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2014.05/10 フローリー・ハギンズ理論(5)

リアクティブブレンドでは、反応条件さえ工夫すればχが大きなどのようなブレンド系でも相溶させることが可能である。また、バルキーな側鎖基を有するポリオレフィンにポリスチレン系TPEを相溶させる方法からエントロピーの寄与を確信し、そのヒントと過去の経験から新たなカオス混合装置を開発した。

 

この装置を用いると混合時のエントロピーをプロセスの中で下げることにより相溶を進行させることが可能と推定しており、緩和速度が遅い高分子の系ではTg以下に急速に冷却してやると室温で相溶状態を維持できる。

 

それでは非相溶系を均一に相溶させる方法は他に無いのか、とラテックスで検討してみた。モノマー構造でSP値が離れている組み合わせでコポリマーのラテックスを合成すると一応リアクティブプロセシングなので均一な構造のポリマーが得られる。条件によってはコアシェルのようなラテックスもできたりする。

 

それぞれのホモポリマーでラテックスを合成してそれを混合したらどうなるか。この実験ではコロイド化学の知識が少し要求されるが、安定な塗布液が得られたとして話を進める。この混合溶液で単膜を作成し強度測定を行うと、コポリマーの場合と同様に弾性率の高い方のラテックスが増加すると単膜の弾性率も上昇する。

 

5wt%前後ではコポリマーのほうが弾性率が高いが、10wt%程度ではほぼ同じ弾性率になる。但し、コポリマーに比較するとややヘイズが高い。得られた単膜の高次構造を調べてみると50nm前後の二種類の球を分散してできたような高次構造が観察される。この高次構造からコポリマーに比較してややヘイズが高いのもうなずける。

 

一応力学物性については、混練で得られる場合に比較し、相溶状態に近い物性となっている。また、光学物性についても10枚重ねで測定されたヘイズ値に差が見られる程度なので分野によっては使用可能な材料と推定した。完全な相溶系ではないが、二種類のポリマーが相溶したときに期待される物性を技術的に得る方法としてラテックスによる混合は一つの手段と思われる。

カテゴリー : 連載 高分子

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2014.05/09 理研の会見

昨日STAP細胞の論文について理研とその調査委員会の会見が生で報道された。専門性の高い内容にもかかわらず、一般会見が頻繁に行われている面白い事件だ。学位論文の20ページ以上を他人が書いた内容でごまかす科学を理解していない未熟な研究者が本来その役目をこなす能力が無いのに抜擢され、そのような抜擢を行ってしまうような管理能力の無い研究者集団の中で起こした事件について、これほど丁寧に記者会見を行っている例はこれまでないのではないか。

 

科学について詳しい方であれば、今回の事件は、一部の大学で行われている学位の適当な審査も含めいろいろな「些細なこと」と思われる不祥事が偶然積み重なった事件であると理解されているのでは。科学論文が「科学の真理」を追究するために厳格な倫理を守らなければいけない、と言われていても倫理的に問題のあることが日常平然と行われてきた結果である。

 

学位についていい加減な審査を行っている大学のあることは、審査された学位論文を読めばわかる。またその学位でも審査する先生が審査料とは別にお金を要求してくることもあるのだ。これは当方も国立大で学位を取得しようとして経験した事実である(注)。しかし、こうした問題はあまり事件として大きく扱われずそのまま隠れてしまっていた。

 

科学とは真理の追究で成立する世界である。また専門性が高くなればなるほどその道の研究者でなければその真理を判断できなくなるので性善説が前提となっていた。その世界では未熟も悪となるぐらいの厳密さを維持しなければ真理を明確にできない。

 

しかし、この掟も未熟な学習者に対してゆとり教育はじめ様々な「優しさ」でどこかに隠れてしまったのが現代の科学の世界で、そこで起きたのが今回の事件である。理研の鬼軍曹が「とうとう起きたか」と言われたように事件が起きる環境になっていたのだ。

