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2023.09/16 新規ポリマーアロイ(3)

PPSと6ナイロンはカオス混合により相溶する。これはフローリー・ハギンズ理論から説明できない現象であるが混練技術を工夫すれば起きるのである。


この実験のヒントは、東工大で行われたPPSと4,6ナイロンの相溶現象におけるその場観察である。すなわち、PPSと4,6ナイロンを二枚のガラス円板に挟み、それぞれ反対方向に回転させて剪断流動を発生する。


300℃近くになると円板の周辺部分が透明になってくる現象が観察された。すなわち、温度と剪断力でPPSと4,6ナイロンが相溶することを世界で初めて実証した扇沢グループの実験である。


この研究があまり注目されていないのはもったいないことである。この研究成果を思考実験により展開するとカオス混合装置が生まれる。そして4,6ナイロン以外のナイロンでも相溶するのではないかという妄想が生まれる。


この妄想が目の前で起きると感動に変わるが、当方の部下は当方を信じていなかったので腰を抜かした。当方は妄想で十分に理解していたので感動しただけであるが、彼はキャという悲鳴とともに腰を抜かしたのである。


PPSと6ナイロンの混練されて透明な樹脂液として二軸混練機の吐出口から流れている光景は、それくらい驚くべき光景なのだが、フローリー・ハギンズ理論の問題を理解しておれば感動の光景となる。


6ナイロン以外に12ナイロンとか数種類ナイロンをPPSとともに混練したがいずれも透明な樹脂液となった。面白いのはこの後である。


ストランドとして回収したサンプルを机の中に保管し、在職中こっそりと眺めるのが楽しみとなったが、5年ほど透明だった。2011年3月11日に最終講演が15時から予定されていたのでサンプルを準備していたが、ぐらっと来た。


その後忘れていたが、ストランドとして回収後のサンプルを数年後に見つけたら真っ白くなっていた。すなわち少しずつスピノーダル分解し、白くなったのである。白濁したが、ストランドの柔軟性は失われていなかった。これには腰を抜かしそうになった。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2023.09/15 線形回帰

この10年、マテリアルズインフォマティクスのブームだったが、相関関係による回帰が主に利用された手法ではないだろうか。データ駆動により見出された数式なり学習機械を用いて得られる回帰と分類の効果が、データサイエンスにより現象の理解に貢献する,というのがマテリアルズインフォマティクスである。


その中で線形回帰は、データサイエンスを意識せず昔から使われてきた手法であるが、せっかくこの10年データサイエンスを意識したので、もう一度基礎から見直していただきたい。


ポリマーアロイの設計においても線形回帰は、エクセルのソルバーで簡単に活用でき、新素材開発に貢献するので、その正しい意味をよく理解しておきたい。


y=ax+bは小学校の算数でも出てきそうな式であるが、あまりにも簡単ゆえに甘く見ている人が多い。線形回帰ではbに誤差項が含まれてくるのだが、2つの意味がある。


一つは誤差を認めたうえで、yを予測するための式、という意味であり、他の一つはyとxにはあらかじめ式で示された形式知に基づく関係があり、何らかの影響で誤差が発生している、という意味である。


前者と後者は同じことを言っているのではないかとか、前者と後者の意味の違いがよく分からない、と言ってはいけない。よく読み返していただきたい。


前者では、単なる誤差を含んだ予測を行うための式でしかないが、後者ではyとxの間に科学の形式知で保証された関係があるので、誤差項には、深く解析すると意味のある何らかの情報が含まれている、と踏み込んでyとxの関係を述べている。


すなわち、前者における誤差項は測定ばらつきなどの統計的に純粋な誤差であり、その誤差を解析してみても何ら現象に秘められた情報を取りだすことができないが、後者では誤差を考察することにより、単なる統計ばらつき以外の情報が見えてくる。


線形回帰で残渣分析を行う必要があるのはこのためであり、現象に隠れた何らかの情報が誤差に含まれていないか考察する習慣を身に着けたい。


来週開催される難燃化技術セミナーでは事例をもとにこのあたりを説明するので興味のあるかたは弊社へ問い合わせていただきたい。


50年近く前からマテリアルズインフォマティクスを実践し、それが原因でFDを壊されるような嫌がらせを受け、それを組織が隠蔽化するというので命が惜しくて転職している。マテリアルズインフォマティクスは半世紀ほど前には非科学として嫌われた手法である。


