プロジェクトが外部からコンパウンドを購入し成形技術だけを開発するのが目標となって進められているときに、コンパウンド会社の力量はプロジェクトの命運を左右する。
だから、コンパウンド会社は国内トップクラスのメーカーとプロジェクトを進めるというのは、一つの判断である。ところがトップクラスの技術力をもってしても解決が難しい問題に遭遇したらどうするか。
このとき、トップクラスのメーカーが誠実真摯な技術者集団であれば、難問に対して謙虚に対応してくれるが、誠実真摯な人間は少ない。
自分が誠実真摯か、と反省してみても結論を出せるものではないので、ドラッカーは誠実真摯に行動することの重要性を説いている。
「素人は黙っとれ」という発言をする人物は、誰が見ても不誠実である。しかし、これまでの経緯をよく理解していないと思われる人間からこれまでの努力を否定されるような話をされたならこのような暴言を吐きたくなる気持ちを理解できる。
結局、「それでは私がコンパウンド開発を始めるがよいか。」と同意を求めたら「勝手にやっとれ」となったので、これまでの流れの仕事はすべて課長に任せて当方はコンパウンド開発を始めた。
素材調達は外部コンパウンドメーカーと同じものを使用しなければならないので、その供給について承諾していただいた。一部は市販されていない材料で簡単な承諾が得られたのは助かった。
最後に二軸混練機のプラントをどうするのか、という難問が残った。見積もりをとったところ自動化ラインを1ライン立ち上げると3億円程度かかるという。
金額の問題だけでなく、二軸混練機の納期は8か月必要という回答が決め手となり、中古機を集めて自分でラインを組み立てることにした。
しかし、ここで新たな問題が発生した。二軸混練機について詳しい人材が社内にいない。結局自分で0から勉強しなければいけないので、10万円前後の高い本を数冊自腹を切って買い込んだ。
軍資金はたまたまゴム会社が旧無機材研に支払った高純度SiCの特許報償を無機材研の先生がくださるというので、それで購入した。ものすごく良いタイミングで勉強のための軍資金が入った。
混練セミナーにも参加したが、驚いたのはゴム会社で指導社員からご指導された内容とセミナーや技術書に書かれた内容は大きく異なっていたことだ。無駄な知識にお金を投じたことになる。
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コロナ禍でテレワークが一気に普及した。TVのワイドショーもリモートである。このワイドショーを見ていて気がついたことがある。
大抵のワイドショーは、リモート参加者とスタジオ(会場)参加者の二本立てで、会場参加者は密を避けるように席が配置されている。
この時会場参加者とリモート参加者の顔を見ていると面白い。どちらもライブ感を要求されているはずなのだが、リモート参加者にはそのライブ感をうまく出せないタレントがいる。
例えばホラン千秋氏は、最近リモートから現場に戻ったが、リモートの時にうまくライブ感を出していたにもかかわらず、それは現場でのライブ感と異なることを残酷にも映し出してしまった。
リモートの時の方が活き活きとしていたのだ。現場に戻り、従来の形に戻った瞬間、単なる女性キャスターに戻ってしまった。おそらく彼女は一人でキャスターをやらせた方が光るアナウンサーなのだろう。
これはウェブ会議でも同じである。ライブ感を出そうと思うならばそのための努力が要求される。そしてその要求は、ウェブセミナーでさらに強くなる。モニター相手のライブ感さえ差があるのだ。
そしてその差に気がついたときに、学生時代に自分の適職は教師ではないかと真剣に考えたことを思い出した。
いくらモニターやカメラの画素が細かくなったとしても、その場の空気感まで演出は難しい。テレワークの会議でも十分だ、という経営者はそのもたらす弊害に気がついていないので心配である。
それは高精細画像を見せられて、その場にいる感覚でしょう、と店員に言われたら、その場にいる感覚が欲しければJTBにゆく、と突っ込みたくなる気持ちと似ている。
やはりモニター画像と実際の現場とは空気感なる抽象的なものが異なるのだ。この空気感の違いが生み出すポストコロナ禍のビジネスについてご興味のあるかたはご相談ください。
特に経営者はその問題に敏感でなければいけない。担当者の立場であれば、成果主義の時代ゆえに発生する空気感の乏しさの危機に対応しなければいけない。
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実験は、仮説を設定して行えと言われていた時代がある。今でもそのような掛け声を企業の中で聞こえたら、この会社には明日が無い、と思った方が良いかもしれない。
確かに仮説を設定して行う実験も時には必要になるが、真理の確認よりも新しい技術を生み出すためには、コンセプトに基づく実験こそ重要である。
1990年前後から日本でもそのような実験が行われるようになってきた。タグチメソッドはコンセプトに基づく実験をルーチン化したメソッドである。