 

学位論文に他人の書いた文章を引用文献も示さずコピペをしてはいけないのである。まずこれは確実にアウトで自ら学位を返上すべきである。厳格に判断すれば、たとえそれが一般記載であっても許されない。さらに学位論文の画像をその後の新しい研究の成果として用いているのもおかしい。自分で書いていて気がつかない、というのはあり得ないことなのだ。

 

今回の事件は「科学の真理」について厳格さを求めたために起きている。だから裁判でシロクロを出せないはずで、裁判で出せるのは「真理」の追究のために取られた手順に法律の視点で誤りがあったかどうかである。STAP細胞の騒動の科学的結論まで出すことはできない、という当たり前のことを理解しておくことは重要である。そもそも今回の事件で裁判に持ち込もうという発想そのものに疑問があるのだが。

 

(注)学位を取得したい人が申請先の先生からお金を要求された場合にどうするか。黙ってお金を払って学位を取得するのか、それ以外の方法となる。科学の世界では前者を選択してはいけないのだ。前者を選択した場合には永遠にこの問題が公にならない。またお金を払わず学位を諦めた場合には、お金を要求した事実を訴えることができるが裁判までするのかどうか。社会正義の観点ではそのような先生を懲らしめることも重要かもしれない。しかし御指導を受けた先生を訴える、という恩を仇で返す矛盾も生じる。だから問題を避けて国立T大で取得することを辞めて中部大学で学位を取得した。中部大学では学位審査料80,000円だけであった。それでも親身な御指導をいただけ、最後にはしっかりと試験と学位授与式までやってくださった。本当に試験がある、と伺ったときには涙が出てきた。アカデミアの使命を十分理解できる体制であり、学位の取得過程は大変だった。楽をさせようと、お金を要求してきた国立T大の教授の気持ちも幾分理解できた。しかし苦労した思い出はお金で買うことはできない。学位論文の大半は、某ゴム会社の現在でも継続されている事業の基になった高純度SiCに関する内容ですべて日本語で書かれており英文のコピペは無い。

カテゴリー : 一般

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2014.05/08 フローリー・ハギンズ理論(4)

1980年代に樹脂補強ゴムからポリウレタンやフェノール樹脂の難燃化、そして高純度SiCの事業立ち上げ、電気粘性流体の開発、超伝導セラミックスの開発など多種多様な研究開発を手がけたが、フローリー・ハギンズ理論(FH理論)に必ずどこかでお世話になった。

 

実務では低分子溶媒を用いてSP値を測定していたが、高分子を混合したときの状態予測では、教科書に書かれた高分子のスピノ-ダル分解のマンガを見ながら頭に状況を思い描いていた。もしOCTAのSUSHIがあったなら毎回利用していただろう。

 

有機高分子と無機高分子はそのモノマー単位が有機と無機なのでχは大きな値となる。すなわち絶対に相分離して均一に混ざらない組み合わせである。実例を示せばポリエチルシリケートとレゾール型の液状のフェノール樹脂を混合しようとしてもすぐに相分離する。

 

コロイドを撹拌する専用の混合装置を用いても撹拌しているときにも白濁し決して透明にならず、撹拌を止めるとすぐに二相に分離してくる。フェノール樹脂が重いので沈殿するのだ。とても分子レベルで均一になると思えない組み合わせである。しかしここへ両者の反応に共通して用いることが可能な酸触媒を添加すると様子が一変する。

 

撹拌中に相分離していてもその界面で反応が開始し、透明度が上がってくるのだ。ただしこれは最適な触媒が選択されたときだけで、不適切な触媒、例えば片方の反応速度を著しく早め、両者の反応速度差を大きくするような触媒を添加すると、片方のポリマーだけが反応してゲルになり沈殿してくる。

 