企業内の事件であり、なかなかすべてを表に出せないので、マテリアルズインフォマティクスと科学の微妙な関係について詳しく書けないが、昔はその手法を忌嫌う「科学こそ命」な研究者が多かった。


仮説ではなく学習機械で問題解決する方法は50年近く前から行われていた。来週のセミナーではその証拠もご披露する。それだけではない。最近のAIの手法についてプログラムを組み実験を行った結果との比較も交えて、「ある手法」の優位性を解説する。


「ある手法」とは、アレである。ただしここでは阪神の優勝の意味ではない、50年以上前から知られているアレである。アレとAIとの比較は、珍しい発表だと思っているので問い合わせていただきたい。アレのほうが使い方によりAIより便利である。

カテゴリー : 一般

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2023.09/14 新規ポリマーアロイ(2)

同一配合で異なる物性のコンパウンドをプロセス設計により作り分ける、これができない技術者は新材料開発能力が低い、と言わざるを得ない。


また、配合と物性は1:1に対応すべき、と某国家プロジェクトの目標に書かれていたようなことを信じている技術者はもっと材料技術について勉強すべきである。


PPS/6ナイロン/カーボンを二軸混練機で常識的な混練をしている限り、押出成形で半導体ベルトの歩留まりが100%となるコンパウンドを製造することは不可能である。


力学物性を犠牲にすれば、二軸混練機を二回用いることで、電気抵抗の安定したコンパウンドを製造可能である。例えば6ナイロン相にカーボンを分散し、それをPPSと混練すると得られる。


しかし、カーボンの分散したナイロン相のドメインが硬いので、そのようなコンパウンドで製造した無端ベルトは紙のような靭性のベルトとなる。


力学物性も電気物性も両方目標物性を満たしたコンパウンドを製造するためには、現在のところカオス混合しかない。すなわち、カーボンの凝集相が6ナイロンの相溶したPPSに分散した高次構造を有するコンパウンドなら電気物性も力学物性もその品質が良好な半導体無端ベルトを押出成形できるようになる。


ただし、PPSと6ナイロンのχは大きいので、これはフローリー・ハギンズの理論に反する、と考えた方は優秀である。カオス混合は、科学の形式知に反するような現象が発生するトランスサイエンスの混練方法である。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2023.09/13 新規ポリマーアロイ(1)

早期退職を決意したとたんに難しい仕事が舞い込んできた。配合を変えずに半導体無端ベルトの押出成形歩留まりを10倍にする仕事である。


某国家プロジェクトの目標として、配合と物性が1:1に相関し、などと間違ったことが書かれていたが、もしこれが形式知となるならば、この仕事の解は無い。


しかし、無機材料でも有機材料でも配合と物性は、1:1で対応しないことの方が多い。ゆえに国家プロジェクトの目標とされたのだろうが、これを1:1で対応させようとするセンスでは、新材料の開発など難しい。


しかし、そのような感覚のテーマに数億円の予算が毎年ついてプロジェクトが進められている日本の研究開発においてその任にある人は、弊社のセミナーで少し勉強した方が良い。


配合が同一でも高分子材料ではコンパウンディングプロセスが異なれば、物性は変化する。これは常識であり、それゆえ新たなプロセシング技術の研究は、いつの時代でも求められている。


PPS/6ナイロン/カーボンの単純な組成で半導体コンパウンドを製造するときに、少なくとも2種類の全く異なる高次構造のコンパウンドを作り分けることが可能だ。


技を磨けばこの単純な組成で3種類以上の高次構造を創り分けることができる。負の誘電率を有するコンパウンドまで製造できた、と書くとウソだという人がいるかもしれないが、電気技術者にコンパウンドの評価をお願いしていたら、彼が見つけてくれたのである。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2023.09/12 Pythonで学ぶパーコレーション

絶縁体高分子に導電性微粒子を分散すると半導体高分子が得られるが、この時に発生する現象がパーコレーションで、導電性微粒子の体積分率が増加した時に体積固有抵抗がある体積分率で急激に減少する領域ではパーコレーション転移が起きている。


このシミュレーションプログラムをPythonで作成しながらパーコレーション転移について学ぶセミナーを常時開設しているので、関心のあるかたは問い合わせていただきたい。


