研究開発部門でハラスメントを防止したいならば、役員以下皆コーチングスキルを身に着ける必要がある。しかし、当方のサラリーマン生活でもコーチングスキルの優れた役員を見たことが無いので、難しい願望だろう。
学生の時に今でいうところのアカハラとうわさのあった研究室を希望して研究生活をスタートしている。確かに厳しい研究室だったが、おかげで大学院に進学予定でもなかったのに進学でき、奨学金ももらえるほどの成績で、さらに教授推薦で授業料も免除されて幸運な3年間を送った。
3年生までパチンコ麻雀に明け暮れた生活が、勉学一色の生活となったがこれはこれで楽しかった。このときご指導くださった3人の先生は、今から思えばコーチングの名手だったのかもしれない。
ドイツ語を選択せず、英語だけの単位で進級してきた当方に対して、教授は毎朝1時間ドイツ語の指導をしてくださったが、ドイツ語の授業ではなく、毎日ドイツ語の専門書1ページ読むのが目標という指導だった。
ドイツ語の文法など全く分からない当方に、辞書の引き方を毎日丁寧に指導してくださった。不思議なことに1週間でドイツ語文法が身についた。1年間のカリキュラムで使用するドイツ語文法書を1週間で読み終えたのである。
無言の圧力が毎晩の復習のモティベーションとなって学習が加速度的に進んだのかもしれないが、これもコーチングと呼べる指導かもしれない。教授から決して褒めてはいただけなかったが、「今日はここまでか」とため息交じりに言われると不思議に明日こそ頑張ろうという意欲が沸いた。
4年の時に指導してくださった助手は、当方の名前を呼ぶだけだったが、その意味は声のトーンで理解できた。1年間名前しか呼ばれた記憶がなく、唯一明確な指示だったのは卒論を提出した時で、明日までにこれをまとめて序文としてつけるように指示された。その「明日」とは提出締め切り日だったのだが、50報もの英語で書かれた論文を渡された。
できるかどうか迷っている時間はなかった。すぐに家に帰り徹夜して論文を読み卒論を書き直した。翌日卒論を提出したところ、すぐに英文に直すように言われた。卒論を受理されたのだが、すぐにアメリカ化学会誌へ投稿する論文を書く宿題が出たのだ。
青色吐息で卒業証書を頂けたが、ショートコミュニケーションではあったが学会誌に載った体験は大学院で半年ごとに研究成果について論文をまとめる習慣となった。
有機合成の講座から大学院では無機合成の講座へ移った。この2年間ご指導してくださった先生は、毎日もうそのテーマは面白くないだろう、というのが口癖だった。
教授から出されたテーマだったが、毎年教授が出されたテーマを最後までやり通した学生はいなくて、皆が助手の方が企画した研究テーマに変更していた。
理由は、二週間ほど調査して理解できた。すでに研究成果が出ているテーマで研究するところが無いようなテーマだった。当方はホスフォリルトリアミドの重合によりポリマーを合成するのが課題だったが、すでにその重合機構や反応について研究論文が存在していた。
耐熱高分子から高分子の難燃化が興味を持たれる時代で、たまたまPVAの難燃化を某塗料メーカーの研究者が相談に来られた。そこてPVAの難燃化を研究したところ、アイデアが当たってすぐに良い結果が出た。そこで教授から出されたテーマを拡大解釈し、応用研究を2年間することにした。
研究の方向を自ら決めてショートコミュニケーション含め2年間6報の論文を書ける成果を出せたのだが、これだけ成果を出せた背景には、図書室にケミカルアブストラクトを調べに行くと、表紙に鉛筆で丸と二重丸の落書きがされ、紙片が挟まっている不思議な現象のおかげだった。
すなわち、誰かがホスフォリルトリアミドや、その他の高分子難燃化技術、あるいは無機高分子など当方の研究に必要な論文を先回りして読んでおり、重要度別にマークをつけておいてくれたのだ。
ゆえにある日から当方は、紙片と落書きを目標にケミカルアブストラクトを読むようになり、調査の効率が上がるとともに、研究アイデアも自然と浮かんだ。
2年間を終了し、図書室でケミカルアブストラクトに落書きしている犯人を図書担当の女性に尋ねてみたら、指導してくださった先生だった。くだらないテーマを辞めよと言いながら、研究の方向を当方よりも先に調べていたのだ。そしてそれを落書きとして残していた。
古いケミカルアブストラクトも調べたところ、教授の出された過去のテーマについて皆落書きのマークがついていた。当方以外の学生は、おそらくこのマークに気がつかなかった可能性がある。
