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2014.10/04 ROTELのアンプ(3)

翌日丸山無線に足を運び、RA-1070とRA-1062についてCDプレイヤーで比較試聴してみた。丸山無線で聞いた限り、大差は無かった。しかし、持参したレコードを聞いたところ、大きな差が出た。RA-1070の音が抜群に良いのである。

 

グローバー・ワシントン、Jrのワインライトを持参したCDとレコードで比較試聴したところ、レコードの音がものすごく気持ちよく聞こえた。特に出だしの音などは、豊潤なワインの香りがしてきそうな音であった。

 

単身赴任先でも音楽を聴きたかったので、RA-1070を購入した。10万円のアンプを購入するつもりであったが、とんだ散財になった。自宅に帰り、RA-1062を自宅のシステムから外し、RA-1070を据え付けた。

 

夕方、RA-1062を豊橋まで持ち帰ったが、重かった。こうして同じ時期にRA-1062とRA-1070を購入して使用してきたが、RA-1062が先日壊れたのだ。スイッチを入れると、カチャカチャとスイッチング素子の音がしていたのが、カチャと一回だけになり、電源が入らない。

 

単身赴任を終え、2010年からは自宅の書斎にRA-1062が、居間にRA-1070が設置され使ってきたのだが、RA-1062がたった8年弱で壊れたことになる。アンプの寿命としては、過去に使用してきたアンプと比較すると極端に短い。寿命が短すぎる。せめて10年は使いたかった。

 

学生時代にオンキョーインテグラを購入し、就職して東京に出てきたときも同じシリーズの製品を購入した。これが壊れてケンウッドのアンプを購入し、そしてROTELのアンプである。世の中のオーディオシーンは大きく変わり、パイオニアまでオーディオ事業を店じまいする時代になった。

 

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2014.10/03 ROTELのアンプ(2)

10数年使用してきて壊れたのはケンウッドのアンプで、購入当時大ヒットした製品である。その前はオンキョーのインテグラという、やはり学生時代に有名なアンプであった。いずれも7万円前後の製品だったが、平成20年当時、7万円前後では過去使用してきた製品と同等のアンプが無かった。物価上昇を考えると当然かもしれない。

 

そこで10万円前後のアンプを探していたのだが、10万円前後のアンプでも満足できたのは、無名のROTELのアンプだけだった。ややメーカー名とデザインに不安が残ったが、視聴してこれまで使用してきたアンプに近い音がしたので購入した。

 

午前中から秋葉原でアンプ探しのため時間を費やし、家に着いたのは夕方5時であった。昼飯は食べる時間が無かったが、その日レコードを聞くまでは満足な一日だった。ROTELのアンプを自宅のシステムに取り付け、まずお気に入りのレコードをかけてみた。

 

音が悪い!高域が詰まったような音だ。まさかと思い、配線を調べたが、間違いは無かった。カートリッジはデノンのMC型で出力が低く、この影響かと疑い、オーディオテクニカのVM型にカートリッジを交換したが少し良くなるだけであった。

 

ところがCDを聞いたところ秋葉原で聞いた、心地良い音が流れてきた。店で頂いたカタログを見たところ、6万円高いRA-1070という機種があり、それはROTELのプリメインアンプの最上級の機種で、フォノ入力の優れたスペックが書かれていた。

 

RA-1062の場合には、RIAAの規格通り高域は15kHzでカットされており、上位機種のRA-1070では20kHzまで高域が伸ばされているのだ。そしてこのスペックは、今まで使用してきたどのアンプとも同じだった。

 

すなわちRIAAの規格通り作られたRA-1062では、レコードを聴くと、之までのアンプよりも音が悪く聞こえるのだ。すなわち価格の安いRA-1062では、アンプの品質を落とさないで、レコードのプリアンプの性能だけ削っていたのである。中身を見ても高級アンプに使用されている丸いトランスと、銅のバスバー、大きなコンデンサーなど価格を超えた品質の部品が使用されていた。

 

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2014.10/02 ROTELのアンプ(1)

