樹脂材料の混練では二軸混練機が多く用いられている。しかし二軸混練機を1pass用いた混練では十分な樹脂の混練を実現できていない、ということに気がついている技術者は少ない。
色材や各種老化防止剤などの添加剤を分散する目的ではそれほど問題にならない。仮に色材の分散状態が不完全であれば、スクリューセグメントや回転数などを変更して修正可能である。
ただしこれも見かけ上対策できたように見えるだけである。何も問題が起きなければこの不完全性は実務上忘れ去られてしまうが、そのコンパウンドが押出成形で用いられたときにボツや色むらとしてその問題が突然現れたりする。
あるポリオレフィン樹脂でバッチ式混練を行い、Tgで観察されるエンタルピー変化をモニターしたところ30分以上の混練でようやく一定値となるようになった。しかし実際の二軸混練機で樹脂が混錬される時間はせいぜい10分未満である。
加硫ゴムの混練を経験しているとこの10分未満の混練が如何に短い時間であるかを理解できるが、樹脂の混練しか行ったことのない人はこの混練時間の問題に無頓着である。
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高分子材料の力学物性においてプロセシングの影響は大きいが、経験的にセラミックスほどではないと思っている。
しかし、退職直前に開発したPETボトルのリサイクル材が80%を占める材料は当方が開発したカオス混合装置を用いなければ転写性の良好なコンパウンドを製造できない、という極めてプロセス依存性の大きな樹脂だった。
また、力学物性以外に難燃性もカオス混合装置を取り付けていない二軸混練機ではどのようなスクリューセグメントでも良好な成形体を実現できるコンパウンドを製造できなかった。
この原因はコンパウンドのレオロジーを計測して明らかになったが、カオス混合装置を通過したコンパウンドではポリカーボネートに近い粘弾性特性を示したのに対し、二軸混練機だけで混練されたコンパウンドはPETの粘弾性特性そのものだった。
すなわち異なる混練プロセスで同じ組成の樹脂でも粘弾性特性が大きく変化する場合ではプロセス依存性が大きくなる。
退職直前に開発したリサイクル材を80%含むPET樹脂の残り20%には5種類の樹脂が添加されており、難燃剤は添加していない。難燃剤は無添加であるがUL94試験のV2に合格する難燃性樹脂である。
またその力学物性は、PC/ABSの弾性率より10%前後低い物性で電子写真機の内装材として使用可能で、転写性はPC/ABSよりも優れウェルドの発生がほとんど見られなかった。
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高分子材料もセラミックス材料もその材料の混合および成形プロセスの履歴がその力学物性に影響を与える点で、プロセシングと材料物性が切っても切れない関係にある。
しかしこの視点で書かれた教科書に出会えない。教科書が無いので技術者はその経験を伝承する必要があり、そのシステムが完備しているメーカーは技術の基盤がしっかりしていることになる。
ゴム会社では製造現場とタイヤ開発現場の両者にそのシステムが存在したが、残念ながら研究所には無かった。指導社員がその理由を教えてくれたが、もっともな理由だった。
技術の伝承システムが研究所に存在していなかったので、研究所の技術者は指導社員の力量でその後の技術者人生が決まってしまうところがあった。当方は技術者として優秀な指導社員に指導されて幸運だった。
その指導社員が最初に指導してくださった重要なことは、ゴムのプロセシングは実際に体験してみないと理解できない、ということだった。
これはゴムに限らず樹脂もそうである。またセラミックスに至っては教科書の説明だけではまともなプロセスを組み立てることが難しい。
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樹脂技術の専門家と話していると面白い。混練技術に対する考え方が二軸混練機に束縛されているのだ。その結果フィラーの分散を進めるためにはL/Dを40以上にする以外、すなわち二軸混練機を長く設計する以外にプロセス設計のアイデアが湧かない。
ウトラッキーはなかなかのアイデアマンで伸長流動装置を完成させている。日本で2000年ごろに行われた高分子精密制御プロジェクトではL/Dが60以上の二軸混練機とともにこの伸長流動装置も研究されたが普及していない。
