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2019.07/13 高分子のプロセシング(17)

自由体積分率がばらつくと、高分子成形体の密度もばらつくことになる。密度がばらつけば、弾性率や誘電率もばらつく、という具合に諸物性の連鎖を理解できると、自由体積の正体だけでなくそれを制御する方法を知りたくなる。

 

 

ところが、自由体積分率は、コンパウンドの配合で変化するだけではなく、プロセスで設定される条件や、そのばらつきなど様々な要因によっても変化する。

 

 

混練では、混練機とその運転条件や動作のばらつきで自由体積分率は変化していると思われる。混練プロセスでばらつき、さらに成形プロセスでもばらつくので、高分子の成形体物性のばらつきを抑える技術は難しい。

 

 

このプロセス段階で制御できない自由体積について、高分子を説明するときに無視できない。しかし、厄介なことに非晶質構造のため、形式知が乏しく気軽に測定したり設計段階で予測したりすることができない。

カテゴリー : 一般 高分子

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2019.07/12 技術者の怠惰

技術者の使命は、自然界の機能を取り出し、人類に役立つ新たな道具なりサービスを生み出すことである。

 

この時、他の技術者による優れた製品の機能をまねて使命を実現することもできる。温故知新はまだ許されるが、パクリは許されない。

 

この20年日本のGDPは、横ばいである。すなわち付加価値が生み出されていないような状態で、これは技術者の怠惰が数値に現れたような結果となっている。

 

この20年学会に一度も出席したことのない技術者は、怠け者の上位にランクされる。自然界から新たな機能を取り出すためには、自ら実験を行うのか、学会で発表される新たな知を活用しなければいけないはずだ。

 

特許調査は機能取り出し作業として、良い悪いの判断を出しにくい行為である。学術論文を読むのとは少し意味が異なるからである。

 

特許調査のうまいやり方は、不易流行の世界を新たなコンセプトで旅し、温故知新で特許を味わう方法である。

 

特許をただまねる技術者は、やはり怠け者である。技術は科学の真理と異なり、いくつもその可能性があるはずである。

 

不易流行の意味が分からなければ、まずまねてみることは良い方法であるが、そこで終わってはいけない。

 

機能が同じでもその機能の働かせ方が異なれば、異なる技術となる。視点を変えろとよく言われるが、視点を変える前に、機能をよく観察する作業が重要である。

 

怠惰な技術者は、このような作業でも手抜きをする。まったくアイデアが浮かばないならば、徹底して観察することである。

 

カテゴリー : 一般

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2019.07/11 科学者の使命

技術者は人類に役立つ機能を自然界から取り出し実用化することが使命であるが、科学者は常に新しい知を自然界から見出し、それを人類に示さなければいけない。

 

その新しい知が人類に役立つかどうかは、評価の問題であって、科学者の使命ではない。その意味で、昨今のアカデミアの研究者が置かれた環境には同情する。

 

新しい知について有用無用の視点は、科学の研究をミスリードする。これを防ぐために科学者は、新しい知について、わかりやすく伝える使命を同時に持つことになる。

 

新しい知を分かりやすく伝えることは大変難しい。新しい知を機能として表現できれば、少し伝わりやすくなる。さらに、それをモノまで仕上げれば、さらにわかりやすくなる。

 

今社会は科学者に過剰な期待をしているのかもしれない。本来は技術者の仕事を科学者にまで求めている。科学者の使命を考えていると、技術者の怠惰が見えてくる。

カテゴリー : 一般

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2019.07/10 研究とは(3)

研究とは、新しい知を見出すために行う。これは研究者だけでなく技術者もよく意識しなければいけないことである。

 

もしこれを正しく意識したならば、捏造という行為が研究の世界にはいってこないはずである。

 

STAP細胞の騒動では、新しい知を明確に示すために、データの改ざんが成された。余分なシグナルを消したり、図を借用したりした捏造は、およそ新しい知に対する姿勢として不適切なものである。

 

新しい知は、真実である。これを示すためには、「真理」であることが大切である。技術では、実際に機能していることが重要なので、製品を手にすれば「真理」であることを確認できる。

 

科学の研究者は、新しい知を論文で示さなければいけない。これが技術者よりも研究者を不適切な道に導くことになる。

 

技術者は機能している「モノ」を作らなければいけないのでごまかせばすぐ品質問題となるが、研究論文ではごまかされてもすぐに問題が明らかとならないことがある。

 

この意味では、技術者の方が新しい知を見出した時にそれを示すのが難しく、研究者には、問題をごまかすことができるゆとりがあるという意味で易しい職業と感じたりする。

 

しかし、問題が起きたときに、科学の研究者はその職を一切失うことになる。技術者はお金で解決がつくので、研究と言う仕事を遂行するときに技術者は研究者より気楽な職業なのだ。

カテゴリー : 一般

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2019.07/09 研究とは(2)

研究とは、新しい知を発見するために行う、恐らく故小竹先生はそのように伝えたかったのだろう。ただし当方は、伊藤先生から冊子を頂いただけであり、故小竹先生とは直接お会いしていない。

 

