フェノール樹脂を廃棄するために硬化させる作業は大変だった。しかし、この廃棄作業のおかげで、フェノール樹脂とポリエチルシリケートのリアクティブブレンドのアイデアを具体化することができた。後日思い出してみても運が良かった、といえる。この時の実験で得られた膨大なデータが無ければ、高純度βSiC合成法は生まれていなかった。
廃棄作業であるにも関わらず、実験ノートをつけた。それはメモ程度の書き方であったが、日時と時間を細かく記録した。単なる廃棄作業でもA4の実験ノートには4ページ隙間が無いほど観察記録が書かれていた。それは習慣の賜物であった。具体的に現象を記録することで観察が細かくなるメリットがありさらに記録することで深く考えるきっかけになる(注1)。
廃棄作業の実験では完璧な前駆体高分子を創り出すことはできなかった。しかし様々な重合度のフェノール樹脂を扱ったので前駆体高分子の合成に重合度の因子があるらしいことは見えてきた。さらに世界で初めての有機高分子と無機高分子のリアクティブブレンドの反応で生じる現象について詳細なデータが得られた。
Aさんは当方の研究に対する姿勢をご存じだったので、廃棄作業を楽しくやっていることについて何も言われなかったが、上司の主任研究員からは、「趣味で仕事をやるな」と注意をされた。ところが実験ノートを見せたところ、無言で去って行った(注2)。実験ノートはマジメに仕事を行っている証拠となった。
この実験ノートに書かれたメモがその後重要なデータとなるのだが、廃棄作業を行っているときには、この詳細なメモで人生の一大チャンスをモノにできる事態になるとは夢にも思わなかった。余談だが、実験ノートには、最低限日時と実験の経過時間だけでも記録する必要がある。時間のデータは、現象がどのような速度で起きていたのか重要な証拠となるからである。
何も書くことが無くても時間のデータだけは書いておくと良い。現象をチェックした間隔が後日分かるからである。実験ノートは後日それを見て検証できることが重要で、単なるメモ目的で書いてはいけない。ゆえに日時情報は重要である。
実験ノートの形式は様々だが、最低限記入すると良い一例を示すと、時間を記録する欄と実験目的、そして実験のゴール予想欄をどこかに必ず記入する場所を定めておくと良い。また、見開き2ページ分を一つの実験に使う形式が使いやすい。もったいないかもしれないが、一実験2ページを使用し、左上には実験の目的を、右上には、その実験のゴールを予想して書く。こうすることで仮説無しの実験を防ぐことができる。
とかく思いつきの実験をやってしまうことがあるが、どのような実験でも仮説を立てる習慣をつけることが研究者として大切で、実験の目的とその実験から得られるであろう結果、すなわち到達するゴールを書くことにより仮説を考えることになる。フェノール樹脂の廃棄作業の実験記録には、ゴールとして透明な前駆体高分子が得られること、と書かれていた。主任研究員が納得したのはこの欄の意味を理解していたからである(注3)
小保方さんの公開された実験ノートで一番ダメなのは記録された日時情報がない点である。下手なネズミの絵があったが、その絵が何の目的で描かれたのか、そしてどうなっていて欲しかったのか、も記入されていない。すなわち現象を観察したときに持っていた仮説情報である。仮説は間違っていることも多い。それが実験で確認され新たな仮説が設定され、真理に迫ってゆく。それが科学における実験の意味であり、実験が単なる作業と異なる点である。
サンプルとして収集されたフェノール樹脂の廃棄作業を廃棄作業として行えば、貴重なサンプルは単なるゴミとなる。中には高価な輸入品もあった。しかし、不要なサンプルでも新たな現象を見いだすための実験に用いれば貴重な検体として活用したことになる。さらにそこから20年以上も続く事業のシーズが生まれたのなら、サンプルを購入した金額以上に活用したことになる。
実際に、この廃棄作業からゴム会社で20年以上続いている半導体用SiCの事業のシーズが生まれた。すなわち高純度SiCの事業はゴミを活用して企画された事業であって、タイヤよりも売り上げ規模が小さいためにゴミのような事業と社内で噂されていたのは間違いである。
