2022年11月に登場するや否や、2ケ月で1億人以上のユーザーを獲得し、驚異的なペースで普及が進むChatGPT。これは2006年から始まった第三次AIブームの一つの成果である。
10年余りで収束した過去の二度のAIブームと異なり、第三次AIブームは、2018年に発表された大規模言語モデルGenerative Pre-trained Transformer(GPT)の成功で、2020年にはGPT-3が、2022年にChatGPT-3.5がリリースされ、現在はGPT-5が有料と無料(制限付き)でサービス提供されている。その市場は他の新たな事業者の参入もあり成長を続けている。
第三次AIブームと同じ頃に登場したAKB48がそうであるように、ブームも20年近く続けば日常となる。気軽に会いに行けるアイドルのコンセプトで社会実装された結果、SNSには自撮りの写真が溢れ、一億総アイドル時代となった。
生成系AIも社会実装され、結婚式の披露宴における祝辞や学生のレポート作成に利用されるようになっただけではない。自撮り写真ではAIによる処理が施され、「Kawaii(カワイイ)」が溢れだした。100%AIで創造されたKwaii画像も多数登場し、アニメとともに、この日本文化は世界から注目されている。
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ポリウレタンをホスファゼンで変性するときに、ホスファゼンの官能基のデザインが重要である。イソシアネート基と反応させる時には、アミノ基の導入が有利である。
ホスファゼンをアミノ化するには、アンモニアを用いる。面白いのは常圧でアンモニアとホスファゼンを反応させると、アンモニア2分子のみと反応する。
しかも、同一のリン原子上に2分子のアンモニアが反応し、常圧ではそれ以上反応は進行しない。アンモニアガスの圧力を高めると、すなわち反応をオートクレーブ中で行うと、ホスファゼンのすべての塩素原子がアンモニアに置換され、6モルのアミノ基がホスファゼン1分子に導入される。
ゆえに、イソシアネート基との反応を前提としたときに、ホスファゼンのこの性質は便利である。すなわち、ホスファゼン1分子に2モルのアミノ基を導入したいならば、ホスファゼンを溶解した反応液にアンモニア水を所定量添加し、高速攪拌するだけで簡単にホスファゼンにアミノ基を導入できる。
残った未反応の塩素は、求核試薬で置換する。コストを考えるなら、ナトリウムフェノキシドを用いればよい。これも簡単に塩素を置換でき、低コストでイソシアネートを化学修飾できる試薬を合成可能である。
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1970年代に基礎研究が完成したホスファゼンは、無機ベンゼンとも呼ばれているP=N骨格の3量体環状化合物を中心にした環状化合物の総称である。
ファイアーストーンによりPNF200という商品名で1970年末にエラストマーが販売されたが、このポリマーを合成するためには高純度の3量体環化合物が必要である。
合成ルートは様々あるが、不純物として生成する4量体を少なくするルートが開発され、1980年代にはホスファゼンに関する研究がブームとなった。
リン系化合物なので、難燃剤としての実用化研究が盛んになったが、ホスファゼン変性ポリウレタンフォームはその先鞭をつけるものだった。日本化学会などで発表されたが、世界初の技術でありながらゴム会社では始末書扱いの情けない結果となっている。
ホスファゼンを研究したのは、大学院を修了し卒業するまでの20日間である。大抵の学生は卒業旅行はじめ遊んでいたが、当方は大学の許可を得て20日間研究し、論文2報書いている。
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残業代が出ないことを承知で残業を命じた上司、そして残業代が出なくても素直に従った部下、しかし当時のことは心の傷として癒されず今でも残っている。
部下が残業しなければいけない状況で、それを拒否して帰宅するのは、ある意味健全である。そもそも残業させなければいけないような計画を立てている上司がダメなのだ。
働く意味は、貢献と自己実現、と言ったのはドラッカーである。樹脂補強ゴムの開発では、1年の仕事を3カ月でまとめるぐらい休日も忙しく働いたが、楽しい思い出として残っている。
残業をした、とか休日出勤をしたとかそんなケチな考えなど、今でも思いつかない。むしろ、混練技術や高分子プロセシングについて実技として学ぶことができ、充実した3か月間の思い出として残っている。
当時の指導社員にはお金では買えない知識と体験を指導していただき、大変感謝している。感謝だけではなく、神様のように感じている。
それに対し、本来残業をしないしつけをするために美人の指導社員をつけて、定時退社だけでなく、定時後の楽しみ方を指導予定と話していた上司が、世界初の成果を見たとたんに目の色が変わり、残業代が無いのに残業を命じてきた。
特許も素案を書かせておいて、上司がトップネームで当方は末席である。それだけではない。プレゼンテーションに失敗した原因を部下の責任にして、新入社員の当方に始末書を書かせたのである。
残業をキャンセルする若者の思考がどのような回路であるか、当方は知らないが、キャンセルされたからと言って、上司は怒る必要はなく、やらなければいけない仕事であれば、上司が行えばよいのである。
