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2021.02/15 高分子の難燃化技術を考える(11)

LOIは、燃焼という現象を急激に進行する酸化反応ととらえたときにわかりやすい高分子の難燃性評価指数である。しかし、この指数が見つかっただけで完成とならないのが高分子の難燃化技術である。

 

 

例えば家の構造材料と家電製品の構造材料では、LOIも含め同一基準で材料の難燃性を議論できないことは、すぐに気がつく。

 

 

出火する初期の原因が大きな火種となりやすい家の構造材料では、周囲の材料がすぐに高温にさらされるが、家電製品の内部において出火原因となる火種は小さくても密接している。

 

 

また、家電製品は構成材料の種類を制御管理することが可能となるが、家の場合には不特定多数の材料の製品がその内部に配置された状態で着火することになる。

 

 

すなわち、火災の初期における環境が同一ではなく、その差が大きい。ゆえに火災の発生初期における機構が材料の使用環境で異なることになり、使用環境ごとに適合した評価技術が必要になることに気がつく。

 

 

使用環境ごとに適合した材料の難燃性評価技術が必要になるので、市場の様々な分野に適した難燃性評価法が1970年以降開発されてきた。

 

 

その中でUL規格というアメリカの民間保険会社の研究機関が開発した評価法は、様々な火災現象における材料の変化と経済性リスクをうまくとらえた、難燃性のグレードとなっている。

 

 

建築の難燃性基準の多くがLOIで21以上の材料でなければ通過しないのに対し、UL規格において難燃性が低いレベルの難燃性材料ではLOIが21以下でも合格となる場合がある。

 

 

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2021.02/14 高分子の難燃化技術を考える(10)

極限酸素指数法(LOI)は、物質が継続燃焼するために必要な最低の酸素濃度を指数化した評価技術である。

 

 

空気の酸素濃度はおよそ21%なので、LOIが21以下の物質は、空気の酸素濃度よりも低い領域で燃焼できるので、火がつけば空気中では必ず継続燃焼する。

 

 

逆にLOIが21以上の物質は、酸素濃度が空気よりも高くなければ継続燃焼できないので、空気中で着火しても継続燃焼できないので自己消火性となる。

 

 

燃焼が急激に進行する酸化反応であることを示す、わかりやすい指数だ。しかし、実火災では、周囲の温度が800℃以上になることはよくあり、このくらいの温度になると、大半の有機物は、酸素濃度が低くても熱分解する。

 

 

高分子発泡体の難燃化研究を3年間行ったが、高分子の熱分析は欠かせない分析手法だった。この熱分析経験で600℃以上まで安定な有機高分子に出会ったことが無い。

 

 

窒素中において最も高い温度まで安定だったのは、特殊なフェノール樹脂で400℃まで熱分解しなかった。

 

 

高分子には280℃以下で1%以上熱分解するものも存在し、このフェノール樹脂の熱分析結果には大変びっくりした。ちなみに大抵のフェノール樹脂は280℃近辺から少し熱分解が始まる。

 

 

文献に書かれている限りの方法で製造したフェノール樹脂は350℃以下で熱分解が始まるので400℃まで安定なフェノール樹脂は世界初の材料だった。

 

 

この耐熱性が極めて高いフェノール樹脂でもLOIは38であり、40に届かなかった。ちなみに耐熱温度とLOIとは相関しそうで相関しない。

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2021.02/13 高分子の難燃化技術を考える(9)

1960年代、高分子の熱分解に関して研究が進みLOI法が発表された。1970年にはスガ試験機(株)で酸素指数燃焼性試験機が開発されている。

 

高分子の難燃性について1970年代にはかなり研究が進み、日本でも火災時に発生するガスに着目した建築関係の独自規格が登場している。そして、1980年代に縮合リン酸エステル系難燃剤の発展と臭素系難燃剤の上市が活発に行われた。

 

コーンカロリーメーターは1983年に米国で開発され、1993年にはこの測定装置に関する国際会議がつくばで開催されている。

 