(注1)デジタル時代になって、パソコンを実験ノート代わりに使用する例もある。当方も一時期ワープロを実験ノート代わりに使用していた。しかし、紙に直接書く場合とワープロで記録する場合で明確に異なるのは、表現である。ワープロで書く場合には、なぜか情報が整理されて記録される。紙のノートには、日本語になっていない情報も書かれる。写真会社では会社から実験ノートが貸与されたので必ずノートに記入する必要があったのでワープロを打ち出し添付していた時期もある。今30年以上の研究生活を思い出してみたときに紙に書いた内容をリアルに思い出すことができるのは不思議だ。ワープロで打った内容については思い出せない事柄もある。
(注2)実験ノートは研究者にとって、その作業が仕事であることを証明する重要な証拠である。ハートマークが書かれているような実験ノートは単なるメモである。30歳にならなくてもその程度の理解はできているはずだ。理研の騒動で弁護士が単なるメモを実験ノートとして開示したのには疑問が残る。自ら適当に税金で遊んでいたことを白状しているような行為である。
(注3)このように今でも想像しているが、当時その程度も理解できない人だという陰口もあった。また、部下であった2年間陰口を否定するような姿を一度も見ることは無かった。しかしゴム会社で昇進が早かった方なのである程度の力量はあったと思いたい。どのような人物がどのような昇進をするのかは、組織の健全性の指標になる。理研の騒動では、理研という組織に多くの問題が存在することを世間に曝してしまった。学位論文の状態や、学位論文の図を新たな研究のデータとして使い回すのは、捏造という悪意よりも能力が無かった、と考えたほうが理解しやすい。能力の無い研究者をグループリーダーに雇用し、論文を書かせたので騒動が起きているのである。
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人事部から海外留学の内示を受けたが、直属の上司から数日話が無く不思議に思っていた。突然上司である主任研究員から呼び出しがあり、天井材はいつできる、と聞かれた。当方は入社してまだ2年程度の若輩なので不明である、と答えた。そしたら半年後までに仕上げよ、という。材料の基本処方もできていなくて、さらに天井材の商品仕様も決まっていない段階で答えられない、と述べたら、おもむろに海外留学の企画書を前に出して、この話が無くなるよ、と言い出した。
当時フェノール樹脂の天井材は、3人のプロジェクトで進められていたが、係長クラスのリーダーが長期病欠で、同じ年齢で社歴が5年先輩のAさんと二人で担当していた。当方は基礎技術担当でAさんは応用技術担当と仕事が分かれていたが、迷走状態であった。そもそもプロジェクトの最初にあった説明は調査研究のはずであったが、いつの間にか商品化研究テーマになっていた。
リーダーは長期休暇で、プロジェクトの全体計画も分からず、月一回の課内会議でプロジェクトのゴールだけが変わっていった。ある日後工程の部署がトラックで研究所まで乗りつけ、実験室にあったフェノール樹脂発泡体の設備一式を持って行ってしまった。
Aさんは仕事ができなくなるから困る、と抵抗していたが、後工程の課長が主任研究員からの指示で動いている、と一方的であった。上司と部下のコミュニケーションの問題であるが少々乱暴である。実験装置が無くなったので翌日からどうしようか、とAさんと相談したら、Aさんが大至急簡易実験装置を組み立てる、と言ってくれた。頼りになる先輩であった。当方は一連の動きが海外留学の内示とも関係していることが分かっていたが、内示段階なのでAさんに言えなかった。
Aさんは器用な人で社内にあった遊休設備を集めてきてとりあえず実験を行う事ができる環境を整えてくれた。そこへ主任研究員が現れ、天井材の評価技術1テーマだけ行えば良いことを伝えてきた。具体的な仕事の内容については、後工程のMさんと打ち合わせよ、との指示であった。相変わらず一方的な指示であった(注)。
翌日から仕事の内容が変わったので、集めてあった多数のフェノール樹脂材料を処分しなければならなかった。この処分について、液状物の社内処理ではコストと時間がかるのですべて固体で処理するように指示がきた。自ら志願してその担当を引き受けた。