そもそも、仕事の価値は、上司と部下の関係で決まるのかもしれない。会社がどれほど立派でも直属の上司がポンコツであれば、部下にはダメな会社、無意味な仕事となるのである。
ドラッカーの定義づけた働く意味が、仕事に感じられるようにマネジメントしておれば、部下は残業キャンセルと言わないのではないか。
働き甲斐を上司が部下に説教するのは詐欺である、と言っている女性脳科学者がいる。部下が自分の仕事に働き甲斐を感じるのは、当方のサラリーマン時代を思い出すと、やはり、直属の上司と部下の関係が重要である。
貢献する気も起きないような部下と上司との関係では、部下は働かない。自己実現の可能性が無く、上司の責任まで始末書を書かされるような状態では、部下は皆「この課を出たい」と言い出すだろう。実際にグループ全員の大合唱を40年ほど前に見たときに、マネジメントの知識の重要さを学んだ。
QMSが普及し、新しく赴任した部署ですぐに仕事を始められる環境の職場は多いだろう。しかし、上司と部下の関係は、仕事を通じ育ててゆくものである。仕事を単なる作業として部下に任せてはいけない。
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ホスファゼン変性軟質ポリウレタンフォームは世界初のホスファゼン変性ポリウレタンエラストマーである。それを当方は、ゴム会社の基盤技術0の状態から合成に成功している。
大学院はSiCウィスカーの講座で2年間学んだが、大学4年の時に身につけた当方の合成技術スキルが高かったのである。その結果、セラミックスの講座出身の社員にも合成できる簡単な技術と誤解され、主任研究員からすぐに工場試作の準備をするように指示が出た。
主任研究員には、合成スキーム等説明し、エーテルなども使う危険な作業であることを説明しているが、セラミックスの研究室でエーテルを使ったら大変だろうが、ここは高分子合成研究室だから大丈夫と言われている。
さらに、合成するのに時間がかかることを説明したら、残業しても良い、という。しかし、当時新入社員の2年間は残業手当が出ない規則だった。入社して半年間の研修でも終日拘束され、夜は夜で集団生活で、残業代は無かった。
樹脂補強ゴムの開発は面白い仕事だったので、残業代など無くても楽しく残業して1年の計画を3カ月で仕上げたのである。しかし、今回はノー残業生活と時々美人とのオフJTという楽しい生活を犠牲にしてホスファゼン前駆体を工場試作用に大量合成しなければいけない。
それで休日出勤も願い出たら簡単に許可が出た。それで休日出勤もして工場試作に必要なホスファゼン前駆体をたった一人で合成している。そして、工場試作を成功させたのだが、その後、主任研究員から始末書を書けと1週間もめることになった。
こうして当時を思い出しながら書いてみたら、無茶苦茶な体験であることを改めて感じた。このような時代があったのだ。その後FD事件が起きるまで12年間この会社に勤務しているが、完全なるブラック企業だったのだろう。
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そもそも入社して8か月後の1月8日にこの主任研究員のグループへ異動したことが理解できなかった。入社二年間は職場異動が無い、と研修で説明を受けていたからである。
もっとも、1年の予定であった防振ゴム用樹脂補強ゴムの配合設計を優秀な指導社員のおかげで3か月で完成させたので新しい仕事が必要になり、異動となった、と指導社員から説明を受け、納得している。
そして指導社員から定時退社を約束させられた。すなわち残業無しの業務遂行である。美人の指導社員は時々食事に誘ってくれて、楽しい日々だった。
樹脂補強ゴムの開発では、指導社員が優秀な方で粘弾性のシミュレーションからさらにゴールとなるゴムのサンプルまでフロントローディングでできていたので、当方は必要なデータ収集と耐久試験その他業務が明確であり、毎日サービス残業を行い、短期でテーマを完成させている。
しかし、美人の指導社員は指導計画さえも作成しておらず、これから一緒に1か月かけて作るのだという。一方で、主任研究員は、世界初の難燃性軟質ポリウレタンフォームを発明してほしい、そして新入社員発表でできれば工場試作までやりました、なんて言えれば大成功と発破をかけられていた。
異動となった最初の打ち合わせは、No.2の係長職の人と美人の指導社員、当方の3人で、難燃性軟質ポリウレタンフォームの開発計画作成だったが、この打ち合わせで不思議に思ったのは具体的な技術手段は何も書かれておらず、業務のアローダイヤグラムだけだった。
このアローダイヤグラムでは、1月末に具体的技術手段の調査結果を打ち合わせることになっていた。そこで当方は大学院を修了し、ゴム会社へ入社するまでの3週間大学に残って研究し、論文作成を始めていたホスファゼン誘導体について、この打ち合わせにおいて説明した。
そして、この誘導体を用いれば、ホスファゼン変性軟質ポリウレタンフォームができるかもしれない、というビジョンをさらに説明している。
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始末書騒動の経緯は以前にも書いているが、丁寧に書いてみるのでマネジメントの参考にしていただきたい。また、新入社員を甘く見てはいけない。新入社員の意欲をうまく活用して指導することができない管理職はこれからの時代、ますます不要になるだろう。
