100円ショップの樹脂製品には耐久性の無い製品がある。100円だから我慢しなければいけないのか、時として疑問に思う。その一方で、窓際においていても高価な樹脂製品と同様の耐久性の高い製品もあったりする。
樹脂には耐候性向上のため様々な添加剤を混練するが、この添加剤が樹脂より高いので樹脂製品のコストに影響する。100円ショップの製品の場合に、おそらく耐候性試験などしていない可能性がある。しかし耐久性のある製品を見つけたりすると何か得した気分になり、同じものを購入しようとすると、耐久性が証明されたときには製品がモデルチェンジしていたりする。
100円ショップのからくりは知らないが、樹脂設計の視点から見ると、このような製品の種類により使用されている樹脂の耐久性が著しく異なるところは、100円ショップが宝探しワンダーランドのようだ。逆に100円ショップにあるような製品でブランド品を購入し、何倍もの料金を支払ったのに耐久性が無く簡単に壊れるとショックである。
100円ショップにはおいてないが以前紹介したがニコンF100の蓋(データパッケージ)の樹脂製フックがクリープ破壊した現象は、その破壊面に射出成型の時にできたと思われるボイドが観察されたので寿命が10年ほど縮まったような衝撃を受けた。このような耐久性の問題も含め破壊のばらつきは最弱リングモデルによるワイブル統計で議論されたりする。最弱リングモデルとは、n個のリングで構成された鎖が破壊する確率を求めるモデルである。n個のリングの一つが破壊したときに鎖は機能を失うのでその確率を計算できる。
ワイブル統計では得られた直線の傾きから、破壊に対する信頼性を求めてゆくが、この直線の傾き以外に、直線が変曲点を持っていると破壊モードの情報を得ることも可能となってくる。破壊をワイブル統計で科学的に議論されその手法の有効性が実証されたのは、金属やセラミックス分野であるが、樹脂やゴムに対しても破壊確率を求めるのに有効な方法である。
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添加剤による可塑化効果について。例えば、樹脂を難燃化しようとリン酸エステル系難燃剤を用いると可塑化効果により弾性率低下が生じる。30年以上前の教科書には、ホスファゼンを用いると力学物性の低下を起こさず、樹脂の難燃化が可能、と書かれていた。
たまたま軟質ポリウレタン発泡体の難燃化を担当していたのでホスファゼンを添加したところ弾性率の低下起きず、LOIを21以上まで上げることができた。比較に用いたのはTCPPであるが、このリン酸エステルを用いたときには20%程度弾性率の低下が起きている。
教科書の内容が正しかったわけだが、このホスファゼンをジアミノ体に変性し、イソシアネートとプレポリマーを合成し軟質ポリウレタン発泡体を合成した。するとLOIを21以上になるまで添加すると10%ほど弾性率が低下した。
ホスファゼンは添加型で樹脂へ添加した場合には、教科書通りの結果になるが、反応型として添加すると他の難燃可塑剤と同様の傾向となる。但し、LOIを21以上とするために必要な添加量は、添加型の場合よりも10%程度少なくて良い。
粘弾性等の解析結果から、反応型として添加したときにウレアの凝集構造を壊している、と推定されたのでイソシアネートとのプレポリマーとして添加したことが失敗だった。しかし、TCPPと異なるのは同一LOIを得るのに弾性率の低下が少なく損失係数が向上する特徴があり、難燃クッション材としては好ましい結果であった。
樹脂の可塑剤の説明には可塑化による弾性率低下などの問題が取り上げられるが、予期せぬ物性の改善効果が現れる場合がある。これは可塑剤の分散状態あるいは可塑剤添加による樹脂の高次構造変化の影響で、可塑剤をスクリーニングするときには一通りの力学物性を評価しておくと良い。一通りの力学物性については問い合わせていただきたい。
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転職すべきかどうか、迷うと本当に難しくなる。しかし、自問自答してみて自分が組織の役に立たない、あるいはその組織を許せない、経営者なり上司がおかしい、と思われるのなら、転職すべきである。
ここで私心に囚われると、良い仕事ができない。良い仕事は、働く意味を理解し卓越した成果をあげられたときに実現出来る。良い仕事をした結果が報われるかどうかは別の問題であるが、良い仕事のプロセスから得られた経験は個人の宝となる。
この個人の宝とは仕事の評価とは別の価値であり、自己実現に関わっている。30年以上のサラリーマン生活で組織方針に従い成果を出してきたが、その評価は必ずしも満足なものではなかった。評価は評価者に依存するので評価者が誠実でなければ、成果を他の人の評価にするケースも出てくる。
