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2022.03/11 割れた殺生石

「九尾の狐(きつね)伝説」で知られる栃木県那須町湯本の国指定名勝「殺生石」が真っ二つに割れたことが分かったそうだ。先日5日のニュースでこれを知ったが、本欄で取り上げる問題ではないと思っていた。


しかし、TVニュースでも昨日扱われ、無視できない話であることを知った。この石の伝説についてはネット記事を読んでいただきたいが、割れた石の写真を見て、この話題をセミナーで使おうと考えた。


すなわち、石の破断面を見ると長年にわたりヒビが大きく成長し、今回自然に割れたということがよくわかる、フラクトグラフィーの題材になる、と思った。


すなわち、破断面には最初からひび割れていたところから次第にそこが大きく成長したと思われる汚れがきれいに残っているのだ。ニュースに掲載された写真でもそれがわかる。


ゆえにこの石の破壊は、九尾の狐が、復活しようとして暴れて割れたわけではないのだ。割れるべくして割れたのである。


実はN社のF100というハイアマチュア写真家に人気のあったフィルムカメラの裏蓋フックが防湿庫に保管中壊れた。その破壊機構は典型的なクリープ破壊であり、格好のセミナー題材となっている。


しかし、これは当方の体験談であり、もう少し一般的な話でフラクトグラフィーに使えないか題材を探していた。今回殺生石の割れた写真が何枚かネットで公開されていたので今後セミナーでこの話題も紹介してゆこうと考えた次第。

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2022.03/09 ゴム屋と樹脂屋(4)

技術者のスタート時にバンバリーとロールによる本格的なコンパウンド開発を担当できたことは幸運だった。また、それが成功体験だったことも人生の大きな宝である。


さらに、1年のテーマを3か月で完了できて分厚い報告書にまとめることができたのも自信になった。学生時代から3か月あれば研究を一つまとめることができるようになれ、と指導されてきたが、それができたのだ。


これは、指導社員が極めて優秀だったからで、これまでこの指導社員以上に頭の良い人に出会ったことが無い。開発現場で困った問題が生じるとすぐにヒューリスティックな解を提示されるとともに、関数電卓で常微分方程式を解きながら現象を説明してくださった。


AIを近くにおいてゴムのコンパウンドを開発している景色を想像していただきたい。それに近い環境だったので、難易度の高い先端材料にもかかわらず、3か月という短期間に開発できている。1か月間の耐久データもそろえていたので、2か月で配合設計ができていたことになる。


午前中座学で午後実務という状態で訓練されたおかげで、混練技術についてはたった3か月の訓練にも関わらず、ゴム会社の研究所ではトップと評価されたようだ。


10年後電気粘性流体用ゴム開発は当方にしかできないと指名され、住友金属工業との高純度SiCのJV立ち上げ業務に忙しいにもかかわらずゴム開発を依頼された。

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2022.03/07 ゴム屋と樹脂屋(2)

長年バッチ式プロセスでコンパウンドを検討してきたゴム屋と連続式混練機で簡単にコンパウンドを製造してきた樹脂屋とが混練について議論するとかみ合わない。


また、ゴム会社の研究所のゴム屋どおしでも技術を追求する研究者と科学を追及する研究者でもロール混練に対する考え方が少し異なる。


ゴム屋と樹脂屋について比較する前に、技術者と科学の研究者との相違点から。ゴム会社の研究所に配属された時の指導社員は京都大学理学部修士課程出身の純粋のレオロジストだった。


科学の研究者ではあったが珍しい技術志向の考え方をしており、「研究所でゴムを扱っている人の大半は簡便なニーダーでゴムを練り上げているが、ゴムのコンパウンドを開発するときには面倒でもバンバリーとロール混練プロセスで行え」と厳しく指導された。


理由は、同一配合でも同じコンパウンドを絶対に作ることができないからだ、と指導された。当時の研究所は企業活動に貢献するアウトプットが出ていない部署として社内で有名だった。


