平昌オリンピックでは、4年に一回というオリンピックゆえの様々なドラマが生まれている。その中で、当方が印象に残ったのは、フィギュアスケートである。
高得点をとれるようにジャンプをすべて後半に集中してきた最年少金メダリストザギトワには驚いた。後半のジャンプは、疲労により難易度が高くなるという理由で、評価点が1.1倍になる。
全体の印象で明らかに優れていたメドベージェワが金メダルを取れず、また長洲未来が果敢に挑戦していたトリプルアクセルのような他を圧倒する技も示さず、金メダリストに輝いているのを見て、例えかわいくても許せない気持ちになったのは当方だけか。
ルールを最大限に活用しているのだから、頭が良い、と評価する考え方もある。また白鳳のように勝つことが大切という価値観もスポーツでは許されるかもしれない。
しかし、スポーツ観戦の面白さあるいは感動は、得点稼ぎの工夫よりも競技に求められる肉体能力のベストを尽くそうとする挑戦の姿勢から生まれる。
だから、オリンピックというプレッシャーで実力を発揮できず、しかし勝敗ではなく実力者の意地を見せて6位となったネーサンチェンが、浅田真央選手同様に記憶に残ったりする。
彼は、SPで全てのジャンプを失敗し、17位発進とメダルは絶望的となった。しかし、FSで4回転ジャンプ6回に挑戦し、うち5本を成功させ、フリーで自己ベストを更新、優勝した羽生のフリーの得点を8.91点上回る215.08点をマークした。
さらに、このFSで叩き出した技術点127.64点は、技術点としては歴代1位である。これを、勝たなければ意味が無い、の一言で片づけてよいものか。現時点で人間が氷上でできる最高の演技を示したのである。
羽生選手が勝利者インタビューで4回転アクセルを目指す、と回答したのは、このネイサンチェンの演技を見て4回転の次の段階を感じた発言かもしれない。
羽生選手はケガをする前のインタビューで、すべての4回転を目指しオリンピック後引退するような発言をしていた。もし、彼がネイサンチェンの演技を見て次の段階を切り開く意欲から4回転アクセルへの挑戦を意識したならば、これこそオリンピックが「闘争」の昇華した姿であることを示した。
ちなみに、2014年ソチオリンピックにおいて、浅田真央は、トリプルアクセルを組み込んだ女子シングルのSPの演技で転倒が相次ぎ16位と大きく崩れ、演技後のインタビューでは「何もわからない」と放心状態となっている。
しかし、翌日のFSでは冒頭のトリプルアクセルをクリーンに着氷し、また、女子史上初となる全6種類、計8度の3回転ジャンプを着氷し142.71点と自己ベストを更新してFSでは3位、技術点ではキムヨナを抜いていた。
ネイサンチェンは金メダルの可能性が限りなく高かった。しかし大舞台でプーさんの嵐に見舞われ、その実力を十分に発揮できずに終わった。人生には運も影響し、不運に対峙する姿勢でその後の人生は大きく影響をうける。決してプーさんを恨んではいけない。
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C#の型には、値型と参照型がある、と前回説明した。ところで、そもそもC#における型とは何か。BASIC言語における型は、整数型とか小数型などの数値関するビット列の長さと簡単に考えるだけで深くそれ以上の概念を考える必要がなかった。
ところがコンピュータ言語における型とはそのようなものではなく、型とはメモリー上に並べられた一塊のデータ、ビット列、これをインスタンスとよぶが、その説明書に相当する。
すなわち、クラスをデータとして扱うように、構造体も、その他さまざまなプログラム要素で意味を持った一塊をC#はデータとして扱うので、それぞれの塊の意味が型である、ということもできる。
さらにこの解説の初期に、オブジェクト指向におけるプログラミングは、あたかも問題解決に用いる道具の様なものをオブジェクトとして用意してゆく手順だ、と説明しているが、そのオブジェクトすべてが型である。
例えば、C言語では、関数と呼ばれていたものがC#ではメソッドと呼ばれるが、これも型にもなる。すなわちプログラミング言語に最初から定義されていた型以外に、プログラマーが新たに型を定義できるところがC#の特徴である。
