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2016.06/17 セミナーのご案内

この3年間、弊社が中国で活動してきました成果を踏まえ、5月までに3件ほど混練技術に関する講演会を開催致しました。
 

いずれも異なるセミナー会社の主催で行われましたが、リクエストがございましたので下記予定で7月と8月も開催します。一部内容は重複致しますが、過去の講演と同様に新規内容を盛り込み企画しています。また、弊社で現在展開しております二軸混練装置の販売につきましても状況をご報告させていただきます。
 
7月の講演会では、樹脂用の新添加剤のご紹介をさせていただきます。また、カオス混合技術につきましても過去の講演会同様に解説致します。
 

8月の講演会におきましては、シランカップリング剤の添加では問題解決できなかった熱電導樹脂を事例に、フィラーの分散制御技術の盲点を独自の視点で解説致します。
 
お申し込みは、弊社インフォメーションルームへお問い合わせください。詳細のご案内を電子メールにてさせていただきます。弊社で申し込まれましたお客様につきましては特典がございますので是非お問い合わせください。
   

1.樹脂・ゴムの配合・混練技術の基礎とそのノウハウおよびトラブル対策

(1)日時 7月7日  10時30分-17時30分まで

(2)場所:【東京】日本テクノセンター研修室

(3)参加費:48,600円

*新たに開発しました難燃化技術につきましてもご説明いたします。
 

2.機能性高分子におけるフィラーの分散制御技術と処方設計

(1)日時 8月25日  13時-16時30分まで

(2)場所:高橋ビルヂング(東宝土地(株)) 会議室 (東京都千代田区神田神保町3-2)

(3)参加費:43,200円
*新たに開発しましたLED用熱伝導樹脂につきましてもご説明いたします。また、新規難燃化手法に用いる材料の紹介もさせていただきます。

以上

カテゴリー : 宣伝

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2016.06/16 桝添都知事辞職

昨日桝添氏の辞職が決まった。いつ辞職するのか連日ワイドショーで報じられていたが、猪瀬氏の裏事情に関するコメントもあり、ご自分で辞職のタイミングを決められない状況もあったようだ。
 
豪華な海外出張はじめ桝添氏の道義的責任に端を発した問題はようやく決着した。桝添氏の場合には、8割以上の都民が早く辞めて欲しい、と思っていたのだから早く辞職すべきだったと思う。
 
それが、「一流都市の知事が二流のホテルに泊まって恥ずかしくありませんか」というとんでもない開き直りで、周囲の事情よりも本人が辞職する必要無しと考えていたところが見られる。まったく不誠実な人である。
 
ドラッカーは誠実で真摯な人をリーダーに選ぶべきと述べている。当たり前の話であるが、これを社会で実践することは結構難しい。誠実真摯に生きることは苦労を当たり前として受け入れる勇気が必要で、そのような人を見極める目は、選ぶ側にもある程度誠実で真摯な生き方を理解できる生活態度が求められる。
 
そもそも63年の今までの人生で誠実で真摯と思われる人物に出会った経験は数えるほどしかない。プチ誠実真摯な人は多いが、その中には口先で装っている似非誠実真摯な人もいた。
 
桝添氏もその著書を読む限りは誠実真摯な人柄に見えるが、実際の行動に現れた人柄は似非誠実真摯であるだけでなく、一連のドタバタからは傲慢な専制君主的な人柄が伺われた。だから日に日に都民から辞職を求める声が高くなり、80%以上にも達したのだ。
 
猪瀬氏は政治家の進退の難しさを語り桝添氏を擁護したが、それでも都民の怒りは収まらなかった。辞職の決意に至るまでの言動を見る限り、本当に不誠実な人物だと誰もが感じたからだろう。スイートホテルの問題を指摘されたところで真摯に反省し、辞職しておれば少しは同情の声もあったかもしれない。しかし、第一声が開き直りともとれる傲慢な言い訳だった。
 
