高分子のブレンドや添加剤について机上で検討するときに、SP値が使われることが多い。
SP値は、例えば高分子や添加剤に含まれる官能基の引力定数表の値を用いてSmallの方法やOCTAなどで計算もできる。
しかし、このような計算値ではなく、SP値が既知の溶媒を用いて、高分子なり添加剤をその溶媒に溶解して、その溶け具合から決定する方法が良い。
なぜなら、Smallの方法で得られたSP値の信頼度について、筆者の経験ではせいぜい60%程度だからである。
また、SP値が既知の溶媒を用いて評価する方法では、無機フィラーの表面についてもSP値という概念に展開可能である。
すなわち、混練では、高分子へ微粒子を分散する場合があり、その時に微粒子の表面と高分子の濡れで分散効率は変わる。これは混練機の性能よりも大きく影響する場合がある。
余談だが、混練のシミュレーターを使ってみて理解できたことだが、シミュレーターには配合成分の相互作用に関する情報を入力できないものもある。また入力できたとしても、不十分な情報しか入力できないソフトウェアーも存在する。
混練のシミュレーション結果ぐらい当てにならないものはない、というのがそれを使用した印象である。
さて、計算により求められたSP値の信頼度が低い理由として、低分子の溶解理論から高分子の相溶に至る理論の拡張に原因がある、と思っている。
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情報通信分野で5Gが注目を集めています。5Gで世の中がどのように変革されるのか。
高分子材料の誘電率制御に関して、下記のようにセミナーを開催します。
弊社へ申し込まれますと、36,000円(消費税含まず)となります。
記
1.主催 サイエンス&テクノロジー
2.日時 2019年8月30日(金)10時30分-16時30分
3.場所 品川区大井町きゅりあん
4.詳細 https://www.science-t.com/seminar/B190850.html
カテゴリー : 学会講習会情報 宣伝
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混練では、異なる一次構造の高分子(ポリマー)を複数ブレンドするケースは多い。ここでは、形式知のポイントの整理にとどめ、混練時に注意すべき現象については経験知に基づき説明する。
具体的な細かい議論については、バーローやムーア、最近であればマッカーリとサイモンによる物理化学の教科書、あるいは高分子の物理に関する書籍を読んでいただきたい。
ただし、高分子関係の教科書の中には、低分子の溶解理論から議論せず、いきなりフローリー・ハギンズ理論が出てくる場合もある。
物質の溶解現象に関して熱力学の形式知は体系化されたが、低分子から高分子にかけての拡張についてその体系に少し危うさがある。
そのまま実務で使用していると大切な現象について形式知に邪魔されて見落とす場合もある。
高分子材料の混練技術について考察するときには、形式知と経験知を日々正しく分離して整理する努力をいとわないことがコツである。
混練プロセスでは、時として形式知を疑いたくなるような現象が起きたりする。しかし、それは形式知が正しいとか正しくないとかいう議論の前に、非平衡における現象について形式知の体系が未だできていないことに注意する必要がある。
そのため、奇妙な現象に遭遇したら、信頼できる専門書かアカデミアの研究者に相談されることを勧める。
ただし、アカデミアの先生の中には泥臭い現場情報を不得意とされる方もおられるので注意を要する。「know who」は、「know how」同様に重要である。
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高分子の材料強度は、経験的に弾性率と靭性の関数、すなわち強度=f(弾性率,靭性)と表現できる。
弾性率はマトリックスとその補強成分で決まり、成形体密度と相関する。しかし、靭性(シャルピー衝撃強度やアイゾット試験データ)は密度に依存しない。
横軸に射出成形体の密度を、縦軸には弾性率((測定値/100)-10)と曲強度、シャルピー衝撃強度をとり、各種ポリマーアロイと混練条件の異なるサンプルについて物性測定された結果をプロットする。
得られたグラフにおいて、Y軸に平行なプロットの群は、ある試作条件におけるサンプルについて曲強度、シャルピー衝撃強度を測定して得られたデータの平均値の1セットである。弾性率データは曲強度のSS曲線から採取する。
