1970年代に高分子の難燃化に関する研究が進み多くの難燃化に関する専門書が出版された。そこには主だった難燃剤の難燃化機構が書かれていた。リン酸エステル系難燃剤であれば炭化促進剤としての触媒効果とか、ハロゲン系難燃剤であればラジカル補足剤や空気の遮蔽効果などが説明されていた。しかし、多くはある特定の事例からその機構を推定しておりすべての場合に当てはまるのかどうか不明であった。
実務で高分子の難燃化研究を担当したときにこの時代の専門書にはお世話になった。あれから30年経ちましたが当時の研究成果に比較しこの30年間の難燃化研究における進歩はわずかである。これは1970年代に高分子の難燃化研究がほぼ完成したためと思われる。難燃剤の実務においても当時最も高い難燃効果として知られていた三酸化アンチモンとハロゲンの組み合わせ系を凌ぐ新たに登場した難燃剤システムは、リン酸エステルと硼酸エステルを組み合わせた系ぐらいである。
ドリップを活用した難燃システムでは、難燃剤を用いなくともUL94-V2レベルを通過する処方を開発することができる。しかし、5VBレベルになると高分子の力学物性に影響が出るくらいの難燃剤を添加しなければならないのが現在の技術である。周期律表のほとんどの原子について、その難燃効果は1970年代に明らかになったが、これは単体で用いたときである。組み合わせ効果は多数あるのでこの方面の研究開発を担当されている方はチャレンジして頂きたい、と思っています。
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絶縁体高分子に導電性微粒子を分散し成形したフィルムは低周波数領域の電気特性が導電性微粒子の添加量に応じて大きく変化する。500Hz未満の周波数依存性を調べると無添加のフィルムに比較して周波数依存性が大きくなっている。そしてその変化が導電性微粒子の添加量に応じて変化している。また、この変化の仕方はパーコレーション転移とも関係している。
高周波数領域では大きな変化が生じていないのでこの変化は、導電性微粒子の電荷二重層の影響であることが想像される。この点に気がつくとマトリックスを構成している高分子との組み合わせや、添加剤の影響をうけることも推定できる。粒子の充填量が増加しクラスターを形成するようになるとそのクラスターの効果が大きく出ることも推定されパーコレーション転移との関係が見えてくる。
こうした想像は実験データを揃えてみると間違っていないことが分かってくる。そしてマトリックスの高分子をコンデンサーに見立て、導電性微粒子を抵抗で置き換え、コンデンサーと抵抗との接続モデルを組み立て数値シミュレーションを行うと実験データによくあう結果となる。このシミュレーションは2次元で行っても実験で観察される現象をうまく表現できる。これはクラスターの成長効果の影響が大きいためで、パーコレーション転移とインピーダンスの関係を見積もるシミュレーションであることに気がつく。
この導電性微粒子分散系フィルムの低周波数領域におけるインピーダンス変化が重要になってくるデバイスとしてカラーレーザープリンターやカラー多機能複写機に使用されている中間転写ベルトや帯電防止フィルムがある。しかし、これらのデバイス評価を表面比抵抗や体積固有抵抗だけの測定で済ませていないだろうか。インピーダンスと諸特性の関係を調べると今まで見えていなかった世界が見えてくる。研究開発のおもしろさである。
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愛知県沖の東部南海トラフ海域の地層で次世代エネルギー資源「メタンハイドレート」を取り出すのに成功したと、今月12日に政府から発表があったが、まもなく2週間になる。
発表では2週間安定にガスが出るかどうか実証する、とあった。途中経過だけでも報道されるかと思っていたら、2週間近く何もニュースは無かった。特にトラブルが無いためか?
