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2022.08/02 情報化時代の技術開発(1)

1970年前後の研究所建設ラッシュからバブル崩壊後の企業研究の見直し、そして今の情報化時代の技術開発に至る60年間を見てきて、と書きたいところだが、当方がゴム会社の研究所に配属されたのは1979年だった。


しかし、それ以前の話を知っているのは、配属された研究所があまりにもアカデミックだったため、びっくりして先輩社員に質問したからである。


最も大学院の2年間がセラミックスの講座で職人のような研究者集団の中で生活していたので、アカデミアよりもアカデミックな姿に見えたのかもしれない。


配属されてから、研究所の年配社員からゴム会社の研究所の歴史を伺っている。また、新入社員相手にそのような話を好んでしてくださる方もおられたので研究所の過去情報は簡単に集まった。


午後の3時間のんびりと小生にお話をしてくださった方もおられた。このような方々の一部は学位を持っており、高分子科学に精通しておられた。無機化学の講座で2年間過ごしたキャリアをのべると、大抵は高分子の授業になった。


入社後6か月間の新入社員研修で見学したゴム会社の研究開発部門は、勘と経験、度胸で業務が進められていた。しかし、見学対象となっていなかった技術センターの屋上から数えて1-3階部分を占めた基礎研究部門は、社内で雲の上の職場と呼ばれていた。

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2022.08/01 混練技術相談会メンバー募集

ドラッカーは、「教えることは、学ぶことだ」と述べていた。これは名言である。科学の形式知ならば教科書など公開されたものから学ぶことは可能である。


今ならばインターネットで検索エンジンを活用し、教科書が無くても信頼性の高い形式知を集めることが可能である。中には形式知として誤った情報も存在するので注意が必要だが、形式知の場合には、書籍があるので誤りかどうかの判定はできる。


さらに形式知であれば機密情報としての価値は低いものが多いので、容易にアカデミアの先生に懇親会の場で確認できる。最もアカデミアの先生の中には不勉強な先生もおられるので注意が必要だ。


30年以上前に、上司から形式知かどうかアンケートで確認してこい、と言われ、10人ほどの先生に確認したところ、4人の先生が明らかに怪しい説明をされていた。一人の先生は正直に形式知かどうかは知らない、と答えていた。


これ以上は書かないが、形式知の場合には無料で確認したり、容易に集められる時代となったが、経験知や暗黙知になるとそれが難しいことになる。


これはセミナーなどの集まりを見ていても分かる。形式知に関するセミナーでは集客ができなくなってきたが、経験知が多く占める技術セミナーでは未だに人が集まる。


このような状況を踏まえ、会員制により混練技術に限定してWEB相談に応じるサービスを始めようと考えている。年間20万円コースと50万円コースの2つで20万円コースはWEB相談のみである。50万円コースをどうするのかは、まだ検討中である。


大きな問題は、希望される顧客が国内にどれだけいるか、という点である。まだ詳細を準備中でありますが、サービスについて何かご希望があれば問い合わせていただきたい。


例えば機密保持契約をどうするのか、という問題では、統一内容とするのか、それぞれの事情に応じた内容にするのかで弊社の負担が異なってくる。


一日でも早く希望されるお客様にはすぐに対応したいと思っており、今日からでも一部受付を始めますが、当分の間弊社が発行する契約書に限定して対応させていただきます。


このような低価格の企画を考えているのは、当方が学ぶ目的も大きい。混練技術以外に高分子の難燃化技術やブリードアウト、高分子の破壊現象などノウハウがその技術レベルを決めているテーマは多い。とりあえず、多くのテーマの共通基盤技術として混練技術を事例に募集してみる。

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2022.07/31 Python(パイソン)

プログラミング言語に初めて接したのは大学1年生の時である。世界初めてのいわゆる高水準言語FORTRUNがそれだが、それから現在に至るまで、BASIC、PIPS、アセンブラー、C、パスカル、C++、C#、各種スクリプト言語などさまざまな言語を扱ってきた。


Pythonはスクリプト言語に分類されるが、ver3では今日のオブジェクト指向言語で必要な仕様をほとんど含んでいる。ジェネリックプログラミングもサポートされており、記述が簡単になるリスト処理もできる。