ポリマーアロイに配合された成分は皆異なるため、マトリックス主材以外の成分とプロセシングの異なるポリマーアロイに関して強度の密度相関をこのグラフは表している。
弾性率は主にマトリックスとサンプルの密度で決定されるが、同一マトリックスなのでこのグラフでは密度だけに相関している。
曲強度については、弾性率と相関するサンプル群以外に相関しないサンプル群があり、相関しないサンプル群を整理すると衝撃強度に相関している。
すなわち、このグラフから経験知である強度=f(弾性率,靭性)と捉えてよい。
さらに、このデータは、強度のばらつきは弾性率と靭性のばらつきに支配されている、と読み取ることも可能である。
この時、弾性率は密度に依存し、靭性は構造の不均一性(靭性に影響を及ぼすサイズ、800nm以上のサイズ)や欠陥に支配される。
このような考察を進めてゆくと、常に一定速度で押し出されているストランド段階のばらつきは、密度あるいは欠陥のばらつきが正規分布で揺らぐと期待され、人手による射出成形では、そのスキルに左右されたばらつきとなることが予想される。
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ストランドと成形体それぞれの物性評価結果において、ロバストにどのような差異が出るのだろうか。
この場合、タグチメソッドではなく、ワイブル統計を使用して信頼性の評価を行ったほうが良いのかもしれない。
すなわち、ストランド段階の物性評価試験データと、そのペレットから製造された射出成形体の物性評価試験データについてワイブル解析を行い、両者にどのような関係があるのかが得られればペレット段階の品質評価の位置づけが明確になる。
例えば、高分子成形体の物性で必ず測定されるのは、引張強度や曲強度、あるいはシャルピー衝撃試験またはアイゾット衝撃試験などの力学物性である。
これらの力学物性は、射出成形体であればISO527あるいはJIS-K-7161に測定が記載され、その測定に用いる試験片作成のための金型も市販されている。
この比較実験を行う時に、ストランドの試験サンプルをどのように作成するのかが問題となるが、仮にストランドのまま評価したならば、射出成形体サンプルでは複合ワイブル分布となり、ストランド段階では破壊モードが一様となる可能性がある。
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13日の夜に「理想の住まい」という講演を拝聴した。実は講演者は同級生で、我が家を建てるときに旭化成ヘーベルハウスにするのか講演者に頼むのか迷ったが、旭化成の営業担当が3000万円台の見積書を持ってきたので旭化成に決めてしまった。
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決めてからびっくりしたのだが、見積内容は外側だけの価格と言われた。内部の設計まで詳細を決めてゆき、最終段階に渡された見積書では、軽く倍になっていた。契約書に判を押した後である。最初の見積書段階で友人に相談すべきだった。
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最初は友人の誠実な見積書の価格が高かったが、内装も含めた最終見積もりでは友人の見積もりが3割以上も安くなった位置づけになる。しかし、その後ローンの手続きやら何やかやを営業担当が親切に進めてくれたので結局旭化成ヘーベルハウスで建てることになった。
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友人には悪いことをしたという後悔は、25年経った今も残っている。講演を拝聴してその思いはますます強くなった。
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後悔の理由について事実のみを書くと、大手メーカーの建築だから安心と言うことではないのだ、という一言に尽きる。杭打ち不正まがいのことも体験する。今なら迷わず久間建築設計事務所に依頼する。
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講演では今も昔も大手プレハブの新築に占める割合は変わらないと説明された。大手の後悔するような建築体験の噂の影響もあるのだろう。
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ヘーベルハウスで遭遇した問題は以下。これは噂ではなく事実である。