ゴム会社で高純度SiCの事業を住友金属工業とのJVとして立ち上げたときに、FDを壊される嫌がらせをうけた。もしあのとき犯人が素直に非を認めてくれたなら当方が辞めるまでに至らなかったが、問題を公にした当方は誠実について真摯に考え、一途に貢献のみを考え6年間の死の谷を我慢した思い出を大切にするため転職を決意した。
 
転職後はバブルがはじけて、転職先の部署がリストラされ、やがて窓際単身赴任と散々な人生だった。ただ、真摯に自己実現の努力を重ねゴム会社におけるセラミックスのキャリアをしのぐ高分子技術者として成長できたのではと思い、現在の業務に励んでいる。7月と8月には下記セミナーを行います。
 
   

1.樹脂・ゴムの配合・混練技術の基礎とそのノウハウおよびトラブル対策

(1)日時 7月7日  10時30分-17時30分まで

(2)場所:【東京】日本テクノセンター研修室

(3)参加費:48,600円
 

2.機能性高分子におけるフィラーの分散制御技術と処方設計

(1)日時 8月25日  13時-16時30分まで

(2)場所:高橋ビルヂング(東宝土地(株)) 会議室 (東京都千代田区神田神保町3-2)

(3)参加費:43,200円

カテゴリー : 一般

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2016.06/15 科学の方法(4)

1979年にゴム会社に就職したが、当時の高分子科学は今ほどの進歩は無かった。この40年間に高分子科学にはものすごい進歩があり、東工大中浜先生がリーダーとなり進められた「高分子精密制御プロジェクト」は、その中間点の進歩を産業界に導入するための役割として大きな成果をあげた。
 
また、そのプロジェクトよりも2年前に文科省のプロジェクトとして名古屋大学(当時)土井先生によりOCTA開発プロジェクトがスタートしている。このOCTAとは、高分子の本格的シミュレーターである。
 
アカデミアにおける進歩は、大学の授業の中身を見ても理解できる。当方が大学で学んだ高分子科学といえば重合が中心の科学である。すなわち合成化学の延長線上にある科学である。今は高分子物性論が必ず2単位どこの大学にも存在する。
 
当方も恥ずかしながらその特論として、2つの大学で特別講義を行っている。福井大学では、セラミックスから高分子材料まで含めた講義を客員教授として2単位分させていただいた経験がある。
 
セラミックスから高分子材料まで扱ったのは、1980年代に日本中を熱狂的にしたセラミックスフィーバーを経験し、ゴム会社で高純度SiCの事業を立ち上げた経験があったからだ。セラミックスと有機高分子では水と油のように全く異なった分野に見えるかもしれないが、その材料開発の方法論の視点では同じである。そこを伝えるために講義の内容は当方の開発体験を中心に構成した。
 
仮に科学の視点で見ても当方にはセラミックスも高分子材料も同じに見えるが、それぞれの専門家の先生方は全く異なる分野だという。材料科学として捉えてしまえば、金属だろうがセラミックスだろうが皆同じ土俵で議論できるはずだ。
 
粘弾性論はそのような視点で生まれた学問ではないだろうか。そして、高分子材料に適用してみて材料科学として幾つかの限界が指摘されている。今粘弾性は、高分子1本の粘弾性測定からはじまり、それを積み上げる形で研究が進められている。OCTAもそのような思想で考え出されたシミュレータで桁違いの大きさまでズーミングできる。
 
面白いのは未だに旧来の粘弾性論で高分子の論文を書いておられるアカデミアの先生がおられることだ。1979年にであった当方の指導社員はアカデミアに属していないがすでに粘弾性論が10年後には高分子材料で使われなくなる、と予言していた。当時は科学が技術を先導していた時代だったが、指導社員の言葉は技術が科学を先導し始める兆候と当方は捉えた。

 

カテゴリー : 一般

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2016.06/14 配合設計(たとえば難燃性樹脂)(2)