指導社員は、研究所で開発されたコンパウンドを実用化しようとしても使い物にならないからで、その原因がニーダーを使ったコンパウンド開発にあるためだ、と説明された。

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2022.02/28 高分子材料の帯電防止

冬には静電気の発生が多く、帯電による電子製品の故障に気をつける必要がある。電気製品にはアースがついており、アースがとられている場合には良いが、これが不十分であると静電気故障を引き起こすことがある。


パソコンを自分で修理する人はご存知と思うが、CPUはほんの少しの静電気で壊れる。完全に壊れてくれればよいが、CPUの場合に一部だけ壊れていると不安定な動作としてその現象が現れ、壊れたことに気がつかない場合があるのでやっかいだ。


静電気のいたずらで悩まされるのは電気製品だけでなく、人間の肉体も同様で、冬場かゆみが多くなる人は静電気を疑ってみるとよい。


これは、全身に保湿剤を塗ると防止できるから容易に確かめることができる。すなわちかゆみ止めが入ってない保湿剤を全身に塗ってみて、かゆみが起こらなかったなら、静電気が原因と理解できる。


射出成形体の静電気防止も同様であり、コンパウンドに保湿剤となるような界面活性剤を添加してやれば、帯電防止が一応可能である。ただし、界面活性剤が成形体の表面にうまくブリードアウトしてくれないと、帯電防止の機能が発揮されないので、少し技術開発が必要となる。


注意しなければいけないのは、帯電防止のために添加した界面活性剤が、ブリードアウトしすぎると表面がべたべたになるブリードアウトという品質問題を引き起こす。


ブリードアウトの問題を回避する必要がある用途では、成形体そのものの体積固有抵抗を10の11乗Ωcm未満の半導体としなければいけない。


絶縁体高分子の場合には導電体を混練したコンパウンドで品質要求を満たすことが可能となるが、この時パーコレーション転移に配慮する必要がある。


耐トラッキングが要求される分野では、この帯電防止技術の難易度が上がる。科学的に考えると不可能ということになるので、技術で帯電防止できる条件を見出すことになる。

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2022.02/16 海洋汚染

プラスチックによる海洋汚染の深刻さは2015年鼻から血を流していた海亀により世界に知らされた。鼻にストローが刺さっていたためだが、人間の捨てたゴミで生物が傷つく話は、20世紀にもニュースとなっていた。


ただこの海亀が20世紀のそれと異なるのは、続けて太平洋ゴミベルトが報告されたり、ごみを飲み込んだ鯨が浜に打ち上げられたり、と連続してプラごみの話題が報じられるきっかけになる点である。


海洋汚染はプラごみだけでなく、海底火山の爆発などで生じた軽石によっても発生する。軽石が魚のえらにつまり、大量死したニュースは時折報じられる。


プラゴミによる海洋汚染が、自然災害による海洋汚染と比較して深刻なのは、紫外線により熱分解し二酸化炭素を発生する点であるが、意外と知られていない。


地球温暖化阻止のため脱炭素が叫ばれ、様々な対策が進められているが、太平洋ゴミベルトに漂うプラごみについては未だ対策が進まず二酸化炭素を放出している。


二酸化炭素は、動物からも放出されており、牛や羊など反芻胃の動物のげっぷは地球温暖化を考えるときに無視できない量だという。


動物の吐き出す二酸化炭素は、植物の光合成で処理してもらえるように植林を今よりも増やすことで対応するのが自然の仕組みから妥当な解決策と思われるが、太平洋ゴミベルトのゴミは、人類がそれを処理する方法を考えない限り漂い続ける。

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2022.02/15 今起きている変革(2)

トランスサイエンスとは、1972年物理学者A.ワインバーグが提唱した言葉である。「科学に問いかけることはできるが、科学では答えられない問題」として、一般に訳される。


50年近く前のこの言葉が日本で注目され始めたのは、2011年東日本大震災で起きた福島原発の爆発がきっかけと言われている。


一方、「科学でタイヤはできない、タイヤは技術で作る」とは、1979年ゴム会社のCTOが新入社員の研修成果発表会で述べた名言である。また、この2年前に当方は大学の特別講義で某企業役員の科学論で「科学と技術は車の両輪である」という名言を聞いている。