例えば硫酸を用いるとポリエチルシリケートの反応速度が速まりシリカが撹拌中に沈殿してくる。トルエンスルフォン酸であれば量を最適化しない場合にはフェノール樹脂のゲル化が進行し、撹拌中にフェノール樹脂のゲルとシリカとポリエチルシリケートに分離し悲しい状態になる。

 

適切な酸触媒を選択してやると、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂の界面で反応が進行し、相分離することなく均一のゲルが生成し、このゲルの炭化物を用いてSiC化の反応を行うと均一素反応の取り扱いが可能となりSiC化の反応エネルギーを求めることまでできる(注)。

 

すなわち、リアクティブブレンドは、1980年代にFH理論で相分離すると推定される高分子の組み合わせでも均一に相溶した状態を作ることが可能な唯一の方法であった。これが21世紀になるとリアクティブブレンドでなくても均一に相溶した状態を作ることが可能になり、PPSと6ナイロンが相溶したフィルムを製造できるようになった。材料技術の進歩である。

 

しかし、科学的には不明の部分が多いので科学の進歩ではない。このような場合世間では怪しい技術と捉えるが、STAP細胞と異なり再現性が高い、すなわちロバストの高い技術である。この技術については、退職後の研究成果をもとに来月6日に行われる高分子学会主催のポリマーフロンティア21で報告する。招待講演者として選ばれており1時間お話しさせて頂く。

 

(注)学位論文の一部である。当時2000℃まで計測可能なTGAが無かったので、真空理工(株)のご協力をえて、自ら心臓部分を手作りした。このTGAについては特許を出願したが30年前のことで、楽しい科学者人生最後の頃である。

カテゴリー : 連載 高分子

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2014.05/07 フローリー・ハギンズ理論(3)

すでに指摘したように教科書に書かれているフローリー・ハギンズ理論(FH理論)は、二次元平面の中に二種類の高分子を仮想的に混合状態にして押し込んだときの自由エネルギー変化を議論している。そして、このモデルではそれぞれの高分子のモノマー構造が重要な意味を持っている。換言すればモノマー構造だけで判断しているに過ぎない。

 

だからSMALLの方法というSP値の計算結果とχパラメーターはうまく相関する。実際の高分子を混合したときには、このモノマー構造以外に鎖状の高分子が取る立体構造にも自由エネルギー変化は影響を受けるはずである。

 

このような仮説で、側鎖基にバルキーな基を持ったポリオレフィン樹脂にポリスチレン系TPEを相溶させる実験を行った。どのようなポリステレン系TPEでも相容するわけではない。ちょうどポリオレフィンの錠に対してカギの関係になるような立体構造のTPEだけが相溶し、透明な状態になる。

 

10年以上前にD社お願いし、様々なポリスチレン系TPEを合成してもらい、この錠と鍵の関係を探す実験を行ったら、うまく16番目に合成されたTPEで透明なポリマーアロイを合成することができた。この実験結果は、モノマー構造だけでなく高分子の立体構造も高分子の相溶に効果があることを示している。

 

余談だがこのポリマーアロイでフィルムを製造すると偏光フィルムとなり、クロスニコルの位置にすると暗くなる。ベンゼン環が複屈折を持つためだが、この詳細の特許出願は成されていない。当時の開発目標とは異なる性質で特許出願ができなかったためである。もしご興味のあるかたは問い合わせて頂きたい。

 

この実験に成功すると、二種類の高分子が混合された状態で圧縮を受けるとどうなるかが興味を持たれる。メカニカルな力で強引に高分子を接触させるぐらいの状態にして、緩和時間以内に両者の高分子のTg以下に冷却すれば相溶した状態を保持できるはずである。

 

このような仮説で実験したのが先日書いたPPSと6ナイロンの相溶化である。これは運良く開発ステージが製品化直前で、PPS/6ナイロン/カーボンの処方を変更してはいけない、という状態でテーマを引き継いだので大手を振って実験ができた。ポリオレフィンとポリスチレン系TPEの時のようにこそこそ実験を行う必要が無かった。