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昨日トヨタで起きたパワーハラスメントの和解がニュースになっていた。TVの扱いも含め国内の重要ニュースの一つ、として扱われていた。
ニュースの扱いも含め、様々な問題を抱えているニュースであることを感じた。トヨタのような会社でも起きたのだ、という驚きからここで文章として表現しにくい問題までさまざまである。
類似の事件として財務省の忖度事件があり、こちらはまだ最終解決まで至っていない。ニュースの扱いも昨日のように大きくはない。
報じられた内容を比較する限りにおいては、財務省でもハラスメントが存在した可能性が高いが、財務省の裁判はハラスメントを前面に出していない。昨日報じられた内容よりもひどい状態が想定されてもである。
昨日報じられたニュースは、ニュースを聞く限り難しい問題を含んでいる、と感じたので、それを伝えるために連載として書いてみたい。
まず、誤解を防ぐために最初に結論を書いておく。
21世紀においてハラスメントとは、被害者となる受け手が訴えて、その「事実」が存在した瞬間にハラスメントとして認定される。ここで「事実」が存在しても、受け手の対応で事件となるかならないかが左右される。第三者がその程度はハラスメントにならない、と思っていても、受け手が「事実」の存在を主張し、「事実」が認定されたらアウトである。「事実」に至るプロセスや状況は、「事実」に影響を及ぼさない点に注意する必要がある。
これが今回の事件でわかりにくいと思われた方は、セクハラの事件を調べていただけば理解しやすいかもしれない。文春砲がさく裂しても裁判になっていなかったり、裁判になっても加害者側が事実を否定しているにもかかわらず、否定できない「行為の事実」が提示されたなら裁判で負けるのだ。夫婦関係でも成立することを理解できたならば、ハラスメントの特徴を把握できる。
しかし、ハラスメント事件の中には、加害者側の「思い」が強すぎたためにその意図が無くてもハラスメントとされる場合もあったのかもしれないが、それを公に述べることも「ハラスメント容認」と受け取られるリスクが大変大きくなった。「思い」が強くても、一呼吸おいて「ハラスメントになるかもしれない」と考えながら「アドバイス」しなければいけない時代になった。
これはイノベーションを必須とする職場ではマネジメントが大変難しくなったことを意味している。この「マネジメントの難易度が極端に上がった」と、今回のニュースを聞き感じなかった方は、ハラスメントについてよく理解していない人である。
もし、今回のニュースでマネジメントの危機を感じられた方は、弊社にご相談ください。
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表題の組み合わせは、高分子の難燃化技術開発の過程で生まれた技術シーズである。ホスファゼン変性ポリウレタン発泡体の難燃性を評価した時に、その高い難燃性が燃焼時に無機高分子を生成するため、と思われる現象が観察された。
すなわち、リン酸エステル系難燃剤を添加型で用いたときに反応型として用いた時より、同等の難燃性レベルを得るためにリン原子の添加量が多く必要だった。
ところが、この性能差よりもホスファゼンの添加効果が高かったので、燃焼時のリン原子の挙動を研究した。すると、リン酸エステル系難燃剤では燃焼時にオルソリン酸の形態で揮発し、燃焼後の残渣にリン原子の単位が残っていないことがわかった。
それに対し、ホスファゼンを用いたときには燃焼時にオルソリン酸は検出されず、添加されたホスファゼンのリン原子の大半が燃焼後の残渣に残っていることが確認された。
そこで、燃焼時に揮発するオルソリン酸を燃焼時の系内に保持する目的で、リン酸エステルとホウ酸エステルの組み合わせ難燃化システムを検討した。
組み合わせたホウ酸エステルは期待通りに燃焼時にリン酸エステルと反応し、ボロンホスフェートを生成することが確認されただけでなく、この組み合わせ難燃化システムでは、ホスファゼンと同等レベルの難燃性能が発揮されることもわかった。
この成果から、フェノール樹脂とポリエチルシリケートを組み合わせてSiCを合成するアイデアが苦労なく自然に生まれている。ところが、この組み合わせのχパラメーターは十分に大きく相溶しない問題があり、これをどのように解決するのか、という高い技術の壁が存在した。