トランスサイエンスはアカデミアの方が好んで使われる言葉であるが、残念なのは言葉を発しつつ、科学でしか考えられない矛盾に気がついていない点である。


日本人科学者により書かれたトランスサイエンス論でがっかりさせられるのは、ただその意味解説で終わっているところである。


多くの人が知りたいのは、科学では答えられない問題をどう処理したらよいのかである。日常となったDXは我々の生活を大きく変えたが、実体をわかりにくくし、ひとたびエラーが発生するとその回復に多大なエネルギーのかかる社会を生み出した。


こうしたイノベーションやトランスサイエンスについて詳しく知りたい方は弊社へ問い合わせていただきたい。セラミックスフィーバーとなるやいなや世界で初めて有機高分子と無機高分子のポリマーアロイ製造に成功し高純度SiCの事業をゴム会社で起業した成功体験はじめ様々な技術開発の成功体験に裏付けられたアドバイスから困っている問題の答えまでご提供させていただきます。

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2022.02/06 両面(2)

朝のドイツ語学習よりも卒業研究は、厳しかった。卒業研究は、シクラメンの香りの全合成だったが、日々の実験は、指導してくださっていた助手の方の研究用の原料を合成することが任務だった。


予定量合成されていなければ、厳しい声で名前が呼ばれた。ただ、言われた量の合成ができておれば、空き時間に好きな実験ができたので当方にとって問題は無かった。


しかし、周囲からは学生を奴隷のように使って原材料合成させている、という噂が進級前からあった。また、廊下まで響く叱責の声で厳しい講座と言う噂もあった。


当方にとっては、叱責よりも具体的な指示が原料合成だけであり、その他の進捗の問いが無いことが厳しかった。卒論をまとめることができるのかどうか、という不安があった。講座の先輩からは言われたことだけしっかりやれ、と激励されるだけだった。


ゆえに見よう見まねでシクラメンの香り成分の合成経路探索実験を勝手に始めた。しかし叱られることは無かった。実験がうまくいって、シクラメンの香りが漂ったら、厳しい呼び声が無くなった。


今から思い出しても1年間、名前を呼ばれた記憶しかない。厳しく呼ばれるのか優しく呼ばれるのか、どちらかだった。名前の呼ばれ方で、卒業研究の進捗を判断しなければいけなかった。


これをひどい指導と評価するのか、自主性を重んじた指導と評価するのか微妙であるが、自主性が育った実感はあった。学生と言う身分で悩みにならなかったのだろう。


卒業研究論文の受付も乱暴な扱いだった。締め切り直前に50報もの論文を渡されたのである。しかし、不思議にも徹夜して、今見ても立派なコピペなど無い学位論文並みの卒業論文を仕上げることができていた。


昨今のアカハラの記事を読むと、記事よりもひどい一年間だった、と思い出せなくもない。しかし、大学4年間で能力が最も向上した1年間であったことだけは確かである。

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2022.02/04 コーチング

研究開発部門でハラスメントを防止したいならば、役員以下皆コーチングスキルを身に着ける必要がある。しかし、当方のサラリーマン生活でもコーチングスキルの優れた役員を見たことが無いので、難しい願望だろう。


学生の時に今でいうところのアカハラとうわさのあった研究室を希望して研究生活をスタートしている。確かに厳しい研究室だったが、おかげで大学院に進学予定でもなかったのに進学でき、奨学金ももらえるほどの成績で、さらに教授推薦で授業料も免除されて幸運な3年間を送った。


3年生までパチンコ麻雀に明け暮れた生活が、勉学一色の生活となったがこれはこれで楽しかった。このときご指導くださった3人の先生は、今から思えばコーチングの名手だったのかもしれない。


ドイツ語を選択せず、英語だけの単位で進級してきた当方に対して、教授は毎朝1時間ドイツ語の指導をしてくださったが、ドイツ語の授業ではなく、毎日ドイツ語の専門書1ページ読むのが目標という指導だった。