この時同時に高速剪断装置もプロジェクトで検討されている。東工大の中浜先生がリーダーとなって進められたプロジェクトで、技術の視点ではどうかと思われた内容だが科学の視点で成果が出ていると当方は評価していたが世間では酷評されたプロジェクトだった。
この時、ナノ分散を実現する技術として伸長流動が注目されてプロジェクトの内容が決まったようだが、ナノ分散に限界があると言われていた剪断流動も同時に検討しているあたりは学者の手堅さだ。
酷評されたプロジェクトだったが当方は科学的プロジェクトとして大成功だったと思っている。ナノ分散を実現するために伸長流動を重視すると設備を大きく設計しなければいけなくなり、ナノ分散に限界があると思われた剪断流動では実用化できないほどの高速回転でナノ分散を実現できることが分かったのである。
ただこの成果ではそのまま実用化できないので酷評されたのだが、科学の真理としてこの成果は大変なことなのである。当方はこの成果報告会を聞き、カオス混合以外にナノ分散を実用化する方法はない、と確信できた。
当方の技術を審査した審査員もそうだが自分が納得できない成果は評価しないという狭い了見の科学を重視する研究者が多い。技術的成果や科学的成果が認められるならばそれを正しく評価すべきである。
科学的成果ではあたりまえの成果しか出ないので評価が難しいのかもしれない。また技術的成果で科学の香りのしない、あっと驚くためゴロー式発明では評価するのが恥ずかしくなるのかもしれない。PPAPの爆発的ヒットを昨年から溜息をつきながら眺めている。
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ポリカーボネートなどの光学的に透明な樹脂へポリアクリロニトリル樹脂球やシリコーン球を2-3%添加してLED電球に用いられる光散乱樹脂(電球の白く光っている部分)を製造する。20年以上まえに特許は公開されており、誰でもこの材料を製造することが可能である。
しかし、難燃性の光散乱樹脂となると、まだ生きている特許が多数あるのでどこでも製造できるわけではない。光散乱樹脂の難燃化で難しいのは、難燃剤の添加により光透過性が悪くなることである。ゆえに用いる難燃剤に制約があり、特許もその点に着眼した発明となる。
難燃性光散乱樹脂の技術開発は、まだ科学的に技術開発可能だが、熱伝導性光散乱樹脂になってくると、科学的にその達成手段が難しくなる。
なぜなら、熱伝導性を実現するためには、熱伝導性粒子をパーコレーション転移が起きるぐらい添加しなければいけない。すなわち微粒子を20vol%前後は添加しなければならず、そこまで微粒子を添加すると樹脂の光透過性は無くなり、光散乱樹脂の機能は消失する。
熱伝導性と光散乱性を同時に樹脂に賦与する方法は、公知の情報から科学的に導き出すことは不可能で、技術の問題として扱い初めて解くことができる。すなわち、この二律背反問題は技術で解決する。一度技術で解決できると、その解明を科学で行うことが可能となる。
このあたりの手順はiPS細胞と似ている。科学でまともに扱うと生きている間にヤマナカファクターは見つからないと思われたので、非科学的方法で見出し、その後科学的にその機構を解析し応用技術の開発を研究者は盛んに進めている。
当方も非科学的方法で熱伝導性光散乱樹脂をあっと驚くタメゴロ―方式で作ってみた。そこそこのモノが出来上がったが、まだ完璧ではない。それでも一応光散乱性能と光透過性があり、さわるとひんやりと感じる程度の熱伝導性がある。まだ改良の余地があるのでその努力をしているが、従来の技術と全く異なるコンセプトで機能を実現している。
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パーコレーションの性質を知るには、真球が高分子中で分散し添加量の増加とともにクラスターが増加する様子をコンピューター上でシミュレーションすると勉強になる。
数学ではボンド問題やサイト問題、あるいは次元の問題など細かいところが重要になるが、高分子材料物性では大雑把な変化を頭に描くことが重要になってくる。そのためにコンピューター上で勉強するとよい。
この時凝集粒子すなわちあらかじめ一定量の粒子でクラスターが生成している状態のドメインを分散させてパーコレーション転移を考察すると面白い。実はPPS-6ナイロン系中間転写ベルトの開発はこの考え方がプラント立ち上げ成功のために重要だった。
あらかじめパーコレーションが生じているドメインを高分子に分散してそのパーコレーションを制御する技術、Wパーコレーションと名付けてもよい技術アイデアが、混練プロセス開発過程で生まれた。