1.新築直後の雨漏りと、天井の補強板施工忘れ。それでも合格として引き渡された。
2.建築後やれ外壁塗装のメンテやら屋根のシート張替やら、スケジュール通り実施しないと品質保証が受けられなくなる、としつこい営業訪問。
3.2に反して定期補修工事後のクレーム対応が悪い。施工後ヘーベル板の破損や外観不良などのクレームを伝えて半年たっても未だに満足な対応ができていない。
4.外壁の工事でヘーベル板が痛み、ところどころ欠けたり、外観不良があっても点検は合格となっている。
5.外壁工事の時、扉の養生を忘れたために玄関扉が汚れたので、紆余曲折後張り替えたがその料金を支払うことになった。
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大手メーカーはどこでもこのような問題が起きており当たり前のことなのだろうか。扉の養生を業者が忘れた問題から見えてくるのは、クレーム対応では責任回避のためにいかにしてロジックでお客様を説得してお金を支払わせるのかと言う不誠実さである。個人の設計事務所では次の仕事が無くなるような問題である。家を建てるなら個人の設計事務所の方が安心なのかもしれない。料金も決して高くない。家を建てられる方には久間建築設計事務所をご紹介します。
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光学顕微鏡以外の観察では、試料の前処理で観察される像が変化する場合もあるので注意を要する。
SEMやTEMなどの電子顕微鏡観察において前処理を測定者と打ち合わせる時間は重要である。
微粒子が導電性を有しているならば、試料のインピーダンス計測により微粒子の分散状態について評価できる場合がある。
また、導電性が無くても他の添加剤との相互作用などで電荷二重層が形成されるような場合にもインピーダンスの計測で情報が得られる場合がある。
混練プロセスで得られたコンパウンドについてどのような分析評価を行うのかは、コンパウンドメーカーにとって重要なノウハウとなっている。
ペレットの仕様を決めるときに、ペレットの形状やサイズ、MFRをその仕様とする場合が一般的であるが、開発力のあるコンパウンドメーカーでは、次工程の品質問題を予測できる仕様を提案してくれる。
しかし、機能性高分子材料を開発するときに、求められている機能が混練プロセスにおいてどの程度のロバストで創りこまれているのかをコンパウンド段階で分析評価し、成形体のロバストを予測する技術は大変難しい。
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現代の生活の便利さは科学の進歩のおかげではあるが、身の回りの製品や医学がすべて科学の成果と言うのは誤解である。
例えば、ノーベル賞を受賞したヤマナカファクターは、阿弥陀くじ方式で発明された技術の成果である。
DNAの解析や生命の解析の成果は科学の成果と呼べるものが多いが、それでもヤマナカファクター発見だけを捉えれば、それは技術開発という行為の成果である。
24個の遺伝子を一度に細胞へセットした学生の掟破りの実験やその後のあみだくじ方式によるヤマナカファクター発見の手順は、科学ではありえない考え方である。
身の周りの豊かさの成果はすべて科学のおかげと考えていると、このような発明をすることができない。
かつてゴム会社の研究所は科学こそ命という風土だったが、80%近くを占める製品の開発部隊は、KKDも飛び出す技術重視の風土だった。
ところが転職してびっくりしたのは、科学こそすべてと言う考え方の会社で技術の方法論が否定されるような風土だった。しかし、そのような風土でもタグチメソッドは普及した。
故田口先生が科学的にご指導された結果であるが、SN比の説明を科学でできたとしてもタグチメソッドは技術の優れた方法論の一つである。
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ゆえにタグチメソッドを用いた成果は、科学の成果と言うよりも技術の成果である。基本機能を難しく感じるのは、科学と技術の違いを意識しないためと思っている。
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技術開発において科学の果たした役割は大きい。まず、科学の誕生により技術開発のスピードは急速に高まっただけでなく、その成果の伝承も確実に行われるようになった。
