横で聞いていた、気楽な前任者は、生産まじかなのでQMS上それはできないよ、と余計なことを言ってきたので、それでは子会社でラインを立ち上げ、外部からコンパウンドを購入するシナリオで開発しましょう,と提案している。
センター長はすぐに、いくら必要か、と聞かれたので2億円の見積書を出したら、8000万円でできないか、と言われた。
できる見通しは立っていなかったが、すぐに中古機を集めればできると思います、と応えて、その日に行動をはじめ、3か月後、センター長から決済がおりるや否や1か月後には子会社の敷地の隅にラインが出来あがっていた。
その混練ラインから、PPSと6ナイロンが相溶したコンパウンドが生産されたのだが、この成功までに周囲の誰も業務の実態を知らなかった。また当方も進捗の詳細よりも社内のQMSに反しないように根回しを行っていた。
科学で説明できない現象の仕事であり、その進め方も試行錯誤となり到底周囲から賛同される内容ではなかった。
ただ、部下の課長が、外部から供給されるコンパウンドとして、一流メーカーのコンパウンドと同等に厳しい評価をしてくれたおかげで、歩留まり100%の技術が出来上がった。
科学で説明できない内容について周囲に理解を求めるのは極めて難しい。しかし、ラインが立ち上がれば皆信じてくれるのである。この技術の成功要因は、当方が走り始めたときに周囲から批判がでなかったことである。
高純度SiCの事業開発で経験(注)しているが、このような場合にとかく周囲は小姑の如くどうでもよいことまで上げ足とりをするような発言をするものである。それが分かっていたので、ラインが立ち上がるまで黙々と仕事を3か月行った。
ところが、この仕事では、量産まじかで基盤技術も何もない新技術を導入するという禁じ手を使っていた。これは承知のことであったが、そうしなければ成功しなかった仕事である。
ゆえにQMS上問題が起きないように外部からコンパウンドを購入するという開発シナリオに沿って子会社でラインを立ち上げている。
(注)半導体治工具のJV(ゴム会社と住友金属工業との契約による事業)を立ち上げるまでの5年間研究所内では批判の声が多かった。JV立ち上げ後は静かになったと思ったら信じられない事件が起き、そして当方は転職している。企業内で新しいことをする、という時にはいつでも「覚悟」が必要であり、その覚悟に対して組織はどこまで共感してくれるのか、が重要である(当方はJVを開発スタート時のシナリオ通りに別会社として起業する予定でいた。)。
カオス混合ラインの立ち上げでは、半信半疑の部下の課長も含め、豊川にいるメンバー皆の成功を祈っている気持ちが業務中に伝わってきた。ゆえに業務に集中でき短期間で成功させることができた。アイデアとか仕事のスキルは個人に依存するが、事業の成否は組織のパワーなり風土なりがどのようなものであるかが影響する。これを理解していない経営者なり管理者は弊社にご相談ください。また、財務省の問題では自殺者が出たり、過去にも組織風土の問題で自殺が後を絶たないが、死ぬ勇気があるならば、転職すべきである。これは、問題から逃げるのではなく、問題解決のためである。自殺による解決はさらに別の問題を引き起こす。また、生きておればおもしろい光景を見ることができる。ゴム会社から写真会社へ転職した時には送別会の雰囲気など無かったが、数日後某カントリークラブで1泊2日のゴルフ送別会が開かれ記念品としてゴルフバックを頂いた。これは意外だった。写真会社の退職送別会は2011年3月11日だったので吹き飛んだが、退職後元の職場のメンバーによる焼き肉屋パーティーが開かれている。組織で働く、とは、そこに人の交流があり、人間らしい無形の財産が必ず蓄積される。死んでしまったら永遠に無形のまま(遺族が裁判で有形にするという方法もあるが、これは不幸の連鎖である)だが、生きておれば何らかの形でその財産を見ることができる。
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東京大学本田教授により表題の言葉が提唱されてから10年以上になる。当方は提唱者の発言などを聞き、労働の対価に対し彼女は偏った見方をしていると感じている。
彼女は、労働の対価について金銭ですべて計測できるような価値観を持たれているようだ。確かに労働者は、労働を提供しその対価として賃金を支払われる立場ではあるが。
しかし、組織で働く現代のサラリーマンには、賃金以外の価値を組織から、あるいは社会から支払われている。あるいは、賃金以上の価値を組織なり社会から獲得できるように働かなければならない。
知識労働者には、見えない労働対価と言うものが存在する。このあたりについてドラッカーは明確に述べていないが、ドラッカーの著書を読みそれを実践した立場から、行間にはそれが書かれていた、と思っている。
当方の体験でいえば、セラミックスから高分子までの実践的知識の大半はゴム会社における業務遂行で獲得した。
また、開発をやってから研究するスタイルや、アジャイル開発、マテリアルインフォマティクスなど研究開発に関わるマネジメントスキルまでもゴム会社で学んだ。
