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2016.08/26 研究開発の企画

以前この欄で企画について一般の教科書に書かれていることに当方の経験も含めまとめてみた。そこでは企画に必要な要素についてまとめているが、企画をどこまで掘り下げたらよいのかは、言及していない。
 
ゴム会社と写真会社の二つの会社を経験してみて、研究開発部門の使命や役割、機能が異なるだけでなく、この企画に対する考え方が大きく異なることにびっくりした。
 
ゴム会社では、研究開発しようとしている実際のモノを示せばそれでよい、という大変わかりやすい姿勢である。しかし、研究開発を始めていないのにこのモノを示すことが難しいので、どうしても企画書に頼る。しかし、これが分厚い企画書であると審議していただけない。せいぜいA3一枚が限度であった。
 
写真会社では、分厚い企画書が求められた。シナリオも簡単なロードマップ程度ではだめで、長文の作文が要求された。退職直前に担当した中間転写ベルトの開発では、前任者から引き継いだ企画内容ではゴールを実現できないということで、コンパウンドの内製化に取りかかろうとしたら、長文の企画書を要求された。
 
困ったのはカオス混合の説明で、世の中に存在しない新技術をどのように説明したらよいか悩んだ。また、会社に基盤技術の無い状態で新技術を開発する、などと半年後に製品化を控えた開発の企画書に書いたなら馬鹿にされるのが落ちである。中古機を買って設置すればすぐにできる、お金もかからないという企画書にしなければいけなかった。
 
本当は、科学で説明ができないだけでなく、できるかどうか誰もわからないような高度の技術開発について、目をつぶっていてもできるという企画書に仕上げた。DRでは、外部からコンパウンドを購入して開発を進めているのに、なぜ内製化を行うのかという、業務の状況を理解していない、しかしまともな質問が出たが、ただ頭を下げるしかなかった。
 
ところで、できるかどうかわからない仕事をなぜ推進し、成功に導くことができたのか。それは、弊社が販売している研究開発必勝法でも指導している戦略図と戦術図のおかげである。この研究開発必勝法については、新時代の問題解決法やコーチング手法を含んでおり、問題解決法については、11月に講演が予定されている。詳細は弊社へ問い合わせていただきたい。
   

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2016.08/25 NHKの貧困女子高生を扱った番組の問題

バブル崩壊後、就職氷河期、リストラなど暗い話が続き、最近は貧困が話題である。NHKも定期的に取り上げている。数年前には生活保護がもらえず餓死した姉妹のニュースまで特集で報じられたほどである。
 
団塊の世代は、高度経済成長の恩恵を受け年金も心配のない世代だが、当方の世代から少しずつ不幸の分配は始まっていると言われている。それでも当方の世代は、誰かスキーに連れてってなどモータリゼーションを楽しみながら生きてきたが、今の若者はもはや車に関心は無く、遊びの活力も落ちているような印象を受ける。
 
退職金をつぎ込んで会社を起業したのは、活力の無くなった社会を少しでも元気にしようというのが目的だったが、最初に手掛けた事業がまずかった。目標を低く設定していたが、その低い目標でさえ達成できない状況で大慌てとなった。
 
甘かった、と言ってしまえばそれまでだが、失敗で学ぶことも多かった。また**人は金払いが悪いだけでなく人をだます、とアドバイスされたが、事業の世界では同胞でも油断ができず同様である厳しさを学んだ。とにかく赤字が膨らみ、たまらず電子出版をまず閉鎖した。次に自宅を事務所にして徹底して節約した。
 
ある日、創業時の経験で注意をしていたが、それでも知人の紹介だったので、ある中国人に日本で事務所を開きたいと言われ、コンサル費用の支払いを信じて新たに事務所を借りた。しかし、彼が当方の借りた事務所を見て風水の視点で儲からない事務所だ、といってその金も払わず、消えてしまった。ひどい話で、その中国人のために借りた事務所と敷金礼金と一年間の支払いだけが残った。
 
