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2022.04/18 射出成形体の強度

射出成形体の強度は、C-C結合の強度から計算される値よりも低い。ゆえに引張試験を行ったときの破断強度が他の要因により低くなっていることを想像できる。


欠陥がその一つの要因だが、欠陥以外に様々な歪や巨大化した球晶も強度を低める要因だ。例えばPPSを200℃で6時間熱処理すると強度は低下するが、これは球晶が成長したためである。


弊社で開発したPH01という添加剤を添加してやると球晶の成長を抑制するので強度の低下を抑えることができる。また弾性率は下がるが、カオス混合により6ナイロンを10%程度相溶させても同様の効果が得られる。


また、シャルピー衝撃試験も改善される。この高分子の結晶成長で強度が低下する現象はあまり知られていないのか21世紀でもポリ乳酸の劣化問題について球晶の巨大化であると考察した論文があった。


結晶成長はX線の小角散乱を行えばその成長をモニターできるので強度低下との関係を論じやすいが、樹脂内部に生じた歪については研究が難しくなることがある。


この場合は電子顕微鏡でうまく破断面の写真を撮る技術が必要になる。また、どのような電子顕微鏡を使用するのか選択眼とその顕微鏡に適したサンプル作成技術が必要になる。


射出成形体の強度を測定するだけであれば簡単に見える作業だが、そのデータの背景を詳しく知ろうと思うと途端に難しくなる。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.04/13 高分子成形体の信頼性(4)

昨日は怪しいボイドの話を書いたが、結晶性樹脂の結晶成長により力学物性が低下する研究は多い。例えば環境対応樹脂のポリ乳酸は、加熱して耐久加速試験を行うと球晶が成長し、力学物性は劣化する。


すなわち、結晶成長により靭性が低下し強度が低下する。このような強度低下でも劣化したと判定される。PPSも同様で、例えば200℃で放置すると2-3時間で強度低下する。


PPSについて弊社が開発したPH01という添加剤を添加するとこれを防止できる。PH01以外にもカオス混合を用いれば対策手段は増え、用途に応じてこの10年材料開発を進めてきた。


興味深いのは、このような結晶成長抑制剤は、ある程度の量を添加しないと効果が発揮されないところである。結晶化促進剤は少量でも効果が出るが、結晶成長の抑制のためには5%以上の添加が必要である。


5%以上の添加となると、添加剤による可塑化効果が出始めるので、用途に応じて手段を変えることになる。結晶性樹脂の耐久劣化防止の技術を難しく感じるのは球晶やボイドの成長により力学物性に影響を与えているときである。


高分子の自動酸化や光劣化の研究データは多く発表されているが、このような球晶の成長やボイドが力学物性にどのような影響を与えるのかという体系的な研究は少ない。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.04/12 高分子成形体の信頼性(3)

射出成形体にボイド(穴)が存在することをご存知ない方が多い。射出成形条件を最適化し0にできるかどうか知らないが、巣の入ったペレットを使ったりしたときに多数発生することがある。それ以外でもナノオーダーのボイドは0にできないのでは、と思っている。


この10年機会があれば射出成形体の破断面を観察し、このようなことを考えている。ナノレベルのボイドならば力学物性に影響しないが、このボイドが成長する可能性が出てくると、ボイドに対する考え方が変わってくる。


20年近く前にレンズ材料でこの現象に遭遇し、この現象がレンズ機能の耐久性と相関したので特許を出願している。光学的にも影響のないボイドなのだが、アニールしてやるとこれが大きく成長する。


科学的な研究を行っていないので空想のような話になるが、高分子材料には自由体積が存在する。もしアニール前後で自由体積の変化があればこのようなボイドの成長を理解できる。


おもしろいのはこのボイド観察を行った樹脂のDSC測定で得られたTg部分のエンタルピーを比較してやると、ボイドの変化と相関が出たのだ。


このような面白い現象が話題にならない点が不思議だが、その気にならなければ見つからない現象なのでご存知ない方が多いのかもしれない。


また、ボイドの成長の仕方は樹脂により異なる。もしこのようなボイドが経時で力学物性に影響を与えるほどの欠陥まで成長する可能性があるならば、射出成形体の劣化メカニズムの一つとしてとらえる必要が出てくる。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.04/10 高分子成形体の信頼性(1)

高分子の成形体は金属のそれよりも信頼性が低い。結構おおざっぱな表現だが、品質管理の視点から多くの技術者が持っている印象だと思う。


それではセラミックスと比較した時の信頼性は、どちらが高いか、という問題は回答が難しい。セラミックスの成形体技術には金属並みの信頼性を持たせる技術が存在するからだ。