写真会社ではゴム会社で学んだ知識を実践しただけだが、酸化スズゾルの帯電防止層では、日本化学工業協会から技術特別賞を、ゾルをミセルに用いたラテックス重合技術では写真学会から賞を頂いている。
その他にPETの表面処理技術や、接着技術、中間転写ベルトのコンパウンド技術などはゴム会社における技術者経験が無ければ成果を出せなかった、と思っている。
ゴム会社では、当方の労働時間から見たときに十分な対価を頂いていないだけでなく、高純度SiCの事業化に際し出願された特許の対価はじめ成果に対する評価さえも十分に頂いていない。
しかし、写真会社に転職したときにゴム会社で獲得した知識の数々を強みとして写真会社で成果を出し、利益に大きく貢献している。
ゴム会社の人事部長や役員の方々は、当方のモラールを上げるように接していた、と捉えれば、本田教授の言われるところのやりがい詐欺氏となるのだが、さらにFD事件を思う時それ以上のひどい悪人となってしまう。
しかし、当方の知識獲得に対して学位取得も含め全面的に支援をしてくれた恩人もいた。
このような感覚を本田教授はどのように説明されるだろうか?また、成果に対する十分な対価を支払っていない点に関しては、ゴム会社だけでなく写真会社も同様である。
この状態を本田教授の考え方では納得できる説明ができず、経営者がただ悪い、ということになる。
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ある老夫婦で起きた新型コロナウィルス感染による配偶者との別れをNHK-TVで放映していた。当方はその老夫婦と年齢は離れていても思わず涙が出てきた。
今、人生を改めて考えるのによい機会かもしれない。特に人生において労働期間は重要である。しかし、必ずしもその期間に皆が幸福であるとは限らないのはニュースで自殺者を報じている現実が示している。
コロナ禍はおそらく地球上の人類史に残る事件だろうけれども、今労働者として最も脂ののった年齢の方々にとっては、大変不幸な出来事だろう。
あるいは、老後を楽しもうとしていたところコロナウィルスで命が奪われるといった不幸を思う時、せめて働いていた時には最も幸せであった、と思える様な人生は一つの理想に思えてくる。
人生の幸福に対する考え方は人様々であるが、労働期間を幸福に過ごすことができる方法があったら知りたい、と内心思われている方は多いのではないか。
当方はゴム会社に入社し、新入社員研修を経て研究所に配属され、社長方針に則り高純度SiCの事業化を推進した。
しかし、住友金属工業とのJVが立ち上がったところで、FDを壊される妨害を受けた。その事件を隠蔽化する研究所の方針に納得がゆかず転職している。
この転職については、高校時代から読み続けてきたドラッカーの哲学に従ったわけであるが、FD事件はトラウマとして今でも残っている。
それにもかかわらず、高純度SiCの事業を基盤技術0のゴム会社で立ち上げた経験や、当時の役員の方々との交流の思い出は幸せな思い出として残っている。
高純度SiCの事業は30年ゴム会社で続き、今は愛知県の企業に事業譲渡されたが、自己の強みで新事業を生み出した満足感は、たとえそれが報われていなくてもドラッカーが述べるところの貢献による人生の幸福につながっている。
FD事件を起こした犯人やそれを隠蔽化しようとしたI本部長はどのように考えておられるのかヒアリングをしたい気持ちも少しはあるが、退職後彼らの悪い評判を聞くと今更会いたいと思う気持ちも失せる。
人の数だけ人生模様はあるが、他人を不幸にしてまでも手に入れた幸福は本当の幸福かどうか。
霞を食べて生きてゆけないけれど、日本ではセーフティーネットがそれなりに存在するので、強みを磨きそれで社会に貢献して生きた人生は一つの幸福の姿かもしれない。ゆえにスーパーボランティアが話題になったりするのだろう。
死は誰にでも訪れるが、死ぬ時の幸不幸は神のみぞ知る。せめて生きているときの幸福、とくに働いている時の幸福感は最大にしたい。
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金属材料やセラミックスは高分子材料に比較して学びやすい。なぜなら大学で学ぶ固体物理学あるいは材料力学の知識をそのまま用いることができるからだ。
しかし、高分子材料に関しては、大学で学んだ形式知から外れる現象に実務で遭遇する機会が多い。
それがプロセシングの影響であることに気がつくまで、かなりの経験を積む必要がある。また経験知を蓄えていても気持ちの悪い現象が起きたりする。
この原因は、高分子が紐の集合体であり、さらにその紐の長さが分布を持っており、結晶よりも非晶質部分が物性に影響するためである。
力学物性だけでなく電気電子物性までも同様で、それをうまく説明できる完璧な形式知が存在しない。
2成分以上の高分子をブレンドするときに使われるフローリー・ハギンズ理論にしても、実務ではほとんど役に立たない。
また、この形式知に固執していると、実務では間違った判断をすることもある。
例えば、退職前2005年に担当したPPSと6ナイロンブレンド系をマトリックスに用いた中間転写ベルト開発では、フローリー・ハギンズ理論では説明できない相溶系マトリックスとして設計しなおし成功している。