帯電防止技術と複合プリンターのキーパーツ開発事例をもとに、パーコレーション転移のシミュレーション方法とそれを活用した製品開発技法を解説し、同時にPythonによるプログラムの解説を行う。


このプログラム解説は、単なるPythonの文法解説以外にプログラミング言語としてのPythonの特徴をクリアにし、発展的独習が可能なように指導している。


プログラミング言語は、名古屋弁や大阪弁よりも易しく、コツさえつかめれば自学自習が可能であり、そのコツを弊社のセミナーでは伝授している。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2023.09/10 シミュレーション

シミュレーションには現象を数式で記述する方法と現象のモデルをコンピューターの中で機能させる方法とがある。


後者では、現象の動作を数式で記述する必要が無く、思考実験と類似の方法なのでプログラミングスキルがあれば、だれでもコンピューターシミュレーションが可能である。


数式で記述する場合も、現象をデフォルメしたモデルを仮定することがあるので、この両者の違いが分かりにくいが、後者では機能の数学表現を考える必要が無い点が容易である。


ここに最近はディープラーニングすなわちAIの手法も入ってきて、後者はますます便利になった。Pythonを用いれば豊富な無料ライブラリーが存在し、プログラミングもますます易しくなる。


このあたりを体感していただくためにパーコレーションのシミュレーションセミナーを開講してます。詳細はセミナーのページをご覧ください。

カテゴリー : 一般

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2023.09/08 マテリアルズインフォマティクスの問題

かつて高分子のレオロジーについてダッシュポットとバネのモデルを用いて研究していた時代があった。しかし、クリープという現象についてこのモデルでは説明できないことが分かり、1980年代に頓挫している。


ゴム会社では、1970年代に数理モデルによる高分子研究は否定され、研究者はひどい目にあったらしい。当方のようなセラミックス事業を研究所で住友金属工業とのJVを起こしたケースでは会議前になるとFDを壊されたりという妨害を受けたので、当時のレオロジー研究者は大変だったのではないかと想像している。


さて、2010年代に第3次AIブームが始まって、日本でもマテリアルズインフォマティクスが流行したので、慌てて飛びついた企業が多いのではないか。


マテリアルズインフォマティクスという何か魔法のような名称だが、1980年前後に情報工学の講座設置ブームが起きた時の流れであるデータサイエンスの一分野である。


第三次AIブームでAIが導入されたデータサイエンスと書けばわかりやすいかもしれない。コンピューターという学習機械を用いてビッグデータで機械学習を行い、答えを見つけようという手法である。


これで新しい知を見つけられるとアカデミアが騒ぎ、マテリアルズインフォマティクスを推進する会社まで生まれている。弊社はこのブームが起きる前から問題解決法の一手法として多変量解析を指導してきたが、この多変量解析は、機械学習の一手法に組み入れられている。


これは少し問題である。確かに機械学習の側面もあるが、多変量解析には多変量解析の解析方法が存在し、その中には単純に回帰を求めるだけではない方法もある。


50年近く多変量解析を利用してきて、この手法を気軽に機械学習の一手法として説明しないでいただきたいと思っている。多変量解析の一部に機械学習もある、そして機械学習には多変量解析以外の方法もある、ぐらいのほうが誤解を生まない。

カテゴリー : 一般 高分子

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2023.09/06 Pythonで学ぶパーコレーション

絶縁体高分子に導電性微粒子を分散し抵抗測定を行うと、その添加率(体積分率)に従い、抵抗が減少する。そしてある添加率のところで急激に抵抗が減少する現象が観察される。


これがパーコレーション転移と呼ばれる現象で、電気抵抗だけでなく、弾性率や線膨張率でもその変化を確認することができる。ただし、電気抵抗のように桁数が大きく変動する変化ではないので、あまり注目されていない。


ただ、昔から混合則とか複合則というルールがあり、未だにいいかげんな教科書でこのルールを見かけることがある。1990年ごろ、当方が日本化学会で研究発表を行ったときに、パーコレーションという言葉を用いたが、会場がシーンとなってびっくりした。


他のセッションでは、複合則とか混合則という言葉が常識的に使われていたので、奇異に思われたのだろう。当方は1979年に指導社員からパーコレーションの説明を受けている。


当時はスタウファーの教科書が頼りであったが、化学系の人でこの教科書を読んでいる人は皆無だった。その教科書によれば、カリフォルニアの山火事について数学者たちがボンド問題とサイト問題として議論したのが最初だという。1950年代で当方が生まれた頃の話である。