田口先生は、基本機能の選択は技術者の責任、といつも言われていたが、この一言で困惑していた技術者は多い。科学者はタグチメソッドを嫌った。
田口先生の言われていた基本機能こそコンセプトの一例である。基本機能というコンセプトに基づき、実験を行うために制御因子やら各種の因子を決めてゆく。
これを仮説に基づく実験と勘違いしていると、制御因子として検討すべき因子を見落としたり、間違えて誤差因子に入れたりする。
タグチメソッドがコンセプトに基づく実験の一つの方法だと理解していると、各種制御因子を選んだりする理由を自然と理解できる。
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技術開発におけるコンセプトの意味をお伝えするために中間転写ベルト開発の事例を昨日まで連載した。
繰り返すが、コンセプトとは、辞書を引けば概念とその意味を解説しているが、技術開発に限らず、英語ではもっとダイナミックな意味として使われる、とゴム会社の指導社員から習った。
英語を指導してくれたわけではない。材料開発にはコンセプトが重要な意味を持ってくる、と言って、その時当方が、どのような概念ですか、と質問したためである。
指導社員はコンセプトの説明をあたかも英語の訳が分かっていないかのようにしどろもどろに話し始めた。しかしそれは英語の訳が分かっていないわけではないことが、語源の説明からすぐに理解できて、逆に当方が赤面することになった。
その時の思い出を書けば、コンセプトは科学における仮説とは異なりそれがあることで実験の意味を明確にする、仮説を検証するための実験とコンセプトに基づく実験は異なる場合もあるが多くのアクションは一致する、アクションは一致してもコンセプトの有無で得られる情報量が変化する、仮説は正誤の情報すなわち結果を重視するがコンセプトでは経過も重視する、コンセプトは常に意識した方が良い、それにより現象の理解と整理が容易になる、その結果ヒューリスティックな解を得やすい、となる。
これを丁寧に15分ほど語ってくれた。それまでコンセプトとは全体像を一口にまとめるぐらいにしか考えていなかったが、まさにアイデアを生みだす意味として重要な言葉であることを理解できた。
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PPS/6ナイロンのマトリックス中カーボンの分散で生じるWパーコレーションを制御して周方向の抵抗が均一なベルト素管を押し出せるコンパウンドは、2つの方法で実現できそうな見通しがヒューリスティックな問題解決法で得られた。
しかし、それを実際に実現できるか、という問題の答えが得られたわけではない。このあたりの答えを得るためにはノーベル賞の山中先生同様に試行錯誤で行うしかないのだ。
混練プロセスについて研究開発している暇など無かった。すぐにコンパウンドを作る必要があった。そのためバンバリーミキサーを使用した。バンバリーミキサーとロール混練のプロセスはゴムのコンパウンド製造で今でも用いられているバッチプロセスだ。
バッチプロセスなので混練の途中段階を観察することが可能だ。しかし混練の途中段階を観察すると言ってもナノオーダーのレベルの粒を目視では見ることができない。分散状態の変化からそれを「悟る」しかないのだ。極めて非科学的である。
しかし、非科学的だから間違っているというわけではない。経験知や暗黙知を現象に適用するのである。勘ではだめである。体系化された経験知や暗黙知は、AIには難しく、人間ならではの育成可能な知である。
このような知の育成には多少コツが必要であるが、もしご興味のあるかたは問い合わせていただきたい。しかし、一言で伝授できないので、多少時間をかける必要があることはご理解いただきたい。
話が横道にはずれたが、バンバリーとロール混練については、ゴム会社で獲得した経験知と暗黙知があった。これらは錆びついていなかった。無事目的のコンパウンドを製造することができた。そしてそのコンパウンドで製造された素管は、周方向で抵抗が均一だった。
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PPSの押出成形で製造された中間転写ベルトを製品に搭載するためには、半年後に歩留まりも含めて生産ができる状態になっていなければいけない状況だった。
そのような状況で、前任者から役割を引き継いだのだが、単身赴任前周囲の冷たい視線に十分気がついていた。すなわち、周囲は、成功すると思っていなかったのだ。
当方が失敗の責任を取ることになるだろうことは、噂話で聞こえていた。面白いのは、中間転写ベルトを仕上げる工程の担当を依頼テーマとして請け負っていた部門はほとんど何もしていなかったのだ。
結局当方がコンパウンドラインを完成させて、中間転写ベルトの素管を生産に間に合わせていざ生産が始まったところ、ある生産技術開発について、すでに基盤技術ができていたにもかかわらず、量産技術を生産の中で四苦八苦しているような状態になった。