WINDOWS環境なので通常使用するのはC#だが、何故か最近Python を使い始めた。スクリプト言語という理由で軽視していたが、欠点だった実行速度の遅さもCPUの進歩で気にならないレベルである。


BASICやCよりも文法が簡単であり、無料ライブラリーが豊富なためむしろC#よりも使いやすい一面がある。変数の管理等に気をつければズボラなプログラムでもすんなり実行されてしまう。


変数の型など面倒な仕様(ただし、これがあるから変数のメモリー管理をできるのだが。)が無いので、気をつけていないとメモリーを食うプログラムや計算精度の落ちたプログラムを作ることになったりする問題はある。


C#に比較すると、画面処理ツールなどいくつか不満点はあるが、とりあえずプログラミングをやってみたい、と思われる人には学びやすい言語である。


オブジェクト指向の言語であるが、スクリプト言語なのでBASIC言語風の取り扱い方ですぐに使用することができる。もし、希望者がおれば「1日でわかるPython」というセミナーを5000円程度の受講料で企画します。弊社へ問い合わせてください。

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2022.07/30 データサイエンスの意味

効率的な実験を目指すと、実験数が少なくなる。STAP細胞の騒動が起きたときに理化学研究所のある理事がたった一個のデータでよいからSTAP細胞ができたことを示してくれと発言をしていた。


結局その一個のデータが得られなかったので否定証明が展開され、STAP細胞は存在しないことになった。もしここでSTAP細胞ができた1個のデータでも得られたならば、STAP細胞の存在が証明されたことになる。


すなわち、仮説を設定して行う実験では、仮説の正しさを示す1個の実験データさえあれば良いことになる。その一個がどのような経緯で見出されたかは、厳しく問われない。再現性さえあれば良いのだ。


例えば4種類の遺伝子の組み合わせで細胞の初期化を行うiPS細胞の技術では、ただ1種類の組み合わせのヤマナカファクターについて論じた論文がノーベル賞の対象となっている。


この論文について山中博士が語っていたことは省略するが、科学では仮説が真であることを示すたった一つのデータがあれば良い。


イムレラカトシュはこの論を展開して、完璧な科学的証明とは否定証明だけである、と述べている。換言すれば、否定証明以外には非科学的要素が存在することを意味している。実際にヤマナカファクターの発見プロセスはあみだくじ方式であり、山中博士はそれで当たりを引いたのである。


一方ビッグデータを用いるデータサイエンスは科学的と言えるか。データサイエンスにおけるデータの取り扱いは数学で進められるので科学的と言えるかもしれない。ここから先は8月22日の技術情報協会で行われるセミナーで解説したい。

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2022.07/29 データの数

科学の論文で現象の変化をグラフ化して議論を展開するためには3点以上データが必要である。また、3点あれば回帰分析が可能となる。


アーレニウスプロットでさえも3点あれば寿命予測可能となる。これを2点でやっていた猛者もいたが、寿命予測に用いるためには再現性の確認のためにもやはり3点は必要だろう。


ゴム会社の研究所でも多くの研究者は少ないデータ数で帰納論理を展開し結論を出していた。ところが新入社員時代の当方の上司は多数のデータを要求してきた。


美人の指導社員は最低5点グラフにないと納得してもらえない、と言われた。多数のデータを要求するところが、当方の上司は評価されていたのだろう。アーレニウスプロットでも3点では叱られている。


ある日二種類のサンプルのLOI比較グラフをそれぞれ3点でプロットして同一平面に並べて提出したら、すんなり受け取っていただけた。上司の名誉のためにこれ以上の事例を書かないが、どうもグラフの同一平面の点が3点以上であれば納得する人だった。


ゆえにどうしても実験データが増えるのだが、ホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームでは50種類ほどの試験用ポリウレタンフォームを作らされた。


あとから分かったことだが、D社からリン酸エステル難燃剤の新製品評価を依頼されていたためだった。ただ、この実験のおかげで多変量解析の可能性についていろいろと検討することができた。


この経験から、データ解析に必要なサンプル数に興味がわき、実験計画法で最適条件を求めた場合に再現性が落ちる問題を解決している。


実験計画法を経験された方ならご存知かもしれないが、因子や水準の選び方で最適条件が変わる場合がある。ところが、相関係数を実験計画法に用いると最適条件の再現性がほぼ100%となる。