(注)現場の状況を考えず、手配師のように仕事を進めるマネージャーがいる。仕事の中身がよく分かっていない管理職の場合、とにかく周囲との調整で仕事を流してゆくやり方を行う。主任研究員も天井材の商品仕様と材料設計の関係について理解していなかった。外部のレジンメーカーから樹脂を購入すれば簡単にできる、と勘違いしていたのである。この勘違いは係長のリーダーが長期病欠となる原因でもあった。当時フェノール樹脂発泡体は先端素材で、天井材の商品仕様を満たす材料は、それなりに高価であった。レジン販売を行わず、発泡体を完成品として販売している例もあった。安価な汎用レゾール樹脂で高防火性の発泡体システムを開発するのが課題であったが、当初掲げられたこの課題はいつの間にかどこかへ消え、外部のレジンメーカーの商品性能を評価する仕事になっていた。コストが合わなくなることが分かっていたので、ヤミ実験で安価なシステム開発を進めた。そしてそれが最終的に採用され、M社の天井材として販売された。成果は出たが、サービス残業で仕事を進めなければいけない辛い仕事であった。それにも関わらず、賞与を見て分かったことだが、その成果も評価されず逆にマイナス査定になっていた。ただ、この程度のことは主任研究員の場合には当たり前だ、と言われる人がいた。仕事を理解できていない管理職なので、理解していない仕事で正しい評価などできるわけがない、と慰めてくれる同僚がいたが、妙に説得力があった。サラリーマンはどのような環境でも腐ってはいけないのである。貢献と自己実現が働く意味であり、日々努力を続けられる環境がある限り前向きに働く努力が重要である。
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多くの企業の研究開発では、ステージゲート法あるいはそれに近い方法が導入されていると思われる。30年以上前にアメリカで話題になり日本に導入された方法だが、そのような研究開発の管理が成されていなかった頃の話である。
1980年代に新事業ブームがあり、各社異業種への参入が相次いだ。そのような時代にセラミックスフィーバーが起きたので、セラミックス市場への新規参入は1000社を越えたという。ゴム会社も創業50周年を迎え、CIを導入して社名からタイヤをはずし、ファインセラミックス、電池、メカトロニクスの三本の柱が社長方針として出され新規事業への意欲を従業員および社会に示した。
創業50周年記念を機会に、新規事業への関心を高めるための行事が幾つか行われたが、その一つに記念論文の募集があった。一席は10万円の賞金付きである。まだ新入社員の香りの残っていた当方は素直に応募した。しかし、同期のKは当方の論文を一読し、これでは10万円は取れないと言った。
内容は、ポリマーアロイを前駆体に用いて高純度セラミックスを合成し、ファインセラミックス市場へ参入する具体的な戦術(注)であったが戦略論は無くむしろ学術論文に近かった。実現方法が具体的に書かかれ、半導体市場をターゲットにした論文のような、まじめな内容ではこの会社の審査員には選ばれない、というのが同期のKの見解であった。
だったら一席を取れるような見本の論文を書いてみよ、と言ったらおもむろに事務局へ電話をかけて、どれだけ応募があるのか尋ね、呆れたことに〆切を延ばすように交渉していた。ところがすんなりと〆切が一週間延びた。理由は、〆切前日において応募件数がたったの一件で、今事務局が各部署へ応募を促しているところだ、という。たったの1件は、当方の論文である。
その後事務局の努力の甲斐があって50周年記念論文が多数集まったようだが、何と一席にはKの論文が選ばれた。一席から佳作の論文まで夢のような内容だったが、実現の可能性の高い現実的な当方の論文は佳作にも選ばれなかった。表彰式の後、Kは手にした10万円で当方を誘って二人だけのお祝いと残念会をした。
当方は正直に悔しいと告げ、Kが論文に書いていたブタと牛の合いの子のトンギューを育成するバイオ技術や、蓄熱ポリマーを用いた省エネ技術の具体的アイデアを尋ねてみた。
専門家ではないからそんな具体的なことは考えていない、と意外な答えであった。すなわち事業コンセプトを伝えることが大切で、大企業が記念論文募集で求める内容とはそんなものだ、とあっけらかんとしていた。これには脱帽であった。Kの企画マンとしての能力に驚くとともに学生気分が一気に吹っ飛び頭の中が180度回転する出来事だった。この飲み会の数日後人事部から電話が入り、海外留学の内示を受けた。