但し、前任者から引き継いだ配合組成を変更していない。コンパウンドを某有名一流メーカーから購入していたが、それをそのまま当方が3ケ月程度で立ち上げたコンパウンド工場で生産するようにしただけである。
配合組成は全く同じでもプロセスが変われば、まったく異なるコンパウンドに仕上がる。これが高分子材料の難しさの一例である。
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京都大学と慶応大学の研修医は、科学的ではない現在の取り組みに対して批判的な行動をとった。それが、慶応大学では18人の感染者数を公開し、京都大学では全員を隔離するという粋な計らいをしている。
検査をしないでいきなり隔離するという非科学的な行為が現代にふさわしくないかどうかは問題ではなく、現在の行為として京都大学の対応は評価される。
ただ、隔離ではなく、コロナ禍で医師不足となっている医療の最前線で勤務させればさらに国民の理解が得られたかもしれない。
要するに科学的でないことを軽視する人に、技術なるものを理解してもらうには、非科学的ではあるがそれが「日々の生活の中で適切である行為」というものをまず理解してもらわなくてはいけない。
科学的ではないことを軽蔑している人は、この行為すら非科学的とバカにする。例えば高純度SiC粉末の合成に成功した時に、ゴム会社の主任研究員が「僕もエチルシリケートとフェノール樹脂の組み合わせに気がついていた」と言ってきた。
そして、「ただ、フローリー・ハギンズ理論を知っていたので実験をやろうという気になれなかった。君はセラミックスの専門家だからよかったね」とあたかも当方がフローリー・ハギンズ理論を知らないから成功できたような口ぶりである。
それに対して当方は「知らないから成功できたというよりも知りすぎていたので、非平衡下のリアクティブブレンドの可能性にかけてみた」と応えている。
以前この欄でカミングアウトしているが、学生時代教科書の欄外に書かれていたフローリー・ハギンズ理論を本当に知らなくて追試を受けていた。ゆえにこの理論についてはこの主任研究員より深い理解をしている自信があった。
この主任研究員は、試行錯誤でリアクティブブレンド技術を開発したことをバカにしていたのかもしれないけれど、リアクティブブレンド技術というものは、最初の手掛かりとなる配合条件を見つけるためにはどうしても試行錯誤的となる。
それが効率的に開発できる唯一の方法だからだ。論理的に進めた場合には、できない理由を積み重ねてしまうような過ちを犯すことがある。
例えば、電気粘性流体の耐久性問題は界面活性剤で解決できない、という結論を1年かけて完璧な科学的データ(注)を集めてまとめた優秀な研究者集団がゴム会社にかつていた。
当方が一晩でこの問題を界面活性剤を用いて解決した(補足)時に、この報告書の存在を知らなかったが、転職時にはじめてそれを見せていただき、完璧な科学論文であったことにあきれた。完璧な科学の論理で技術ができない場合もあるのだ。
科学的でないことを理由に技術を軽蔑する人には当方の転職体験を聞かせたい。禁煙パイポの「私はこれで会社を辞めました」、というセリフを小指ではなく「腕」を突き立て話をしめるかもしれない。
慶応大学については文春砲が炸裂し、大学が隠蔽化しようとした努力が無駄になった、というニュース記事を見つけたが、今の時代隠蔽化は良い結果を生まないことは明らかである。機会があれば、組織が隠蔽化に動くメカニズムを実体験から解説したい。
(注)典型的な否定証明が展開されていた。科学の方法で気をつけなければいけないのは、科学的に完璧に論理を展開できるのは否定証明だけ、というイムレラカトシュの言葉がある。ところが、否定証明された現象でも技術で実現できる可能性があることを科学で硬くなった頭脳の持ち主は、理解できない。理解できないだけならよいが、科学的ではない技術の解を前にしてヒステリーを起こす人もいた。3密を軽視した慶応大や京大の研修医はヒステリーとは異なるかもしれないが、週刊誌報道には凡人に理解できないヒステリーよりも奇妙な行動が報告されている。
<補足>300種類の界面活性剤を1種類ずつ、増粘してどろどろとなり機能しなくなった電気粘性流体に添加し、一晩静置しただけである。翌朝には300個の試験管を軽く振るだけで解決方法を見つけることができた。2種類ほど見出した。この時、1000種類の界面活性剤について主成分分析を行い、そこから300種類を選んで実験を行っている。すなわち当方の頭がAIならばマテリアルインフォマティクスによる電気粘性流体の設計となる。これは30年近く前の実験なのでAIがなかった。主成分分析はLATTICE_Cで作成したプログラムをPC9801で走らせて行っている。当時LATTICE社の処理系には豊富な数学ライブラリーがあった。高価だったが自前で購入し日曜日はそれでプログラムを作成していた。電気粘性流体の仕事では、高純度SiCのJVと同時に一人で遂行していたので、自宅業務が多かった。ゆえにFDを壊されるいたずらは業務妨害そのものだった。
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