高分子材料の劣化は、紫外線や酸素による低分子量化である、と科学的に説明されたりする。また、今でも時々あるのだが、高分子の酸化分解速度を調べた研究報告である。
この研究報告の大義として、高分子の劣化耐久に関する研究、と謳っている場合がある。30年以上前ならばそれも許されるが、今となっては大義とならない。
屋外暴露など耐久劣化試験を行ったサンプルのGPCを測定してみても懸念していたほど低分子量化していない。
また、今再生樹脂のブームとなっているが、再生樹脂100%のコンパウンドで成形体を作成しても、バージン材と遜色のない強度が出たりする。
ただし、このような実験結果を出すには、カオス混合が必須となるが、それでも5年以上市場に放置されていた樹脂が、混練だけで力学物性が回復するのは驚きのことである。
先月末、中国で開催された再生材に関する国際会議に招待講演者として呼ばれて講演を行ってきたのだが、再生材の品質問題についての考え方が日本よりも進んでいたのでびっくりした。
当方の発明したカオス混合は、日本ではあまり知られていないが、中国では高い評価がなされていた。日本では、当方の装置を真似たダイを二軸混練機に着けて研究発表しているアカデミアの研究者が有名であるが、中国では創始者を評価してくれたのである。
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グラスファイバーや炭素繊維を樹脂に混ぜて成形すると、樹脂単体よりも弾性率が向上する。これは、金属やセラミックスでも同様であるが、セラミックスでは靭性が向上する程度で、弾性率の改善まで観察されないことがある。
いずれもトラブルなく成形体が製造された時の物性であるが、このような繊維補強材料は成形が難しい。なぜなら、いずれの場合も流動性が悪いためである。
セラミックスではあまり繊維補強のニーズはないが、研究は20世紀の時によく行われた。樹脂や金属では今でも研究が行われ、弾性率向上が必要なときの材料改質手法として使われる。
樹脂の繊維補強では、繊維と樹脂の界面における濡れ性が分散性と力学物性に影響を与える。これは金属でも同様であるが、金属の場合に製造条件で改善することができる場合もあるが、樹脂では金属と同じ方法を使えない。
すなわち、繊維表面の濡れ性改善かカップリング材の添加が必要になる。これが樹脂の繊維補強の設計を難しくする。大抵は繊維表面が改質されたものが市販されており、さらに連続長繊維となっていてフィードしやすいような製品形態も存在する。
ゆえに、今では繊維補強樹脂は繊維メーカーに相談するとそれなりの繊維補強樹脂を誰でも製造できる時代になった。ナノファイバーの使いこなしノウハウも知られるようになったのだが、リサイクルするときに問題となる。
すなわち、繊維補強樹脂は靭性が高くなっているので細かく粉砕しにくいのだ。繊維補強樹脂のリサイクルは、ケミカルリサイクルが望ましいのだが、粉砕の段階で粉塵問題もあり、技術的な障壁が大きい。
繊維補強以外に、超微粒子で補強する方法も存在する。意外と知られていないのだが、繊維補強と超微粒子補強と比較すると靭性の改善効果は超微粒子補強の方が高い。
また、繊維補強樹脂のようにリサイクルするたびに繊維が短くなり、補強効果が低くなる問題を避けることができる。しかし、繊維補強に比較し研究例が少ないので技術開発が必要になる。
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樹脂の混練には、大抵二軸混練機が使われる。そして混練機から出てきた樹脂を冷却し、細かく裁断してペレットとする。
このペレット一粒一粒のばらつきを調べたところ、あまりにも大きなばらつきがあり、びっくりした。おそらくこのようなことを当業者は知っているのでわざわざ調べないのであろうが、一度データを取っておくことをお勧めする。
ペレット一粒一粒にばらつきがあるので、ペレットを一度タンブラーかV型混合機に集め、十分に混ぜ合わせた状態で袋詰めする。そして、この混合プロセスの規模を1ロットとしている場合が多い。
このようなペレットを射出成形しているのだ。成形ばらつきがあっても当然のこととと考えないのだろうか。ポリマーアロイでテープ剥離のようなトラブルが起きるのは、ペレット一粒が大きく組成変動しているときである。
このようなペレット一粒一粒のばらつきを小さくしたいならば、当方の発明によるカオス混合機を用いると良い。劇的にばらつきが小さくなる。
このあたりにつきましては、問い合わせていただきたい。ノウハウに関わる話なので、公開できない部分がある。また、特許は生きておりますので注意していただきたい。
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加硫ゴムの一般的混練プロセスは、バッチ式である。タイヤの部材では、バンバリーとロール混練により、コンパウンドを仕上げ、加硫プロセスで成形と加硫を行う。
樹脂のコンパウンドは、二軸混練機を用いて連続的に行われる。ゆえに、加硫ゴムのコンパウンドに比較すると、ばらつき因子が増えるだけでなくばらつきそのものも大きくなる。
両者の原材料において、高分子成分そのものもばらつく。よく知られているように、高分子は多成分系であり、多分散系と言われている。すなわち、合成高分子は、分子量分布を持っている。