メタンハイドレートはその採掘にコストがかかるという。ゆえにコストダウンが技術課題であるが、高分子の熱分解とどちらが経済的になるのか興味深い。高分子の熱分解でもメタンガスを取り出すことが可能だからである。
廃プラスチックはサーマルリサイクルが最も経済的と言われている。しかし、石油資源から作られたプラスチックスをサーマルリサイクルしていてはもったいない、ということで、分別回収し再利用が進められている。最近高分子のガス化技術の議論を聞いたことがない。
過去に高分子のガス化技術というアイデアがあったが、ガス化にエネルギーが必要で経済的ではない、という結論が出され、その後あまり議論されなくなった。しかし、バイオエネルギーなども注目され様々なエネルギーの可能性と最近の触媒技術の進歩に着目し、高分子材料の熱分解を再度検討しても良いのではないか。効率的に、エチレンやプロピレンを取り出す技術ができれば廃プラスチックスの位置づけが変わる。
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30年程前にレーザー加熱による熱天秤を発明した。セラミックスフィーバーの嵐が吹き荒れている時代に、世界で初めてポリエチルシリケートとフェノール樹脂を用いて有機無機ハイブリッドの合成に成功し、その応用分野としてSiC前駆体を考えていたからである。もし無機高分子と有機高分子が分子レベルで均一に混合されていたならば、反応速度論でSiC化の反応を議論できるはずである、という仮説を考えた。この仮説を実証するためにはSiC化の反応が生じる1600℃まで短時間に加熱可能な熱天秤が必要であった。
当時赤外線イメージ炉による急速加熱天秤が存在したが、加熱範囲が広いために、天秤を構成する材料の耐熱性の問題を抱えており、加熱できる上限は1500℃だった。サンプルだけ2000℃まで加熱できる熱源があれば、当時商品化されていた急速加熱天秤をそのまま使用できる、と考えた。YAGレーザーとその天秤を組み合わせ実験を行ったところ、30秒以内に2000℃まで昇温できることが確認された。しかし、YAGレーザーが照射されている部分では、炭素の昇華が生じていることが分かった。重量減少が起きていたのである。
YAGレーザーの直接加熱では、加熱部分が高温度になりすぎるので試料セルの近くに炭素のブロックを置き、その炭素を加熱して試料を温めることにした。しかし単純にブロックをYAGレーザーで加熱する方法は、ヒーターで加熱する方法と差異が無く試料の温度がなかなか高くならない。
炭素のブロックの形状を試行錯誤で工夫してみたら、YAGレーザーの同じエネルギーレベルで試料の温度が大きく変化する現象を見いだした。難しい現象では無く、熱伝導も光と同じで直進する、という事実を見落としていただけである。炭素のブロック形状を工夫し、間接的に試料加熱する方法で2000℃まで30秒以内に昇温できることがわかった。
直接加熱と間接加熱で昇温速度が同じかというと実際には差があるのだが、センサーの検知速度が遅いだけである。すなわち室温から2000℃までセンサーの温度が上がるのが30秒近くかかっていることが熱容量の計算からわかった。
試行錯誤ではあったが何とか2000℃まで30秒以内に昇温可能な熱天秤ができたのでSiCの反応速度を解析したところ均一素反応としての取り扱いが可能で、反応機構と完全に一致する測定値が得られた。すなわちSiCの前駆体は分子レベルの均一性を達成していたのである。超微粒子シリカなどを添加すると気相反応が生じ均一素反応から外れることも観察された。
この熱天秤の加熱系の経験は他の分野にも生かせる。例えば電子写真(レーザープリンター)の定着系は急速加熱ができれば使用時に通電することが可能となり省エネにつながる。現在のシステムは急速加熱が難しいのであらかじめ温めなければならない。定着ベルトをヒーターとする面状発熱体の考え方もあるが、この天秤の加熱方法と同様のベルトを間接的に急速加熱するアイデアも使えるのではないか。そのときに重要となるのは、熱天秤で工夫した内容である。
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2000年前後に環境関連の法整備がされたために樹脂のリサイクルが一気に進んだ。廃品のPETボトルは、価格が上がり現在は1kgあたり40円前後で取引されている。バージン樹脂の価格が130円/kg前後であるから、リサイクル材は約1/3の価格である。PETの原料価格は、90-100円/kgなのでケミカルリサイクルを行うならばかなり厳しい価格構成となる。