(注)当時軟質ポリウレタンフォームにガラス成分を安定なアルコキシドの状態で添加し、燃焼時にガラスを生成するコンセプトの難燃化技術を完成し、フェノール樹脂に水ガラスから抽出したケイ酸をナノ分散する技術を検討していた。M社向けプラスチック断熱材を使った天井材の開発を担当し、係長に相当するリーダーが長期病欠だったため、大変苦労していた時期である。
カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子
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オカラを工業材料として使用するには、3種類以上含まれる多糖類や多量の水分が問題となったため、食料品としての応用を考えだしてから3年になる。トリダンゴやハンバーグの処方はほぼ完成した。餃子についてはそこそこのものができていたのでそのままにしていたが、もう少し味を改良するために検討を始めた。
オカラハンバーグは、オカラを炒めることにより食感の改善ができた。オカラ餃子ではオカラをそのまま使用するだけでなく、水分の追加が必要となる。オカラのトリダンゴではオカラをそのまま使用して水分を追加しなくてもホクホク感が出てくるが、餃子の場合オカラが持っている水分だけではややパサパサした餃子になる。
そのままでもフー○○餃子の出来損ないと思えばおいしく食べられる。餃子の王○の味を目指しつつ改良を始めたが、ニラを多めに使用すると独特の味の餃子になり、結構これが家族に評判良く、餃子の王○の味を目標とするのではなくオリジナル餃子を目指して改良を始めた。
オカラ餃子ではキャベツの代わりにオカラを用いる。その他の具材は一般の餃子の具材で構わない。シソの大葉を入れると風味が増しおいしくなる。これはフー○○餃子も品揃えをしている。オカラとニンニク、タマネギ、豚肉の挽肉、豚の背脂、ニラ少々で味の素を大量に使用するとフー○○餃子に近い味になることは開発の初期段階に確認した。
しかしパサパサ感が残りそれがせっかくの味を落としているように感じた。オカラには多量の水分が含まれているのにこのパサパサ感になる原因がよく分からなかった。しかし開発を進めた結果混練手順に原因を見つけた。すなわち具材を一度にカオス混合するとパサパサ感のオカラとなるが、オカラとブタの背脂を予めカオス混合し十分に背脂とオカラをなじませてから挽肉以外の具材を混ぜ合わせ最後に挽肉を加えてカオス混合するとパサパサ感が解消される。
これは面白い発見である。高分子の混練でも同様の現象は存在し、混練手順を変えるとポリマーブレンドの高次構造が変化する場合がある。例えば二種類の高分子をバインダーに用いてカーボンを分散する場合に、ノンプロ練りとプロ練りの2段階で混練すると高次構造が一段階の場合と変わる。さらにノンプロ練りとプロ練りの配合を変えても高次構造が変化する。
料理も奥が深い。「美味しんぼ」もこの料理の奥の深さをテーマにしていた時が面白かった。いまだに連載が続いていたとは知らなかったが、話題が料理ではなくなっていた。わざわざ休載宣言しなくとも自然消滅するマンガと思われる。
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FH理論の物理学的な基礎事項には、ポリマーの混合におけるエントロピーとエンタルピーの扱いが含まれている。この点は、低分子における正則溶液の混合における扱いとどういう関係にあるのだろうか。
低分子の混合で考察される混合エントロピーの大きな効果は、一般に液相における混和現象に基づくもので、混合によるエンタルピーの扱いではあまり好ましくないためである。低分子の流動性における混合のエントロピーは、分子が自由に混ざり合って集まる状態を全て予測して求める、すなわちコンビナトリアル的なエントロピーである。
手元に教科書があれば見て頂きたいが、これはΣiNiln(Ni)に相関する。ここでNiは、系におけるiという種類の分子の個数を表す。ポリマーにこの考え方を拡張したFH理論では、この項をΣiNiln(φi)に置き換えている。なおφiは、あるポリマーiの体積分率を表す。