ドイツ語の文法など全く分からない当方に、辞書の引き方を毎日丁寧に指導してくださった。不思議なことに1週間でドイツ語文法が身についた。1年間のカリキュラムで使用するドイツ語文法書を1週間で読み終えたのである。


無言の圧力が毎晩の復習のモティベーションとなって学習が加速度的に進んだのかもしれないが、これもコーチングと呼べる指導かもしれない。教授から決して褒めてはいただけなかったが、「今日はここまでか」とため息交じりに言われると不思議に明日こそ頑張ろうという意欲が沸いた。


4年の時に指導してくださった助手は、当方の名前を呼ぶだけだったが、その意味は声のトーンで理解できた。1年間名前しか呼ばれた記憶がなく、唯一明確な指示だったのは卒論を提出した時で、明日までにこれをまとめて序文としてつけるように指示された。その「明日」とは提出締め切り日だったのだが、50報もの英語で書かれた論文を渡された。


できるかどうか迷っている時間はなかった。すぐに家に帰り徹夜して論文を読み卒論を書き直した。翌日卒論を提出したところ、すぐに英文に直すように言われた。卒論を受理されたのだが、すぐにアメリカ化学会誌へ投稿する論文を書く宿題が出たのだ。


青色吐息で卒業証書を頂けたが、ショートコミュニケーションではあったが学会誌に載った体験は大学院で半年ごとに研究成果について論文をまとめる習慣となった。


有機合成の講座から大学院では無機合成の講座へ移った。この2年間ご指導してくださった先生は、毎日もうそのテーマは面白くないだろう、というのが口癖だった。


教授から出されたテーマだったが、毎年教授が出されたテーマを最後までやり通した学生はいなくて、皆が助手の方が企画した研究テーマに変更していた。


理由は、二週間ほど調査して理解できた。すでに研究成果が出ているテーマで研究するところが無いようなテーマだった。当方はホスフォリルトリアミドの重合によりポリマーを合成するのが課題だったが、すでにその重合機構や反応について研究論文が存在していた。


耐熱高分子から高分子の難燃化が興味を持たれる時代で、たまたまPVAの難燃化を某塗料メーカーの研究者が相談に来られた。そこてPVAの難燃化を研究したところ、アイデアが当たってすぐに良い結果が出た。そこで教授から出されたテーマを拡大解釈し、応用研究を2年間することにした。


研究の方向を自ら決めてショートコミュニケーション含め2年間6報の論文を書ける成果を出せたのだが、これだけ成果を出せた背景には、図書室にケミカルアブストラクトを調べに行くと、表紙に鉛筆で丸と二重丸の落書きがされ、紙片が挟まっている不思議な現象のおかげだった。


すなわち、誰かがホスフォリルトリアミドや、その他の高分子難燃化技術、あるいは無機高分子など当方の研究に必要な論文を先回りして読んでおり、重要度別にマークをつけておいてくれたのだ。


ゆえにある日から当方は、紙片と落書きを目標にケミカルアブストラクトを読むようになり、調査の効率が上がるとともに、研究アイデアも自然と浮かんだ。


2年間を終了し、図書室でケミカルアブストラクトに落書きしている犯人を図書担当の女性に尋ねてみたら、指導してくださった先生だった。くだらないテーマを辞めよと言いながら、研究の方向を当方よりも先に調べていたのだ。そしてそれを落書きとして残していた。


古いケミカルアブストラクトも調べたところ、教授の出された過去のテーマについて皆落書きのマークがついていた。当方以外の学生は、おそらくこのマークに気がつかなかった可能性がある。

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2022.02/01 ハラスメント(1)

昨日トヨタで起きたパワーハラスメントの和解がニュースになっていた。TVの扱いも含め国内の重要ニュースの一つ、として扱われていた。


ニュースの扱いも含め、様々な問題を抱えているニュースであることを感じた。トヨタのような会社でも起きたのだ、という驚きからここで文章として表現しにくい問題までさまざまである。