相関係数を用いるので、一水準の実験が3水準増え、例えばL9であれば9個の実験が27個必要となる。実験数は3倍となるが、最適条件が外れる問題は解消できるので、ゴム会社で実験計画法を用いたときにはこの方法で行うようになった。


タグチメソッドを経験されている方は、これが感度重視のタグチメソッドであることに気がつかれたかもしれない。田口先生がどのような経緯でタグチメソッドを考案されたのか存じ上げないが、実験計画法の問題に気がつくと外側因子として信号因子を振り実験を行う発想は自然と出てくる。

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2022.07/28 MZ80Kでできたこと

ザイログ社の8ビットCPUを2MHzほどの周波数で駆動していたため、MZ80Kの性能は今日のパソコンに比較すると月とスッポンほどの差があるが、それでもFDOSを稼働させれば多変量解析が可能だった。


重回帰分析と主成分分析のプログラムを作成し多変量解析を行い、IBM3033の統計パッケージで計算された結果と比較したところ、等しい結果が得られたので高分子の難燃化研究を担当していた3年ほど実戦でMZ80Kは活躍した。


多変量解析以外に実験計画法はじめ統計プログラムをいくつか作り、業務に活用していた。今の時代のような情報管理の考え方は無く、上司も当方が独身寮で仕事をすれば残業代を支払わなくても良いから、と喜んでいた。


アカデミアよりもアカデミックな研究を行っていた研究所であり、研究成果はすぐに学会発表されていた。先端の機密に対する考え方が現在とは異なっていた。


また、会社の業務を行うにあたり、社員に高額の出費をさせてマイコンを購入させてフィージビリスタディーを命じるような上司だったので、そもそも情報の扱いがいい加減だった。


かくして独身寮は当方の計算機センターになった。ただし、朝8時半から夕方4時半までは使用できなかった。上司から業務時間中寮へ戻ることを禁じられていたのである。そこで、やや意地もあり、MZ80Kを使っていくつか成果を夜中に独身寮で仕事をして出していた。


ホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームの成果は学位論文にも掲載されているが、そのほかに熱分析データのグラフ化やこのデータを用いた反応速度論の研究、組成分析手法の開発、組み合わせの限られた化合物の構造推定法、フェノール樹脂LOIの残渣分析による最適処方の決定などデータサイエンスと呼べる成果が出ている。

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2022.07/27 花王のパソコン革命(4)

表題の書籍は、ゴム会社の研究所で江戸時代の黒船のごとき扱いだった。会社付近の書店では品切れ状態であり、それが原因で各課1冊会社で購入するまでになった。


40年以上前、8ビットマイコンがビジネスを現代のように変革する、という画期的な本が出版されたのだが、同時にコンピューターに対する多くの誤解を生みだした。今から思えばコメディーのようなことがビジネスの現場で常態化している。


ところで、AIがそのようなことを引き起こしていないか。AIならば何でもできる、という誤解があるような印象を受けたので45年前の体験を書き始めたのだが、AIでさえもプログラムで動いていることを忘れてはいけない。そして最適な学習をさせなければ使い物になるAIなど手に入らないのだ。


AIを導入して他社との差別化を図り業界をリードする、などと目標を設定してもAIを鍛えるデータを準備できる技術基盤が無ければ、AI導入のための予算は、コンサル会社に寄付をするようなものだ。


弊社もコンサルティングを行っているが、このAIに限らず、誠実真摯をモットーにしているので、顧客にとって最適なサービス提供を心掛け、表題の本の内容のような仕事をしない。


図書室の図書管理を漢字出力のできないPC8001でできるようなことを書いていても、実態は出入り口に置かれたノートに記載して管理していたのである。安い書籍ならば啓蒙目的のために書いたという弁解もできるかもしれないが、身分不相応なAIを売りつけたのでは詐欺に近い。


企業がAIを導入したいならば、まずデータサイエンスについて全社で学ぶべきである。45年以上前からその時代に応じて企業の一部の研究者により研究開発されてきた分野で、ようやくアカデミアにもその講座が作られるようになった。