機能性材料の構造と機能の相関性について技術開発経験を重ねると、多機能の高分子材料を処方設計する時、最初に製品品質を創り込める構造を設計し、それを実現できるプロセシングを選択する、という手順で行うようになる。
 
 さらに達人になれば、ソフトウェアー開発に採用されているアジャイル開発と同様に、いきなり多機能高分子材料を組み立て、市場に投入する荒技を使う。
 
 アジャイル開発とは、市場の中で製品を創り上げてゆく開発手法である。機能性高分子材料については、20世紀に多くの特許が出願されており、機能を創出する手段や方法の情報が多数公開されている。
 
 すなわち、機能性高分子について、その機能実現の手段や方法が多数の情報のおかげで分かっているので、特許に抵触しないようにシステムを設計し、材料の処方をいくつか組立て、とりあえず造った材料をユーザーに評価してもらい、ニーズに最も近い材料を選択する、という手段を採ることが可能となる。
 
 そして、選択された材料についてタグチメソッドで最適化、という手順で開発すれば、新材料を容易にかつ迅速に創出できる。このような開発手法がアジャイル開発である。
 
 中国の某ローカル企業をこの手法で指導したところ、UL94-V0に合格する新規の熱伝導性ポリマーアロイを3ケ月で実用化できた。さらに同時に開発を進めた光散乱樹脂では、半月の工数というスピードでお客様に採用されている。
 
 この二種類の新材料開発において、UL94-V0の認証取得までの期間が最も長かった。光散乱樹脂の開発では、あらかじめ熱伝導性ポリマーアロイの開発スタート時に、この材料と一緒に、ほぼ本命となる仮配合でUL申請を行い、熱伝導性ポリマーアロイの開発を終了してから、光散乱樹脂の開発を始めている。その結果、光散乱樹脂の開発が完了した時に、熱伝導性ポリマーアロイと光散乱樹脂のUL認証を同時に受けることができた。
 
 この途中段階では、光を散乱するために添加しているシリコーンビーズの大きさや量の最適化をお客様に協力していただき、開発速度を速めている。
 
 ここで重要となってくるのは評価技術で、市場投入時に大きな問題が起きないことを開発初期に実験室で確認できるレベルが要求される。
 
 アジャイル開発を行う場合でも旧来の手順で開発する場合でも、処方設計技術と同様に物性評価技術は重要である。19日から難燃性評価技術を取り上げ、その処方設計手法と評価技術について説明する。

カテゴリー : 高分子

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2016.06/13 配合設計(たとえば難燃性樹脂)(1)

 機能性材料を設計するには、セラミックスや金属であれば、その機能を持った結晶構造を選択するところから始まる。例えば、ペロブスカイトは高誘電体あるいは圧電体などの性質を持った化合物群で、各種機能材料を設計するときに利用されている。
 
 このような構造と機能との関係を備えた材料について、金属やセラミックスの教科書を見ると、強相関物質という言葉が使われている。例えば銅のような導電体では、その結晶構造を構成する原子の原子間距離が変化したとき、それに相関して導電性が変化する現象が観察されており、ここから強相関物質という概念が生まれている。
 
 この材料の構成因子と機能が相関するという概念は、機能性高分子材料を取り扱うときにも重要で、2000年前後に強相関ソフトマテリアルという言葉が生まれている。ゆえに機能性高分子材料の開発では、目標とする機能と相関する因子を材料に創り込む考え方で設計を行う。
 
 例えば、導電性材料を高分子の一次構造で実現したいならば、ポリアセチレンやポリアニリンにドーパントを組み合わせた設計になる。高次構造で実現したいならば、絶縁性の樹脂に導電性フィラーを添加するシステムを選択して材料設計を行う。
 
 前者ではロバストの高い導電性を容易に実現出来るが、後者では導電性フィラーの分散状態で引き起こされるパーコレーション転移という悩ましい問題がつきまとう。しかし、大半の高分子は絶縁体なので、後者をうまく使いこなす技術は重要である。
 