評価者の経験から成果に対する評価を気にするな、と自信を持っていえる。しかし自分に対する会社の評価が自己評価よりも乖離しているならば組織への貢献ができていないと判断すべきである。あげた成果に対する評価の低さというのは理由はどうであれ、「その」組織に貢献できていない、という評価なのだ。
働く意味は、組織への貢献と自己実現にあり、組織への貢献ができない状況であれば、仮に自己実現環境が良くても、転職という判断が、その意味において誠実かつ真摯である。
組織への貢献の評価は難しい。それは自分の描く組織と上司の描く組織とが一致しているのかどうか確認することが簡単ではないからである。誠実真摯な上司であれば、組織メンバーすべてに組織の役割と使命を明確にするが、不誠実な上司はそれを曖昧にするのである。
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東芝の現在の状況について、「社員は早急に転職すべき」という記事が多い。一方で、政府の動きも含めて東芝をつぶさないように模索する流れができてきた。おそらく東芝という組織は残されるだろう。残される前提で、昨今の早急に転職すべきかどうか、転職経験者である当方の見解を述べてみたい。
まず、他の組織で活躍「したい」と今思っている人は、早急に転職すべきである。それから、ある記事に書かれていたが、「会社の最後を見届けたい」などと感傷的な気分になっている人も、その記事の著者の言うとおり、家族のためにも早急に勤め先を探すべきだろう。
十分に現在の組織運営者である中間管理職や経営者に裏切られたのである。少なくとも明らかに誠実ではない上司の下では働くべきではない。外部に公開されている情報から判断しても東芝の経営者は誠実と真摯さに明らかに欠けている。
何も考えられず右往左往している人はどうするか、そのような方も勤め先が見つかったなら早急に転職されることをお勧めする。また、見つからない場合には、収入額を下げてでも必死で転職された方が東芝が身軽になるから好ましい。
また、会社に残っていても恐らく給与は激減する。半額になる方もおられるかもしれない。身分が保障されるという甘い考えは持たない方が良い。例えば、会社を一度解散し、新会社を立ち上げる手法がとられたならば、過去の労働契約など価値が無くなる。
一方で、破綻しかかっている組織を立て直「したい」、という意欲のある人は、転職「してはいけない」、と申し上げたい。そのような人材が転職したら、本当に東芝は倒産してしまう。
今、東芝の危機を救えるのは、組織を立て直「したい」という意欲のある社員で、そのような人材がもしこの欄を読んでいたなら弊社にご相談ください。職位に合致した戦略と戦術の立案方法を御指導させていただきます。
新入社員のスタートはゴム配合技術者としてスタートしたが、ファインセラミックス分野進出の社長方針が出されても組織が動かなかったので、高純度SiCのテーマを掲げて起業した。苦節6年死の谷を歩き住友金属工業とJVを立ち上げ、これからというときに研究部門の不誠実さと直面し、転職した。組織と個人とのかかわりにおいて、誠実さと真摯さは重要である。
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リン系難燃剤の一種であるリン酸エステルは、可塑剤としても使用される。可塑剤の応用された製品の身近な例として、塩化ビニルいわゆる塩ビがある。
塩ビ製品には固い樹脂から革のような柔らかいものまで存在する。この柔らかい塩ビにはリン酸エステル系化合物が5%以上添加されている場合がある。添加量は柔らかさの仕様を満たすために必要とされる量である。
主に難燃性が要求されるシートでは、10%程度添加されている製品もあるが、ブリードアウトがしばしば問題になったりする。
ブリードアウトについては他で説明しているので省略するが、触ったときにべたべたする感触の現象である。塩ビとSP値が適合していないリン酸エステルを用いると必ず発生する。
樹脂を柔らかくするために用いるのが可塑剤であるが、樹脂に低分子の有機物を数%添加すると必ずこのような可塑化効果が現れる。それでは可塑化効果を出したくないときにはどうするか。
可塑化効果は出したくないが、樹脂の機能を高めたい、このようなニーズを満たすためには添加剤の分子設計が重要になってくる。
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高分子材料では、科学的に説明しにくい技術分野が多い。問題となるのは科学で真理として証明できていないのに、あたかもそれができたかのような説明が書かれている場合である。具体的には高分子とともに用いられる添加剤の技術分野である。