MZ80Kを購入し、給与の大半が無くなったために独身寮以外の生活ができなくなった時、思索をめぐらしたのはデータサイエンスである。データを強く意識すると、科学とは異なる世界が見えてきた(注)。


8月22日に技術情報協会で45年前から今日まで、データサイエンスで出した成果事例のセミナーを行う。AIや機械学習との関係も解説するので多数の参加を期待します。弊社へお申込みいただければ割引価格とさせていただきますが、価格についてはお問い合わせください。


(注)データサイエンスの可能性については、混練の神様のような方から教えていただいた。マイコンのことなど無知な上司のパワハラに二人で耐えながら、研究所の管理職でありながら、なぜあのような考えになるのか悩み議論した日々だった。頭が悪く不勉強な上司と言ってしまえば一つの説明となるのだが、ゴム分野では先端の成果を出している会社の研究所管理職である。昇進を可能とさせた「能力」があるはずで、うまくコミュニケーションをとるために、その「能力」が何かという議論までしている。詳細は省略するが、そして「真」か「偽」か二値化された思考と楽観的な帰納的論理が原因という結論にたどり着いている。運が良ければ帰納的論理で仕事は進み成果が出る。ダメなときには否定証明をすれば評価されたのが科学こそ命の研究所である。ここにたどり着いてから、リーダーとのコミュニケーションは円滑に進み、120万円でソード社のコンピューターシステムを揃え、薬品管理ソフトを開発できた。このシステムは年に2回あった消防署の査察で誰もが認める成果を出した。研究所に存在する薬品の在庫を一瞬に示すことができた。しかしその裏ではデータベースを管理している当方の努力があり、当方が無機材質研究所へ留学するときに、後任に業務説明したところ、後任は昔ながらのノートによる管理に変更している。後任は、16ビットコンピューターが普及し始めたことを理由に、コンピューターシステムの変更が必要だと言い出した。そしてシステム変更に1000万円の予算が必要なことと、このシステムで成果が出ているのは消防の査察だけという論理展開を研究開発本部長にしている。費用対効果を考えれば、コンピューターによる薬品管理をノートによる管理に変更するのは当然だった。後任は科学的論理を展開し、研究成果の費用対効果を重視する方針の本部長をうまく活用し、データベース管理という厄介な仕事を廃止したのである。見事と言いたいが、そもそも薬品管理をコンピューターで始めた悲劇の歴史を知らない。また当方はそれを説明する気持ちになれなかった。パワハラ上司を説得できる術を持っていなかった無能さをサブリーダーと確認していたからである。「上司の認識を変えることができなければ、その説明は無駄である」とは、このサブリーダーの名言である。また、「異なる見解こそ重視せよ」とは、故ドラッカーの名言である。管理者は、自分とは異なる見解こそ重視し理解に努めなければいけない。

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2022.07/26 花王のパソコン革命(3)

当方の独身寮生活は、MZ80K一色の生活となった。会社では仕事をして独身寮に戻るとプログラミングの日々となった。プログラミングが趣味となった、と書きたいところだが、当方はプログラマーなど目標としていなかった。


独身寮にはギターとオーディオセットがあり、そこにMZ80Kのシステムがおかれたので、自由に身動きできるのはベッドの上だけ、という状態だった。


日中はホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームの開発を行いながらプログラミング内容を考え、夜は12時過ぎまでプログラミングという日々となった。


プログラミングの日々と言っても情報工学という学部設立が話題になっていた時代であり、ほとんどわけのわからない分野について根性の勉強の日々というのが実態だった。


BASIC以外にアセンブラーやFORTH、パスカルを揃えていたのでどの言語を使ったらよいのか(注)4日で結論を出し、3日間かけて文献検索プログラムを作った。


リーダーから何か成果を出せ、と言われてサブリーダーと相談した時に、何かデータ検索できるプログラムを作ったらよいのでは、とサブリーダーからアドバイスを受けた。そこで文献管理のために文献検索ソフトを作ったのである。

入力画面や出力結果をプリントし、会社でサブリーダーに提出した。そこで問題になったのは、データベースを誰が入力するのか、という問題と漢字出力ができない問題だった。


MZ80Kにはオプションでも漢字ROMは用意されていなかったので不可能と説明した。当時のPC8001はじめ8ビットマイコンではどの機種でも満足な漢字出力は不可能だった。