 ところで、機能性高分子材料を電子部品に適用するときには、電気的機能以外に難燃性という機能も多くの分野で必要となる。
 
 燃えやすい高分子材料を燃えにくくするためには、難燃性のフィラーもしくは難燃剤を添加しなければいけないが、材料の難燃性機能と難燃剤あるいは難燃フィラー添加量との間にも相関性が現れる。

カテゴリー : 高分子

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2016.06/12 火遊びにアカハラ

円楽師匠の不倫が騒がれている。記者会見の答弁では最近の不倫答弁とは異なり、ある意味開きなおって堂々としていた。おまけに昔は芸人として当たり前のことだと言わんばかりの言い訳も---。
 
福島原発の騒動の最中にもスポークスマンだったN審議官が怪しい報道で交代になった。その後ワイドショーでは執拗な追っかけが始まり、本人も帽子をかぶりマスクをして通勤をする姿などが映し出されていた。少しかわいそうな気がした。男女の色恋沙汰は燃えるという連想から火遊びという言葉が生まれたらしいが、マスコミの対応も異常な加熱ぶりである。
 
不倫は文化だ、と訳の分からないことを言った役者もいたが、今の社会は円楽が記者会見で述べていたように時代がかわったのである。すなわち社会があらゆる人にモラルを求めるようになったのである。
 
モラルだけではない。優しさも今社会全体で求められている。社会とはドラッカーが指摘しているようにその時代の人間が創り出してゆくもので、具体的に初めから存在するわけではないのだ。社会の無い暗い時代も歴史には存在した。また現代でも社会の存在しない地域がある。
 
パワハラはかなり昔から存在した言葉だが、最近出てきた言葉にアカハラがある。最初この言葉を聞いたときに赤ハラだと思った。火遊びのニュースの次に報じられたニュースで聞いたためだが、「火=赤」という連想で誤解した。ニュースを聞き終わってアカデミックハラスメントと知った次第である。
 
理研所長は大学教授時代に鬼軍曹という異名を取られるぐらいの教育熱心で厳しい先生だった。今ならアカハラと糾弾されてもしかたがない先生は鬼軍曹以外にも多数在職していた。40年前の大学は、大学紛争がおさまり研究に教育に先生方が燃えていた頃で、一方でそのような先生方を民主化の名の下に批判する人たちが少しずつ大学に増えてきた時代でもある。
 
当方は4年生に進学するときにじゃんけんで負けて厳しいという評判のため人気の無い講座へ進級したが、今の人生からこの時代を思い返すと生き方の原点となる選択だった。有機金属化合物の合成研究がテーマだった。また、極めてアカデミックな講座で科学の王道を教育された。
 
教師にでもなるつもりで第二外国語の単位を取らずに4年に進級したが奨学金を準備するから大学院へ進級しなさい、と言われただけでなく、教授によるドイツ語のマンツーマンの授業が毎朝8時から始まった。雑誌会にはドイツ語の論文と、ドイツ語を理解していない生徒に対してほとんどイジメである。おかげでドイツ語は満点に近いなど想定外の成績で大学院に合格したが、ただこの時のアカハラが無ければ今の技術者人生も無かったのだろうと思う。

カテゴリー : 一般

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2016.06/11 桝添都知事の飛び火

東京都知事の公私混同ぶりが飛び火し、各企業内の公私混同がネットで話題になっている。写真会社に転職してびっくりしたのは、他社から転職された年配の方が目に余る公私混同ぶりを発揮していたことだ。
 
例えば、出張で羽田空港を使うに当たり自宅からタクシーで向い、当方は電車で行ったところを飛行機で出張されていた。飛行機を使った理由は話されなかったが、寄り道をされていたことは、会社への出張旅費請求内容から読み取れた。
 
これは序の口で、会社のノートPCを自宅へ持ち帰り、地方で下宿している息子へそのPCを使用させていた。当時はMS-DOSの時代であり、FDベースでPCを使うことが多く、ノートPCで機密が漏れることはなかったが、棚卸しの時にその実体がわかり問い合わせたら、紛失で処理できないか、と呆れる回答をしてきた。
 