このあたりは詳しく書けないが、外部、それも日本を代表するようなメーカーから調達していたコンパウンドを生産間際にド素人集団で技術開発するという暴挙ともとれるような方針を周囲にどのように納得させたのか、という点が重要である。
製品を担当している全員のサポートを得るためにはコンセプトとそのプレゼンテーションが受け入れられなければならないが、これは企業における企画を実現させるキモとして普遍的なスキルともいえる。
答えは一つである。コンセプトが具現化されたモノを作ればよいだけだ。これはゴム会社の研究開発本部長から散々叩き込まれた企画実現の方法である。企画書などいらない、まずモノ持ってこい、というのは、企画会議における本部長の口癖だった。
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研究開発における実験以外でも新たなコンセプトを考案できる瞬間は多い。これも俳句と同じである。
「古池や、買わず飛び込む、松坂屋」とは、古池君が松坂屋デパートへ入った瞬間に詠んだ句であるが、その後松坂屋美人店員と交際が始まったならば、単なるパクリの句ではない。
このような句を詠める能力と行動力があれば、りっぱな研究開発リーダーになれる。あるいはイノベーションを起こせる企画立案さえも可能だ。
カオス混合装置は、古池君と同じような心境で生み出されている。豊川へ単身赴任前に何か面白い情報はないか、一日PPS中間転写ベルトの生産工場に飛び込んでみた。
現場の改善を目的にしていないので、古池君と同じスケベ根性である。眺めていたのは、PPS材料だけであり、女性店員だけを眺めていた古池君と大差ない行動である。
納入されたPPSコンパウンドは、袋詰め状態もあれば、フィーダーに入っている状態などさまざまである。
一軸押出機の中に入れば見えなくなるが、制御盤には押出機の中で樹脂がどのようになっているのか、妄想は可能である。
また、頭に描いているのが妄想であることも十分に自覚しなければいけない。現実と交錯させるとよからぬことになる。妄想は妄想のまま妄想として楽しむストイックな姿勢はどのような場合でも重要である。
詳細は省くが、工場の中には、このような材料変化の妄想を描きたてる情報があふれている。湧き出た妄想の中で金属音から低周波数音に変化した瞬間は、絶世の美女と心が通った瞬間と等価であった。
しかし、これは妄想であることを忘れてはいけない。現実であることを確認するために、低周波数音に変わったサンプルを東京へ持ち帰った。
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7月中旬に2時間の無料WEBセミナーを開講しようと準備を進めている。一枠6人程度の少人数で、金曜日と土曜日いずれかで実施予定でいます。
詳細決まりましたらここで公開いたしますが、とりあえず参加してみようと思われる方は、弊社へご連絡ください。
準備が遅れている理由は、2時間という枠内で果たしてできるのか、という問題と、WEBセミナーとして何を使用するのか、という選定に時間がかかっているためです。来週月曜日までには決めたいと思っています。
<開講予定候補内容>
1.高分子のツボ 専門外も含めた方が対象の高分子材料技術の概要。
2.高分子の難燃化 高分子材料の難燃化技術にご興味のある技術者。
3.高分子の混練 高分子の混練技術についてカオス混合中心に講義。
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昨日朝早く、音工房Zへ同社で購入したキットスピーカー組立品(音友ムックのスピーカーに同社のキットを組み合わせたスピーカーで以下当方組立品)を持ち込み、B&Wと同社の新作スピーカー(Z1-Livorno)との比較視聴を頼み込んで行うことができた。
持ち込み比較は行っていないと最初断られましたが、朝一番の客、ということで同社のブラインドテストを予定時間より早めに終了して、キット組立品との比較をさせていただいた。
ただし、このブラインドテストでは、B&Wのスピーカーと同社の新作スピーカーとの比較だけである。驚いたのは10曲比較視聴によるブラインドテストで9曲について同社の新作スピーカーを選んでいた。
これは無理に頼み込んだお礼のため、忖度して良いスピーカーとして選んだのではない。難しいブラインド比較の中で違いを聞き分け、当方の好みとして選んだのだ。
このブラインドテスト後、当方組立品との比較視聴をしてみたが、確かに、新作スピーカーは、2WAYとしてバランスの取れた良好なスピーカーだった。
当方組立品は、フルレンジ一発の明瞭さがこのスピーカーに勝っていたが、低域の量感については新作スピーカーに負ける。
新作スピーカーも当方組立品も、スペックで書けば、低い方の周波数特性は50Hzとなるのだが、新作スピーカーの低域は、質も量もよかった。
ただ当方組立品と比較すると、フルレンジ一発の長所としてよく指摘されている表現になるが、音の新鮮さ明瞭さが欠けるという評価になる。