仕方がないのでその事務所を分室にして使ってきたが、面白い仕事が舞い込むようになった。昨日も面白い仕事が一件舞い込んだ。風水のみたてははずれ、この事務所を無理して使ってみて、事業が上向き始めたので不思議である。
 
貧困どころか大赤字のひどい状況だが、前向きに生き、その時の状況に流されず、日本社会に貢献しようと何とか会社を経営している。もしNHKのスタッフの目にこの記事が止まったならば、弊社を取材して欲しい。金が無くても、松岡修三氏のような明るい話をしたい。
 
残念ながら表題の女子高生の番組を当方は見ていないが、最近この番組に対するWEBに溢れている批判の記事を読みNHKの取り上げ方がおかしかったように感じた。社会の目を貧困の問題に向けさせるための過剰な演出が成されたように思われる。
 
貧困の問題解決は当然国が取り組むべき重要課題だが、マスコミが声高に騒いでみても一朝一夕に解決できる問題ではない。むしろマスコミは貧困の中を明るく生きる知恵について提供する使命があるのではないだろうか。すぐに解決できる問題ではないので焦らず努力し続けるために皆で明るくなる努力をしなければ、本当に国民の大半が貧困という時代になるのかもしれない。
 
ところで、お金が無くても明るく生きる工夫はあるのだ。皆が明るく前向きに生活しなければ社会はよくなっていかない。戦後の日本はそうして高度経済成長へ向かった、と亡父に教えられた。明るく、元気に、活き活きと新しい価値を創造しよう!

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2016.08/24 オリンピックマラソン惨敗

オリンピックが閉幕したと思ったら、すでにその反省会のニュースが報じられている。マラソンに対する批判が多い。確かに、猫ひろしが139位なのに北島選手の94位は、ひどすぎる。猫ひろしに抜かれなかっただけでも陸連のメンツが保たれているような結果である。
 
左アキレス腱を痛めていた北島選手は、本来なら「完走できるかできないかという状態」だったという。猫に抜かれる可能性があったのだ!ただ、現状では補欠もおけないという。
 
この状態に対して「補欠がいれば、入れ替えもできたが…。(4年後の)東京は非常に暑く、故障も起こりうる。補欠がいないのは不安」と宗マラソン部長は語っている。
 
これは少しおかしい。北島選手の故障は、当日分かったわけではなく、オリンピックが始まる前に分かっていたことだ。補欠がいなくても、代走者を選ぶ努力が事前にできたはずである(注)。代走者として、いつでもどこでもマラソンが可能な川内選手を使えたはずだ。
 
さらに、川内選手が蹴って話題になったナショナルチームの制度も事前に崩壊していたという。その制度を立て直すこともできないまま、今回の大会にのぞんだことになる。
 
ニュースで宗マラソン部長が説明されている内容を聞くと、マネジメントができていない、と白状しているようなものだ。この人は選手として優秀だったが、マネージャーとしては不適格ではないか。ご自分のやるべき仕事を理解されていない発言が多い。
 
北島選手のような50位以下になるような、あらかじめ欠陥が分かっていた選手を出すぐらいなら、なぜ最強ランナー川内君を陸連は出すことができなかったのか。宗マラソン部長がいろいろ挙げていた問題よりも、硬直化した運営しかできない現状とそれをイノベートできないマネージャースタッフが一番の問題だろう。
 
東京オリンピックに向けて国民の税金から強化費がさらに増額される。陸連の幹部総辞職と指導体制の刷新を図るべきだろう。男子と女子マラソンの結果を見て現状の体制でよしとするなら、それでは国民の税金を使った成果に対する責任感が乏しい。昨日までのニュースを読む限り、東京オリンピックでもマラソンはリオと同じ結果になるだろう。
 