伊藤先生も故石井先生も恐らく故小竹先生とは仲が良かったのかもしれない。そうでなければ、講演録を渡すのではなく、ただ学生であった当方にそのままの言葉を自分の言葉として伝えていたかもしれないからだ。

 

この冊子を渡された当方は読み始めたときに、言葉で伝えてくれてもよいように感じていた。むしろ、文章を読む面倒な作業を疎んだ。

 

しかし、古い冊子を読み終えた後、それをわざわざ渡された先生方の気持ちも伝わってきた。わかりやすい言葉で書かれた冊子そのものをこの先生方は尊重されていたのだ。

 

それが、この冊子を余計に重くしていた。この冊子を読んでから実験に対する姿勢も変わった。研究者として実験に向かうようになり、シクラメンの香りが完成した。

 

 

 

 

ジケテンを不飽和カルボン酸のシントンとして用いたテルペン類の合成、という論文をまとめ、アメリカ化学会誌に投稿した。

 

 

 

残念ながらショートコミュニケーションとして学会誌に採用されることになったが、短時間に研究をまとめ上げた喜びを今でも覚えている。

新しい知を見出すのが研究であるが、その知の価値が厳しくジャッジされる世界があることも同時に学んだ。

技術者は機能を製品にまとめ上げる能力が要求され、製品が多数のユーザーに支持されるかどうかが勝負である。

エディターによる論文の厳しいジャッジとユーザーのジャッジでは厳しさのベクトルが異なる。その結果、研究のベクトルも、科学者と技術者で異なる。

残念ながら学校で教えてくれるのは科学者の研究で、技術者の研究については、技術の伝承で学ぶ以外に方法は無い。

カテゴリー : 一般

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2019.07/08 研究とは(1)

研究とは何か、という問いに、故小竹無二雄大阪大学教授の講演録が的確に答えている。大学4年生の卒論を指導してくださった伊藤健児先生が故石井義郎先生から頂いたので読んでおくように、といわれた冊子である。

 

学部で卒業する予定で第二外国語も受講せず卒研を遂行していた当方にとっては無用の冊子だったが、それを読んでから時間を惜しんで実験をするようになったことを記憶している。

 

研究とは、という問いに対して難解な哲学ではなく、「何か新しいことを見つけるために」研究をする、と簡単で分かりやすく説明していた。

 

この冊子では、化学者が研究する意味を、そしてその時化学実験が重要な役割をなしていることなどわかりやすく説明していた。おそらく阪大の学生向けに語られた内容なのかもしれないけれど、感動したことを覚えている。

 

化学実験が面白くて小学生の頃から遊びの一環で実験をしていた。近所に実験器具の問屋があったのも影響していた。試験管やらビーカーをお小遣いで買っていたので、今から思い出すとこの問屋の社長が不用品を当方にくれていたのかもしれない。

 

実験と言っても難しいことはしていない。当時「子供の科学」という本に連載されていた実験をトレースしていただけだった。それでも十分に面白かった。

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2019.06/21 AIが普及する前に考えなければいけないこと(5)

研究開発部門にAIが導入されたなら、30年前の体験の様な事態があちこちで起きるかもしれない。

 

AIに問題解決させたら、既存の方法ではできません、と回答してくる、そして人間はその回答を見て、荒唐無稽な企画を行い、悪戦苦闘する光景である。

 

自分が自信を持って立案した企画だから、いきなり実行しようとする。ただし、添加剤が入っていないゴムにERFを封入したらどうなるかをAIに尋ねたら、やはり増粘しない、という回答を出すに違いない。

 

当たり前に予想されるからだ。ただ、老化防止剤や耐候剤、可塑剤が添加されていないゴムでは実用化できないと教えられているAIならば、注意点としてそのようなゴムは実用化できない、とアドバイスしてくれるかもしれない。

 

しかし、このアドバイスをAIができるためには、添加剤が全く入っていないゴムがどのような状態になるか、教えられていなければいけない。人間ならば経験から十分に想像できるが、教師データにそのような経験が入っていなかったなら、AIはアドバイスできない。

 

ゴム会社の学者肌の研究開発本部長は「それは良い考えだ」と、使い物にならないゴム材料の企画を当時大絶賛したそうだ。

 

そしてまずモノを持ってこい、と言っていた本部長を批判していたような人だから、ゴム会社の誰も思いつかないものをよくぞ思いついた、と常識のない企画者を誉めたに違いない。

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2019.06/20 AIの普及で考えなければいけないこと(4)

AIの教師データは、形式知で構成されるはずだ。曖昧さと誤動作をさせないためには不確かなデータをAIに搭載するわけにはゆかない。

 

 

仮に経験知を教えるにしても科学的に確かな形式知を教えてその後経験知を教えなければ、おかしなAIになってしまう。人間なら職人で済むが、AIの職人というのが成立するのかどうかは疑問である。

 

 

次にAIが思考するときには科学的論理で厳密に行う。曖昧さがあればそれも指摘する。AIは賢いかわりに論理とその判定に厳格であることを忘れてはいけない。

 

 

