射出成形では、事前に成形条件を検討しても、量産時にトラブルが発生する。トラブルの原因はいろいろあるが、混練のばらつきによる場合が多いことを知らない人がいる。
射出成形について研究していたある学者に、射出成形という学問の目標は何か、と伺ったら、どのようなコンパウンドでも射出成型できる技術を創り出すことだ、とすごい答えをしてくださった。
この答えのどこがすごいのかというと、明らかに不可能な目標だからである。また、企業の射出成形担当の職人に聞いても同様の回答をされたので、それは間違っている、と正している。
コンパウンド起因でトラブルが起きているのに、時間をかけて射出成形条件を量産段階で検討されたのでは、費用の無駄使いである。
金型温度のばらつきやシリンダー温度のばらつき、湿度のばらつきでも射出成形のトラブルは発生する。それで射出成形プロセスでは、温度や湿度を管理している。
それらの管理を充分行っても、射出成型プロセスではエラーが発生する場合がある。それはコンパウンドが大きくばらついているからである。
コンパウンドのばらつきは、コンパウンドの組成に依存する。例えばPC/ABSのような複雑なポリマーアロイでは、ばらつきやすく、射出成形でエラーを発生しやすい。
射出成形条件を検討しても絶対に解消できないエラーにフィルミングあるいはテープ剥離と呼ばれているトラブルがある。これは、成形体に粘着テープを貼り付けると、一部が薄膜としてはがれるエラーである。
ひどい時には、金型を汚染し、毎回金型の洗浄を行わなければいけない状態になる。これは、混練が不十分なために組成が不均一になっていて発生している。詳細は弊社に問い合わせていただきたい。
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今日、ユークリッド幾何学は義務教育のカリキュラムから外されている。しかし、当方の頃までは、義務教育課程で教えられていたし、高校でも半年間それを幾何学の授業として学習している。
ユークリッド幾何学が教えられなくなった背景に、直感に頼らなくてはいけない点であることを数学の教師から聞いたが、ヒューリスティックな能力を養う教材として適している。
すなわち、最初に補助線をどこに引くかにより解答が見えてくるユークリッド幾何学の方法は、全体と部分をスムーズに考察する能力を鍛えていると思う。
ユークリッド幾何学でなくても、解析幾何学でもいきなり数式で解いてゆくのではなく、全体の見通しを見て座標の置き方を考えるように指導された。
また、受験用参考書「チャート式数学」には、「結論よりお迎え」というチャートがあり、図形の問題も、証明における結論を見出すことにより、解が見えてくると教えている。
数学に限らず、この「結論よりお迎え」は重要で、第一次AIブームにおいて有機合成経路を考える手法として、逆合成という考え方がコーリーより提案されている。
第二次AIブームではエキスパートシステムしかできないことがわかり、新たな技術革新が重要ということで、トランスフォーマーを用いた生成系AIが登場する。
しかし、ChatGPTを用いても、「結論よりお迎え」は有効で、AIへの質問の仕方のノウハウとして活用でき、ハルシネーションを抑制できたりする。
ユークリッド幾何学における補助線も直感で考えてばかりいてはだめで、図形のどこを等しいと置くと証明を実現できるのか、と眺めれば、自然と補助線が見えてくる。但しこれには訓練が必要だ。
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2022年に新法が施行され、リサイクル材の研究開発が活発になっている。市販されている再生材のカタログを見ると、再生材の含有率が記載されているが、100%リサイクル材のコンパウンドを見かけない。
PETボトルのボトルtoボトルのリサイクルが日本で始まったが、中国では10年以上前から行われていた。当時、日本で回収されたPETボトルの大切な用途だった。日本からkg単価40円以下で販売されていた。
さて、リサイクル材100%のコンパウンドが何故販売されていないのか。これは、リサイクル材の力学物性が劣るためであるが、それは混練プロセスに二軸混練機を使用しているからである。
二軸混練機に当方の発明したカオス混合機を取り付けると再生材100%でも、そこそこの力学物性のコンパウンドを製造することが可能だ。
数年前の日本の学者の論文も公開されているので、ぜひ問い合わせていただきたい。但し、その学者の論文には当方の発明品とは書かれていない。