ちなみにC#にあらかじめ定義されているビルトイン値型には、真偽の2値をとるブール型(System.Boolean)、文字型(System.Char)、整数型(System.Byte, System.SByte, System.Int16, System.Uint16, System.Int32, System.Uint32, SystemInt64, System.Uint64)10進数型(System.Decimal)、浮動小数点型(System.Single)、倍精度(System.Double), 可変サイズの整数型(System.IntPtr, System.UIntPtr)がある。またビルトイン参照型には、オブジェクト型、文字列型、配列型、デリゲート型などがある。
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型には、値型(Value Type)と参照型(Reference Type)がある。値型とは、値が直接管理されているデータ型であり、値型を宣言、すなわちプログラム中で定義するとその型のデータ領域がメモリー上に確保され、この確保された領域を直接プログラマーが操作することができる。
参照型とは、値への参照、すなわちデータ領域を示したある媒介変数を介して間接的にデータを管理する型である。C言語ではポインターがこの役割をしていたが、C#ではポインターを意識せずデータ型で参照型が決められている。
値型では直接データをアクセスできるが、参照型ではデータ領域を示したメモリー上のアドレスを介してデータにアクセスするので、それらの振る舞いは異なる。
すなわち値型では、直接データの変更が可能で変更されたデータは変更されたときの値になるが、参照型ではそのようにならないことがあるので、コーディングで注意しなければいけない。
例えば、 int x=1; int y=x; y=501; とコーディングした時に、xは1のままであるし、yは501と変化する。これは変数が整数を表すように型づけする int という宣言が値型であるからだ。
一方、class Ref_rei { interanal int value;} Ref_rei X=new Ref_rei(); X.value=1; Ref_rei Y=X ; Y.value=501; では、X.valueも501になる。これは、Y=Xで、メモリー上のアドレスをYにセットしており、X.value もY.value も同じメモリ上に存在するからだ。
この値型と参照型について慣れないうちは頭が混乱するが、値型がメモリー上の値と変数の値が直接結びついており、参照型の変数では単に実体が存在するメモリー上の位置を示すアドレスがセットされている、という感覚を身に着けると普通にプログラムコードを読み解くことが可能となる。
以前書いたように、プログラム言語の文法はコンピューターという機械を相手にした文法である。文法の仕様には機械に配慮した手続きが組み込まれてくる。この値型と参照型はメモリーの使い方に関する工夫であり、その仕組みからプログラムの実行スピードに影響を与える。
MS-DOSの時代には、このプログラムの実行スピードがプログラマーの腕にかかっていた。パーコレーション転移シミュレーションプログラムでは、アルゴリズムの少しの違いとポインターの使用でプログラムの実行スピードが二倍ほど変化した。しかし、いまやメモリーもG単位であり、CPUの演算速度は当時と比較すれば亀とウサギよりも蝸牛とウサギほどの違いがあり、多少ずぼらなコーディングでも許され、むしろプログラムの分かりやすさ、可読性が重視されている。
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平昌オリンピックはメダルラッシュで毎日感動の連続、心臓が心配になってきた。これだけ感動が多いと毎日オリンピックの話題ばかりになってしまう、と思いオリンピックについて書くのを意識的に控えてきた。しかし、スピードスケートのパシュート女子金メダルについて企業の組織について参考になると思い本日取り上げた。