人間のようにテキトーな考え方ができないのがAIである。例えば中間転写ベルトの押出成形を担当し、カオス混合を発明しているが、このような発明はAIに絶対にできない、と断言できる自信がある。

 

 

まず形式知で否定されるPPSと6ナイロンの相溶を実現している点である。これを狙ってカオス混合装置を発明する、という思考はAIには絶対にできないのだ。

 

 

単身赴任し、もしかしたらできるんじゃないかと思い、押出成形の押出機をそのままだが但し常識はずれな使い方をして最初のカオス混合の実験に成功している。

 

 

このような実験は、AIに絶対に思いつかない。だいた人間にも否定された実験である。部下の課長に「お好きなように」と言われてお好きなように実験を行っている。

 

 

その結果を日本の一流メーカーの技術者に話してコンパウンドの製造実験をお願いしたら、「素人は黙っとれ」と言われた。そのような実験をAIが提案してくれるとは到底想像がつかない。

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2019.06/19 AIの普及で考えなければいけないこと(3)

ERFの増粘問題(ゴムからブリードアウトした化合物によりERFの耐久性が無くなる問題)が界面活性剤で解決できない、という結論は、形式知で論理的に展開され完璧だった。

 

 

さすがに高偏差値の大学出身者のスタッフで工学博士がそろったメンバー構成だったので、その論理もAIのように緻密だった。本部長も学者だったのでそのまま信じている。

 

 

恐らく前の本部長ならば「まず報告書よりもモノを持ってこい、大バカ者」となったかもしれないが、この研究開発テーマの途中で本部長が交代したために緻密な否定証明の研究論文が評価されるような事態になった。

 

 

科学の証明で完璧にできるのは否定証明だけだ、と言ったのはイムレラカトシュだが、その否定証明でできないことが証明されたとしても、一度でもできたという現象の再現を肯定するような一つの実験結果が出てきたならば、否定証明もひっくり返るのが科学の世界である。

 

 

だから学者のI本部長の前任者浦川本部長は研究者に嫌われながらも「新しい企画提案には、まずモノをもってこい」と言い続けてきたのだ。

 

 

高純度SiCのセラミックヒーターはこの本部長のおかげでできたようなものだ。研究棟の竣工式の日にリーダーが病死され、本部長から呼ばれた当方は、「粉ではなく何か形のある製品を大至急作れ」と命じられた。

 

 

高純度SiCでできたピンセット、高純度SiCヒーター、高純度SiCるつぼ、高純度SiC板、高純度SiC切削工具など思いつくものですぐにできそうなものを作った。

 

 

ピンセットはタダの二本の棒だったが、何に使うのだ、と言いつつも半導体分野は高純度製品が必要という説明で企画として認めてくれた。モノができておれば信用してくれたので、報告書を書くよりも製品を製作する毎日だった。

 

 

この浦川本部長時代には、いろいろな先端製品を手作りしている。フレキシブル常温超伝導体は傑作のひとつで、液体窒素で超伝導体であることを示し、それをドライヤーで温めてフレキシブルであることをみせて、「常温で本当に超電導となるように開発する」とプレゼンし納得していただいた。

 

 

完成しなかったが、自分でギブアップを報告している。当時の超伝導体は酸素が抜けると超電導性が消失したので空気が抜けないようゴムで覆う発明を特許として出願している。

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2019.06/17 AIの普及で考えなければいけないこと(2)

AIが企業の研究開発に導入されたらどうなるか。その事例は30年ほど前のゴム会社の研究所の出来事と同じことが起きる。

 

当時ウィンズローとかいう人が発明した電気粘性流体がゴム会社で研究されていた。常温超伝導体やスタップ細胞と同じくキワモノ的発明だが、電場のONとOFFで物質のレオロジー特性を制御できるということでゴム会社は飛びついた。

 

おそらく当時最先端の研究レベルではなかったろうか。すでに防振ゴムや車の足回りの部品について実用に近いものができており、自動車会社との共同研究もスタートしていた。

 

ただ大きな問題は、二つあり、一つはゴムケースと組み合わせて用いるとゴムから配合剤が電気粘性流体(ERF)に溶出してきてドロドロとなり使えなくなるERFの耐久性問題と、電気粘性流体に使用していた粉末の品質ばらつきが大きかったことだ。

 

この二つの問題を解決したために当方は会社を辞めることになったが、その遠因は、聞くところによるとERFの耐久性問題を工学博士も含む優秀な人材が一年かけて「界面活性剤では絶対に解決できない」という結論を出したことによる。

 

この結論をもとにERFと組み合わせても配合剤が抜け出さないゴム、それは配合剤が添加されていないゴムを開発することだ、と工学博士を含む優秀なスタッフたちにより企画され、樹脂補強ゴムをたった3ケ月で開発できた当方ならばそれができるはずだと、なったらしい。

 

評価されたことはうれしかったが、配合剤が全く入っていない高分子など実用性の無いことは経験知から明らかだった。ただ形式知でその証明はできないだろう。実はAIが研究開発部門に導入されたらこのようなおかしなことが日常として起きるようになる懸念がある。

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