(注)ルール上できない、と宗部長は回答するかもしれないが、ルールには必ず抜け道があり、その抜け道をうまく使ってベストの成果を組織として出せるようにするのがマネージャー(管理職)の役割である。当方は、押出成形の開発だけを行い、コンパウンド技術は外部に依存、という企画を開発途中で受け継いだ。その企画に書かれた手順では開発が成功しないと判断するやいなや、設備予算が無い中で、中古機を買いコンパウンド工場を建てて成果をだした経験がある。社内のQMSのルール上まともに考えたら不可能な開発日程だったが、関係部署との調整を行い、裏技を駆使して、QMSのルールに準拠して開発を成功に導いている。マネージャーはいつも創意工夫が求められるのである。粛々と規則通り行うマネージャーなど今の不確実性の時代には不要である。いかにして東京オリンピックで成果を出すか。もし分からなければ弊社へご相談ください。問題解決法をご指導致します。

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2016.08/23 リオオリンピック

昨日リオオリンピックが閉幕した。メダルは空前の41個という素晴らしい成績だった。オリンピックは参加することに意義があるが、成果であるメダルの数はどれだけ頑張ったのかと言う一つの指標として重要である。
 
このように書くと、メダルを取れなかった人も頑張った、という意見が出たりするが、このような意見は、最近少なくなったように思う。メダルを取った選手を称えたからと言って、取れなかった選手を軽蔑しているわけではないのだ。
 
例えば100位以内にも入れなかったが、それゆえマラソンを完走した猫ひろしが頑張らなかった、とは誰も思わない。悪条件下のマラソンで脱落者も多いなかで、3時間を切った彼のゴールには少し感動した。
 
彼は科学的な訓練を受けておらず、自前の努力で過酷なレースで完走したのである。他国の代表選手として参加したことに批判的な意見もあるが、ボーダーレスの時代である。ルールに反していなければその努力と完走という成果を評価したい。また”猫効果もあり、マラソンの視聴率が25%を超えた”というニュースも報じられている。
 
今回のオリンピックではロシアのドーピング問題も大きな話題だった。オリンピックは厳しいルールの中で競うゆえにその成果に大きな価値が出てくるので、インチキをしてメダルを獲得した選手や国が非難されるのは当然である。
 
ところで、国民が自国の選手にメダルを期待するのは、選手の強化費用に税金が使われているからだけではない。メダルを目指して競う姿から生まれる感動を共有したいためでもある。
 
かつてメダルを逃がした若い水泳女子選手の開き直りによるメダルキチガイという言動が問題になったことがある。その次のオリンピック選考会で彼女は選ばれず、騒動がさらに大きくなった。以来、参加選手の言動に優等生的な発言が目立つようになった。勝った選手も負けた選手も予測された回答が返ってくる。
 
そのなかで吉田選手のレスリング決勝で負けて泣いている姿には感動した。自分に対する悔し泣きであることは十分に伝わってきて当方も思わずもらい泣きをしてしまった。感動を伝えるにはその姿だけで十分で、インタビューなど不要だが、無能なインタビュアーの無粋な質問が飛ぶ。しかし、彼女は、正直に自分のミスを悔しそうに語っていた。そのときにも、苦しい努力をしたもの以外では理解できないであろう涙が流れていた。
 

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2016.08/22 オリエンタルラジオの写真集

オリラジの写真集がLGBT差別として話題になっている。写真家が謝罪のつもりで発表した文章がさらに火に油を注ぐような結果になった。
 
同性どおしの同棲を美しく描いたならば問題にならなかったのに、変態として表現したから騒動になっているのだ。このような場合に根本的な問題がどこにあるのかわかっていない人には、すなわち問題を正しく捉えられない人には、謝罪がさらに新しい問題を生み出すことになる。
 
出版元の角川は、〈誤解も生まれているようですので明確にしておきたいのですが、本書の製作において「同性どうし」“だから”「変態」という意識はみじんも有りません。「変態」ということばは、「青山さんの写真表現」に依るものです。〉と、写真家に責任を転嫁しており、謝罪になっていない。
 