PETボトルのリサイクル材は主に卵パックなどに利用されている。食品衛生法でボトルtoボトルのリサイクルができないためである。ただしケミカルリサイクルであれば一度原料に戻すのでボトルへの活用は可能である。すなわち現在ケミカルリサイクルのボトルは流通しているが、廃品回収されたPETボトルを粉砕し洗浄しただけのメカニカルリサイクル材のボトルへの転用はされていない、と思っていたら、大手サントリーがメカニカルリサイクルのPET廃材をウーロン茶に導入したという。
本技術は、環境大臣賞はじめ幾つかの環境関連の賞を受賞したという。サントリーなのでおそらく多くの科学的な社内テストを繰り返し、メカニカルリサイクルでボトルtoボトルのリサイクルを行っても問題無し、との結論を得たのであろう。しかし一抹の不安はある。実はメカニカルリサイクル材を80%前後含む射出成形用樹脂を開発したときの経験である。
あるロットで突然射出成形品にシルバーと呼ばれる故障が多発し、射出成形できなくなったのである。原因を調べたところPETのオリゴマーが大量に含まれていた。バージンPETも含め試しにPETのオリゴマー量を調べてみたらメカニカルリサイクル材で増えていることが分かった。そして品質問題を起こしたロットでは極端に多いわけでは無いこともわかった。
すなわちオリゴマー量が多くなるとシルバーが多発すると考えると現象をうまく説明できる。そして、品質問題に出くわすまでは、ただ運が良くてオリゴマー量がすくなかっただけであった。リサイクル材を使用するリスクはここにある。すなわちバージン材では品質管理を科学的に完璧なまで可能だが、リサイクル材でそれを行うのであれば、粉砕された破片一つ一つを管理しなければならないはずである。しかし経済的にそのようなことは不可能である。
PETのオリゴマーについて体への影響は現在のところ不明である。また水への溶解も実験室で実験を行う限り問題無しとの結論が得られる。ただ、オリゴマー濃度が表面で高くなったときの試験結果は見たことがない。高分子ではオリゴマーが偏在する現象も起こりえることであり、先ほどのシルバーという故障も同様の現象で起きていた。メカニカルリサイクル材を使用した飲料用PETボトルが出回っていることを知り、最近はメーカーを確認してからPET飲料を購入することにしている。
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30年以上前寝具用ポリウレタンの開発を担当した。ポリウレタンは当時kg単価が500円以上したエンプラの仲間である。処方に依存しkgあたりのコストは100円前後変動する。この材料を発泡体にして寝具に応用していた。
すでに当時コスト競争になりかけており、高級ブランドを立ち上げても収益が増えない構造になっていた。高級寝具用ポリウレタンはややずっしり感ががあり重い。すなわち発泡密度が高いのである。発泡密度を下げればコストダウンできるのだが、このずっしりとした高級感を出せない。
そこで無機フィラーを添加し、重量感を持たせる開発を行った。無機フィラーはkg単価が安い、タルクや炭酸カルシウムが検討された。炭酸カルシウムは最も安価な無機フィラーでkg単価は40円-30円程度であった。タルクはそれより少し高い程度。ポリマーの比重は1より少し大きい程度だが無機フィラーの比重は、3前後の材料が多い。
kg単価が500円以上のポリマーに1/10以下の価格の無機フィラーを添加するので確実にコストダウンできる。さらに無機フィラーの比重が高いので、発泡倍率を上げることができ、さらにポリマーの使用量を低減できるので大幅なコストダウンが可能である。
しかしうまい話にはリスクがつきもので、この安価なフィラーを使用した発泡体のコストダウンはどこの会社も成功していなかった。一般にフィラーをポリマーに添加すると弾性率が上がるが脆くなる。すなわちポリウレタン発泡体がちぎれやすくなるのだ。フィラーを単純に添加しただけでは、5wt%の添加でも発泡体の引張強度は半分程度に低下した。
当時ポリマーに無機フィラーを添加したときの靱性の低下メカニズムは研究が盛んに行われていた時代で、社内には世間よりも数年先のデータが蓄積されていた。ゆえにこの無機フィラー添加による靱性改良の方向は分かっていた。すなわち無機フィラーの粒径を数μm未満にすることと凝集を防ぐことである。前者は分級技術で容易に対応出来るが、後者が難しい。粒径が小さくなると凝集力が増すために分散が難しくなるのだ。