また、この論文には、カオス混合機を取り付けたときの強度改善機構を図で説明しているが、学者にしては、いい加減な図である。今回中国で行われた再生材の国際会議では、小生の考察をご披露しているが、多くの人に納得していただいた。
原因は二軸混練機の本質的な構造にあるのだが、これについてゴムタイムズ社から上梓された当方の著書に説明しているのでご一読願いたい。
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日本は、科学偏重国家である。国家だけでなく民間でも「科学」を看板にするので科学偏重となる。たしかに、科学により産業革命は加速した。それは科学により生み出された形式知が唯一のものであり、誰でもその成果を享受できたからである。
しかし、科学誕生以前にも技術開発を推進した思考方法が存在している。それが、蒸気機関を生み出したのだ。この事実を真摯に捉えれば、非科学の方法を全否定する必要はない。
モノが生み出されれば、それを正しく評価する姿勢が重要である。学会も科学だけでなく非科学を議論できるようにすべきだが、マテリアルインフォマティクスは、せっかくのその機会を活かせないでいる。
日本人は何故非科学を嫌うのか。技術を前面に出している日産自動車は、いつの間にかトヨタとの競争に敗れ2位以下になっていた。エネルギー保存則に従えば、eパワーは、トヨタのハイブリッド方式に燃費で勝てない。
これは科学的に明らかだが、実際に都内を走ってみるとトヨタのハイブリッド方式と比較してもそん色はない結果となる。それだけではない。最近のトヨタのハイブリッド車はeパワーに近づく味付けがなされている。
自動車の「走り」の機能を味わいも含め比較すると、非科学的となるがeパワーに軍配が上がる。手短にはオーラニスモに乗ってみればわかる。FFと4駆では、少し味わいが異なるが、久しぶりにワクワクする大衆車に出会えた気分になる。
「技術の日産」というフレーズを子供のころから聞いてきて、日本の問題に気がついた。科学にとらわれず、技術開発に取り組む企業は日産だけか?
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面白いのは、最近トヨタはRAV4のハイブリッド車を300Hp越えで発売した。ただし北米である。日本では未発売だが、0-100加速は、オーラニスモを越える可能性が高いが、価格は2倍であり、レクサスと変わらない価格帯である。
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電動車分野で馬力競争が始まったようだが、価格を基準で予想すると、日産に軍配があがる。eパワーのほうが、ハイブリッド方式よりも圧倒的にコストが安くなる可能性がある。
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キックスのモデルチェンジでは、300万円台の価格でRAV4に負けない動力を搭載してくるのかもしれない。かつて、「100ccの余裕」でトヨタと日産の大衆車開発競争が始まった。
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あの頃を再現するような開発競争が電動車で行われれば、日本の経済状態が復活するような予感がする。技術の日産による新車攻勢に期待したい。
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現代を「産業革命の総仕上げの時代」と称した情報工学の学者がいる。ご存知のように蒸気機関の発明とともに産業革命が起きている。この時、「科学」という偉大な哲学が誕生した。
産業革命が先か科学が先かは、マッハ力学史を読むと、科学と非科学に関する考察から、蒸気機関の発明が産業革命を誘導し科学はそれを加速したことになる。
科学に関して日本における最近のブームは、1970年代に起きている。様々な科学論の本が出版され科学について議論されたが、その時科学者ではない科学評論家が日本では雨後の竹の子のごとく誕生している。
また、女性科学評論家のアイドルも誕生し、週刊誌はそれを持ち上げた。男性週刊誌のグラビアまでも賑わしたので、これはブームというよりフィーバーなのかもしれない。
1980年代にはセラミックフィーバーが起きナノテクブームへ移行する。残念ながら1990年代のバブル崩壊で日本における科学フィーバーは終焉する。この分野のアイドルも年をとり、忘れ去られている。