 

 

カテゴリー : 連載 高分子

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2014.05/06 卓球世界選手権

昨晩日本は中国に完敗で、石垣選手が1ゲーム取っただけであった。この3日間毎晩卓球選手権を楽しみに観ていたが、昨晩はややつまらなかった。選手の目の色が石垣選手以外オランダ戦や香港戦の場合と少し違っていたからだ。

 

特に香港戦における平野選手の逆転劇では鳥肌がたったが、昨晩の平野選手にはそのようなシーンは無く、あっけなく終わった。中国が強すぎたのか?確かにすべて3-0で勝ち上がってきた中国は強いかもしれないが、オランダ戦や香港戦における日本選手の戦いぶりを観ると勝負に臨む意識や姿勢も大きく影響しているように思う。

 

中国戦で石垣選手が唯一1ゲーム取ったときにその様に確信した。世界ランキングが30位以上も異なる相手に対して1ゲーム取るのは大変なはずだ。実力以上の力が働かなければ勝てないだろう。たとえそれが相手の苦手意識だったとしても実力以外の要素である。勝負に勝つためには能力以外の要素を引き寄せる力も必要だと思っている。そのために誠実かつ真摯な日々の努力が必要なのだ。

 

32年間の研究開発経験でも能力を超える現象を何度も見てきたので、その努力の重要性を信じている。例えば半導体用高純度SiCの合成に初めて成功したときには原因不明の電気炉の暴走という事件があった。但し、その暴走のおかげで最適なプロセス条件がたった一回の実験で見つかり、ゴム会社から2億4千万円の先行投資を受けることができた。

 

PPSと6ナイロンを相溶させるプロセシング技術を開発した時においても、運良く押出機の能力で必要な剪断速度が得られる実験環境が目前にあり、試作機を新たに立ち上げなくとも押出機を含むシステムをそのまま試作機として活用できた。また、ポリオレフィンにポリスチレン系TPEを相溶させる実験では、それを担当していた派遣社員のモラールが下がり始めた16番目(注)のTPE合成条件で初めて相溶し透明になるポリマーが見つかった。

 

さらに驚いたのは、昨日の地震である。実は6月6日に高分子学会主催ポリマーフロンティア21が開催され、その招待講演者に選ばれているが、そのために必要な資料が紛失していて、予稿集を書くときに苦労した。退職者の立場で公開されている実験データは重要である。講演までに探さなければいけないが、と悩んでいたら、震度5弱の地震のおかげで資料棚に積み上げてあった資料の一部が崩れ落ち、なんと崩れた資料の一番上に探していた大切な資料が現れたのだ。これにはびっくりした。

 

 

カテゴリー : 一般

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2014.05/05 フローリー・ハギンズ理論(2)

テルマエロマエ2を観た。前回同様にばかばかしいお話しで無条件に面白かった。現代の温泉からアイデアを拝借し古代ローマの風呂を発明する、という方法は技術における発明の一つのやり方である。毎回平たい顔の部族として日本人が紹介されるが、古代ローマ人を演じているのも日本人の俳優である。同じ日本人でもその顔は立体的に大きく異なるのである。

 

フローリー・ハギンズ理論では、立体的に大きく異なる2種の高分子を、二次元平面の格子の中に押し込んでその自由エネルギー変化を論じている。高分子が平たい形態をとって挙動しているならば、この二次元平面における考察でうまく説明できる。しかし、高分子はその長さ方向にも様々な形をとり、これをコンフォメーションと呼ぶが、そのエントロピー変化はこの理論において無視されている。

 

テルマエロマエでは、時空を越えた古代と現代の往来の表現をオペラの歌声とともに高速の流れとして表している。今回はその流れの表現として水洗便所まで飛び出した。そして太った関取が時空の流れの中で変形せず、詰まってしまう。詰まってしまったのに次のシーンではうまくワープしているのである。ばかばかしい。