特にオーディオマニアというわけではなく、ただ、気持ちの良い音楽を聞きたいと言う理由で、オーディオ製品には少し気を配ってきた。単身赴任した直後、10数年使用してきた自宅のアンプが壊れたので買い換えようと思い、同僚のマニアらしき人物に尋ねたら、ROTELのアンプを紹介された。

 

聞いたことが無いメーカーであったが、音が良いという。秋葉原で探したら、丸山無線で扱っていた。10万円前後のアンプということで、RA-1062を紹介された。視聴したところ、音の立ち上がりが良く、高域の歪みが無く柔らかな音で、確かに良いアンプである、ということを理解できた。

 

ただ、日本ではあまり聞かないメーカーなので、同僚の紹介でも少し躊躇した。オンキョーや、ヤマハ、デノンのアンプも同一環境で視聴させてもらった。世の中デジタルアンプが出始めていて、オンキョー製品はデジタルアンプが主流になっていた。ヤマハとデノンのこの価格帯の製品はアナログアンプである。

 

オンキョーは昔と音のイメージが少し変わり、クリアーになっていた。ヤマハは昔ながらのすっきり、あっさりの音である。デノンはややもりあがった柔らかいイメージの音で、ROTELのアンプが自然の音に近いと感じられた。

 

フィービースノーというなつかしい人のCDも聞かせて頂いたが、ボーカルを聞くと、アンプの個性が明確になった。ROTELのアンプがやはり自然に聞こえた。オーディオ機器の中でアンプはあまり差がわからない、と言われるが、比較試聴するとROTEL以外はどこか不自然な気がした。

 

 

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2014.10/01 高分子の難燃化技術(15)

フェノール樹脂天井材は実用化されたが、その検討過程でエチルシリケートとフェノール樹脂をうまく混合できなかったことが気がかりだった。周囲の有識者は、フローリーハギンズ理論から当たり前だという。

 

確かにエチルシリケートとフェノール樹脂とではSP値が大きく異なり、χは極めて大きくなる。ただ、軟質ポリウレタンフォームや、硬質ポリウレタンフォームのようなリアクティブブレンドを経験した感覚から、リアクティブブレンドならばフローリーハギンズ理論に無関係で高分子を均一分散できる、と思っていた。

 

教科書どおりにχを信じる限りにおいては、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂との混合は、検討してもムダである。しかし、リアクティブブレンドであればχとは無関係に二種の高分子を均一混合できるはずである。

 

すでに活動報告でこの後の行動を書いたが、プロジェクトが解散した後のフェノール樹脂の処分を一人で担当して、この問題を考えた。高分子の難燃化技術から高純度SiCの技術シーズがその後誕生している。

 

フェノール樹脂天井材の開発を終えて無機材質研究所へ留学することになるのだが、高分子の研究から全く畑違いのセラミックスの研究にもかかわらず、技術の視点で材料を開発してきた影響で違和感は無かった。

 

科学分野で専門的に研究されている方の多くは、専門分野が変わることに躊躇される方が多い。例えば有機化学からセラミックス分野への専門の変更は、ほとんど受け入れられないだろう。

 

しかし、技術者は材料技術や電気電子技術といった専門分けはあるけれど、どのような技術でも担当できるケースが多い。また、材料技術者が電気電子部品の会社に勤めたならば、昨今の御時世では、それができなければリストラの対象となるだろう。

 

科学分野は真理を追究するためにロジックが中心となり、厳密なロジックを構築するには専門性に秀でた人が有利である。対して技術開発は、ヒューマンプロセスの占める領域が多く、専門性よりも幅広い問題解決力の秀でていることが求められる。このあたりについては、www.miragiken.com   の最初の部分で少し議論しています。

 

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2014.09/30 高分子の難燃化技術(14)

ポリエチルシリケートとフェノール樹脂の混合は難しかった。見かけ上うまくいったように見えても、析出したシリカ微粒子が大きくなり、シリカゾルを分散した方が良い結果となった。

 

この原因は、当時公開されたデータからポリエチルシリケートの加水分解速度が酸触媒で加速されるためとわかっていた。水ガラスから抽出されたケイ酸を混合する条件との違いは、エチルシリケートが加水分解したときにエタノールを生成する点である。