分子量が異なれば、本来は異なる成分となる。また、その分子量分布も単純なものから複雑なものまで、合成条件により様々なので、多分散系となる。
さらに、ポリマーアロイでは、混合した成分数に応じてばらつき因子は増加する。すなわち、コンパウンドのばらつき因子とその偏差は、高分子ゆえの複雑さとコンパウンディングプロセスの履歴の影響を受け、様々に変化する。
このことを正しく理解している技術者は少ない。なぜなら、このような複雑系の研究開発を行うためにはタグチメソッドをはじめとする、複雑系を扱う手法で研究を進めなければいけないが、研究開発の現場でタグチメソッドの普及率は未だに低い。
50年近く前から、このような分野における研究開発手法について研究と実践を行ってきたので、ご興味のあるかたは、お問い合わせください。一部は学会発表など行っています。
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射出成形では、事前に成形条件を検討しても、量産時にトラブルが発生する。トラブルの原因はいろいろあるが、混練のばらつきによる場合が多いことを知らない人がいる。
射出成形について研究していたある学者に、射出成形という学問の目標は何か、と伺ったら、どのようなコンパウンドでも射出成型できる技術を創り出すことだ、とすごい答えをしてくださった。
この答えのどこがすごいのかというと、明らかに不可能な目標だからである。また、企業の射出成形担当の職人に聞いても同様の回答をされたので、それは間違っている、と正している。
コンパウンド起因でトラブルが起きているのに、時間をかけて射出成形条件を量産段階で検討されたのでは、費用の無駄使いである。
金型温度のばらつきやシリンダー温度のばらつき、湿度のばらつきでも射出成形のトラブルは発生する。それで射出成形プロセスでは、温度や湿度を管理している。
それらの管理を充分行っても、射出成型プロセスではエラーが発生する場合がある。それはコンパウンドが大きくばらついているからである。
コンパウンドのばらつきは、コンパウンドの組成に依存する。例えばPC/ABSのような複雑なポリマーアロイでは、ばらつきやすく、射出成形でエラーを発生しやすい。
射出成形条件を検討しても絶対に解消できないエラーにフィルミングあるいはテープ剥離と呼ばれているトラブルがある。これは、成形体に粘着テープを貼り付けると、一部が薄膜としてはがれるエラーである。
ひどい時には、金型を汚染し、毎回金型の洗浄を行わなければいけない状態になる。これは、混練が不十分なために組成が不均一になっていて発生している。詳細は弊社に問い合わせていただきたい。
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2022年に新法が施行され、リサイクル材の研究開発が活発になっている。市販されている再生材のカタログを見ると、再生材の含有率が記載されているが、100%リサイクル材のコンパウンドを見かけない。
PETボトルのボトルtoボトルのリサイクルが日本で始まったが、中国では10年以上前から行われていた。当時、日本で回収されたPETボトルの大切な用途だった。日本からkg単価40円以下で販売されていた。
さて、リサイクル材100%のコンパウンドが何故販売されていないのか。これは、リサイクル材の力学物性が劣るためであるが、それは混練プロセスに二軸混練機を使用しているからである。
二軸混練機に当方の発明したカオス混合機を取り付けると再生材100%でも、そこそこの力学物性のコンパウンドを製造することが可能だ。
数年前の日本の学者の論文も公開されているので、ぜひ問い合わせていただきたい。但し、その学者の論文には当方の発明品とは書かれていない。
また、この論文には、カオス混合機を取り付けたときの強度改善機構を図で説明しているが、学者にしては、いい加減な図である。今回中国で行われた再生材の国際会議では、小生の考察をご披露しているが、多くの人に納得していただいた。
原因は二軸混練機の本質的な構造にあるのだが、これについてゴムタイムズ社から上梓された当方の著書に説明しているのでご一読願いたい。
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2022年に施行された法律の効果で、再生樹脂の価格が上がっている。来週広州で再生樹脂に関する国際会議が開催され、その招待講演者に選ばれたので、最新情報を整理していて、その価格にびっくりしている。
バージン材と変わらない価格である。もっとも再生樹脂の生産では、バージン材と異なり生産量の調節を自由自在にできるわけではない。
ケミカルリサイクルも見直され、新たな発想による提案が出てきているが、廃材の収集が律速段階のようだ。中国では20年ほど前から廃材樹脂の再利用が始まっており、再生材ビジネスという視点で見ると日本よりも先行している。
ケミカルリサイクルの検討は行われていないので、廃材をそのまま再利用する方法となるが、汎用樹脂で問題となるのが、成形体の力学物性と外観である。
リサイクル材100%で射出成形を行うと、ほとんどの場合に力学物性が悪い成形体となるのでバージン材を混ぜたりして力学物性を調節したりする。
この原因についてよく言われるのは、再生材の分子量低下であるが、それよりも再生材がバージン材よりも混練しにくいことが知られていない。