各ポリマーは、モノマーの重合によってできている。すなわち、ポリマー一分子には大量のモノマーが含まれている。しかし、ポリマーの混合物を熱力学的に捉える時の分子の個数は、これに比較して少ない。なぜならモノマーa個で1個のポリマーができるので、b個ポリマーが存在すれば、モノマー単位はaxb個存在することになるからである。
ここから得られる結論は、低分子の場合に比較してポリマーの混合のエントロピーは小さく、その相溶性を促進させるエントロピー的な力は弱いということになる。これでは以前この欄で紹介したが立体的に嵩高い側鎖基を持ったポリオレフィンとポリスチレン系TPEとの相溶を考えるときに矛盾が出てくる。
科学的な矛盾を承知し、自らの経験を信じPPSと6ナイロンをその間隔が1mm前後の平行なスリットへ通したら相溶し透明になった。FH理論を考えてきた経験で、すでに科学で説明された事柄でも技術者の長年の経験と合致しないところは、一度経験知で見直した方が良い、と言える。
第三者はそれをKKDによる開発と呼び、中には軽蔑する人もいるが、KKDが大きな発見をもたらし、新たな科学を創り出す事がある。少なくとも科学の存在しない時代には、KKDによる自然現象への取り組みが成されていた。科学の時代においてもKKDは時として大きな発見を導き出す。
例えばSTAP細胞は、植物では起きる現象だが動物では起きない、という科学的常識が、度胸のあるリケジョによりひっくり返され生み出された新たな科学の領域である。理研の笹井副センター長が記者会見でそれに近い発言をされた。経験豊かな日本のトップランナーがリケジョに引きづられた結果KKDでSTAP細胞の科学の世界が生み出されたのは新聞や週刊紙の報じるところである。理研という国民の税金で運営されているレベルの高い場所で作成されたイタヅラ書き程度の実験ノートは、その度胸の大きさを物語っている。
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先週行われた理研の会見を受けてネットには様々な反響が書かれている。また、テレビ報道でもやや的外れな意見が述べられたりしており、今回の問題が一般には誤解されやすい事件であると思われる。例えば科学的検証を行うに当たって小保方氏をメンバーから外している点について。
この点について小保方氏がかわいそうだ、という意見があるが、それは科学的検証を厳密に行う、という視点から的外れの意見である。また今回の騒動の原因は小保方氏の科学者として未熟な行動とそれを許した理研の体制にある。そして、STAP細胞は誰の成果か、と問われれば、科学的な成果は未だ得られていないので、誰の成果でもない。
もしこの段階で理研以外の研究チームが再現性よくSTAP細胞を作ることができ、その科学的証明を完璧に行ったなら、その研究チームの成果となる。これが科学の世界の厳しい掟である。税金で運営されている理研としては、まず理研で科学的成果を出すことが最重要課題となってしまったのである。それでは小保方氏が報われないのでは、という意見が出てくるかもしれないが、それに関しては、技術的成果の評価を受けるチャンスが残っている。
技術的成果は特許でその権利が守られる。このあたりは理研も十分に配慮し、論文の取り下げを行っても特許の取り下げまで行っていない。ただ、この特許に対して理研がどこまで配慮しているのかについては、企業で厳しい特許戦争を経験してきた立場から疑問が出てくる。すなわちこれまでの会見内容からインチキ基本特許を出願できる状況を作ってしまったのだ。
例えばSTAP細胞について全く素人の当方でも、現在理研が出願しているであろう特許内容と、それを踏まえた上で理研の特許と差し違え、新たな権利範囲でSTAP細胞の技術を権利化できる特許を書くことができるのである。もし小保方氏が力量のある研究者であれば、このリスクに気がつき、すぐに対策を打つ行動をするはずである。
裁判の戦略を考えるよりも技術の権利についてそれを守り切る戦術を実行することの方が大切である。当方が同じ状況に遭遇したならばその様に行動するし、類似の状況では会社に迷惑をかけないことをまず配慮してきた。STAP細胞の特許の権利については、一個人の権利というよりも国家の利益の観点からも無視できない。