それが高分子の世界で一般的になるのに40年以上かかっている。数理モデルを数式で理解することが難しかったからである。この数式はコロナの流行でよくテレビで見たようなクラスター理論と通じている。


無限クラスターが生成するところがパーコレーションの閾値である。微粒子が真球であれば、体積分率で30%前後のところである。長径と短径の比、アスペクト比が大きくなるにつれこの閾値は小さくなる。


数式で数理モデルを理解しようとすると大変であるが、コンピューターの中で実際に微粒子が分散する状態を再現して計算すると理解しやすい。


このシミュレーション法についてエンジン部分のPythonプログラムを配布してWEBセミナーを弊社で行っています。Pythonのプログラミングを学ぶには良い教材ですのでお問い合わせください。パーコレーションを理解できるとPythonが身についている、というセミナーです。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2023.09/05 Pythonのスキル

マイクロソフト社からエクセル365にPythonを搭載するニュースが発表されたが、どれだけの人がこのニュースの重みに気がつかれているだろうか。


2010年から第三次AIブームが始まり、過去二回のブーム同様に下火になるかと思っていたら、ChatGPTが飛び出した。そしてマイクロソフト社の発表である。


この第3次AIブームは明らかにPythonが牽引していると言っても過言ではないだろう。マテリアルズインフォマティクスも含めディープラーニングが注目されているが、昔からの多変量解析にも注目したい。


回帰や分類を行うには多変量解析が便利だ。そして重回帰分析では、Pythonを使えばたった2行で計算部分を書くことができる(import文は別である。)。


弊社ではマルチパラダイム言語である点に着目し、習得しやすいように解説しています。詳細は弊社セミナーサイトをご覧ください。

カテゴリー : 一般

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2023.09/04 人生はカオスである。

ゴム会社に入社したきっかけは、オイルショックの影響で就職氷河期だったこと、車に関心があったこと、たまたま合格通知が他の企業よりも早く来たことなどの要因が重なっている。


それでも入社前送られてきた創業者の伝記を読み、啓発されて高純度SiCの半導体治工具事業を起業しサラリーマンとしては12年間勤務したゴム会社に多大な貢献をしたと思っている。


しかも、この仕事を成功させるまでに十分な残業代が支払われていないばかりか、出張費など持ち出しも多かった。さらにこの仕事の前に担当していた高分子の難燃化技術では、天井材や寝具などの成果を出しているが、過重労働の毎日だった。


これらの技術企画は当方でなければ立案出来ないと言える個性豊かな企画と言われている。これらの企画の前に担当した業務が、研究所に配属された最初の仕事となる。


それは、ゴム会社に勤務した経歴として分かりやすい、樹脂補強ゴムの開発である。3か月という短期間であったが、バンバリーとロール混練の実技を身に着けるには十分な作業量と、スキルと高度な専門知識を学ぶこともできた。


レオロジーの専門家であり、実技のスキルも高かった指導社員のおかげで、1年間の予定のゴールを3か月で実現でき、混練のスキルを研究所で最も高いレベルと転職前に言われるほどの濃厚な毎日だった。


この時ご指導いただいた知識とスキルのおかげで、写真会社転職後様々な成果をあげることができた。ゴム会社では大学院で学んだ知識で成果を出したが、写真会社では、ゴム会社で3か月間学んだ知識で成果を出している。


面白いのは、この3か月間に指導社員から出された宿題を写真会社の最後の5年間で実現できたことである。指導社員からはカオス混合技術について研究するように言われていたが、この指導社員から別れた後、ゴム会社で研究する機会は無かった。


それが、写真会社で偶然生まれたのだ。企業の統合により、カメラ会社で6年ほど研究開発されていたテーマを担当することになったためである。そのテーマは、国内で高分子技術ではトップクラスの企業からコンパウンドが提供されて進められていた。


そして、コンパウンドの改良をしなければ問題点を解決できないテーマだったので、その企業にお願いした。ところが、断られた上に勝手に自分でやれ、と言われたので、カオス混合プラント建設のチャンスが生まれた。

そして大成功だった。その後、このメーカーからもカオス混合に関する特許出願が10件ほど出ているのを知り、何となく嬉しかった。

カテゴリー : 一般 高分子

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