高分子の難燃性評価装置に関する発展史から、全自動酸素指数測定装置の開発がニーズに対応して行われたものであることが伝わるだろうか。

 

但し測定対象サンプルとして燃焼速度の速い発泡体は考慮されていなかったので、ゴム会社の研究所において購入後、使えずに放置する事態になったのだ。

 

当方は、この全自動酸素指数測定装置の自動化機構の理解に努め、燃焼速度に制御が追いつけない問題をただ解決するだけで使い物になることを突き止めた。

 

しかし、改造のためには費用が発生する。課長は金を使わずに改良するように命じてきた。金をかけず一番手っ取り早い方法は、マニュアル測定だった。

 

ところが機械はマニュアル測定に対応していなかったので、制御系の電源を外し、一部ギアも外して、マニュアル制御できるようにして、その手順をアルゴリズムで書いた。

 

何か成果を出せ、という宿題に対しては、発泡体を熱プレスして密度を上げ、全自動酸素指数測定装置でLOIを自動測定し、発泡体のLOIについてはマニュアルで測定し、その両者の相関を求めた。

 

この研究結果から、相関係数がほぼ1となり、誤差分析の結果、発泡体のLOIが最大で0.5程度、熱プレスで高密度化したサンプルよりも低くなる、という成果が得られた。

 

発泡体密度によっては弾性率が低いためにサンプルが自立できない場合もあったので、専用のホルダーを手作りした。お金がないのでタイヤ試作室の職人にお願いし、ステンレスの端材をもらい、加工道具も借りて仕上げた芸術品である。

 

研究報告書とともにこのホルダーも課長に説明したところ、社内の品質発表会に推薦してくれて、そこで賞を頂くことができた。しかし、全自動酸素指数測定装置をただマニュアル測定できるように改造しただけなので、この受賞は心苦しかった。

 

マニュアルの測定手順をアルゴリズムで書いたので、おそらく課長はマニュアルであることに気がつかなかった可能性がある。ただし、アルゴリズムには目視とか手動と言う言葉が随所に登場していたが。

 

改善提案の審査員は、自動装置を手動測定に変えるという逆転の発想が素晴らしい、と褒めてくださったが、なぜか皮肉に聞こえた。研究部門から唯一推薦された発表がこの程度だったので、審査員もコメントに困ったのかもしれない。

 

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2021.02/08 高分子の難燃化技術を考える(6)

火災とは、不規則な燃焼が継続して進行する現象で、燃焼は急激に進行する酸化反応である。このような現象の中で耐えられる高分子材料の機能をどのように設計したらよいのか、という問題を科学的に解くことは難しい。

 

まず、急激に進行する酸化反応は、非平衡の現象である。それを科学的に表現できるほどのレベルに現代の科学は達していない。簡略化したモデルさえ難しい。

 

これは、燃焼試験の一つである極限酸素指数法(LOI)を使用してみるとすぐに理解できる。LOIは、物質の継続燃焼可能とする最低限の酸素濃度を指数化して、物質の難燃性の序列を評価する方法である。

 

着火する手順や、継続燃焼している時の炎の状況まで細かい決め事がある。実はこの試験法を用いて、急激に進行する酸化反応のモデルを組み立てる事すら難しい。

 

何故なら、いくら試料の燃焼状況を管理しても0.25程度ばらつく。多い時にはその測定値に1.0という偏差が観察さることもある。この偏差の原因について少し研究した経験があるが、試料のわずかなばらつきが影響していることが分かり、研究を諦めた。

 

この研究の過程で、発泡体サンプルでもばらつきを小さくできる手法を見出し、当時のJIS規格とは異なる独自の測定法を編み出し、ゴム会社から改善提案賞を頂いた。

 

LOIの測定値の精度を上げるためには、ISO規格でも不足しており、試料のセット方法や、ガス流量の調整方法まで厳格に管理する必要がある。

 

 

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2021.02/05 高分子の難燃化技術を考える(5)

高分子材料の難燃化技術は、1970年代に体系的な科学としての研究が始まったととらえている。その後もアカデミアでの研究が続けられているが、不燃化ではなく、難燃化という考え方が確立されたのも1970年代である。