さらにその写真家の青山氏は、<「究極の変態=同性同士の同棲という意味ではなく、端的に言えば、青山=変態的な視点という意味なので、よろしくお願いいたします」>と理由を述べて、これもまた謝罪になっていない内容を謝罪として載せている。
 
今の時代は、同性どおしの同棲を変態として扱うこと自体が問題になるのである。ましてや、自分はその視点で見てます、とはっきり明言するのは、傲慢でもあり人格が疑われる。
 
しかし不思議なのは、この写真集が3位の売り上げになっていることだ。社会としてはこのような本をベストセラーにしてはいけないのである。
 
1991年に「サンタフェ」が出た時に、ヘアーヌードとして一部問題になりかけたが、あの写真集はヘアーに修正をかけたならば恐らく写真集として失敗したと思われる。ヘアーの写っていることでなお一層自然な美しさを演出していたのだ。
 
これは、写真家とモデル(あるいはスタイリスト)との共同作業が成功した事例である。誰もがその美しさを認め、100万部以上売れたという。もしオリラジの写真集も美しさを表現していたならば、これほど問題にならなかったと思われる。
 
ネットに公開されている写真を見る限り、「同性同士の同棲は変態ですよ」という反社会的メッセージの写真集になっている。このようなものをヒット作にしてはいけない。

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2016.08/21 樹脂にフィラーを分散

樹脂にフィラーを混練プロセスで分散する時に問題になるのは樹脂とフィラーの濡れであるが、この問題に無頓着な技術者がいる。カップリング剤を添加すれば濡れの問題は解決できると考えている人が多いようだが、それはカップリング剤が理想通り反応した時に限られる。
 
気を付けなければいけないのは、カップリング剤の添加でフィラーの分散が改善されたかのような兆候が現れると、教科書に書かれたような説明をして満足している。その結果未反応のカップリング剤がブリードアウトしてあわてることになる。
 
ところで、フィラーと樹脂の組み合わせにおいて、この濡れの問題が着色現象として現れることがある。不純物による着色と勘違いしがちだが、同じ配合処方で混練条件を変えると色味が変わる。例えば二軸混練機だけで混練して着色したものをカオス混合すると色味が薄くなる。
 
このような変化から樹脂とフィラーの濡れが着色を引き起こしていることに気がつく。調色技術に詳しい人ならば、色材の量が同じでも色調変化が起きる経験をしているので既存の混練プロセスで色調を保つ技術が難しいことを知っている。
 
濡れの問題は配合処方で対処するのが経験者の常だが、これは二軸混練機では濡れ性を改善できるまでの混練が難しい、と考えるからだ。しかしカオス混合機を使えばこのような問題も解決可能で、調色技術で問題になった時に検討する価値がある。カオス混合機はこの5年間進歩し、流量の問題や発熱の問題も解決した。この点に関してご興味のある方は問い合わせてほしい。

カテゴリー : 一般

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2016.08/20 研究テーマ

研究テーマの設定は難しい。特に企業においては商品開発テーマと同等評価が得られるような研究テーマ企画と言うのは、それなりの実務経験がないと企画できないのではないか。
 
10年後を見据えた基礎研究です、というのは怪しいテーマが多い。しかし30年前はこのような企画を多く見かけた。ゴム会社だけでなく多くの企業でこのような研究企画が多数推進されていたのではないか。
 
高純度SiCの企画も最初提案した時には、怪しい企画が多く推進されていたにもかかわらず、それらの企画以下に扱われた。最初に提案してから3年後に無機材質研究所留学として実現したのだが、昇進試験の答案に書いたところ0点をつけられたので留学が島流しではないかと不安に思ったりした。
 