おそらく転職前の会社でも相当の公私混同の常習者だったろうと思われたが、およそゴム会社では想像のできない感覚だった。これはしつけのたぐいだと思う。企業内で文化として公私混同を許さない風土であればこのようなことは起きない。
 
転職した写真会社もゴム会社同様に公私混同に対して厳しい会社だったが、少しゆるいところもあった。それもあり、この年配の方がしつけられず野放し状態だった。
 
公私混同の厳しい会社でしつけられたおかげで、一番良いと今でも感じているのは、専門書を自腹で購入する習慣だった。昔自腹で購入した専門書が資本として今の仕事に活かされている。高価なCMCや某セミナー会社の書籍も多数ある。ちょっとした財産だ。
 
学生時代に某会社から大学教授として赴任された方がおられ、その方の部屋を見てびっくりしたのは本が少なかったことだ。前任者の教授の使っていた書棚は空っぽであり、この先生大丈夫かと真剣に心配した。
 
その先生曰く、専門書は会社の費用で買っていたので全部会社においてきました、と言うことだった。その公私混同をしていない立派な回答に感心するとともに、がらんどうの教授室を寂しく感じた。学生だった小生の方が、その先生よりもたくさんの本を所有しており、それも当時少し話題になった。
 

カテゴリー : 一般

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2016.06/10 科学の方法(3)

KKDという言葉は、いつの時代から誰によりどのような意図で考え出されたのか知らないが、「形式知と経験知でDo」と教えてくれたのは、新入社員時代の指導社員である。大学の教養部の哲学の時代に、形式知と実践知(経験知)、暗黙知の3つが知の形態と習っていたので、暗黙知が入っていない点を質問したら、新入社員だから暗黙知が無いだろう、という回答があり納得した。
 
しかし、KKDは、一般に「勘と経験と度胸」の略として使われている。ゴム会社に入社したときに現場の職長さんからKKDを教えていただいたときにもこの意味だった。ゴム会社では開発部門でもKKDという言葉がよく聞かれた。
 
おそらく指導社員の意図は、彼の経験知を伝承するから、科学の知識と一緒に用いて仕事をやれ、と言いたかったのだと思った。なぜなら、技術を科学の知識だけで開発するには無理がある、というのが彼の口癖だった。
 
ゴム会社の社内風土にもこの考え方は生きていて、新入社員の半年間の実習の間に営業実習や開発実習も含め、約5ヶ月間の現場実習が行われている。そして、技術職に対して生産現場である工場の実習が2ケ月間義務づけられている。
 
アカデミアの世界からいきなりこのような長期の現場実習で会社がいやになる人もいる。当方もその一人だったが、同期でこの期間に退職したのはたったの3人である。一人は6ケ月間の実習を終え、配属が決まる直前に退職している。
 
その彼は、「この会社には技術という物が無い」といって去って行った。当方の印象と真逆である。当方は工場実習で科学と技術の違いを感じ、開発部門の実習成果を発表するプレゼンテーションにおいてS専務から技術という物を明確に指導された。ゴム会社には科学で説明がつかない技術が現場にいっぱい転がっていた。また、研究所以外の製品開発部門では科学よりも技術の方法が重視されていた。
 

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2016.06/09 科学の方法(2)

KKDをバカにしてはいけない。KD(勘と度胸)だけの場合は当方も疑問を持っているが、経験知(実践知)を重視し、科学の情報を活用し、うまく勘を働かせて技術開発を行うならば、KKDは企業で許される方法だと思っている。
 
すなわち、KKDのKの意味が科学の情報(K)と経験知(K)であり、DがDOの時には、効率的な技術開発ができる。ここに暗黙知(A)が加わり、KKAD(形式知、経験知、暗黙知でDO)となれば、理想的な技術開発方法だ。
 