1970年から1980年代の一大科学フィーバーはアメリカの影響によるところが大きい。またセラミックスフィーバーがナノテクブームへと移行し今日まで続いたのもアメリカの影響である。
ご存知のように20世紀末に日本の状況に驚いたクリントン大統領がナノテクノロジーとバイオリファイナリー(バイオポリマー)の国家戦略に調印したことが日本に影響を与えている。
日本では、精密制御高分子プロジェクトや藻類のプロジェクトが推進されたりしたが評価されることなくナノテクとバイオリファイナリーでアメリカに差をつけられる。それだけでなく、新たに起きたGAFA勢力により推進された第三次AIブームで後塵を拝することとなった。
そこへ、「産業革命の総仕上げ」と唱える日本の学者が現れたのである。もう少しこの学者に注目した方が良い。弊社は科学と非科学が共存する時代と言い続けている。これは1970年代に雑誌サイエンスに投稿された「サイエンス&トランスサイエンス」を考察し続けた結果である。
残念ながら日本でトランスサイエンスが注目され始めたのは21世紀になってからであり、20世紀末の日本の科学ブームは似非科学評論家の跋扈により、トランスサイエンスが置き去りになって進行している。
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26,27日の2日間、広州で開催された再生材に関する国際会議に招待講演者として出席した。事前情報が少なく、最初の招待状では誰が講演をされるのか不明だった。
詳細は、どこかの雑誌に投稿しますのでそちらを読んでいただきたいが、なんと外国の講演者は小生一人であり、再生材の権威者的位置づけだったのであせった。
確かに、ゴム会社時代からタイヤのリサイクルに始まり環境問題を片手間に勉強してきた。ゆえに、日本では、その辺の高分子の環境問題を論じる専門家よりは詳しいと思っている。
ところが、世界において代表的な専門家と紹介されると、さすがに焦る。その結果プレゼンテーションは大失敗している。事前にそのようなことを聞いておればそれなりの心構えと準備をしていたが、当日では気持ちの整理もできない。
NHKの番組でも紹介されたりしているので、中国の廃プラゴミの状況をご存知の方は多いと思うが、テレビで紹介されていた時代は、はるか昔と思われるような状況である。
装置メーカーも参加して中国の再生材事業者が展示も行っており、大変勉強になったのだが、驚いたのは、日本の再生事業者が使用している装置よりも洗練され、合理的と思われるプロセスが紹介されていた。
例えば、PETボトルのリサイクルプラントは、日本の再生事業者が使用しているプールタイプではなく、縦長の流動層タイプであり、PETと他のプラスチックを流動層で分別しながら、洗浄が終わったPETリサイクル品は、極めて高純度なフレーク状態で得られる。
FDA(アメリカ食品医薬品局)の基準も満たしている、と説明されたのでびっくりした。日本ではサントリーがPETボトルリサイクル業者と共同でFDA基準のリサイクル材の開発に成功したばかりであるが中国では、10年以上前から行っているという。
その他詳細レポートをまとめて雑誌で発表するので原稿を希望される方はお問い合わせください。A4で数十枚の原稿を作成するのでニーズに応じたレポートを提供いたします。
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材料開発において分散技術は重要であるにもかかわらず、意外と杜撰に扱われている。何でもかき混ぜれば均一に分散すると勘違いしている人が多い。
例えば、水と油を分散すればすぐに気づくと思うが、分散後放置すると分離する。この分離速度は水と油の親和性だけでなく比重差も影響する。
ドレッシングで分離している商品を日常扱っていても分散技術の重要性に気がつかないのは、みかけ簡単な技術だからである。例えば攪拌ができればよいのである。水と油であれば振とうができればよい。
しかし、成形体物性を分散技術で制御するとなると簡単な技術ではできない。詳細は述べないが、セラミックスであればボールミル分散やタンブラー、V型撹拌機で乾式で行うのか湿式で行うかにより、得られる成形体物性のばらつきが大きく変わる。
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コロナ禍でクラスターという言葉が常識となったが、分散現象においてクラスター生成が全体の特性に影響を与えることはかなり古くから知られていた。