しかし、リアクティブブレンド技術を習得していたので、解決手段とその効果はフェルミ推定で予測された。すなわち、未体験の技術について、その技術要素を抽出し、それぞれの機能や役割効果を概略評価することでブレークスルーするための実験計画とその結果を予測したのである。
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科学の時代にあって、科学的に考えることは常識となった。また、コロナ禍でニュースの報道も科学的に高度な説明をわかりやすく科学的に報道している。
このような時代に忘れてはいけないと思っているのが、人間の営みとして身に着けてきた思考法である。古くはユークリッド幾何学があり、科学の誕生直前にニュートンのリンゴの話がある。
いずれも今では非科学的と称されているが、かつての学校教育で教材として使われていた。昨年末小中学校の参考書を購入してびっくりしたのは、これらの教材は扱われていなかったことである。皆科学的な教材ばかりで、プログラミングの教材までも科学的だった。
起業後非科学的な思考法について取り組んできたが、その結果確信したことは、今の時代に科学的アイデアとは当たり前のアイデアであり、誰もが思いつく。独創的なアイデアにはどこか非科学的要素が入っている。
ノーベル賞を受賞した山中博士のヤマナカファクターが非科学的成果だったことはあまり知られていない。非科学的な思考法であってもそれが人類に有益であれば莫大な価値を生みだすので馬鹿にできない。単なる思いつきではない非科学的思考法というものについてご興味のあるかたは問い合わせていただきたい。
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学歴フィルターの話題が目につくが、就活生は冷静に考えていただきたい。就活の基本は、自分を採用してくれる企業に就職するのが理想と考えている。学歴フィルターをかけていて自分が採用されないと予想できたならエントリーシートを出さないことである。
日本には新卒募集を出していなくても新卒を求めている企業が存在する。中小企業の中には新卒募集を出していても志願者がいないため募集をやめている企業もあり、このような企業も含めれば新卒者は全員就職できるはずだ。
新卒を募集していなくても転職者を募集している企業をネットで見つけることが可能であり、当方がもし新卒者であればそのような企業の門戸を叩いてみる努力をする。
あるいは何か事業アイデアがあれば、それで事業を始めるのも理想的な就活の一つである。今の時代、楽な就職先など無い、と考えておいた方がよい。
ネットには学歴フィルターをかけている企業への批判がいろいろ書かれているが、批判する必要はなく、そのような企業に希望を出さなければよいのだ。エントリーシートがはじかれて時間の無駄を憤っている就活生の声があるが、それを見抜けない愚かさに気がついていない。
就活は、自分を採用してくれそうな会社を探す活動が基本であることを理解してほしい。無駄なチャレンジはしないことだ。入社したいと思って入社してもとんでもない会社だった、という例は多い。
当方はその風土を気に入り、大学で学んだ専門外のゴム会社に入社したが、会社全体の風土とはまったく異なる風土の研究所に配属され、FDを壊されるなどの嫌がらせを受けて、ヘッドハンティングの会社の紹介で転職している。
セラミックスがキャリアとなっていたのに高分子技術の部門へ乞われて転職したにもかかわらず、バブルがはじけて転職した部門が無くなった。サラリーマン人生でも平坦ではないのだ。
しかし、ゴム会社の研究所のような嫌がらせを受けることはなかった。窓際となっても一部屋頂けたので、窓際に座らず部屋の真ん中に座っていたら、豊川へ単身赴任できた。
そうした経験をすると行きたい会社よりも、自分を採用してくれる会社の方が少しは良いことに気がつく。エントリーシートを受け付けてくれる会社を見極める目は、社会人になっても役に立つ。就職では、雇用する側も良い人材を採りたいと必死なのだ。
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高分子材料の密度ばらつきを甘く見ると痛い目にあう。以前この欄にN社のフィルムカメラ(F100)裏蓋が、防湿庫に保管中壊れた話を紹介している。フィルムカメラの裏蓋はフィルムの感光を防ぐ重要な機能部品である。