 

水ガラス抽出物はジオキサン-THF混合溶媒に分散して用いているが、両者はフェノール樹脂にとっても良溶媒だった。ケイ酸の抽出は大変だったが、目標仮説を証明するための実験としては大した検討も不要で便利だった。

 

水ガラス抽出物とフェノール樹脂の混合物でも高純度SiCの前駆体になるが、ポリエチルシリケートを用いたときよりもコストが不利になる。さらにすでに水ガラスとフェノール樹脂の組み合わせ特許が出願されていた。

 

種々の条件を検討した結果、シリカゾルの分散を検討することになったが、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂の混合がうまくゆかないことが気がかりだった。

 

さらに特許を調べてみても、カーボンブラックとエチルシリケートとの組み合わせ、あるいはフェノール樹脂とエチルシリケートとの組み合わせ特許が存在したが、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂の組み合わせ特許は存在しなかったので、成功すれば世界初の事例として特許出願できる可能性があった。

 

たかが二種類の物質を混合するだけの技術であったが、そこには科学的な制約が存在した。フローリー・ハギンズ理論である。

 

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2014.09/29 高分子の難燃化技術(13)

フェノール樹脂にシリカゾルとリン酸エステルとを組み合わせて高防火性フェノール樹脂を実用化したのだが、シリカゾルをフェノール樹脂に分散する技術は、意外と簡単であった。

 

一般に高分子へナノオーダーの超微粒子を分散しようとすると、分散前に凝集している超微粒子をばらばらにするために剪断力をかけねばならない。当時高速回転を発生できる混合器が開発されており、シリカゾルを分散可能な剪断流動を容易に発生できた。

 

レゾール型フェノール樹脂の粘度は、硬化前の分子量に依存し、低分子量タイプから高分子量タイプまで様々な樹脂が販売されていた。但し酸で硬化後のフェノール樹脂の防火性能は、分子量や触媒の酸の種類に影響を受ける。ゆえに高速でモーターに負荷をかけないために単純に低分子量タイプを選べば良いというわけではない。

 

また硬化速度の調整も重要で、フェノール樹脂が硬化するまで流動性が残っているのでシリカゾルの再凝集が生じる。この問題はパーコレーションを考えると解決でき、添加量を調整すれば解決できる。

 

たかがシリカゾルをフェノール樹脂へ分散するだけでも様々なノウハウが存在したが、ポリエチルシリケートをフェノール樹脂へ分散するよりは簡単であった。複雑な反応条件の問題を含んでいなかったからだ。

 

高分子の高速撹拌は、強力な剪断流動を発生し、ナノオーダーの分散を実現する。一般の二軸混練機の構造ではせいぜい800回転/分が限界だが、当時トルクは低いが約2000回転/分可能な攪拌機が存在した。単純なプロセシングだけで解決できる技術は易しい。

 

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2014.09/28 高分子の難燃化技術(12)

硼酸エステルとリン酸エステルとを組み合わせることで、オルソリン酸のユニットをホウ素で固定化できた。この考え方を発展させると、ホウ素でなくてもAlでもSiでも良い、というアイデアが浮かんでくる。

 

軟質ポリウレタンフォームの次に高防火性フェノール樹脂天井材のテーマを担当した。この天井材の開発でさっそく試してみたら、目標仮説をすべて実現できた。さらにケイ酸エステルであるエチルシリケートとフェノール樹脂の組み合わせは、高純度SiCの前駆体である。

 

すなわち高純度SiCの前駆体のアイデアはこの時生まれているが、一度諦めたアイデアなのである。高防火性フェノール樹脂の天井材開発で、エチルシリケートとリン酸エステルの組み合わせを検討した時に、エチルシリケートがうまくフェノール樹脂に分散しなかったのである。

 

それだけでなくレゾール型フェノール樹脂を用いたときには酸触媒を使用するのでエチルシリケートが加水分解してうまくゆかない。プロジェクトメンバーから諦めるように言われた。しかし、シリカを分子状態でフェノール樹脂に分散したかったので、水ガラスからケイ酸を抽出してそれを分散することにした。

 