花王のコンピューター部部長がソード社のパソコンを勧めた本当の理由が分かった。ただしインタビューの時には、普及パソコンでOAに必要な漢字を満足に出力できない機種ばかりだったことは一言も言われなかった。


これは、著書の内容と関係があった、と想像している。著書ではPC8001で漢字出力できるような錯覚をする表現になっていた。OA化に必要レベルの漢字が搭載されたパソコンは、当時ソード社の製品だけだった。


この普及パソコンで漢字出力できない問題が指摘されていなかった不誠実さ以外に、パソコンがソフトウェアーで動くことを述べながら、そのソフトウェアー事情について詳しく述べていなかった。


その結果、リーダーは動作するソフトウェアーというものが簡単にできるという誤解だけでなく、何か一つ動くソフトウェアーを作れば何でもできる、と信じていた。


そもそもソフトウェアーを未来の人工知能のように考えていた。現代の人工知能でも学習した分野以外の仕事はできない。ゴム会社の研究所管理職がこの程度であり、表題の著書による誇張表現のため、サブリーダーと当方は追い詰められていった。


リーダーに何か報告すれば、「どうして、これが明日までにできないのか」とか「上司のアドバイスを否定する前に仕事をやれ」とか、パワハラの嵐吹き荒れる打ち合わせと毎回なった。


(注)まずプログラムの仕様とコーディングテクニックを習得しなければプログラミングのできないことを今なら常識である。一方学習環境は今のように学習参考書など無く、簡単な説明書だけが頼りだった。パスカルやアセンブラーの構造化プログラミングスタイルがプログラムの可読性をあげることに気がつき、BASICでも意識して構造化スタイルでプログラミングするようになった。文献検索プログラムのコードをサブリーダーに見せたときにその読みやすさを褒めていただいたのは、今でも励みになっている。微分方程式を電卓で計算したり、カオス混合をご指導してくださったりと当方にとっては神様のような人だった。

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2022.07/25 花王のパソコン革命(2)

表題の本は、当方にとって仕事のスタイルに影響を与えた良書、と今ならば思い出されるが、当時は給与を失うことになるとんでもない本が出版された、と恨んでいた。


サブリーダーとともに著者とインタビューした時にも胡散臭い本という印象をもつに十分だった。著者自身は、情報工学の無かった当時としては珍しくコンピューターに精通していた人であり、2時間のインタビューで十分に当方が啓蒙された。


しかし、8ビットのコンピューターでは大したことはできないことを知りながら、NECのPC8001で革命を起こすなどと言ってのける態度には反感を持った。まだ会社で評価されるには誠実真摯に仕事を行えばよいと愚直な姿勢で仕事に取り組んでいたころである。


当時発売されていたパソコンは、8ビットでROMベースのBASICが搭載されただけの機械であり、さらにキーボードしかついていない商品が大半だった。そのなかで、シャープは、表示装置もつけたキットをMZ80Kとして発売していた。


さらに拡張ボックスをつければ、プリンターやフロッピーディスク、その他周辺機器用のパラレルボードを接続できた。それらを操作するためのOSもFDOSとして提供されていた。ただしすべてそろえた場合には80万円以上となり、オプションのついていないカローラ1台の価格となった。


ソードや三洋電機がオフィス用にCp/Mを提供していたが、ほとんどのメーカーはROMベースのBASICだけだった。「花王のパソコン革命」にはPC8001でOA化が行えるようなことが書かれていたが、著者からは高いがソードが良いと勧められた。


ソード社は当時パソコンベンチャー企業として知られており、MZ80Kのように独自OSを提供していた。8ビットでありながら、大型コンピューターのような設計だった。


このソード社のコンピューターをゴム会社研究所へ導入するにあたり、リーダーから独身寮で当方が購入したMZ80Kで成果を出すように指示された。


今から考えればおかしな指示であったが、またサブリーダーもリーダーの指示がおかしいと言ってくださったが、始末書で散々もめた経験から元気よく「そうします」と返事をしている。


その結果、車一台分の私費を会社の仕事のために投じることになった。このような無茶苦茶な環境で我慢して仕事をしていたことを不思議に思われるかもしれないが、当時新入社員は奴隷のような扱いでも我慢することが常識の時代だった。