分散を上げるには界面活性剤、というのが微粒子分散材料の定石で界面活性剤の探索が唯一の手段になるのだが、発泡体の場合にはセル(空隙)の制御のために界面活性剤を用いるので話がややこしくなる。異なる目的の界面活性剤の併用は技術的難易度が急激に高くなる。添加剤を技術手段として選択できない場合にはプロセシングが最後の手段になる。当時知られていたプロセシングをすべて試したがカオス混合以外に良好な分散手段は無かった。カオス混合の量産技術は当時無かった。
なんやかやと苦労しながら技術手段を探し、結局界面活性剤の合わせ技を多変量解析で見つけポリウレタン発泡体のコストダウンに成功した。可能性が有るならば、技術的難易度が高いからといって逃げるより果敢にチャレンジしたほうが解決は早かった。
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商品の帯電防止は難しい。導電性を向上させれば帯電を防げるのかというとそうではない。金属でも帯電するからである。すなわち静電気は電気をためる条件が揃うとそこに滞留する現象で、導電性を上げた場合には他の物質の静電気をもらう現象が生じる。ライデン瓶は、導体がガラス瓶の表面に塗られていることにより電気を貯めることができる。
帯電防止を行うには、表面比抵抗を10の6乗から10の11乗までの半導体領域に設計するのが経験的に好ましいとされる。研究結果によればインピーダンスの値で設計した方が実際の静電気故障とよく対応する。この結果は研究報告が少ないので特許ネタに使える。どのようにインピーダンスを測定したかにも依存し、それが特許のクレーム表現として使える。単なるパラメータ特許は成立しにくいが一ひねりすると商品に合わせた面白い特許になる。実際には科学的に同じ技術であっても、科学的な証拠が無いためにできる特許の権利書という側面を活用するネタである。
帯電防止技術に近い商品として電子写真システムがあるが、面白いのは電子写真システムに科学的に説明できない部分が未だに存在する点である。原理が説明できているから科学的に完成された商品、と思っている方も多い。しかし科学的に完璧に説明された商品であれば、教科書にもとづき製品設計を行うことができるはずだが、それができないのである。未だに経験に基づく部分が残っており、怪しい特許を量産できる分野となっている。
同じ画像形成システムであるが、後発のインクジェット(IJ)プリンターが普及したのは電子写真システムよりも機構が単純で科学的に解明しやすくコストダウンが容易だったためである。しかし、科学的にIJプリンターの限界が見えており、電子写真システムが今後も残っていく可能性が高いと思われる。電子写真プリンターの便利なところは、どのような紙に印刷しても同等品質が得られる点で、この長所は未だに他の方式がまねできないところである。
電子写真システムの科学的な解明が進まない点は、画像形成に使用するトナーを静電気で紙に転写している、電子写真のキモの部分である。大雑把には帯電防止技術と同様に半導体領域の材料でエンジン部分は設計されるが、その導電性と画質との関係は未だ経験の必要な世界である。
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難燃性を要求される樹脂やゴム部品には難燃剤が添加されている。この難燃剤が劣化する問題についてあまり注目されていない。成形された樹脂の劣化試験で難燃性もチェックし、難燃性の性能が維持されていればそれで問題無しとされる。
しかし、リン酸エステル系難燃剤の多くは加水分解が進行しても難燃性が維持される。それは難燃化機構においてリン酸の構造で働くからである。また、ハロゲン系の難燃剤であればハロゲン原子が樹脂内に残存しておれば劣化試験において難燃性能は落ちない。
難燃剤の劣化で問題となるのは、難燃性能では無く、加水分解物で引き起こされる副作用である。劣化試験の中にこの副作用を確認する試験を入れておれば問題は生じないように見えるが、それが意外な落とし穴となることがある。すなわち実験室で行われる環境試験はあくまでもモデル試験であり、市場の環境すべてを表現できていると保証されていない。