有効な戦術をとらなければ現在出願されているであろう特許でSTAP細胞の個人の権利を守りきれないだけでなく、出願人としての国の権利も守られず税金の無駄遣いとなってしまう。小保方氏がもし研究者としての権利を主張するのであれば、それを守り切る行動を取って頂きたい。自分の権利を守りきる特許群を出願すること、それが彼女の現在とるべき行動であり、それが自分の権利を守ることにもつながるのである。その行動を取れないならば研究者としてSTAP細胞の発見者という資格は無い。腐ったり悩んだりするヒマなど無く、特許出願の行動を取るべきで、ご相談頂ければいつでもアドバイスいたします。
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昨日STAP細胞の論文について理研とその調査委員会の会見が生で報道された。専門性の高い内容にもかかわらず、一般会見が頻繁に行われている面白い事件だ。学位論文の20ページ以上を他人が書いた内容でごまかす科学を理解していない未熟な研究者が本来その役目をこなす能力が無いのに抜擢され、そのような抜擢を行ってしまうような管理能力の無い研究者集団の中で起こした事件について、これほど丁寧に記者会見を行っている例はこれまでないのではないか。
科学について詳しい方であれば、今回の事件は、一部の大学で行われている学位の適当な審査も含めいろいろな「些細なこと」と思われる不祥事が偶然積み重なった事件であると理解されているのでは。科学論文が「科学の真理」を追究するために厳格な倫理を守らなければいけない、と言われていても倫理的に問題のあることが日常平然と行われてきた結果である。
学位についていい加減な審査を行っている大学のあることは、審査された学位論文を読めばわかる。またその学位でも審査する先生が審査料とは別にお金を要求してくることもあるのだ。これは当方も国立大で学位を取得しようとして経験した事実である(注)。しかし、こうした問題はあまり事件として大きく扱われずそのまま隠れてしまっていた。
科学とは真理の追究で成立する世界である。また専門性が高くなればなるほどその道の研究者でなければその真理を判断できなくなるので性善説が前提となっていた。その世界では未熟も悪となるぐらいの厳密さを維持しなければ真理を明確にできない。
しかし、この掟も未熟な学習者に対してゆとり教育はじめ様々な「優しさ」でどこかに隠れてしまったのが現代の科学の世界で、そこで起きたのが今回の事件である。理研の鬼軍曹が「とうとう起きたか」と言われたように事件が起きる環境になっていたのだ。
学位論文に他人の書いた文章を引用文献も示さずコピペをしてはいけないのである。まずこれは確実にアウトで自ら学位を返上すべきである。厳格に判断すれば、たとえそれが一般記載であっても許されない。さらに学位論文の画像をその後の新しい研究の成果として用いているのもおかしい。自分で書いていて気がつかない、というのはあり得ないことなのだ。
今回の事件は「科学の真理」について厳格さを求めたために起きている。だから裁判でシロクロを出せないはずで、裁判で出せるのは「真理」の追究のために取られた手順に法律の視点で誤りがあったかどうかである。STAP細胞の騒動の科学的結論まで出すことはできない、という当たり前のことを理解しておくことは重要である。そもそも今回の事件で裁判に持ち込もうという発想そのものに疑問があるのだが。
(注)学位を取得したい人が申請先の先生からお金を要求された場合にどうするか。黙ってお金を払って学位を取得するのか、それ以外の方法となる。科学の世界では前者を選択してはいけないのだ。前者を選択した場合には永遠にこの問題が公にならない。またお金を払わず学位を諦めた場合には、お金を要求した事実を訴えることができるが裁判までするのかどうか。社会正義の観点ではそのような先生を懲らしめることも重要かもしれない。しかし御指導を受けた先生を訴える、という恩を仇で返す矛盾も生じる。だから問題を避けて国立T大で取得することを辞めて中部大学で学位を取得した。中部大学では学位審査料80,000円だけであった。それでも親身な御指導をいただけ、最後にはしっかりと試験と学位授与式までやってくださった。本当に試験がある、と伺ったときには涙が出てきた。アカデミアの使命を十分理解できる体制であり、学位の取得過程は大変だった。楽をさせようと、お金を要求してきた国立T大の教授の気持ちも幾分理解できた。しかし苦労した思い出はお金で買うことはできない。学位論文の大半は、某ゴム会社の現在でも継続されている事業の基になった高純度SiCに関する内容ですべて日本語で書かれており英文のコピペは無い。