カオス混合プロセスもこの特殊なパーコレーション転移制御技術に寄与しているわけで、思い描いた通りの高次構造が得られた時にはびっくりした。一応それを狙ってプロセスデザインを行ったのだが、無駄な実験をすることなくきれいな結果が得られた。
プラント建設も初めて二軸混練の研究開発をはじめて2ケ月後に中古機を購入してスタートしている。木下藤吉郎の一夜城と同じようなトリックを使い成功している。
ちなみにこの時PPSとカーボンはTm以下で混練している。またスクリューセグメントには剪断力を効かせたかったのでローターを2ケ所使っている。そのためモーターにはかなり負荷をかけた混練方法となるはずだったが、意外にもトルクが低く開発を始めてすぐに成功を確信した。
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高分子材料で観察されるパーコレーション転移の現象も混練条件と関わり合いがある。パーコレーションは数学分野で古くから議論されていたが材料分野では1980年代まで複合則で現象を説明するのが常識だった。1990年代の学会の討論でも複合則は一部残っていた。
1979年にゴム会社で出会った指導社員は数学分野に秀でた人でパーコレーションの考え方を伝授してくださった。しかしゴム会社社内では複合則を用いた考え方が主流で研究部門でもパーコレーションを当時知っていた材料技術者は指導社員だけだった。
電子写真用の帯電ローラゴム開発で導電性が上がりすぎる問題が発端となりパーコレーションが研究所で重要視されるようになっていった。電気粘性流体のテーマもそれに一役買った。なぜならそれは電気粘性流体の機能発現で観察される現象そのもので、電場をかけたときにクラスターが生成する様子はまさにパーコレーション転移だったからだ。
その後写真会社に転職し、暇な時間を活用してパーコレーション転移のシミュレーションプログラムをC言語で作り、酸化錫ゾル帯電防止層の開発に使用した。そしてパーコレーション転移のクラスターが破壊する様子(後日説明する)など部下が日本化学会で講演し講演賞を受賞している。
今フィラー分散系高分子材料についてパーコレーションの考え方が常識となっているが、パーコレーションが数学者の間で議論されてから混合則にとって代わるまで20年近く時間がかかっている。フィラーによるクラスター生成はバインダーである高分子の性質に直接影響を受けるが、プロセス因子も同じぐらいに影響する。意外とこのあたりの勘所を理解していない人が多い。
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加硫ゴムは、加硫してはじめてゴム弾性を示す。未加硫ゴムは室温で流動性があり力を加えると大きく変形しそのままの姿で流動してる。Tgが室温以上の樹脂と性状の違いが著しい。
TgからTmまでの動的弾性率においてその温度変化は、いわゆる樹脂と呼ばれる高分子と加硫ゴムとして用いられる高分子で大きく異なり、樹脂ではもう一つ変曲点が観察されるが、ゴムでは何ら変化が無い。面白いのは、ゴムではTmよりも低い温度領域で普通に混錬したりするが、樹脂ではTm以上の温度領域で混練するのが常識になっている。
逆に樹脂をTmよりも低い温度で混練するというと常識が無いと笑われたりする場合もある。ゴムでは混練温度を柔軟に扱うが、樹脂はTmより低い温度だと分子の断裂が起きてだめだ、と強く否定する人がいる。カオス混合を公式の場で初めてプレゼンした高分子学会技術賞の審査会でも議論になったが、このような人と話すと疲れる。
分子の断裂が起きるかどうかはスクリューセグメントにも依存するので頭ごなしに否定するほうがおかしいが、PPSの中間転写ベルトを開発してみて、これは樹脂技術者の特殊性あるいは厳しい言い方をすれば偏屈ととらえたほうがよいと思っている。ゴム技術者のほうが樹脂技術者よりも柔軟な人が多い。
PPSは「カーボンを嚙みこみにくい剛直な分子」ではなく、柔軟でカーボンの分散制御も行いやすい分子に思われる。混練条件を注意深く変化させて実験をすればその様子を観察することも可能だ。またその実験方法はノウハウだ。
だからTm温度以下で混練してもスクリューセグメントさえデザインすれば分子の断裂を起こさず混練可能である。これを樹脂技術者の審査員は偉い!とうぬぼれているのか知らないが、10分間の審査会で頭ごなしに否定するような意見を述べられては、そこで審査の議論は終わる。6年たっても事業として続いている筋の好い技術を心無い審査員のためにだめにされた。