また、F100というカメラはハイアマチュア向けの当時N社を代表するカメラの一台だ。価格も安くない。それが、大切に保管中壊れたのだから頭が真っ白になった。購入してから1年以上経過していたので無料修理も効かない、とサービスセンターで言われた。
すでにデジカメD2Hを使用していたのでF100の修理をあきらめて、高分子の破壊と劣化セミナーで技術が無いために品質問題を起こした事例として使うことにした。裏蓋の壊れたフィルムカメラを修理しないで使う方法としてそれ以外思いつかなかった。
一応修理窓口で無償修理が効かないならセミナーの教材として使ってよいか、と尋ねたら、簡単に承諾が得られた。ゆえに当方の高分子の破壊と劣化セミナーでは無残に壊れたF100が最初に登場する。
フィルムカメラの裏蓋は、高級カメラの場合にボタンを押すとカパッと開くタイプが多い。F100も裏蓋にスプリングがついており、ボタンを押し下げると気持ちよくカパッと半開きになる。
長年P社の一眼レフを使ってきたが、カメラ店でF100を触ってみて、その高級感とデジカメの将来を考え、N社に乗り換えようとしてF100でシステムを揃えなおした。50万円を軽く超えたがN社のデジカメと心中するつもりでF100に乗り換えた。
そして、デジカメはD2Hを購入したわけだが、N社に乗り換え3年でF100の裏蓋が壊れ、無償修理もきかない事態に改めてP社のカメラを見直した。システムを一通りそろえても50万円を越えない懐にやさしいカメラである。
結局現在はN社とP社の両方のデジカメを使用している事態になっている。高分子材料と密度についてF100のフックが壊れた話を書こうとすると、品質保証のサービスが受けられなかった話までさかのぼる。理由は、本来は無償修理すべき問題だと今でも思っているからだ。明日その理由を書く。
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扇風機を2台つけただけの空調服が2万円台の価格で販売されている。これだけの価格ならばペルチェ素子を用いたエアコンジャケットの方が快適である。同じ価格帯で供給可能である。
ただ、問題はペルチェ素子をただつけただけでは、エアコンジャケットとならない。そもそもペルチェ素子だけでは体を冷却することはできない。もう一工夫必要である。
弊社ではこのひと工夫に成功し、ペルチェ素子を用いたエアコンジャケットの試作に成功している。ただ残念なことに開発依頼主の本業がコロナ禍のあおりを受けてエアコンジャケットの事業がペンディングとなった。
特許は3件出しており、そのうち重要な1件については弊社から出願し、出願時審査請求を行っている。開発依頼主からは弊社が新たな事業先を探してよいことになっているので、もしエアコンジャケットの事業を希望される方は弊社へお問い合わせいただきたい。
ちなみに扇風機を2台つけただけの空冷服の問題は、外気を体に直接吹き付ける点である。ペルチェ素子を用いたエアコンジャケットでは、外気と体表面とは遮断されて冷却されることになる。さらに冷却しすぎも無く快適である。
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高分子のガラス相について組み紐でできる構造から説明しているが、この組み紐モデルでうまく説明できないのが高分子の結晶である。組み紐が偶然規則正しく並んでいるところが結晶構造といってごまかすことができるが、実際の高分子の結晶は、ラメラと呼ばれる板状の結晶子の集まった球晶である。
これが、プロセス条件により、フィブリル状の結晶として観察されたり、シシカバブ構造の結晶として観察されたりする。結晶性樹脂では、単一組成の樹脂であっても高次構造として、結晶とガラス相、自由体積の3つの構造ができる。
これは重要な知識である。ところが高分子の教科書にこのような説明がないから困る。結晶性樹脂のブリードアウトを考えるときに、この3つの構造が頭に浮かぶかどうかで、出てくるアイデアに影響を受ける。
アイデアというものは、頭の良しあしだけで決まらない。中学校の時に通知表が1か2しかついていないクラスメートがいた。テストがいつも100点満点で10点前後しか取れなかったので仕方がないが、なかなかのアイデアマンだった。
技術家庭科とか美術でその才能は発揮されたのだが、教師はそれを評価できなかった。手先が器用で作品はいつも素晴らしかった。ただ、製作時間が長く、家に持ち帰って完成させていたので親が手伝っていると誤解されていた。