この金メダルの価値は、個人の能力ではすべての選手をメダリストで揃えたオランダチームと比較すると日本チームが劣っていたところにある。多くのマスコミも競技終了直後から300日以上日本チームは全員一緒に練習していたことを勝因として取り上げていた。そこで醸成された日本独特の交代方法はじめスポーツ科学の成果については、ニュース報道を見ていただきたい。
この欄では、高木美帆選手をリーダーにしてまとまり、メンバー4人それぞれの能力を引き出した組織力について取り上げてみたい。ドラッカーは著書「企業とは何か」の中で、組織が繁栄を続けるには、組織内の人間が、自らの能力を超えて成長できなければならない、と述べている。
パシュート女子の日本人選手は、まさにこれを実践したわけで、自らの能力を超えることにより、自分たちよりも優れた能力を持つ選手を揃えていたオランダチームに勝ったのである。「つまるところ組織にとっては、リーダーを育てることの方が、製品を効率よく低コストで生産することよりも重要である」とも同著に書かれているが、高木美帆選手はチームにより優れたリーダーに育成された。
「待って、待って」と姉に言われスピードを落としたシーンは、同競技で報じられた韓国チームの醜聞と比較すると、とっさにできる行動ではないことに気がつく。パシュートという組織の側面を持った競技の特徴をそしてそのリーダーの自覚を持っていたからとれた行動だろう。
パシュートという競技は、全員が最低一周先頭を走らなければいけない、というルールがある。このルールゆえに、組織で例えると分権制のような問題をチーム内に抱えることになる。しかしこのルールで考えなければいけないのは、最も優れた選手が最も長い時間先頭を務める自覚を求められる点である。さらに先頭には後尾を務める選手への配慮が必要なルールもある。
まさにパシュートは組織を具現化したような競技で、日本女子チームの金メダルは、リーダーがとるべき行動と、組織がうまく機能すると個人の能力を最大限引き出し成果に結び付けられることを見せてくれた。これは、マネジメントの使命である。
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カオス混合とは、パイ生地や餅つきで発生している機能との説明を受けた。すなわち急速に引っ張った(伸長流動)後折り曲げる(剪断流動)ような混練方法だ、と指導社員から教えられた。さらにロール混練ではそれに近い現象が起きているのではないか、とご自身の想像をまじえ混練技術に関する経験知と暗黙知を伝承してくださった。この指導には大いに感謝している。
当時すでに高性能な二軸混練機が世の中で普及していたのに、加硫ゴムでは、バンバリーとロール混練を用いるバッチ方式が使用されていた。指導社員は、高性能な加硫ゴムを絶対に二軸混練機では製造できない、と明確にその理由を経験知と暗黙知で説明された。
2005年末に二軸混練機に取り付けるカオス混合機のアイデアに成功したのは、この時の暗黙知がうまく伝承されていたからである。
技術の現場において暗黙知を伝承する方法は、経営の使命が企業の持続的成長、すなわち今の世代を次の世代に受け継ぎ発展させる行為にあるとすると、大切な問題である。しかしながらその実現は容易ではない。ノウハウが要求されるが、ゴム会社には伝統的にその風土が存在した。
設備の進歩以外に、ポリウレタンRIMの普及が始まり、高性能なTPE開発が活発になってきた時代でもある。当時の愛車セリカのバンパーにはPPではなく高価なポリウレタンRIMが使用されていた。加硫ゴムの技術が将来も残っていくのか、という議論が活発に行われ、樹脂とゴムのハイブリッドであるTPEが新素材としてもてはやされていた。
たとえ射出成型で作られるゴムが普及し始めたとしても、バッチ方式で混錬され、成形もたい焼き機のようなバッチ装置を用いた方式がゴムの高性能化には必要なプロセスだ、と指導社員はいわれた。しかし、高性能なカオス混合装置が発明されたなら、それで加硫ゴムの混練ができるかもしれない、と付け加えられた。