この企画は30年以上たった今でも事業として継続されているので、企業の研究企画としては優れた企画だと思う。また、この企画の中の小テーマの一つにSiC合成の反応速度論があり、2000万円かけて超高速熱天秤を開発し、生産に寄与する研究成果を出している。そして学位論文にもなっている。
 
しかし、ゴム会社の研究部門では、この企画は全然評価されなかった。評価されなかったどころか、昇進試験に落とされるぐらいのマイナス評価だった。
 
昇進試験に落ちた結果、研究を完成させる機会が得られたのだから、複雑な気持ちだが、とにかく研究部門における研究テーマの評価として低かったことは確かだろう。
 
しかし、無機材質研究所長はじめ留学でお世話になった先生方には、研究テーマとして高い評価を頂いた。当時セラミックスフィーバーの最中で留学希望者が多く、この評価が無ければ無機材質研究所への留学は実現しなかった。
 
ゴム会社の研究部門では散々な評価だったが、ゴム会社の故服部社長には大変褒めていただいた。「なぜ研究部門でこのような企画ができないのか」とまで酒の席で言われた。不思議に思い後日上司に尋ねたら、新事業部門の企画として最初説明されたらしいとのこと。
 
早い話が、当時の研究部門管理職の方々は、この研究テーマに関わりたくなかったと思われる。この研究テーマに関しては30年以上事業が続いている「不思議さ」以外にFD事件も含め奇妙な体験は多い。ただ、若い時の企業に貢献したいという「思い」の強さが成功に結び付いたと思っている。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2016.08/19 フィラーの分散

流動性のある物質の中に微粒子が分散している状態をコロイドといい、それが流動性を持っているときにゾル、流動性が無くなるとゲルと呼ぶ。これは化学の世界だけに限らず、日常会話にも登場する。
 
例えば殺虫剤を散布すれば、エアロゾル(エアゾル)という言葉が出てくるし、今は死語となったガンクロが夏の時期には町に現れ、何やらつまみながら「げるってる」などという言葉を発する光景に稀に出会う。
 
コロイドとかゾル、ゲルなどという科学用語は、いまやフツーの日本語になりつつある。だから微粒子の分散技術も簡単に理解できる時代ではあるが、現場の技術者は難しく考えている。これは、教科書にも責任がある。
 
例えば、ゼータ電位の問題。液体の中に微粒子を分散した時にその表面に何らかの電荷が現れ、と説明が始まる。微粒子表面に電荷が現れる現象は、もう日常生活で経験済みである。
 
昔電気粘性流体の開発を担当していた時にゼータ電位の問題はよく議論していた。現象の理解や説明には便利なパラメーターである。しかし、粒子が凝集したり(クラスターを形成したり)、何か不純物が入ってきたりして複雑になってくると途端にこの問題は難しくなる。計測データを見てもマクロ的な現象から説明をし始めたりする始末である。
 
何のためにモデル系を作ってゼータ電位を測定したりしていたのでしょう、と自分で自分の行動を笑ってしまう。コロイド科学を真面目に研究するのは難しい。しかしフィラーの分散を直感的にとらえ理解するのはそれほど難しくない。
 
夏の日のクーラーの効いていない電車の車内を想定して欲しい。乗客が少ない間は、皆距離をおいて乗っている。次第に混雑してきても前からいた乗客は自分の位置を変えて、距離を置こうとする姿を観察できる。混雑していない時に座っている乗客の前に立てば上目づかいで睨まれたりする。感じが悪いのでやはり少し距離を置く。
 
すなわち混具合で電車の中の人の配置がかわるようにコロイドでも濃度によりクラスターのでき方が変わる。このようなことは直感的にわかる。みるからに恋人どおしのカップルは空いている電車の中でも離れようとしない。これは、高分子の中にフィラーを添加した時と似ている。凝集性の強いフィラーは添加量が少なくても分散は難しい。
 