 

 

実は、高分子を燃えにくくしようとする試みは、ピラミッドの時代から存在し、竹取物語では、高分子の不燃化が不可能である予測が登場し、かぐや姫のセリフにそれが示されている。もっともかぐや姫は月よりの使者だったので未来技術を知っていても不思議ではない。

 

 

それがようやく1970年代に火災に関する科学の体系的研究が活発になり、極限酸素指数法や、1983年にはコーンカロリーメーターの発明がなされている。

 

 

1980年代は高分子の難燃化が、科学による形式知が明確となり技術として発展し始めた時代であり、1993年につくばで第一回発熱速度と火災に関する国際会議が行われている。

 

 

この高分子の難燃化というテーマは、科学と技術について学ぶには大変適したテーマである。形式知だけで火災という現象をすべて記述できないことは明らかであるように、どうしても経験知をその理解のために使う必要がある。

 

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2021.02/02 高分子の難燃化技術を考える(4)

1970年代に高分子難燃化技術について形式知の整備が進んだ。ゴム会社就職前に東北大村上先生らが翻訳された古典的名著も出版されていた。

 

当方は大学院でこの書を読み、ホスホリルトリアミドをPVAの反応型難燃剤として使用できるようにデザインして、PVAの難燃化に学生時代成功していた。

 

PVAを難燃化材料の対象に選んだのは、難燃化が難しい高分子として知られていたからだ。当時は一部の高分子について難燃化が成功していた時代で、難燃化の基準も提案され始めた。

 

極限酸素指数法についてJIS化が検討されており、スガ燃焼試験機が発売された。PVAは環境にやさしい水性塗料に使用されていたので、極限酸素指数法で評価した結果を色材協会誌に論文投稿している。

 

当時すべての有機高分子材料を不燃化する技術は現実的ではなく、難燃化すなわち燃えにくくする技術が実用的と言う考え方が普及し始めており、そのための難燃化規格が各業界で検討されていた。

 

難燃二級は建築用の難燃規格として登場して、炎から逃げるように変形する硬質発泡体が、高分子発泡体メーカー各社から発売されるようになった。そしてアカデミアからも炎から逃げるように変形する高分子材料は難燃性高分子材料の一つ、とまでお墨付きがでた。

 

その結果、極限酸素指数値(LOI)で20にも満たない発泡体で台所用天井材が開発され、1980年になって社会問題化し始めた。ちなみにLOIは1970年代に提案された難燃性高分子材料の評価技術で、1970年末から各国で難燃化規格として検討され始めた。

 

高分子の難燃化技術について体系的な科学的研究は、1970年頃から始まった、と捉えている。ただし、森林火災についてホスホリルトリアミドのようなりん系化合物を散布する技術は知られていたので、高分子を燃えにくくする技術は古くから存在した。

 

 

 

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2021.02/01 高分子の難燃化技術を考える(3)

軟質ポリウレタン発泡体製造技術及び、それを実験室で簡便に行う方法など、軟質ポリウレタン発泡体を開発するための周辺情報についてそろったが、高分子の難燃化技術については、当時各社が競っていた時代である。

 

また、市販されているリン酸エステル系難燃剤について現在ほど種類が多くなかった。臭素系難燃剤について開発が盛んになるのはこの5年後である。

 

ただ、塩素系化合物と三酸化アンチモンとの組み合わせ難燃剤については、開発が先行しており、ゴム会社でも米国のタイヤ会社から技術導入した塩ビ粉とアンチモンとの組み合わせ難燃化技術が難燃性軟質ポリウレタン発泡体に使われていた。

 

この系の問題は、配合された処方を半日以上放置すると塩ビ粉やアンチモン系化合物が沈降し凝集して使えなくなる現象だった。また、この系の検討過程で難燃剤成分の分散状態が難燃性に影響を与えることも知られていた。

 

ところで、高分子の難燃化技術について、すでに一部難燃化機構が学会で議論されており、それなりの体系が見えつつあった。

 