驚くのは、課題が出たときの着手の速さである。着手は早いのだが、仕上げに凝るのでいつも作品提出が遅くなった。しかし、いつも小生は作品の構想をまとめる作業で彼に勝てなかった。子供心にすごい才能だと興味を持っていた。
このような特異な才能に恵まれた人ならば高分子の高次構造モデルなどどうでもよいかもしれないが、凡人はアイデアを出すための下地を整えておかなければ、必要なときにひらめきとしてそれを活用することができない。
凡人が高分子材料技術についてアイデアを出しやすいように、ツボとしてこの欄で書いているが、不満な点は問い合わせていただきたい。
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表題のセミナーがS&T社の企画で11月18日に開催されます。WEBセミナーの形式で10時30分から16時30分の予定で行います。弊社へ申し込まれますと割引価格となります。
さて、高分子の劣化と寿命予測も科学的に扱うと泥沼に入ってゆく難しい分野だ。金属やセラミックスでは科学的な成果がほぼそのまま実用化されているが、高分子材料では新入社員の研修発表でCTOに厳しく躾けられた経験があり、科学的に技術を作り上げることの難しさが身についている。
学会では高分子の酸化劣化機構の研究が十分に議論されたが、現場で起きているのは酸化劣化だけではない。タイヤならば実車試験を繰り返し寿命予測を行わない限り、正しい予測はできないとされている。
例えばタイヤトレッドゴムの寿命予測では、比較コンパウンドと新規開発コンパウンドを1本のタイヤに用い、それをタクシー会社にお願いして半年ほど使用してもらいデータを集めて予測することが行われている。
ようするにやってみなければわからない世界だ。研究段階では様々な模擬試験法があり、その試験結果で耐久性を見るのだが、その試験内容はノウハウである。
そのような世界を見てきた技術者にとって世の中の教科書はいい加減だと思う。ある10万円前後の本に樹脂とゴムでは耐久性が異なる、と大胆な結論がグラフとともに書かれていた。ここまで書かれると今回のようなセミナーを継続して行い啓蒙活動をしなければいけない使命感が起きてくる。
コロナ禍となって、ナノポリスを辞職し国内のセミナーに力を入れている。昨年末には2時間ほどWEBセミナーの練習として無料セミナーを数回行った。もし何かリクエストがあれば年末に有料でセミナーを企画したい。
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高分子に可塑剤を添加すると、その量に応じてガラス転移点(Tg)は低下する。物性を微調整したおつりとして耐熱性の指標ともなるTgの低下が設計上問題となる時には、添加量の最適化実験がなされたりする。
ゆえに、可塑剤の添加はTgの低下を招くと経験知として体得することになる。可塑剤の添加は、樹脂の流動性の改良や樹脂の機能性向上が主たる目的だが、このTgを下げたくない場合にどうするかが教科書に書かれていない。
例えば流動性が悪く射出成型性に難があるPPSについて、射出成型性を上げるために添加剤が開発提供されているが、これを用いるとTgは2℃以上添加量に応じて下がる。
せっかくの耐熱性が落ちるのであまり使いたくない技術である。6年ほど前に中国ナノポリスにある某企業から相談を受けてTgを劣化させないPPSの流動性改質剤を開発した。
すでに特許が公開されたので種明かしをすると添加剤としてオリゴマーを採用したのである。PH01と名ずけたこの添加剤は、PPSの流動性をあたかもそのTmを5℃前後低下させた以上に改善できる。市販の添加剤よりもMFRは2倍の値となる。
分子設計でオリゴマーに着目した理由を知りたい方は問い合わせていただきたいが、このような着眼点の特許が少ないことに驚いている。オリゴマーの分子量制御が問題となることも多いので、すなわちオリゴマーの設計が難しいために普及していないのかもしれない。
ただ、オリゴマーには高分子添加剤としてあまり知られていないメリットがあり、この研究はアカデミアでも行うべきではないだろうか。デンドリマーの研究とかも下火になってきたので研究時間にゆとりができた先生はチャレンジしていただきたい。
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