類似の事件として財務省の忖度事件があり、こちらはまだ最終解決まで至っていない。ニュースの扱いも昨日のように大きくはない。


報じられた内容を比較する限りにおいては、財務省でもハラスメントが存在した可能性が高いが、財務省の裁判はハラスメントを前面に出していない。昨日報じられた内容よりもひどい状態が想定されてもである。


昨日報じられたニュースは、ニュースを聞く限り難しい問題を含んでいる、と感じたので、それを伝えるために連載として書いてみたい。


まず、誤解を防ぐために最初に結論を書いておく。


21世紀においてハラスメントとは、被害者となる受け手が訴えて、その「事実」が存在した瞬間にハラスメントとして認定される。ここで「事実」が存在しても、受け手の対応で事件となるかならないかが左右される。第三者がその程度はハラスメントにならない、と思っていても、受け手が「事実」の存在を主張し、「事実」が認定されたらアウトである。「事実」に至るプロセスや状況は、「事実」に影響を及ぼさない点に注意する必要がある。


これが今回の事件でわかりにくいと思われた方は、セクハラの事件を調べていただけば理解しやすいかもしれない。文春砲がさく裂しても裁判になっていなかったり、裁判になっても加害者側が事実を否定しているにもかかわらず、否定できない「行為の事実」が提示されたなら裁判で負けるのだ。夫婦関係でも成立することを理解できたならば、ハラスメントの特徴を把握できる。


しかし、ハラスメント事件の中には、加害者側の「思い」が強すぎたためにその意図が無くてもハラスメントとされる場合もあったのかもしれないが、それを公に述べることも「ハラスメント容認」と受け取られるリスクが大変大きくなった。「思い」が強くても、一呼吸おいて「ハラスメントになるかもしれない」と考えながら「アドバイス」しなければいけない時代になった。


これはイノベーションを必須とする職場ではマネジメントが大変難しくなったことを意味している。この「マネジメントの難易度が極端に上がった」と、今回のニュースを聞き感じなかった方は、ハラスメントについてよく理解していない人である。


もし、今回のニュースでマネジメントの危機を感じられた方は、弊社にご相談ください。

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2022.01/26 フェノール樹脂とエチルシリケート

表題の組み合わせは、高分子の難燃化技術開発の過程で生まれた技術シーズである。ホスファゼン変性ポリウレタン発泡体の難燃性を評価した時に、その高い難燃性が燃焼時に無機高分子を生成するため、と思われる現象が観察された。


すなわち、リン酸エステル系難燃剤を添加型で用いたときに反応型として用いた時より、同等の難燃性レベルを得るためにリン原子の添加量が多く必要だった。


ところが、この性能差よりもホスファゼンの添加効果が高かったので、燃焼時のリン原子の挙動を研究した。すると、リン酸エステル系難燃剤では燃焼時にオルソリン酸の形態で揮発し、燃焼後の残渣にリン原子の単位が残っていないことがわかった。


それに対し、ホスファゼンを用いたときには燃焼時にオルソリン酸は検出されず、添加されたホスファゼンのリン原子の大半が燃焼後の残渣に残っていることが確認された。


そこで、燃焼時に揮発するオルソリン酸を燃焼時の系内に保持する目的で、リン酸エステルとホウ酸エステルの組み合わせ難燃化システムを検討した。


組み合わせたホウ酸エステルは期待通りに燃焼時にリン酸エステルと反応し、ボロンホスフェートを生成することが確認されただけでなく、この組み合わせ難燃化システムでは、ホスファゼンと同等レベルの難燃性能が発揮されることもわかった。


この成果から、フェノール樹脂とポリエチルシリケートを組み合わせてSiCを合成するアイデアが苦労なく自然に生まれている。ところが、この組み合わせのχパラメーターは十分に大きく相溶しない問題があり、これをどのように解決するのか、という高い技術の壁が存在した。


しかし、リアクティブブレンド技術を習得していたので、解決手段とその効果はフェルミ推定で予測された。すなわち、未体験の技術について、その技術要素を抽出し、それぞれの機能や役割効果を概略評価することでブレークスルーするための実験計画とその結果を予測したのである。

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