始末書を書けと命じた主任研究員も、いなくても良い存在だった。また、当時の部下誰もがそう思っていたらしい。No.2に相当する係長職の方が、予算からテーマ何もかもこの主任研究員の仕事全てを担当していたからである。
1年に1回管理職と部下とのコミュニケーションを図るために30分面接があるのだが、この始末書の騒動から3年後この係長も含めてメンバーの全員がこの面接で異動したいと申し出たそうだ。
当方は、無機材研留学が決まっていたので、留学への抱負を述べたのだが、主任研究員は少し涙目で、当方だけ異動希望を述べなかった、ありがとう、と感謝された。
その感謝の言葉の後、なぜ全員が突然異動希望を一斉に書いたのか、教えてほしい、と質問してきた。あたかも、誰か中心人物がいてクーデターでも起こしたと勘違いされていたようなので、当方へ始末書を書くように命じたときのことを回顧しながら話を進めた。
当方はドラッカーの著書をほぼ80%ほど読んでいたので、そこからいろいろこの主任研究員に説明している。困ったのは、当方の一言一言にうなづきながら聞かれていた姿勢だった。
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国会でも話題にされたハルウララが亡くなった。29歳だった。小泉総理がその負けっぷりを話題にしたのは20年ほど前で、よくぞここまで負けを重ねてもこの馬を走らせたものだ、と感心する。
武豊騎士が乗っても勝てなかったのである。当時の負けっぷりもすごかった。武豊騎士はダービーで優勝してもここまで話題にならない、と驚嘆の記者会見を開いているが、これがサラリーマンだったならここまでチャンスをもらえたかどうか分からない。
負け組の星などと言われているが、ここで注意しなければいけないのは、ハルウララが自らの意志で走っていたわけではない点である。負けても負けても走らされたのである。
視点を変えればこれほど残酷な仕打ちは無い。もっとも競争馬として使えない馬は馬肉にされるので負け続けた話題のおかげで、寿命を全うできたという見方もできる。
馬肉で思い出したわけではないが、負け組の星として勝南桜がいる。ただしこちらは0勝ではなく3回勝っている。3勝238敗である。
一度も勝たなかったハルウララの方が価値があるのか、3勝しかしてなくてもあきらめず相撲を取り続けた勝南桜に価値があるのか知らないが、人生最後まであきらめていけないことは確かである。
馬については分からないが、人は生きている限り努力を続ければ、何らかの成長がある。その成長を喜びとする人生を送りたい。40にして惑わない生き方も立派である。
しかし、死ぬまで努力する生き方も亡父の姿を思い出すたび孔子に負けていないと今日も頑張ってます。ハルウララは千葉で過ごした余生に何を考えていたのだろう?
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表題の言葉が流行語になっているそうだ。言葉の意味はインターネットで調べていただければわかるが、これを悪と捉える管理職は時代遅れである。
部下育成のチャンスである。業務の効率化を進めるためにこれを活用すべきである。この意味の分からない管理職は、少しマネジメントの初歩から勉強をされたほうが良い。
50年ほど前になるが、新入社員時代に始末書を書け、書かないと、1週間上司ともめた体験がある。そもそも始末書を当方が書かなければいけない理由が、全くわからず、また、上司もその理由を明確に説明しない。
さらに、当方は入社して1年の新入社員であり、指導社員やその上司の係長に相当する人物がいて、工場実験を成功させたから、始末書を書けと言われても責任の取り方そのものが分からなかった。
状況から、美人の指導社員が始末書を書くべきだが、その指導社員が、本来は課長である主任研究員が書くべきものを新入社員に書かせようとしている、と噂になっている、とここだけの話として説明してくれたのだから、当方としてはますます謎が深まった。
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材料の力学物性において、弾性率は形式知のパラメーターであり、弾性率の大きな材料は硬い。このことから、硬さと弾性率は相関する。しかし、硬い材料の曲げ強度あるいは引張強度が大きくなるとは限らない。
例えば、樹脂製のお茶碗と陶磁器でできたお茶碗とでは後者の方が割れやすいことから強度が低いような感覚を日常持っていると思う。
また、この感覚を確認することはやや危険だが難しくなく、二つの茶碗を押し付けてみると分かる。樹脂製の茶碗は変形するかもしれないが、押し付けている途中で陶磁器の茶碗が割れる。
面白いのは、この実験をノリタケチャイナで行うと樹脂製の茶碗が壊れる。必ずしも感覚がいつでも正しい結果とならない。ノリタケチャイナは高級ブランドであり、高価だが、それなりの技術力で製品が設計されているので瀬戸物とは一線を画す。
この経験から、硬さ以外に破壊のしやすさをコントロールしているパラメーターがありそうだ、と気づく。それが、脆さのパラメーター靭性であり、Kで表される。
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