ゴムの混練プロセスというものが十分に解明されていなかったので、それをカオスと例えた人も研究所にいたが、カオス混合というのは、そのカオスとは異なり特殊な混練方式、というのが指導社員の説明だった。それを連続プロセスで実現できるのは君しかいない、などと時々からかわれたりした。これはカオス混合に興味を持ち考え続けるには十分な動機付けだった。
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プログラミング言語の解説において、最初に出てくるのはデータ型の説明だ。コンピュータはデータを電気信号のON,OFFの2値の塊で表す。すなわち、1,0のビット列でデータを表現し、それはコンピューターのメモリーを占有する。
ところでFORTRANやBASIC,Cなどのプログラミング言語ごとに、このデータ型の説明が異なっていた。プログラミング言語ごとにこのデータ型が異なるというのは、仕方がないことで、各言語の使用目的を考慮して、極力メモリーの使用効率を高くしようとしたからだろう。
ただ、過去のプログラミング言語のデータ型は生活習慣と合っており理解しやすかったが、C#では、コマンドのたぐいも含めすべてデータとして扱うという仕様だ。
すなわち、データ型とは、その型の実体(インスタンス)となるメモリー上のビット列のことを意味しており、数字以外のデータもすべてこの型の概念でC#は扱っている。さらに、型とは、メモリー上のビット列のどこからどこまでに、どんな意味が潜んでいるのかを説明しているという。
ものすごい概念の拡張だ。最初文法書を読んでいた時にこのあたりの感覚がよくわからなかったが、クラスの使用方法などを理解したところで、型が単に数値だけでなく、クラスやメソッドの一部にも用いられていることに気がついた。
すなわち、C#は、型に始まり型でおわる、と言っても言い過ぎでないぐらいに、型の理解が重要である。そして型の内部にフィールドとメソッドが定義されてプログラミングが進められる、というコーディングの雰囲気だ。
Cが登場したときに習得が難しい言語と言われたが、言語の予約語等文法の決めごとが少ないのでプログラマーの自由度が高く、関数を定義しながらプログラミングを進めるという仕様は、BASICよりも技術習得に容易だった。
しかし、C#はオブジェクト指向という難解さと言語仕様の奇抜さ複雑さで、その特徴を生かして使うには、敷居が高い言語である。敷居は高いが、一度その敷居を超えるとこれまでの言語よりもプログラミング言語として使いやすい。本欄でその敷居を少しでも下げられたらという思いで書いている。
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昨日元ソニー現桜美林大学原田節雄氏の講演を高分子同友会例会で拝聴した。高分子同友会は高分子関係の企業幹部経営者の集まりである。高分子学会の関連団体のため材料メーカーばかりだが、高分子材料ユーザー企業の幹部社員や経営者にも魅力的団体であるはずだ。
こうした団体に所属すれば、怪しげなコーディネーターなど頼らなくても事業パートナーを探すことが可能である。コーディネーターというコンサルティング業務は便利なように見えるが、本来は、企業が自らそのスキルを身に着け事業を推進すべきで、重要なのはそのスキルの指導なり伝承で、弊社はそのメニューも用意していますのでご相談ください。高分子同友会については無料で事務局等をご紹介いたします。
ところで昨晩の講演は、「経営の本質とルールメーキングビジネス」というタイトルで、他の講師による類似タイトルの講演を写真会社在職中に聞いている。しかし、昨晩の内容は、それとは異なり、むしろビジネス交渉術や会議術、闘争術の要素に関するもので、新事業を推進するためにも参考となる経営スキル指南だった。
そもそも企業にとって新事業ではスキル不足に陥りやすい。当方も高純度SiCの事業を推進していた時にこれを痛感したが、それよりも面食らったのは、マネジメントとして怪しげなコンサルタントを何人も紹介されたことである。
ほとんどがコーディネーターであり、技術の本質を理解せず、表層の内容で不要なユーザー企業を紹介してくれる。そのたびにやらなくても良い業務が生まれ、本来の事業推進には役立たない無駄な業務をたくさんやらされた、という印象である。