帯電防止や難燃性付与、防汚性付与、耐候性向上などには怪しい話が多い。教科書に書かれた説明には、怪しいがそれなりに信憑性があるので科学の定説と誤解されているケースも存在する。
例えば、P系化合物による高分子の難燃化機構では、オルソリン酸の触媒作用により水素原子が引き抜かれオレフィンが生成し炭化促進、チャーによる発泡断熱層でさらに炭化促進されやがて火が消える、というプロセスが書かれている。
如何にももっともらしいが、熱重量分析やその他の分析技術を駆使して数種類の高分子材料のりん系難燃剤による難燃化機構を調べたところ、オルソリン酸の気相における酸素遮断やラジカルトラップなども起きていることがわかった。
わかった、と書いたがプライベートな考察である。特に論文発表もしていないし、社内の研究報告に書こうとしたら上司の主任研究員からデータが少ない、と言われた。今から思えば社内技術の蓄積のために書くべきとは思うが、ノート程度の論文の制度が無かったので、個人的な趣味程度の実験の扱いを受けた。
一方でリン系化合物とホウ酸との組み合わせによる無機高分子生成によるリン酸ユニットの固定化、およびそれによる炭化促進、難燃化という手法は、ボロンホスフェートの生成確認やその他のデータも収集できたので学会発表まで許された。
しかし、そもそもリン酸ユニットの触媒作用さえ怪しいと思っていた当方は、学会発表しながらも何か腑に落ちない気持だった。「このようなことをしたら、このような結果となった」という現象紹介だけの場が学会にあってもいいように思うが、学会発表ではあくまで仮説による考察が求められる。
科学的根拠に怪しさのある仮説は、妄想に過ぎないが、妄想でも技術開発はできるのである。むしろ妄想による技術開発と胸を張っていえるような社会環境にしたいと思っている。新しい科学を生み出すためにはとんでもない着想で起こされた現象が必要である。
逆に新しい現象に対して、強引に旧来の科学知識で説明し、陳腐化する愚かさは技術の発展を阻害する。
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「2度目の賜杯がするりと逃げた。本割に続き優勝決定戦でも敗れた照ノ富士の目は、風呂場から上がると真っ赤に充血していた。」
これは、WEBに掲載されたスポーツニュースからの引用である。このニュースには、つぎのような説明もあった。
「角界でも有数の酒豪だが、3月に入ってからアルコールを断った。「飲むと負ける気がする」。昨年手術した左膝は完治したかに見えるが、実はまだ回復途上。古傷の右膝痛も抱えている。「目に見えるつらさと、見えないつらさがあるんだよ」と支度部屋では本音も漏れた。」
春場所の千秋楽の一番では、負けた照ノ富士も怪我をおして踏ん張ったのである。また彼にとって春場所はカド番場所でもあった。このことから先日はガチの勝負で生まれたドラマであったことがわかる。
スポーツ観戦で視聴者が感動するのは、シナリオの無いドラマで時にはそこに自分の人生も重ねるからだろう。
「目に見えるつらさと、見えないつらさがあるんだよ」負けた照ノ富士のこの本音は、言い訳として取る人もいるかもしれないが、昨日の名勝負と重ね合わせると何か含蓄のある言葉に思えてくる。
負けたとはいえ、力一杯頑張った力士の言葉故に敗者の単なる弱音ではなく、多くの力士の代弁、あるいは人生力一杯頑張っても報われない人の代弁にも聞こえた。来場所も頑張れ、照ノ富士。そして、今度は主役として、語り継がれる名勝負を生み出して欲しい。
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昨日の稀勢の里の優勝には、観戦されたご両親だけでなく、日本全国の相撲ファンは感動したのではないか。予想外の優勝だけでなく、照ノ富士を本割と決定戦の二番続けて退けた相撲の内容には稀勢の里の気迫に運までも味方していた。
3日前の日馬富士との一戦で稀勢の里は赤あざも痛々しい大けがをして、二場所残し休場かと予想された。この常識的な予想をひっくり返し鶴竜との一戦に登場し、会場が割れんばかりの拍手。残念ながらケガの影響であっさり負けて二敗となり、優勝は絶望的となった。
しかし、千秋楽における一敗照ノ富士との一戦ではまさかの勝ちで場内は大相撲のTV中継が始まって以来の大歓声。そして決定戦では右腕と足を生かした取り組みで勝ちを納めた。この二番では得意の左おっつけを使うことなくケガをした左腕に運よく負担をかけない形になり勝つことができた。
相撲ファンではないので春場所を毎日見ていたわけではないが、貴乃花以来の横綱昇進初場所連続優勝が話題になっていたので金曜日からは欠かさず見てきた。けがを押しての強行出場では、2001年夏場所千秋楽における横綱・貴乃花の例があるが、優勝した代償に翌場所休場している。そして復帰3場所目で引退に追い込まれた。