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昨晩日本は中国に完敗で、石垣選手が1ゲーム取っただけであった。この3日間毎晩卓球選手権を楽しみに観ていたが、昨晩はややつまらなかった。選手の目の色が石垣選手以外オランダ戦や香港戦の場合と少し違っていたからだ。
特に香港戦における平野選手の逆転劇では鳥肌がたったが、昨晩の平野選手にはそのようなシーンは無く、あっけなく終わった。中国が強すぎたのか?確かにすべて3-0で勝ち上がってきた中国は強いかもしれないが、オランダ戦や香港戦における日本選手の戦いぶりを観ると勝負に臨む意識や姿勢も大きく影響しているように思う。
中国戦で石垣選手が唯一1ゲーム取ったときにその様に確信した。世界ランキングが30位以上も異なる相手に対して1ゲーム取るのは大変なはずだ。実力以上の力が働かなければ勝てないだろう。たとえそれが相手の苦手意識だったとしても実力以外の要素である。勝負に勝つためには能力以外の要素を引き寄せる力も必要だと思っている。そのために誠実かつ真摯な日々の努力が必要なのだ。
32年間の研究開発経験でも能力を超える現象を何度も見てきたので、その努力の重要性を信じている。例えば半導体用高純度SiCの合成に初めて成功したときには原因不明の電気炉の暴走という事件があった。但し、その暴走のおかげで最適なプロセス条件がたった一回の実験で見つかり、ゴム会社から2億4千万円の先行投資を受けることができた。
PPSと6ナイロンを相溶させるプロセシング技術を開発した時においても、運良く押出機の能力で必要な剪断速度が得られる実験環境が目前にあり、試作機を新たに立ち上げなくとも押出機を含むシステムをそのまま試作機として活用できた。また、ポリオレフィンにポリスチレン系TPEを相溶させる実験では、それを担当していた派遣社員のモラールが下がり始めた16番目(注)のTPE合成条件で初めて相溶し透明になるポリマーが見つかった。
さらに驚いたのは、昨日の地震である。実は6月6日に高分子学会主催ポリマーフロンティア21が開催され、その招待講演者に選ばれているが、そのために必要な資料が紛失していて、予稿集を書くときに苦労した。退職者の立場で公開されている実験データは重要である。講演までに探さなければいけないが、と悩んでいたら、震度5弱の地震のおかげで資料棚に積み上げてあった資料の一部が崩れ落ち、なんと崩れた資料の一番上に探していた大切な資料が現れたのだ。これにはびっくりした。
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ヨドバシカメラを10日でやめた新入社員の話がインターネットで話題になっている。何のことかと調べてみたら、ヨドバシカメラの採用チームの担当者が10日でやめた新入社員を説得した体験についてブログに書いていた。それも前編と後編にわけて書いているのだから、何かアピールしたかったのだろう。
このブログについて前編後編とも読んでみたが、読み手により判断が分かれる内容である。間抜けなブログと判断する人もいるかもしれない。あるいは採用担当に同情する人もいるかもしれない。だからインターネットでも議論しやすく意見がいろいろ出ているのだろう。ブログにはこのような書き方や内容が受けるのかもしれないが、ヨドバシカメラという企業に対する印象を左右しかねない内容である。
「入社10日目でアルバイトと変わらないつまらない仕事だからやめる」、と正直に言っている新入社員を説得しているのである。ブログを読んでいると、説得している採用担当もその点を認めているように思われる。つまらない仕事しか無い会社なのだろう。
もっともデズニーランドのような誰もが行きたくなる楽しい会社であれば、給料を払うのではなく、社員から入社料を頂かなくてはならない。一般に会社の仕事には快楽的な楽しさの要素は少ないかほとんど無いはずだ。そのうえで「働いて幸せ」という採用担当の価値観を説いて聞かせ、辞めた後の人生の幸せを願っている、という内容である。