電気・電子特性に限定するとセラミックスの方が信頼性が高い。ゆえに有機半導体が一時期ブームになったが、有機ELなど一部の製品化に限定されている。


無機ELも存在するが駆動方式の差異から表示装置用素子として扱いにくく、扱いやすい有機ELが普及したが、電球に関しては、寿命の長い無機材料のLED電球が普及している。


電球を有機ELで作ろうとした会社があったが、そもそも企画段階で寿命が短いと分かっていても事業化したので苦労している。


当たり前の話だが有機材料と無機材料とを比較した時に熱的安定性が大きく異なる。空気中で有機材料はどう頑張っても270℃を越えて安定でいることができない。


人間なんて45℃以上の熱湯さえも我慢できない。一世を風靡した熱湯コマーシャルは、皆その結果が分かっている馬鹿な試みを真面目にチャレンジしていたので注目された。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.04/06 高分子のリサイクル

4月1日から新しい法律が施行され、高分子材料のリサイクルが促進される。そのため、高分子材料は混ぜ物ではなく単一組成が好ましい、と言われ始めた。


当方は反対に多成分高分子のポリマーアロイ技術を開発すべきと考えている。理由は、高分子はただ混ぜ合わせただけでは物性が低下するためである。


リサイクルシステムの中で単一組成の高分子を維持できれば良いが、単一組成の高分子だけで提供されている電気製品は少ない。大抵は2種以上の高分子が使用されている。


そうすると余ってくる組成が出てくる心配がある。それらはサーマルリサイクルすればよい、と言う考え方もあるが、脱二酸化炭素の観点から好ましくない。資源再利用の観点から多成分高分子のポリマーアロイ技術を開発すべきと考えている。


2成分以上のポリマーアロイで実用化されているABSあるいはPC/ABSは、組成が変化すると力学物性が大きく変化することが知られている。PC/ABSではPC含有率を80%以上にするとABSの組成が変化しても物性への影響が小さくなる。


多成分ポリマーアロイに関しては研究事例が少ないが、特許にはそのような視点の発明を見出すことができる。アカデミアの研究者がチャレンジすると面白いかもしれない。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.04/05 PETの成形(3)

PETの射出成形が悪いこと、そしてそれを改良する手段があることを連続して述べてきたが、この射出成型性について、樹脂が早く固化することと勘違いしている技術者がいる。


射出成形に限らず、他の成型方法でも重要となるのは、樹脂の融体のレオロジー制御である。とりわけ温度依存性あるいは周波数依存性が重要になってくる。


PETの粘弾性について温度依存性を測定してやるとTc付近で一気に動的弾性率が高くなる。すなわち樹脂が硬化する。ゆえに硬化速度が遅いわけではない。


このような場合に何をもって遅いとするのか早いとするのか明確にしないと科学的ではないが、少なくとも実技において、成形性向上のために制御すべきはレオロジー特性の温度依存性の最適化である。


それゆえ多成分のポリマーアロイとしてレオロジーの温度依存性を制御するとともに、結晶化速度も制御している。さらに結晶化速度だけでなく多成分のポリマーアロイとしたことで結晶子サイズの制御まで行っているのだ。


このようなアイデアは教科書に書いてない非科学的アイデアだが、出来上がったコンパウンドはここに書いたような特性と機能を発揮している。非科学的アイデアだが、アイデアの根拠となる現象を多数経験している。

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2022.04/04 PETの成形(2)

結晶化速度が遅いだけならばPCのように十分に遅いと良好な射出成形体となるが、PETのそれは中途半端なのだ。ゆえに、ただ結晶化速度を制御したPETを用いて注意深く射出成形しても外観不良が起きたりする。


安定な射出成型性を得るためにはそれなりの工夫が必要である。その工夫の一つは特許出願されており、多成分ポリマーを添加してレオロジーを制御する方法である。


この方法で退職前にPET80%含む樹脂ペレットで良好な射出成形体を得ることに成功した。PETも結晶化しているが、ナノ結晶である。


しかし、このコンパウンドでもオペレーションウィンドウが狭いということで伝家の宝刀カオス混合装置を用いてコンパウンド化を行ったところ、一気にオペレーションウィンドウが20℃ほど広がった。