今回の強行出場そして優勝が稀勢の里の横綱としての寿命を縮めることにならなければよいが、その優勝をあきらめない姿勢と冷静な取り組みには、久々に気持ちの良い感動を味わうことができた。
このケガをしても横綱としての責任感を忘れず戦う姿は、豊洲問題や東芝のようなエリートのふがいない仕事ぶりが話題となっていた社会に、与えられた「使命」を全うすることの重要性を教えてくれる。人には生まれながらに何か「使命」があるという。サラリーマンならばその職歴から「使命」が見えてくる。
当方はゴム会社において30年以上続く高純度SiCの事業を立ち上げた幸運や、転職の原因となった電気粘性流体の実用化実績はじめ無機機能性材料の実績、そして写真会社ではゴム会社における専門と全く異なる高分子材料技術で、カオス混合技術の発明とそれを応用した環境対応樹脂開発や半導体PPS無端ベルトの開発、帯電防止や接着、防汚性、耐擦り傷特性などの付加価値を有する薄膜開発などの実績を出すことができた。
有機材料から無機材料まで幅広い材料技術で実績を出すことができたのは、ドラッカーの影響が大きいが、この経験を次の世代に伝承する使命を果たすことも目標とし、この会社を起業している。稀勢の里の相撲を見て死ぬまで働く覚悟も必要と感じた。余談だが弊社は3月から翌年2月末までを会計年度とし、3月は決算で忙しく移動できないので特に公開していないが来社された方には諸々の無料相談会を実施している。
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城北中央公園でカラスが約50羽死んでいるのが見つかった。鳥インフルエンザか、と騒ぎになったが、どうも犯人は**のようだ。まだ原因解明されていないが不気味な事件である。
我が家は城北中央公園まで徒歩1分の場所にあり、今回の事件はパトカーの集結で知った。野次馬として見に行こうかと思ったが、ウィルスの恐怖で足がすくんだ。
しかし、すぐに噂話で鳥インフルエンザではなかった、との話が伝わってきた。今はSNSがあるので情報の伝播は速い。ニュースでは、まだ原因不明だが、SNSでは犯人の話題で盛り上がっている。
近所でこのような不気味な事件が起きると女性でなくても夜道が怖くなる。昔見たヒッチコックの鳥を思い出すからだ。モノクロTVの時代にヒッチコック劇場はお化け屋敷に匹敵する恐怖ドラマだった。
怖いとわかっていても何故か毎週見ていたのである。とりわけ鳥は何度も再放送され、それを毎回見ていたため、今回のような騒動があるとトラウマのごとく思い出してしまう。原因解明を早くしてほしい。
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今のオフィスには一人に一台のPCが机にあるのが当たり前だが、ゴム会社から写真会社へ転職したときの1990年前後の状況は、16ビットPCから32ビットPCへの移行期で、Window3.0も登場していた。やがてこれが3.1にバージョンアップされ普及し始めるのだが、それでもPCはまだ個人に一台の時代ではなく、Windows95の普及で一気にPCが一人一台の時代になった。
PCのハードウェアーはすでに32ビットCPUが一般的であったが、このWindows95は16ビットで動作するOSだった。だからMS-DOS時代から使っていたLatticeCを使うこともできた。また、Windows95用のライブラリーも多数販売されていた。さらにWindows95上で動作する本格的プログラミング環境も登場した。ただしそれらは皆ハードウェアーと同様の価格であり、大変高価だったのでLatticeCをWindows2000の時代まで使い続けた。
ゴム会社の研究所は世間のOA化よりもスピードが速く、IBM社が16ビットパソコン(いわゆるAXパソコン)を販売しだしたころからスタッフに一人一台のPCが当たり前になっていた。当方はそのころ一人で3台使用していた。3台使用していたのは主に使用していた実験室や居室が3ケ所に分かれていたからだ。
ちょうど高純度SiCの事業を住友金属工業とのJVという形式で立ち上げ始めたころで、過重労働当たり前の大変忙しい頃だった。JV立ち上げさえ忙しいのに電気粘性流体の仕事も、電気粘性流体用の高性能オイルや粉体、また耐久性を上げる添加剤などを発明したのでプロジェクトから外してもらえず大変だった。
ゆえに自分が主に使用している部屋にPCを自分専用に1セットおいていただいた。ただ当時はLANなど気の利いた環境ではなく、データをFDで持ち歩いて作業をしなければならなかった。
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