これはうまくいったが、始末書が頭に浮かんだ。水ガラスからケイ酸を抽出するときに、THFやジオキサンを使用し、コストが高くなるからである。とりあえずモデル実験と称して実験を進めていたら、シリカゾル粒子程度の大きさでもうまくリン酸ユニットを補足できることがわかった。

 

すなわちシリカゾル粒子でも凝集しないようにフェノール樹脂に分散すれば、ナノオーダーなので燃焼時にはリン酸ユニットをうまく補足してくれる。さらに都合の良いことに線形破壊力学の教えるところであるが、ナノオーダーの超微粒子がマトリックスに分散するとそのマトリックスの靱性を大きく改善できる。

 

シリカゾルを凝集すること無くフェノール樹脂に分散する技術は、燃焼前のマトリックスの靱性を上げただけで無く、形成されたチャーの靱性も向上し、さらに簡易耐火試験においてひび割れも起こさないという効果も示した。こうしてシリカゾルとリン酸エステルを分散したフェノール樹脂天井材は実用化された。

 

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2014.09/27 高分子の難燃化技術(11)

ホウ酸エステルを用いたリン酸ユニットの固定化というアイデアは大成功であった。当時手元にあった各種リン酸エステル系難燃剤と組み合わせ、50種類ほどの処方を組んで実験を行い、多変量解析を行ったところ、ホウ素原子の効果が著しく高いという結果が出た。

 

ホウ酸エステルだけをウレタンフォームに添加して実験してもLOIを高められる上限は19で、無添加の場合の18.5に対して0.5ポイント程度しか高めることができない。しかし、リン酸エステルと組み合わせた時には、25程度まで高められる効果がでた。

 

実験計画法で確認したところ、ホウ酸エステルとリン酸エステルには交互効果が存在した。すなわち燃焼時にホウ酸エステルとリン酸エステルの間に何らかの相互作用が存在してホウ素原子の難燃効果を高めているという結果が統計的に得られた。

 

燃焼後の残渣の化学分析からボロンフォスフェートが生成していることが分かった。どの程度の温度でこの化合物が生成しているのか確認するためにTGAで調べたところ、300℃前後には、ボロンフォスフェートが生成している。

 

TGAの微分曲線からこの生成したボロンフォスフェートの酸素遮断効果と炭化促進効果で、ポリウレタンの熱分解速度のピークが100℃もずれることまでデータで得られている。すなわち燃焼時の熱でオルソリン酸が揮発するのをとめてやるだけで、ホスファゼン並みの難燃効果が得られたのである。

 

始末書を書いたことで生まれたこの技術は、高分子の難燃化をリン系の化合物で行う時の重要なヒントを示しており、今このヒントのおかげで新たな難燃化技術が生まれようとしている。人生は本当に長い。不幸な出来事のその時は、目の前が一瞬真っ暗になるが、誠実に真摯に努力を続ければ不幸な出来事も幸運な思い出に変わる。すべてがそうであるとも思わないが、万事塞翁が馬という名言は本当だ。

 

昨今利益が上がっている時のリストラが盛んだが、リストラされる方はそれをチャンスととらえ、積極的に攻めの姿勢で受け止めることはできないか。リストラするほうも湿っぽいリストラではなく、明るく送り出すリストラがあっても良い。未来技術について www.miragiken.com   では、明るいリケジョで物語を進行しているが、リストラチームによる物語も考えたりした。しかし誤解を受けるといけないのでリケジョの明るい話で未来技術を描いています。

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2014.09/26 高分子の難燃化技術(10)

当時夜中の11時まで実験をやっていても残業代を申請していない。高純度SiCの事業立ち上げまでの6年間死の谷を歩いたが、この時にも残業代の請求は0である。いまなら労働基準法で大きな問題になっただろうが、当時はおかまいなしである。

 

ただ、研究開発を担当していて残業代が欲しいと感じたことは無かった。それよりもゴム会社には大学よりも優れた研究開発設備が充実している点に感謝していた。それらが無料で自由に使えるのである。手続きをふめば学会発表も可能であった。

 