だからといって、科学誕生以前から行われてきた技術開発の方法論が否定されて良いとは思わない。
そもそも科学と技術は、その目的とゴールが異なる。科学は、小学校から習ってきたように真理の追究が目的であり、そのゴールはたった一つの真理となる。
技術は人類に有益な新しい機能を創り出すことにあり、そのゴールは創り出された新しい機能である。すなわち、新しい機能が具現化された「モノ」ができている必要がある。
ここで、まったく新しい機能を創り出すことは、大変難しいが、人類は科学誕生以前からそれを自然界から「見つけ」「取り出す」作業により、実践してきた。
これは、学校でもあまり教えられい、企業で技術開発でも経験しない限り習わない技術の伝統的方法である。この単純な方法で確実にモノができる。
科学の方法は、仮説設定と論理が重要で難解である。難解であるがゆえに小学校からその方法を学んでいる。小学校から学んできてもなかなか身につかないので、ロジカルシンキングの社会講座や高額なセミナーが未だに人気である。
問題は苦労して身に着けてもそれだけで技術開発をするには無理があることを教えていないことである。科学の方法さえ身に着ければモノができる、と言う誤解である。
単純な方法であるが、技術の方法も身に着けない限り、技術開発でモノを創り出すことが難しい。ただし、出来上がったモノについて解析や分析は科学の方法だけでできる。
換言すれば、技術開発の成果が具体化されているときのみ科学の方法でモノを造ることが可能になるが、新しいモノを生み出そうとするときに科学の方法だけではできない場合がある。これを本当に理解している人は少ない。
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愛知県の「表現の不自由展」が未だに揉めている。大阪知事と愛知県知事の喧嘩も飛び出した。一連の愛知県知事の発言を聞いていたが日本人として少しおかしい。
もし、愛知県知事が日本人として誠実真摯に考えるならば、まず、税金を投じたことの謝罪が必要である。そして、この謝罪の上、中止にしたことの謝罪もしなければいけない。
今回の問題は、日本人全員の支持が得られると思って、税金を投じたはずである。しかし大多数が異を唱えたのだから、愛知県知事の判断は間違っていたのだ。
一方、芸術表現に関して愛知県知事が自己の判断の正当性を主張するならば、私財を投げうってでも展示会を何処か私的な会場を借り切って開催しなければいけない。
展示会の企画者もそうだが、際どい仕事を行うときの覚悟が足りない。今回の騒動を見ていると、愛知県知事も含めて展示会に関わっている人間の卑しさが透けて見えてくる。
日本人の意識改革を目的として表現の自由を主張するならば、覚悟も必要だ。この問題に限らず、覚悟の必要な行動に対して、安直に行動しあたかも正論のごとく他者を批判する無責任な人が多い。
いつまでもこの問題がくすぶっているようならば、愛知県人はリコールの行動を起こしてもいいような状況である。日本の愛知県民として大阪人に馬鹿にされてもよいのか。
愛知県出身者として、かつては不倫をして家庭を壊すような見識の国会議員を選んだり、今回の一連の騒動を見てきて少し恥ずかしい。
この恥ずかしさを思うときに、改めて普遍的な正論を論じる覚悟の重要性を認識する。
日本社会で生活するときには、国際人の前にまず日本人としての価値観で判断しなければいけない。
そしてその価値観が時代遅れと感じ、直す必要があると感じた人は、まず日本人としての手順でそれを提案しなければいけない。もし、提案内容が日本人の価値観とかけ離れていたならば、日本社会に寄り添った手順で提案すべきである。
今回の場合であれば、公共の財産を使う段階ではない。有志から募金をして私設会場で行うべき内容だ。そして、それが多くの人の賛同が集められたときに、初めて税金を投入すべきなのだ。
大阪府知事が辞職すべき問題と言うのも最もである。不倫で選ばれた議員は、愛知県民が不倫を認めたという理由で堂々と活動をしている。不倫が愛知県の文化の時代になったのか?
生命の大切さを主張しつつ自らの生命を維持するために他の生命を犠牲にしなければいけないという人間がその意識の中に永遠の矛盾を抱えた生き物である限り、今回のような出来事では、命を懸けるぐらいの覚悟が必要である。
逮捕者まで出るような問題に発展しているので、謝罪をしないのならば愛知県知事は速やかに辞職すべき段階かもしれない。日本人政治家としての覚悟を見たい。
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