さらにそのコンサルタントを雇うのに支払われた金額を聞いて呆れたのである。およそ無駄な仕事を増やしているにもかかわらず、当方の年収よりも高い金額が支払われていたのだ。当方はこの時の経験を反面教師として、担当者に無駄な業務発生が無いようなコンサルティングを心掛けている。
そのためには十分な言葉が必要になるとは昨晩の講演の内容であるが、弊社のコンサルティングを理解していただくために十分な言葉をこの活動報告で発信している。すなわち、弊社は技術の問題を表層でしかとらえられない巷のコンサルタントと異なり、技術の本質から事業というものに迫るコンサルティングを心掛けている。昨今モノづくりに不安を与える不祥事が続き不安を抱えている方もご相談ください。5月には材料の信頼性に関する講演会を予定しています。
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カオス混合という混練技術について知ったのは、新入社員の時である。防振ゴムを樹脂補強ゴム(TPEと呼ばれている樹脂と同一構造だが、射出成型できず通常の加硫ゴムのプロセスで成形体が作られる)で設計するテーマを担当したときである。
一年の予定が、たった3ケ月のテーマとなったが、開発処方は特許出願されて製品化に成功している。このテーマを担当していた時に、指導社員から混練技術の実務について濃厚な指導を受けた。
特に、パイロットプラントのバンバリーを操作し、20kgノンプロ練したゴムから100gほど使い、ロール混練(プロ練)して評価サンプルを製造した手順には驚いた。使用しなかったゴムは廃棄するのである。
大抵はバンバリー1バッチのゴムで加硫剤などを追加して10水準ほどのゴムをプロ練するので1kgほど使用するが、残りはボイラーの燃料となる。
もったいないと思ったが、指導社員は、ニーダーを使えば小スケールで練り上げることができるが、そのプロセスで最適化されても実用化の時には、今以上の廃棄サンプルが出ることになる、それが加硫ゴムの混練だ、と説明された。
すなわちバンバリーを用いたときと小スケールニーダーを用いたときでは、同一配合でも出来上がる加硫ゴムの物性が異なる、というのだ。その結果、小スケールニーダーで素晴らしい物性のゴムができたとしても、実用化できない場合も出てくるとのこと。
小スケールニーダーで製造したゴム物性が、大スケールのバンバリーを用いて製造したゴムのそれよりも悪いならば良いが、そのような結果になることは稀で、たいていは量産化で物性が悪くなり、ひどいときには実用化できない場合もある、と実験をやっているときによく言われた。
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科学の研究で行われる実験には、仮説が必ず設定されている。すなわち、実験とは仮説を検証するために行うものだ、と学校で指導される。企業でもそのような指導をする管理職がいる。研究開発の職場ではそのような人が多い。
特に、昨今の働き方改革で、仕事を効率よく行うためには実験量を減らすことができるこの仮説設定後の実験という方法は歓迎されているようだ。
これに対して、技術では基本機能を中心に実験が行われる。これを効率的に行う方法として、昔は実験計画法が採用されたが、今はタグチメソッド(必ずカタカナで書かなければいけない)が推奨されている。
ただし、基本機能の選択は技術者の責任であり、どのような基本機能を選ぶのかが重要で、そのための実験なり思考が必要になる。ところがこの部分を合理的にあるいは簡単に行う方法が公開されていない。
先日のNHKの特番は、ボーっとしていることがアイデアのひらめきに重要と報じていたので、基本機能を考えるのにもボーっとしていることが重要だ。上司はボーっとしている部下を見て注意してはいけない。ものすごいひらめきを生み出す瞬間を奪うかもしれないからだ。
ボーっとしている以外に基本機能を考え出す、あるいは決めるために科学と同様に仮説を設定して実験を行うことも悪くはないが、その実験に失敗したらどうするか。これについては昨日書いた。技術者ならばそれを否定証明に使ってはいけないのだ。