科学と疑似科学の境界問題について解が得られているかどうか知らないが、20世紀末のビジネス界において歓迎されたロジカルシンキングは、むしろその境界を著しく不明確にしたように思う。ロジックでごまかす輩も現れた。
 
例えば燃費不正問題はその典型であり、いくら科学的に正しく測定されたとしても規格の手順通りでなければアウトとなる愚直な考え方がないがしろにされた。おそらく、規格通りでなくても規格値同様の結果が得られる、と説明がロジックにより正当化されていた、と思われる。
 
現代のビジネスの現場では、大局的にみればおかしな結論になっても、ロジック(屁理屈)をつなげてあたかも正しいような議論を展開し説得するようなシーンが時々見られる。研究開発の現場も同様で、ロジックさえ正しければすべてが正しいような誤解がある。
 
技術開発では、まず機能が正しく動作することが重要であり、そのロバストを高めることが重要課題となる。機能が仮に科学で裏付けられてなくてもロバストが高いならば、それはりっぱな技術のはずであるが、高純度SiCの技術は、当初研究所で受け入れられなかったばかりでなく、日本化学会で最初の発表をしたときに、不完全な研究と非難された。
 
本来学会の場は議論をする場であって、成果を否定する場ではないはずである。しかし、新しい現象の提示とそれから導かれた無機反応の均一性が議論されることなくKKDで見出された前駆体技術を全否定されたのは悔しい思い出である。学会賞を受賞するまで10年以上かかった。そして、その時には審査員になっていた。

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2016.06/08 科学の方法(1)

イムレ・ラカトシュ「方法の擁護」ほど当方を力づけた本はない。この書は科学の方法論について論じた歴史的名著となる一冊に違いないと思う。また、同時にこれから蒸し暑く眠れない夜のお伴としてついて行くのに良い本である。数ページで深い眠りにつける。
 
日本では、1970年代に研究所ブームだった、と言われている。1970年末に就職したゴム会社には、その名残があった。ゴム会社の研究所には、ゴム合成会社を設立するような成功体験があり、科学的方法が、業務を進める上で強く求められた。
 
そのような環境で、レオロジストの指導社員に出会ったのは救いであった。科学的方法論に対して斜に構えていただけでなく、ご自分の専門領域に関しても自虐的に10年後にはゴム材料分野で使われなくなる、とつぶやくのが習慣だった。
 
写真会社に転職後、ビックリしたのは、仮説を立てて業務を遂行するように、と科学的に業務を進めることが強く求められていた。ゴム会社では研究所がそのような環境だったが、研究所以外の部署ではKKDが否定されることなく許されていた。しかし、写真会社は全社一色科学色に染まっていた。
 
郷に入ったら郷に従え、とばかりに、科学色をギンギラリンに塗り、学会発表も並行して行いながら業務を行った。若手部下が日本化学会から講演賞を受賞したり自らも二つほど賞を頂いた。しかし、左遷され、豊川へ単身赴任してからは、思い通りに仕事を進めた6年間だった。
 
そこでは、科学のパロディーの仕事と、KKDの仕事を並行で進め、KKDで成果を出している。ただし、周囲へのプレゼンテーションは科学で行うというサービスは忘れなかった。この6年間で確認できたのは、科学的方法の非効率性である。
 
科学は確かに現代技術の発展を加速させた。しかし、科学の情報があふれている現代においては、KKDは異常なスピードを提供してくれる。ちなみに、それは、基盤技術0の環境において提案から稼働まで半年でコンパウンド工場を建てられたほどのスピードである。この工場は退職まで不良率0で稼働している。
 
21世紀になり科学に問題を提起している事件が相次いでいる。STAP細胞の騒動はその代表であり、そのほか、15歳の少年がマヤ遺跡の発見をした事例も考古学者の科学的姿勢の問題を浮き彫りにした。あまり騒がれなかったが、iPS細胞のヤマナカファクター発見の手法は、優れた非科学的方法だった。
 
 
    

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