 

2種類の混合された高分子の融体を細いスリットに高速で通したらどうなるか。恐らく大きな剪断応力が発生し、分子は長く引き延ばされる。1mm前後の厚みで幅2cmのスリットへPPSと6ナイロンを混合し押し込んだら相溶し透明な樹脂が流れ出してきた。GPCで分子量分布を測定しても特に低分子が増えたというわけではないので、大きな剪断応力がかかっても分子の断裂は起きていない。

 

本来非相溶系の組み合わせがとんでもない領域にワープしたのである。そのままPPSのTg以下へ急冷すれば6ナイロンが相溶した材料ができる。その材料で作られたフィルムはPPS単独の場合に比較し、もの凄く靱性が向上していた。

 

 

カテゴリー : 連載 高分子

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2014.05/04 フローリー・ハギンズ理論(1)

ポリマーアロイを設計する際によりどころとなるのは、高分子の相溶を扱うフローリー・ハギンズ理論(FH理論)であるが、この理論のモデルは極めて単純で実際のブレンドされた高分子を議論するには不十分である。

 

この理論ではχパラメーターが定義されているが、高分子の立体的な構造の寄与、すなわちスター型とリニア型の差異を議論することができない。また、低分子の混合から導かれるSP値と相関するがこれも高分子の分子量のことを考えると気持ち悪い。

 

実務では、低分子溶媒に高分子を溶解しSP値を求めているので、χパラメーターで議論するよりはSP値で議論していることになる。またFH理論は単純な格子理論から導かれたものであり、高分子のモノマー単位(構成単位)をそれぞれの格子に隙間無く当てはめて考えているので、そのモデルで扱える高分子は限られる。

 

実務で用いている方法に近い研究から高分子のSP値を求める計算方法(Smallの方法)が導かれている。官能基の引力定数表をもとにモノマー構造からSP値を計算するのだが、経験的には60%前後の精度で当てはまるように思われる。

 

かつてラテックスの分子設計ではSmallの方法を用いていたが、40%前後ははずれたために手直しが必要だった。具体的にはPETとゼラチンとの接着層の設計で使用していた。PETのSP値に合うようにラテックスを設計するが、実際に接着力を計測すると、40%前後はほとんど接着しなかった。そのためラテックスのモノマー構成を見直し、再度合成するのだが2-3回の試行でうまく接着できるラテックスが見つかった。

 

これをOCTAのSUSHIを使って検証してみても同じような確率である。SUSHIにしても相溶の判定はSP値を用いているからだが、面白いのは界面幅というパラメーターだ。このパラメーターは、おおよその相溶性のズレを予測する時に使えそうである。

 

カテゴリー : 連載 高分子

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2014.05/03 ヨドバシカメラの早期退職

ヨドバシカメラを10日でやめた新入社員の話がインターネットで話題になっている。何のことかと調べてみたら、ヨドバシカメラの採用チームの担当者が10日でやめた新入社員を説得した体験についてブログに書いていた。それも前編と後編にわけて書いているのだから、何かアピールしたかったのだろう。

 

このブログについて前編後編とも読んでみたが、読み手により判断が分かれる内容である。間抜けなブログと判断する人もいるかもしれない。あるいは採用担当に同情する人もいるかもしれない。だからインターネットでも議論しやすく意見がいろいろ出ているのだろう。ブログにはこのような書き方や内容が受けるのかもしれないが、ヨドバシカメラという企業に対する印象を左右しかねない内容である。

 

「入社10日目でアルバイトと変わらないつまらない仕事だからやめる」、と正直に言っている新入社員を説得しているのである。ブログを読んでいると、説得している採用担当もその点を認めているように思われる。つまらない仕事しか無い会社なのだろう。

 