それでは、仮説設定による実験の代わりに技術者はどのように実験を行えばよいのか。それにはコンセプトを設定した実験が有効である。これが具体的にどのようなものかは問い合わせていただきたい。技術者が最初に行う実験では、仮説設定よりもこのコンセプトに基づく実験が重要である。
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ボーっとしているときにアイデアがひらめく、とはNHK特番から学んだ役に立つ情報の一つだ。最近は、電車に乗るときに本を読むのをやめて、ボーっとしている。ところが座ってボーっとしていて眠ってしまい乗り過ごすミスをした。
こうなると、アイデアのひらめきどころではない。役に立つ情報のはずが、ミスを誘発するとんでもない教え、と評価が変貌する。人間とは勝手な動物である。ボーっとする行動は、「ながら」でしない方がよい。特に自動車の運転では要注意。老人の事故や違反は厳しく批判される。
実は、ひらめき以外にアイデアをひねり出す良い方法がある。昔ベストセラーになったカッパブックスの「頭の体操」という本にもいくつか書いてあった。それらを実践してみて、良い方法と納得していた。これらは現代の脳科学でどのように説明されるのか知りたい。
さて、写真学会から賞を頂いたゾルをミセルに用いたラテックス重合法は、当方のアイデアを引き出すコーチングにより当時の部下が発明した技術である。面白いのは、その部下以外は皆コーチングの過程で否定証明を展開していたことだ。
積み重ねられた否定証明の山に当方もうんざりしかけたが、その部下は突然、あっと叫び実験室から当方の提案していた「あるべき姿」のラテックスを持ってきてくれた。それは、コアシェルラテックスの検討過程で実験に失敗したサンプルだった。
ある目的でゴールを目指して実験を行い失敗をする。しかし、その失敗で気にかかる現象があれば、コンセプトを現象に合わせて見直し再評価する作業は、技術開発で現象から機能を取り出したいときに、アイデア創出法として有用である。
これは、科学でいうところの仮説の見直しとは少し異なる。何故なら、実験の失敗が否定証明として使われることからご理解いただけると思う。
技術では、目の前に起きた現象を失敗ではなく、新たな現象として捉え、そこから機能を取り出す行為を実行する。すなわち、実験に失敗してもそこに新たな機能が生まれていないのか、現象そのもを見直す。科学のように失敗を前にしてロジックを見直すのではない。
コアシェルラテックスの開発では、コアとして用いたシリカにラテックス成分がシェルを形成するようにうまく巻き付かず、単なるラテックスとして合成される現象が、たびたび起きていた。科学者はこれを実験の失敗としてとらえるが、技術者は、シリカの新たな機能としてとらえるのである。
製品化が迫っていたので、ゾルをミセルに用いたラテックス重合法として特許出願、量産立ち上げを急いだ。某学会賞を受賞していたコアシェルラテックス技術を用いた製品よりも品質の高い新商品を開発できた。
これは、コアシェルラテックスよりもゼラチンを変性する機能が優れていたからである。その後、ゼータ電位の測定はじめ、ミセルとして機能しているのか科学的な分析を三重大学川口先生のご指導を頂き実施し、その発現を確認できた。この成果は学会等で発表している。
このようなことは書くべきではないかもしれない。写真学会では、高靭性高弾性ゼラチンの開発成果として賞を頂けたが、新しいラテックス重合法として臨んだ高分子学会技術賞の審査会では某先生から当たり前と批判され受賞を逃がした。
ところがその二年後、界面科学に関する科学雑誌で他の研究者からも、世界で初めてゾルをミセルとして用いた現象の紹介がなされた。それで、高分子学会の審査員の某先生は不勉強だった、と理解した。
アカデミアには、企業の失敗で得られた技術に対し新しい現象と捉え真摯に対応される先生がおられる。技術者はこのような先生を尊敬するが、自己の権威から新しい現象を前に笑い飛ばすような先生を愚かと思う。科学の手法が見直されるべき時代と感じているので、厳しい書き方をしている。
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