換言すれば、二軸混練機にカオス混合装置を取り付けると同一配合でも力学物性が改善される。これが知られていないだけでなく、怪しげなカオス混合装置類似のダイを取り付けて独自技術と主張しているアカデミアの先生がいるから困る。少し特許を勉強してほしい。
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PETボトルのB2Bリサイクルは、サントリーと協栄産業が中心になり実用化された。今食品トレイのT2Tが話題になっている。
ところがトレイで問題になるのは、PETボトルのように同一素材でトレイが生産されていない。聞きかじりで申し訳ないが、プラスチックトレイ廃材の量はPETボトル約70万トンより多く85万トンらしい。
その40%は、PETだが、PSも40%ほどあり、10%がPPで残り10%がその他樹脂という内訳である。正確な数字は確かめていただきたいが、年をとっても関心のある数値は記憶している。
特に今月末再生樹脂の国際会議に招待講演者として呼ばれているので、必死でこのあたりの数値を確認してる。
さて、プラスチックトレイは、透明なトレイとそれ以外の白色や着色されたものなどさまざまである。すなわち、リサイクルにおいて透明トレイの選別はできそうだが、その他の色物は難しそうである。
トレイの材質を統一するモノマテも一つの考え方であるが、PETボトルと異なり、食品トレイでは加熱その他の目的に合わせる必要からPPなども活用されているのである。材質の統一は難しいだろう。
仮に透明トレイをPETに統一できたとしても、他の有色トレイはPETとしない方が選別が容易となる。すなわちリサイクルを考えたときに、選別技術を考慮するとすべてモノマテが良いとは限らないのだ。
なんだかんだで食品用トレイのリサイクルは、PETボトルほど容易ではなさそうだが、T2Tは、PETボトルで実現した手順で行えばよさそうであることは見えている(明日に続く)。
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高分子の燃焼において高分子試料で起きている現象は酸化だけではない。熱による溶融、熱による分子の断裂やラジカル発生、緩和など様々なことが発生する。
燃焼試験において、これらの変化が劣化させるように作用する場合もあれば、良い方向に作用する場合もある。例えば熱により変形が生じた場合に、ULーV試験では異常燃焼を誘起することもあり、たいていは悪い方向に働く。
実火災では、高分子材料がどのように火源と対峙するのか、その予測は困難であり、それで高分子材料の用途ごとに難燃規格が決まっているのだが、材料メーカーの立場で困るのは、それが成形体を対象としている規格であることだ。
すなわち、材料だけで難燃化規格の合格を保証することができない。難燃剤に至っては添加量の問題もあり、それが難燃剤であることを仕様に示すのは難しいはずである。
しかし、難燃剤として使用された実績があると、それを難燃剤として販売しているのが実情である。ここで問題が出てくるのは、リンやハロゲン系化合物以外で難燃剤として販売する場合である。
例えば、水酸化アルミニウムは、稀に30%以下の添加で、高分子を難燃化できたりする。これは他のフィラーとの交互効果が効いていたりする場合であるが、この事例から難燃剤として仕様に書くのはどうかと思う。
水酸化アルミニウムは、50wt%以上添加しなければ多くの高分子で難燃効果を発揮しない。これだけの添加量になってくると、成形体の燃焼時に高分子の変化に影響を与える。
良い方向に効果を発揮しているケースが多いので、水酸化アルミニウムは難燃剤としても知られるようになったのだが、その難燃化機構は、水の揮発による冷却効果として説明されたりしている。
ならば水酸化マグネシウムや酸化スズゾルも効果があるだろうと実験をすると、水酸化アルミニウムほどの効果が出ない場合もあれば、水酸化アルミニウムより少ない添加量で効果が出たりする。
40年以上前、高分子の熱による変化に着目し、これらリンやハロゲンを含まない化合物について、難燃効果を調べた経験があるが、仮説設定して実験を行うと、皆否定証明の結果となった。科学に対して大きな疑問を持つようになった原因の一つ。
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2022年に再生材とバイオポリマー促進に関する法律が施行され、今月広州では再生材に関する国際会議が開催されるという。その招待講演者に選ばれたので、改めて文献調査などを行ったが驚いた。
某大学の先生が当方のカオス混合類似の装置を使いながら、その先生の発明のようなことを書いている。この分野で真っ先に引用しなければいけないウトラッキーの文献さえも引用していない。
さらに、二軸混練機だけでは再生材の強度は低いが、その先生の発明による装置を使うと強度が上がるという論文をWEBでも堂々と公開しているが、その強度アップの原因に関する考察が間違っている。
論文は著名な雑誌ではないので、調査も不十分ないいかげんな論文でも掲載しているのだろうけれど、日本のアカデミアはここまでレベルが下がったのか、と愕然としている。
一応大学教授らしいが問題だと思っている。誹謗中傷ではない。やはりアカデミアから発表される論文は、先行技術など十分調査したうえでの研究論文であるべきと思っている。
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