例えば、セラミックスにおいて泥漿を良く練らなければいけないことや、麺類においても同様に練りが舌ざわりや麺類のこしに効いていることは、それらを製造し始めた時代から職人には知られていた。
これが科学的に議論されるようになったのは、1950年代からで、カリフォルニアで起きた山火事の問題を解くためにパーコレーションが議論されている。
山火事の問題だから分散現象と異なると誤解されたためか知らないが、当方が日本化学会でフィラーの分散現象についてパーコレーションという概念を持ち込んだ時に、他の類似研究では混合則で議論されていた。
すなわち、パーコレーションという概念が材料科学に普及する前には、混合則と呼ばれる経験知が一般的に使用されていたが、数学者の議論が始まって40年以上経過して材料分野にその概念が知られるようになった、ということである。
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パーコレーションについて難解な数学理論が存在し、材料屋が使いこなすことが難しいが、これを易しくシミュレーションする手法を30年以上前に開発し、今はPythonの教材として利用している。
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もし、今からPythonを学びたい方は、この現象を題材に学ぶと効率が良い。サンプルプログラムもPythonのパラダイムを理解しやすいアルゴリズムで作成している。
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また、サンプルプログラムで、クラスという概念を学ぶ方法も指導しているので、問い合わせていただきたい。WEBセミナーであれば割引価格も用意しています。
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長期間使用せずに放置していた製品が、ある日触ってみたところべたべたしていて気持ち悪くなった経験があるかもしれない。
これは、弾力のある成形体でよく見かける現象である。昔は、ゴムと言えばすべて加硫ゴムであったが、今はTPEと呼ばれるゴムと樹脂のハイブリッド材料が多く使われている。
加硫ゴムでも設計が悪ければこのべたべた感の原因であるブリードアウト現象が起きるが、TPEでは高分子と添加剤の溶解性を考慮しても、ばらつきをもって発生する。
すなわち、TPEでは同一ロットにおいて、ブリードアウトの進行スピードが大きくばらついている。この点を理解していない、あるいは見落とす技術者が多い。
TPEと加硫ゴムでは何が異なるのか一言で表現するのは難しいが、みかけの溶解度が高い、あるいはゴム分子のネットワークの隙間が多い、と科学的ではない理由で納得していただきたい。
実際には、配合設計において加硫ゴムではフィラーとしてカーボンを多量に入れるが、TPEでは少ないか全く添加しない場合もある。このフィラーも溶解性に影響を与える。
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高分子材料を常に荷重のかかった状態にしておくとやがて破壊に至る。この寿命は、荷重の値や荷重のかかり方で大変大きな影響を受ける。すなわち高分子の寿命試験は、条件を限定しない場合に大きくばらつくということを知っておかなければいけない。
この経験知の有無で実用化の際に地獄と天国の分かれ道となる。例えば成形体密度の変動条件を見誤ると実験室で得られた耐久寿命よりも10倍も100倍も長寿命化したり、その逆も起こる。
また、破壊に至らなくても残留歪や応力の方向に変形する現象が起きる。身近の現象として、下着のゴム物性のばらつきを体感しているかもしれない。
変色し破れるまで使用可能なものもあれば、生地はしっかりしているのにゴムが伸びきったために使用不能となる場合を体験している人もいると思う。
中年になってゴムの劣化が激しくなるのは、ゴムにかかる応力が増加した可能性が高いが、最近の下着はゴムの交換ができないのでもったいない。子供のころはゴムを交換して生地がダメになるまで下着を使用できた。
身近なゴムの寿命のばらつきの大きさを知れば、高分子成形体の寿命試験を慎重に行う必要に気づくかもしれない。さらにその試験方法の問題に考察を深めたいと願望が出てくるかもしれない。
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