もっともデズニーランドのような誰もが行きたくなる楽しい会社であれば、給料を払うのではなく、社員から入社料を頂かなくてはならない。一般に会社の仕事には快楽的な楽しさの要素は少ないかほとんど無いはずだ。そのうえで「働いて幸せ」という採用担当の価値観を説いて聞かせ、辞めた後の人生の幸せを願っている、という内容である。

 

この採用担当はどこまで真剣に新入社員の立場まで考え説得しているのか疑問である。新入社員はただ公務員になりたかったが訳あってヨドバシカメラに入ってみたものの勤務している時間がもったいないから辞める、公務員試験の勉強を集中して行いたい、と言っているのである。

 

当方が新入社員時代に「この会社にはメーカーとしての技術は無い」と言って6ケ月の新入社員訓練を受けて配属の日に退職願を提出した同期がいる。ゴム会社としては大損である。たまたま研修中に交流する機会があり、その個性も含め退職理由も理解できたが、今や某一流企業の社長である。かたや、「技術が無いから僕はがんばる」といってゴム会社で高純度SiCの事業を立ち上げ、頑張ったにもかかわらず気がついたら写真会社を早期退職していた、というサラリーマン人生もある。貢献と自己実現を十分に実践してきたが、「働いて幸せ」と考えたことは無い。「働く場所がある幸せ」は感じていたが。

 

写真会社で退職願いを出しても「もう少し後でやめれば、優遇制度の退職金上乗せ額が増えるかもしれない」と言ってくれた人もいて、「確かに業績が良くないからそうなるかもしれないが、追い出されて辞めるよりは」、と答えるのが精一杯である。新入社員で会社を辞めるときと、サラリーマンの晩年で会社を辞めるときでは、その動機は全く異なる。サラリーマンの晩年は「働く場所」が年齢とともに無くなるのである。無くなってから辞めるのか、無くなる前に辞めるのか、辞めてからの苦労を考えなければ、幸せ感を持って辞めた方が精神衛生上好ましい。

 

ヨドバシカメラの新入社員は、説得されなくても公務員という夢を持って会社を去った。若くして会社を去るのはその会社に魅力が無いか何か問題があるときである。おそらく社会に歓迎される話は新入社員の早期退職ではなく、60過ぎたら仕事を自由に選べる会社の話題だろう。弊社はその様な会社を目指して頑張っている。

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2014.05/02 有機高分子と無機高分子の混合

高分子のプロセシングに慣れた1980年代には、セラミックスフィーバーの嵐が吹き荒れ、セラミックスの高純度化が話題になっていた。高温度で安定なファインセラミックスを合成後高純度化するには再結晶化以外に手法が無くプロセスコストが問題となっていた。

 

例えば、半導体用SiCであればアチソン法でインゴットを大量に生産できるが、その純度が低いため昇華再結晶プロセスが必要となり、プロセスコストが嵩み当時1kgあたり10万円以上の価格で取引されていた。ジメチルポリシランを用いる高純度化プロセスも提案されていたが、前駆体となる高分子の価格が高いという問題があった。

 

カーボン源としてフェノール樹脂(当時350円/kg)、Si源としてポリエチルシリケート(当時750円/kg)を用いることができれば、低コストで高純度SiCの前駆体高分子を合成可能となる。しかし、χが大きなこの二種の高分子を均一に混ぜて高温度まで均一なポリマーアロイを合成することは困難に思われていた。

 

ここでワンショット法の知識が役立ち、酸触媒を用いて安定な前駆体を合成することに成功した。この方法で合成された前駆体がどのくらい均一であったかは、前駆体を炭化した電子顕微鏡の写真と反応速度論の解析結果から推定された。

 

すなわち前駆体高分子から得られた炭化物はSiO2とCが分子オーダーで均一になっており、その炭化物を用いてSiC化の反応を行うと均一素反応の取り扱いが可能であった。この方法で合成されたSiCは半導体分野の製品に用いるには十分な純度であり、現在でもピュアベータという商品名で事業が継続されている。