教科書には、リン酸エステル系難燃剤による燃焼時の高分子の炭化機構が図示されており、また燃焼時に塩素とアンチモンが反応して塩化アンチモンが生成して空気を遮断する機構も解説されていた。

 

新しい難燃化機構として、溶融型や、炎から遠ざかるように変形する技術などが提案されていた。後者は当時の硬質ポリウレタン発泡体の難燃化技術として市場で成功していたかのように見えた技術である。

 

実はこの難燃化研究を担当してから半年後に難燃性天井材としてすでに販売されていた製品による火災多発が社会問題となっている。

 

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2021.01/31 高分子の難燃化技術を考える(2)

ホスファゼン変性ポリウレタンフォームの企画は、すんなり採用された。10か月後に新入社員発表会があるのでそれまでに1回目の試作の工場実験を済ませる計画が指導社員により作成された。

 

この計画も,ただ言葉が躍っているだけの計画であり、実際の実験については、当方に丸投げされた。そうはいってもポリウレタン発泡体など未体験の技術だったので、指導社員に教えを乞うたところ、発泡体生産現場の技術課に情報をもらいにゆく、と説明された。

 

すなわち指導社員も硬質ポリウレタン発泡体の開発経験はあるが、軟質ポリウレタン発泡体の開発は初めて、ということで現場で指導してもらった。この時、企業において技術は現場に存在することを改めて復習した。

 

新入社員研修の工場実習で技術と現場の関係について散々教育されたから、「復習」である。すなわち、現業の技術は現場が維持改善する使命を担っていた。

 

ホスファゼン変性軟質ポリウレタン発泡体は、ゴム会社では新技術であり、また実用化されれば、ポリウレタンでは世界で初めての技術となる。

 

ホスファゼンの構造については、いろいろなデザイン案が考えられたが、イソシアネートとの反応を考慮して、ジアミノホスファゼンを検討することにした。

 

もちろん当時ホスファゼンなど市販されていなかったので、自分でこの化合物を合成する必要があった。

 

しかし入社前の実験でジアミノホスファゼンについては、4種類合成しており、論文の原稿が出来上がっていた。ゆえにこの作業は経験をそのまま生かせるので朝飯前だった。

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2021.01/10 高純度SiCの開発(5)

ホスファゼン変性ポリウレタンフォームでは、ホスファゼンを2官能のジアミノ体としてデザインしたのでイソシアネート化合物との反応は、科学的に説明しやすかった。

 

 

また、ジアミノホスファゼンとイソシアネート化合物とのプレポリマーとして配合したので反応化学の形式知があれば、ポリウレタン発泡体の研究者には大変わかりやすい技術だった。

 

 

しかし、ホウ酸とジオール類との反応でホウ酸エステルを合成したのだが、単なるジオールでは加水分解が早く使い物にならなかった。このようなことは1日実験を行えば見通すことができる。わざわざ研究するほどの問題ではない。

 

 

また、ジエタノールアミンを用いてNがBに配位したホウ酸エステルを合成すれば耐水性の高い化合物となる、というヒューリスティックな解をすぐに気がつかなければ、大学で配位化合物の形式知を学んだ意味がない。

 

 

そこで、ホウ酸エステルのデザインや、その他の技術について、単なるパーツとみなして、いきなり配合設計をして、ホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームを合成したのだが、このようなアジャイル開発手法は、当時まだ知られていない手法だった。

 

 

当方は混練の神様と呼びたくなるような指導社員からこのような配合設計手法を学んでいたので、それを活用しただけだったが、これが上司の反感を買った。なぜ研究をしないのか、という問いかけをされたのだ。

 

 

上司の言い分は、ジエタノールアミンを用いたホウ酸エステルの設計についての研究や、それとイソシアネートとの反応についてなどの研究を行い、科学的に技術パーツの素性を解明してから、ホウ酸エステル変性フォームを開発する流れを想像していたらしい。

 

 

このあたりの上司との対話を機会があればここに書きたいが、研究しなくても自明な技術、あるいはホスファゼン変性ポリウレタンの開発経験から予想される知識までも丁寧に研究することを提案してきた。