当方の悲劇は、リーダーがパソコンというものに全く無知でありながら、自ら勉強しようとせず、言葉だけを振り回す管理職だったために起きている。ゆえに当時ホーレンソーは管理職が「言葉」を増やすために重要な、部下のスキルとなっていた。


「花王のパソコン革命」を当方は書店で購入したが、この管理職はプロジェクトのリーダーに就任した時に会社の伝票を切って購入している。ゆえに入手までに1週間かかるという理由から購入した当方に本の内容をまとめ、報告するように命じてきた。


その命令をサブリーダーに相談したところ、著者へのインタビューをサブリーダーがリーダーへ提案してくださり、書籍の内容報告を出張報告として書くことになった。管理職が勉強しなくても務まった時代の話である。

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2022.07/24 花王のパソコン革命(1)

表題は1980年頃にベストセラーとなった書籍の題名である。良くも悪くも世間にパソコンによるオフィス革命を起こす啓蒙に成功した本である。


著者名は忘れたが、花王のコンピュータ部門の部長が、組織の花王における地位向上のために書いたそうだ。当方はこの書籍のおかげでコンピューター普及推進プロジェクトメンバーに選ばれ、サブリーダーとともにこの部長と面会している。


当方の上司となるプロジェクトのサブリーダーは新入社員の時の指導社員で、1年間のテーマを3か月で仕上げたためにご迷惑をかけた人である。成果も出し、特許出願も行っていたのに当方は職場移動となり、新たなテーマに取り組むことになった。


新たな指導社員が美人だったことから成果のご褒美と陰口を言われたが、最初の指導社員が粘弾性モデルのシミュレーション結果を基に新入社員テーマを企画し、それと混練技術について毎朝3時間座学を提供(座学の終了とともに成果が出ている。)してくださったのに、彼女は新入社員テーマそのものを一緒に企画しましょう、という姿勢の人だったので毎日の仕事が大変だった。


その大変さについてはホスファゼン変性軟質ポリウレタンフォームの企画提案と実行、工場実験、始末書と展開した半年間として以前この欄で紹介している。ただし、ノー残業デーには二人だけのアルコールOJTで浦島太郎の気分だった。


サラリーマン生活で出会った人の中で最も優秀であり、仕事のスタイルについて影響を受けた指導社員の3か月間を含め新入社員の2年間は、始末書の問題以外は楽しかった思い出として残っている。コンピューター普及推進委員に抜擢されたのもこの時の思い出の一つだ。


コンピューター普及推進プロジェクトのリーダーは美人指導社員の上司であり、サブリーダーが最初の指導社員ということで、いびつな人間関係ではあったが、サブリーダーが十分に大人の人物だったので、このプロジェクトでもうまく当方をマネジメントしてくださった。


ただし、このプロジェクトメンバーでコンピュータを日常使用していたのは当方だけであり、サブリーダーは、粘弾性シミュレーションを当時先端の関数電卓で行っていた。


ただし、当方が日常使用していたコンピューターは、メンバーに抜擢される2か月前に職場導入を課長に提案したが、それほど有用ならば自分で購入しろと言われて、自腹で購入し独身寮の自分の部屋に設置し仕事に使用していたMZ80Kだった。


最初は1か月分の給与から足が出る程度の出費だったのだが、プロジェクトのメンバーに抜擢されてからは、カローラ1台分の出費まで膨らむ大変な目に合っている。


プロジェクトでリーダーに何か提案すると「独身寮のマイコンでやってみたら」と言われ、プリンターやFDの購入だけでなく高価なデジタイザーまで当方の私費で購入することになった。


今パワハラなど各種ハラスメントが問題になっているが、管理職の無知が鞭となり、部下に私費で仕事を強要するようなひどいことが当時行われていた。


素直に従っている当方が馬鹿だと美人指導社員からは注意を受けていたが、工場実験の試作で始末書を書かされた恐怖の経験の後では従うしかなかった。


花王のパソコン革命という本のおかげで、OAを行うために当時カローラ1台分の価格だったマイコン1セットを独身寮の自室に揃えることになった。初任給基礎額が10万5千円の時代の話である。

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