この採用担当はどこまで真剣に新入社員の立場まで考え説得しているのか疑問である。新入社員はただ公務員になりたかったが訳あってヨドバシカメラに入ってみたものの勤務している時間がもったいないから辞める、公務員試験の勉強を集中して行いたい、と言っているのである。
当方が新入社員時代に「この会社にはメーカーとしての技術は無い」と言って6ケ月の新入社員訓練を受けて配属の日に退職願を提出した同期がいる。ゴム会社としては大損である。たまたま研修中に交流する機会があり、その個性も含め退職理由も理解できたが、今や某一流企業の社長である。かたや、「技術が無いから僕はがんばる」といってゴム会社で高純度SiCの事業を立ち上げ、頑張ったにもかかわらず気がついたら写真会社を早期退職していた、というサラリーマン人生もある。貢献と自己実現を十分に実践してきたが、「働いて幸せ」と考えたことは無い。「働く場所がある幸せ」は感じていたが。
写真会社で退職願いを出しても「もう少し後でやめれば、優遇制度の退職金上乗せ額が増えるかもしれない」と言ってくれた人もいて、「確かに業績が良くないからそうなるかもしれないが、追い出されて辞めるよりは」、と答えるのが精一杯である。新入社員で会社を辞めるときと、サラリーマンの晩年で会社を辞めるときでは、その動機は全く異なる。サラリーマンの晩年は「働く場所」が年齢とともに無くなるのである。無くなってから辞めるのか、無くなる前に辞めるのか、辞めてからの苦労を考えなければ、幸せ感を持って辞めた方が精神衛生上好ましい。
ヨドバシカメラの新入社員は、説得されなくても公務員という夢を持って会社を去った。若くして会社を去るのはその会社に魅力が無いか何か問題があるときである。おそらく社会に歓迎される話は新入社員の早期退職ではなく、60過ぎたら仕事を自由に選べる会社の話題だろう。弊社はその様な会社を目指して頑張っている。
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技術の発明には、科学的成果を前向きの推論で使い科学的方法で行う方法と、蓄積された経験(K)を基に要求されている機能を心眼で見つめ逆向きの推論により、創り上げる方法がある。後者については心眼の代わりに勘(K)と度胸(D)をあげて、KKDによる開発として知られているが、単なるヤマカンではなく経験を積み重ねると生まれる心眼を使うところがミソである。
機能から逆向きの推論を進める方法については、花冠大学のホームページ(www.miragiken.com)で紹介中だが、この方法は学校で教えない。企業で伝承されている方法で、ゴム会社で習った。写真会社はもっぱら科学的方法を信奉している企業で、KKDを馬鹿にしている。
ゴム会社ではKKDは大切な一つの方法として認知されているが、実際に行われているのは心眼を用いた方法である。大切なのは商品に要求される機能から逆向きの推論を行い技術を生み出してゆく活動である。この方法を謙遜してKKDと言っている。単なるヤマカンは、ゴム会社でも馬鹿にされる。
経験は大切である。人類は経験を普遍的な知識として伝承するために「科学」という哲学を創り出したのかもしれない。「科学」から生まれた知識を正しく伝承するためには、その知識が「普遍的な真理」として保証されていなければならない。ゆえに捏造が許されないのだ。科学の伝承は性善説が前提となり、そこに邪悪な考えが忍び込むと捏造が起きる。
山中先生まで頭を下げている写真が新聞に載っていた。立派な姿である。一方STAP細胞の騒動では、この一連の謝罪をもとに鬼の首を取ったように自己の捏造を正当化しようとする人がいる。科学の世界では、まず真実の前に謝罪が必要だ。学位論文のデータを転載したのは、明らかに言い訳のできない悪意だ。いくら整理整頓が悪くても自分がまとめた学位論文のデータぐらい記憶している。
STAP細胞については、iPS細胞で山中先生がやられたように、まず技術として生みだし科学として完成させる方法が有効だと思う。科学的方法一本槍では、時間がかかる。当方ならばSTAP細胞の技術を技術として創り出せる自信がある。
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