さらに面白いことには、成形体の様々な部分を分析しても結晶化が完了しており、さらに分析データにばらつきがみられなかった。


これまで混練のセミナーで技術の一部を公開しているが、ご興味のあるかたは問い合わせていただきたい。科学で考えていても見えてこないアイデアであり、弊社の問題解決法が必要となります。

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2022.04/02 PETの成形(1)

PETは結晶化速度が遅く、射出成形に不向きなためフィルムやブロー成型、インフレーション成形用に使用されてきた。


フィルム用途では一軸延伸や二軸延伸により結晶化を行い、それなりの腰のあるフィルムを提供できるので、印刷用写真フィルムやレントゲン写真用フィルムとして使われてきた。


最近PETを射出成形に使用したいという希望が増えている。PETは射出成形しにくいが、結晶化速度を速める添加剤を添加すれば、狭いオペレーションウィンドウながらそれなりの射出成形体が得られる。


10年ほど前に結晶化速度を速める添加剤を用いずに良好な射出成形体を得ることに成功し、電子写真用部品として実用化された。


PETボトルのリサイクル材を用いた技術で、退職後に社長賞を受賞した、と言うことで記念品のPETボトルを1ダース送られてきたのでびっくりするとともに当方のことに気遣ってくれたメンバーに感謝した。


高純度SiCの事業化ではこのような良い思い出は無いが、写真会社の早期退職では、退職日が2011年3月11日であった不運が引っ掛かる思い出だが、FDを壊されるという人為的な災害ではないのでPETボトル1ダースを受け取った時には涙が出てきた。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.03/31 明日から新ルール

昨年6月に公告となった高分子材料の環境問題に対する日本政府の回答が施行される。環境省のホームページにはRenewableと4つ目のRが示されている。


2015年に海洋ゴミの問題が世界で認識され、その30%前後が日本製だったため、日本に対する風当たりが強くなるとともに、「脱高分子」が叫ばれるようになった。


それまで、3Rが環境問題解決のキーワードとされたが、そこに新たな「R」、Refuseが加えられた。日本では、ポリエチレン製買い物袋が有料化あるいは廃止されたため、買い物袋の携帯が必須となった。


それだけではない。プラ製トレイは紙製になるなど、高分子材料排除の動きが世界の潮流となった。しかし、これが経済的にも技術的にも環境問題解決に最適な解となっていないことは明らかで、Refuseに代わる新たなRの提案を当方は環境と高分子のセミナーで訴えてきた。


今回の法律ではRenewableが4つ目のRの提案となっており、これから海洋ゴミ削減の国際ルール作りが始まるので、日本の提案がどこまで国際的に評価されるのか注目される。


実は15年以上前に名古屋市は、プラごみに関して細かい分別回収を行い、日本政府に各自治体も見習うように提案したところ、環境省からそこまでやらなくてよい、という回答が返されたので、時の河村市長が噛みついた歴史がある。


最近は金メダルに嚙みついて有名になった河村市長だが、今回の法律についても是非噛みついて頂きたい。なぜなら今回の法律では河村市長が目指された目標が単なる努力目標にされているのだ。


河村市長は軽い人物と誤解されているが、実は広い視野で先進的な思考ができる数少ない政治家である。15年以上前に明日からの法律に適合する取り組みができたのもその表れであり、河村市長の環境省への突っ込みに期待したい。


恐らく、Renewableに関しては、これまでの実績から河村市長が自治体の首長の中で最も造詣が深いと思っている。弊社に一声かけていただければ、いつでもご協力いたします。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.03/29 高分子の混練技術

高分子の成形体を製造するにあたり、高分子には何らかの添加剤が混合される、と以前この欄で書いている。その時、重要となるのは混練技術である、と説明している。


混練技術とは、混ぜることと練ることの両方で高分子を変性し機能を向上する技術なのだが、その説明が難しい。難しい理由は、形式知よりも経験知の占める割合が大きいからだ。


この経験知が占める割合が大きい、ということさえ、理解していない技術者も多いので困る。原因は適当な混練機で一応コンパウンドができてしまうからである。


高機能を要求しなければ、そのように製造された適当なコンパウンドでも成形体を製造可能なので、混練技術をあまく適当に捉えることになる。


適当なコンパウンドで満足してきた技術者に二軸混練機の混練能力が不十分である話をすると、素人は黙っとれ、と言われる。これは実際の体験談である。


謙虚に現象を眺めれば、高機能を要求されないコンパウンドでも、十分な混練ができていないことを物性の計測から知ることができるのだが、物事を甘く考える技術者には成形体物性の評価もいい加減である。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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