しかし、B&Wと比較すれば十分に明瞭である。B&Wの優れたところとして、音の明瞭な点がオーディオ雑誌に良く指摘されているが、この明瞭さというのは、実は曖昧な評価である。
当方が表現したい明瞭さとは、例えばオーケストラを聞いたときに、楽器の位置が良くわかるかどうかである。音像定位とも言われたりする。
音響効果の悪いコンサートホールで生演奏を聴くとオーケストラは音の塊となる。これは安価なスピーカーに近い聴こえ方である。
しかし、音響効果の良い、例えば筑波学園都市にあるノバホールのようなところで聴くと、第一バイオリンや第二バイオリンなどがきちんと分離される。
B&Wもこの意味で明瞭なのだが、新作スピーカーは、前後間の関係が見えるような響きである。これがフルレンジ1発になるともっと明確となり、音像定位だけは100万円をこえるB&Wに迫るものがある。
年を取って耳が悪くなってもこの明瞭な音像については聞き分けることが可能で、どうしても良いスピーカーというと楽器が見えるかどうかという観点で選んでしまう。
新作スピーカーは久しぶりに購買意欲が湧くようなスピーカーだったが、残念なことにキット品と完成品では、同じスピーカーパーツを使いながらも聞こえ方が少し異なり、キット品はB&Wに近くなる(説明ではネットワークが異なる、とのこと)。
どうせなら十分に良くなるキット品を購入したい。完成品には作る楽しみが欠けている。趣味の世界では、自分のわがままを十分に満たし満足したい。
友人は100万円をこえるB&Wを購入して満足している、と言っていたが、お金では決して満たされない世界が、「自分で作る」キット(注)にはある。そして、キットで自分の満足できる世界が現れたのなら、大変幸せである。
多目的トイレの楽しみを当方は理解できないが、おそらくキットを組み立てて苦労して自分の満足な世界を得る楽しみなどアンジャッシュ渡部建氏には理解できないだろう。
趣味について他人に必ずしも共感されるとは限らないが、たとえ共感されなくても恥ずかしくない趣味を楽しみたい。
オーディオは、趣味として絶滅危惧種の一つである。しかし、音の再生を電気信号の変換で行う限り、理想的なスピーカーは永遠のニーズとして残る。生ビールでさえ好みが分かれるのである。電気信号を変換して誰もが良いと認める生音を再生する技術が容易に完成するとは思えない。音工房Zのような取り組みは面白い。
(注)可能ならば自分で0から設計し、材料を買ってきて切るところもやりたいが、そこまでオーディオの趣味に時間を割けない。オーディオよりもやりたいことがあるので、スピーカーなど組み立てている時間など無いのだが、音工房Zのキットはそこそこ作る楽しみを味わえる。
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コロナ禍により、緊急事態宣言が4月中旬に出され、5月6日まで休業に協力した中小企業あるいは個人事業主に50万円が支給される、というので弊社は対象期間に休業し、応募しようとした。
しかし、応募要領を見ると、弊社は対象外で応募してももらえないことが分かった。2日前に、第二回の募集があり、再度応募要領を見た。そこには第一回の募集で協力金がもらえた事例ともらえない事例がまとめられていた。
まとめを見ていて、おかしなことに気が付いた。例えば学習塾は協力金がもらえたが、学習塾教師はもらえなかった。これは、箱を持っている人を経営実態として認めようという考え方が伝わってくる。
ところが、第1回の応募条件で1000平米以上の部屋がある場合はOKで狭い場合は対象外となっていた。学習塾でこのような大部屋を持っているところは中小企業では少ない。
また、風俗産業で店舗型はもらえたがデリヘルは対象外となっていた。これは、学習塾と学習塾の先生との関係と同じ、と読み取れるが、部屋の面積の条件を満たすところは大きなフロアをもったバーやキャバレーに限定されるだろう。
何やかやと見ていたら、第二回はそのあたりが少し緩和されていると読み取れる表現になっていた。
実は、東京都は協力金の支給対象を一部の中小企業に限定したのではないかと推定している。原資は限られるので一定の篩を条件設定するのは悪いことではないが、その条件が妥当かどうかという問題が発生する。
こうして第一回の協力金を応募してももらえなかった事例を見ていると、このような協力金の趣旨に誤解を与える一覧表になっているのではないかという危惧が生まれた。
ドラッカーは、政治の役割において富の配分に問題が生じないことが重要だと言っている。政治が公平に富を分配してくれるので、知識労働者は安心して社会貢献ができるのだ。
今回のコロナ対策に政府や東京都が尽力していることはそれぞれの施策から理解できるが、細部について誤解を招くようなところがある。せっかくいい施策を実施しているのだからもう少し慎重な運営が必要だろう。
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