 

 

ここは企業の研究所なので、迅速にモノをまず生み出すことが重要ではないか、また、すでに目の前にモノができている、などと当方は研究を後回しにした理由を説明したが、とにかく研究データを揃えろ、と押し切られた。

 

 

仕方がないので、研究の香りがあふれ出すような研究テーマを短期間に企画し、それを手早く行い上司に納得していただいたが、それは上司に指示された各パーツの研究テーマではなく、ホウ酸エステルの構造とホウ酸エステルがどのように難燃剤として機能しているのかを示した、上司の考えていなかった機能中心の研究内容だった。

 

 

例えばジエタノールアミンはジオールではあるが、アミノ基にも活性な水素があり、3官能と見なすとホウ酸との反応では、多数の構造のエステルができる可能性があった。

 

 

そのためその構造推定を行った研究や50種類ほど難燃剤パーツの組み合わせを変えた発泡体を合成し、得られた難燃性データについて多変量解析を行って、マテリアルインフォマティクスもどきの研究などを行っている。

 

 

この研究ではコンピュータが不可欠ではあるが、独身寮で遊びに使っていたMZ80Kを使用して、休日に多変量解析の計算をしている。しかし、研究報告書を読まれた上司はこのような小生の隠れた努力と過重労働に気づいていただけなかった。

 

 

まとめられた研究報告書を読まれた上司は納得され、すぐに工場試作をしようと言いだしたので、ホスファゼン変性ポリウレタンフォームの悪夢が思い出され、始末書はもう書きたくないと応えている。

 

 

工場試作後、それはこのホウ酸エステル変性ポリウレタン発泡体の開発を始めて半年後となるが、後工程へ移管された。そして工場にはホウ酸エステル合成用の小さな反応釜が設置され、製品が上市された。

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2021.01/06 高純度SiC開発(2)

アチソン法は、SiCの生産方法としてエジソンの時代に開発された生産技術である。石英と炭素、おがくずなどを混ぜて積み上げた山に電気でこの山ごと高温に加熱し、SiC化の反応を行う。

 

このプロセスでαSiCのインゴットを製造後、それを粉砕し粉を製造する。そして何段階かの精製プロセスを経て98%から99%の純度とし、それを昇華法で高純度化するのがレイリー法である。レイリー法ではシリカ還元法で製造されたβSiCも用いることが可能である。

 

それならば、最初に100%の純度の原料を用いてシリカ還元法を行えば、100%の純度のSiCができるのでは、と誰もが考えるので、1980年頃この視点による特許が多数出願されていた。

 

その中には、ポリエチルシリケートと高純度カーボンの組み合わせ(これをA法)や高純度シリカと高純度フェノール樹脂の組み合わせ(これをB法)を原料とする製造法の発明があったが、ポリエチルシリケートと高純度フェノール樹脂の組み合わせ(これをC法)は特許として出願されていなかった。

 

高分子について知識があれば、この組み合わせではフローリー・ハギンズ理論のχが大きいので相分離し、前駆体として用いることができないことに気がつく。

 

これは、科学の視点で当たり前の考え方である。だから特許として出願されていないのだろうと理解し、納得している人は、AIと同じで21世紀において創造的な発明は難しい。

 

また、A法やB法が実用化されていないことから、C法も実用化が難しいだろう、と簡単にあきらめる人は、頭は良くてもおそらくアイデアの出にくい人だ。

 

C法が理想的にできたならば、シリカとカーボンが分子レベルで混合された固体となり、A法やB法で製造された前駆体の状態とは大きく異なる。

 

そしてこの前駆体を用いれば、当時シリカ還元法において誰もなしえていない均一固相反応でSiC化の反応を行うことができる。

 

このことがどれほど科学の世界において斬新かつ重要であったかは、約10年後当方がまとめた研究を勝手に論文投稿したアカデミアの先生がおられたことから理解できるかもしれない。すなわちパイロットプラントができた当時でさえ未発表の内容が数年後でも科学の視点で鮮度を失っていなかった。

 

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