だからカップリング剤でフィラーを前処理する必要が出てくるのだが、恋人どおしを引き離すのが難しいのと同様に、凝集粒子をカップリング剤で処理してもその凝集を完全にとくのは、カップリング剤以外に一工夫が必要である。フィラーの分散の問題は科学で真面目に考える前に直感でまず現象を整理していった方が面白いアイデアが浮かぶ。
 

カテゴリー : 一般 高分子

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2016.08/18 観察は、科学特有の行為か

仮説設定をして実験をしたり、あるいは観察という手法で科学的に取り組んでも間違った結論を出す、ということは科学的方法で起こりがちな問題である。イムレラカトシュの言う否定証明という科学的解決法に潜む問題を知っていると注意できるのだが。
 
電気粘性流体をゴムのケースに入れた製品では、ゴムのケースから電気粘性流体へ配合剤が抽出され、ごてごてに増粘し使い物にならなくなる。解決方法は界面活性剤しかないのだが、これが否定証明により否定され当方に応援の仕事が回ってきた。
 
ゴテゴテになった電気粘性流体にポリエチレンオキシドを添加して振ったところ、少しずつ粘度が下がり、2時間眺めていたら、流動性が出てきた。初めての実験だったので、窓際でじっと観察を続けた成果である。
 
ポリエチレンオキシドを選んだのは、ゴムの添加剤には極性の高い化合物が多いからだ。ゆえに効果が無ければ粘度変化は無いはずで、効果が少しでもあれば、注意深い観察でそれを検知できる。
 
通常は粘弾性試験器で粘度変化をモニタ-すれば検知できるが、粘度増加の様子を観察したかった。すなわち、粘弾性試験器では、全体の細かい現象を把握することができるが、不均一な変化を捉えにくい問題がある。このような問題では、マクロな解決法も考えるべきで、そのため目視で観察することにした。
 
目視観察は正解で、ポリエチレンオキシドを添加したときにはざっくりとした変化が観察され、その後粘度が下がる、という現象を見いだせた。すなわち経験から界面活性剤で解決できる、という結論をすぐに出すことができた。
 
何か仮説を立てて観察をしたわけではないこの実験が大正解で、すぐに問題解決でき、特許出願や製品化に寄与した。このように実験や観察は、科学的に行う必要はなく、ヒューリスティックに行っても正解にたどりつける。
 

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2016.08/16 仰天した仕事

ゴム会社の最初のテーマは防振ゴム用樹脂補強ゴムの開発だった。今で言うところの熱可塑性エラストマーである。すなわち加硫ゴムが島で樹脂相が海の当時は新素材の開発である。
 
この材料は、性能が低くてもよいならば動的加硫という技術を用いて二軸混練機で製造できる。しかし、当時高性能が要求されたのでバンバリーと二本ロールを用いて開発していた。
 
指導社員からテーマの説明を受けたときに指導社員が製造したというサンプルの物性を評価しながら、評価技術の指導を受けた。
 
そのサンプルは、指導社員が一回の実験で創りだした材料だった。しかし、物性は座学で教えられた理想の物性に極めて近かった。当方の最初の仕事は、そのサンプルの再現を確認する実験から始まった。
 
しかし、同一配合のゴムを教えられたプロセスで混練してもなかなか指導社員のサンプルと同じ物性にならなかった。このあたりの話は以前この欄で紹介した。その後分析担当の女性陣がサポートしてくれてゴムの高次構造のプロセス依存性のデータが揃うことになる。
 
しかし、驚くのはたった一回の実験でベストに近い物性のサンプルを創り上げた力量である。見方を変えると再現性の乏しい技術だからだめだ、という批判も出てくるが、プロセスの勘所を押さえると十分に再現性のある凄い材料になった。
 
当方は新製品の樹脂を用いて、この材料よりも品質の良い材料を3ケ月未満で開発するのだが、指導社員はシミュレーションで目標を立ててたった1回で仕上げているのである。指導社員は当方の開発した材料を褒めてくださったが、何かイヤミを言われているようで素直に喜べなかった。
    

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