樹脂の絶縁性が要求される分野では、促進劣化試験だけでは危険で、是非成分分析も実施したい。すなわち促進試験で導電性物質が増加していないかどうかのチェックである。加水分解物が樹脂内で拡散する場合を考慮すると、促進試験を行ったサンプルの抵抗測定だけでは不十分で、導電性物質の増加も調べておく必要がある。それはパーコレーション転移の問題が潜んでいるからである。
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電気粘性効果(ER効果)をインクに使用して画像形成可能な実用装置ができそうなことを昨日書きました。ER効果は1mmあたり1kV以上の電圧が必要ですが、小さなドットを駆動するのであれば低電圧で可能である。しかし、インクには絶縁オイルを用いる必要があり、これが環境問題を考慮するとネックになる。
すなわち環境問題をクリアするためには、絶縁オイルが不揮発性でなければならない。揮発性であるならばインクを完全に回収できるシステムが必要になる。このシステムをどのように設計するかが技術者の腕にかかってくる。火災の問題も解消できるシステムになるとその装置の構造は限定されてくる。このあたりの特許出願はまだされていないのでこの活動報告を読まれた方は幸運である。
実は絶縁オイルが揮発性であろうと不揮発性であろうとオイル除去装置が必要になる。オイルを除去する前提になると揮発性絶縁オイルのほうがシステム設計を行いやすい。また、インクの定着機構も単純にできる。すなわちコーティング技術のノウハウをそのまま利用できる。不揮発性オイルであれば中間転写方式となる。すなわち一度絶縁オイルを含んだまま中間媒体に画像形成し、その中間媒体で絶縁オイルを吸収し粒子だけの画像とする。その後紙にこの画像を転写する方式となる。
完全密閉システムが可能ならば、揮発性オイルを用いても商用印刷以外に商品展開できる。医用の熱現像システムでは、現像時に感光層から若干の揮発物が出てくる。当初は脱臭剤でごまかす技術で対応していたが、脱臭装置の工夫でシステム外に揮発物が出てこないことが確認された。プリンターの完全密閉システムは意外と簡単なのに驚いた。特許出願される方を考慮して詳細を省略したが、アイデアをご希望の方はご連絡ください。電気粘性流体をインクに用いた場合には、現在のIJのようなノズルずまりの問題を解消できるIJプリンターを設計可能である。おそらく30年近く前にエプソンが電気粘性流体の不完全なアイデア特許を多数出願した背景と思います。
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室温で低粘度の液体であるが、高電圧をかけると固体になる物質を電気粘性流体(ERF)といい、その変化をER効果と呼ぶ。ER効果は1mmあたり1kVの電圧をかけると顕著に表れる。ERFとそれに印加される電圧の間には相関がある。電圧上昇につれ粘度上昇が起きるため、高粘度化したときに固体のような弾性率を示す。
ERFは、1980年代に活発に研究され絶縁油と特殊な微粒子との組み合わせで実用になることがわかった。実際に某社の試作車のアクティブサスや防振ゴムとして応用研究が実施されたが、デバイスが単純な構造であるにもかかわらず性能は機械式のデバイスよりも高かった。しかし、コストの問題をクリアできず実用化が見送られた。
ER効果を画像形成に利用しようというアイデアは、エプソンから当時多数特許出願されている。単なるアイデア特許であり、中には研究者から見ればインチキな特許も存在した。出願から20年以上たっているので、インチキ特許でも怖くは無い。ER効果を画像形成に利用するアイデアは、ER効果を発生させるに必要な電圧を考えると実用性が無いようにみえる。
しかし、画像形成を行うドットの大きさが1/1000mmから1/100mmであることに気がつけば、数VでER効果を出すことが可能で、面白いデバイスができるはずだ。しかし、エプソンからER効果を利用したプリンターは発売されていない。恐らくコストがあわないのであろう。インクジェットのインクよりもコストが高くなる可能性がある。
ERFのインクを使用したプリンターの長所は、インクジェットで問題となるノズルづまりを皆無にできる可能性がある点。またインクジェットのようにメディアの受像層の設計で画質が大きく左右される問題も克服できる可能性もある。商用印刷には有効かもしれない。
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