実は樹脂をTmよりも低い温度で混練するとTm以上の混練物と異なる性状の材料が得られることがある。実例を示すと退職時に実用化が決まった廃PETボトルを用いた環境対応樹脂ではPETのTm以上の温度領域で混練すると射出成型が可能な樹脂ができない。
ゴム会社で社会人をスタートできたのは幸運だった。もし樹脂材料技術を最初に担当していたらTm以下で混練しようなどと考えなかったと思う。今中国で樹脂技術を指導しているが、この混練温度の考え方も指導している。
機能を実現するのが技術であり科学とは異なる側面が技術にはあるので内心はもったいないと思っているが、学会賞の審査でも否定されサポインで3回も落選した技術ならば日本で不要なのかもしれない、と考えて中国でさらに磨きをかけている。
STAP細胞の騒動でも垣間見えた科学こそ命という社会風潮は、新しい技術の創造を阻害する場合もあるのだ。今の科学で説明できない技術でも機能を再現よく実用化できるのならそれを評価し受け入れる寛容さがほしい。
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この欄では技術の視点で高分子材料について書いているが、ゴムの説明について現代は難しい時代だ。40年前ならば、ゴムといえば加硫ゴムが常識だったが今は熱可塑性エラストマーの普及で加硫ゴム以外もゴムと呼ばれるようになってきた。熱可塑性エラストマーがゴムの代表のようになっている時代だ。
身の回りのゴムで加硫ゴムが極端に少なくなった。コンピューターのマウスに使用されているゴム部分はほとんどが熱可塑性エラストマーで、年数がたつとべたべたしてくる。出来の悪い製品では、一年程度で可塑剤がブリードアウトし、触るのが気持ち悪くなる製品もある。ハツカネズミのほうが手触りがよい。
ポリエチレンはコポリマーとして利用されるときにはゴムの代用である。ひどい製品になるとポリエチレンに可塑剤だけブレンドしてゴムパッキンとして利用している場合がある。中国で見つけた食品容器の多くはこのポリエチレンをゴムパッキンとして使用していた。
ゴムの性能という視点でざっくりと見たときに、加硫ゴムの物性は熱可塑性エラストマーよりも優れており、加硫ゴムのコストダウン品として熱可塑性エラストマーが利用されている。自動車用タイヤはいまだに加硫ゴムでなければ製品を作れないが、遊園地にあるおもちゃのカート用タイヤには熱可塑性エラストマーが一般に使われている。
いまや室温で弾性体であればゴムと呼んでおり、樹脂に可塑剤をたっぷりと添加したものまでゴムとして利用されている例も存在するので、ゴムと樹脂で高分子材料を分類しようとすると頭が混乱するかもしれない。
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高分子材料の分類として樹脂とゴムという分け方があるが、これは学術的な分類ではない。例えばこれをカタカナで書いてプラスチックとエラストマーと表現しても学術的ではなく、もし学術論文で樹脂を表現するならば、レジンを使用すべきである。
いつの時代から樹脂とゴム、あるいはプラスチックとエラストマーという分類ができたか知らないが、サイモンとガーファンクルの曲がふんだんに使用された映画「卒業」では、ダスティンホフマン演じるベンという若者に対して、叔父が「これからはプラスチックの時代だ」とアドバイスをしている。レジンの時代、と表現していない。
このことからプラスチックとエラストマーは業界用語としてつかわれてきたのだろうと映画を見ながら考えた。モラトリアムという言葉が生まれた時代の若者像を描いた映画で自分の人生に参考になるかと思い見たのだが、人生ではなく高分子の分類で悩むことになった。
当時販売されていた「工業材料」という月刊誌にたまたまプラスチックとエラストマーの分類について論文が載っており、そこには「Tgが室温以上のものをプラスチックと言い、室温以下の材料をエラストマーという」と説明されていた。
しかしこの説明によるとポリエチレンはエラストマーになるが、一般には樹脂と呼ばれている。面白いのはポリエチレンがエラストマーとして使用されることもあり、この用途では工業材料に書かれていた分類で問題が無い。
そもそも高分子材料は人類誕生とともに日常使用されてきたので、科学の歴史と比較できないくらい人類の生活に技術として浸透している。おいしいうどんは弾性も十分あり数回ならゴムのように伸び縮みし立派なエラストマーだが原料は樹脂である。その製造方法で弾性率が異なり、結果として味覚にも効いてくる。
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