この2年半後のことだが、難燃化技術の研究開発から生まれた高純度SiCのテーマでは2億4千万円の先行投資を受け、専用の電子顕微鏡まで買うことができた。さらに超高温TGAを開発してSiCの反応速度の研究ができて、この研究をもとに学位を取得できた。

 

労働基準法違反以外に今ならばパワハラや逆セクハラと騒がれるような状況もあったが、会社への貢献と自己実現の目標が明確だったので、それを辛いと感じなかった。この頃の職場環境は様々な問題を抱えていたので、その後のサラリーマン人生で問題が起きたときにこの頃を思い出すことが多い。

 

多くの企業は市場で競争原理に基づく厳しい環境で戦っている。当然企業内はその影響を受け厳しい職場環境が出現する。その中で個人はどのように対処しなければいけないのか。

 

高分子の難燃化技術を担当していたときに、ホスファゼン変性ポリウレタンフォームの開発、硼酸エステル変性フォームの開発、そしてシリカ変性フェノール樹脂を開発して、これらで体得した技術を活用して前駆体法による高純度SiCの新合成法を完成させた。

 

職場環境は劣悪でも、会社への貢献と自己実現を忘れなければ、個人は組織の中で活用されたのである。その組織で貢献と自己実現が難しい、と感じたときに個人は静かに去ることを心がければ新聞沙汰になるような事件は起きないと思われる。

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2014.09/25 高分子の難燃化技術(9)

ヤミ実験をやっていると上司の主任研究員から、新入社員には残業代は無い、と言われた。素直に、残業申請はしませんから実験だけやらせてください、と願い出たら、何も言われなかった。

 

翌日、夜7時頃楽しそうに仕事をしていたら、趣味で仕事をやるな、と注意された。いや、趣味では無く始末書のために実験をやっているのです、と答えたら、始末書を早く書くように、と言われた。

 

一週間ほど実験を行い、ジエタノールアミンとホウ酸とを無溶媒で2時間以上反応させると耐水性のあるホウ酸エステルが合成されること、このホウ酸エステルとTCPPと混合しTGAを測定すると、TCPPだけでは600℃で1%以下の残渣しか残らないが、混合物ではボロンホスフェートが生成し、リンの90%以上が残ることがわかった。残る課題はこれが軟質ポリウレタンフォームに配合されたときに、機能を発揮するかどうかである。

 

適当な配合で軟質ポリウレタンフォームを合成したところ、ジエタノールアミンが触媒として働くために発泡バランスをとることがかなり難しくなりそうだ、とわかった。しかし、うまくできなかったポリウレタンフォームのLOIを測定してびっくりした。1ポイントも向上していたのだ。さらにTGAを測定して、600℃における残渣にボロンホスフェートが生成していることを発見した。

 

守衛が部屋に入ってきて名前を聞かれた。気がついたら夜の11時を回っていた。翌日主任研究員に呼び出され、叱られた。そしてすぐに始末書を書くように言われた。目標仮説を実証できる機能の確認ができていたので、始末書にはホスファゼンの研究開発により実用可能な新しいシーズが見つかった、と書いた。

 

主任研究員からすぐにそのシーズを説明せよ、と問われた。始末書はこれで良いのか、と尋ねたら、しばらくすったもんだのあげく、新しいシーズの話を少しずつリークしていたら、始末書の末尾に謝罪文が付け加わえられ、始末書騒ぎは完了となった。

 

サービス残業や過労死などが社会問題になっている。労働基準法に照らして考えてみると新入社員の頃の行動と上司の対応には問題があった。しかし、楽しい思い出として残っている。

 

始末書など気にかけず実験をしている姿を見て、「少しは反省した姿を」とアドバイスしてくださる優しい先輩もいた。始末書に至る経緯を周囲は見ていないのだ。そもそも仕事は結果しか見られていない、という現実を学んだのもこの時である。

 

労働基準法を含む研究開発のマネジメントについて、この頃の経験で学んだ項目は多く、さらに高分子の難燃化技術について30年後の未来でも活用可能なレベルまで学ぶことができた。この体験から30年後の未来に向けてどのような技術開発テーマが存在するのか「www.miragiken.com 」で紹介しています。

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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