 

高純度SiCの反応機構は、均一素反応の取り扱いで解析できたので分子レベルの均一性を達成していると推定され、これはχが大きな高分子の組み合わせを「反応させて」均一にする手法の効果である。このようにリアクティブブレンドは、ラテックスで二種類の高分子を混合するよりも高いレベルで高分子を均一にできる。

 

構造の異なる高分子を二種以上混合するプロセスが必要となるケースは多い。そのとき用いられる考え方は、フローリー・ハギンズ理論である。この理論によれば樹脂補強ゴムの相分離や、それがプロセスの影響を受けロバストの低い条件が存在するのも理解できる。また、χの大きな高分子を組み合わせて均一に混合された材料を設計したい場合には、ラテックスで混合する手法よりもリアクティブブレンドが有効であるが分子構造に制約が多い。

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2014.05/01 カオス混合装置をどのように考案したか

発明の方法には、科学的成果を科学的に展開し発明に至る方法以外に、蓄積された経験を基に、要求される機能を実現する方法を探り、逆向きの推論を活用して技術を構築する方法もある(www.miragiken.com)。

 

PPSと6ナイロン、カーボンの処方をコンパウディングしてできる構造は、PPSと6ナイロンが非相溶系なので、バンバリーを使用したときにできる特許の図(特2010-195957)に示したような、PPSに島として分散している6ナイロン相にカーボンが分散した高次構造、あるいは二軸混練機を使用したときにできるPPS相にカーボンと6ナイロンの島相がばらばらに分散した高次構造となる。

 

カーボンのクラスターの状態で抵抗が大きく変動するパーコレーション転移をうまく制御するためには、カーボンを島相に閉じ込めた前者の構造が好ましいが、この構造では6ナイロン相の弾性率が上がり、材料全体の靱性を劣化させてしまう問題がある。後者では材料の靱性について柔らかい6ナイロンが分散した効果でPPS単一組成のマトリックスよりも改善されるが、カーボンのクラター制御が難しく、押出成形した時にベルトの面内抵抗分布が大きくばらつく。

 

すなわち、抵抗制御の観点からは前者が好ましく、ベルトの力学物性の観点からは後者が好ましい高次構造である。これらの実験結果から最も望ましいと期待される構造は、非科学的ではあるが、6ナイロンがPPSに相溶しカーボンが弱い凝集力で島相となっている高次構造である。この考えに至ると、6ナイロンをPPSに相溶させるプロセシングを実現する技術が必須となることが見えてくる。

 

非相溶系であるPPSと6ナイロンを相溶させるプロセシングは、フローリーハギンズ理論を信じる限りリアクティブブレンドだけとなる。この点については後日述べるが、もし二軸混練機のような連続式混練機で実現できたならば、マトリックスのTg以下の温度で相溶状態のまま急冷すれば、複写機の使用環境でその相溶状態が保持された材料になることは、高純度SiCの前駆体高分子を合成した経験から容易に思いつく。

 

このプロセシングは、二軸混練機からストランドを急冷して引き取れるようにすば実現できるので一般に行われている方法で容易である。残るのは、二軸混練機あるいは類似の連続式混練機で相溶状態を創りこめるかどうかという問題である。

 

この問題解決に向けて、二軸混練機以外に剪断力の大きいKCKと呼ばれる石臼式混練機で複数回混練したり、二軸混練機とKCKを組み合わせたりしてPPSと6ナイロンが相容するかどうか実験したが相溶しなかった。そこで、ゴム会社時代からの経験を総動員してカオス混合装置を試行錯誤で工夫し考案した。非科学的で怪しいかもしれないが、STAP細胞と異なり、現在も生産で使われているのでこれは本物の技術である。但しそこで起きている現象は現代の科学のレベルでは非科学的現象として扱われる。

カテゴリー : 高分子

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