昨日中国の空港における詐欺被害について、同僚の被害も含め3つほど紹介したが、中国ではいろいろな被害を経験している。どちらかと言えば、もう慣れっこになったといってもよいほどだ。
400元前後の金さえ出せば命は何とかなり、笑顔で解放してくれる、そんな被害ばかりだ。
タクシー代金については安いのでどこまでごまかされているのか分からないが、同じ場所同じ距離で3-4割の変動があるから、ごまかされている場合もあるのだろう。
明らかにインチキだったのは、スロットマシンのごとくメーターの価格が上がり、30元前後のところが300元も支払わねばならなかった体験である。
ホテルの手前で止まり、ここまでだと運転手はいう。そして、額を隠していた髪をかきあげ、眉間の縫い傷を見せてきた。黙って300元出したほうが良いと思い300元渡したら、ドアが開いてニコリと笑っていた。
ガイドブックに安全と書いてあるようなタクシーに乗ってもこれである。ビジネスでは、宅急便の荷物を受け取るのにわいろを要求されたり、コンサル料を半分しか支払ってくれないなど、散々な目に合ってきた。
昨年から台湾の仕事を引き受けるようになったが、台湾では、同じ中国にも関わらず、このような被害にあっていない。
空港でもチケットを黙って取り上げるような失礼なことはせず、必ず見せていただいてよろしいか、と尋ねてくる。同じ中国人に思えない。
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昨日早朝(浦東空港7時55分発)の飛行機で上海から帰国したが、空港で巧妙な詐欺にあった。手口は以下である。
飛行機の出発よりも1時間30分早くチェックインカウンターについた。これはいつものペースで、登機時刻に十分間に合う時間である。すでにチェックインが始まっていたので、並ぼうとしたら空港の職員と見間違えるような(空港職員と同じ格好をしている)中年男性が、近寄ってきて、ここでチェックインができる、といい、パスポートを見せよという。
警戒していたら、怪しくない、空港の職員だという。そして発券機の操作を手際よくしてくれて、席は一つしか空いていない、あなたが遅すぎるという。とにかく急げ、といい、発券機の上のパスポートを取り上げられ、当方の手を引きながら、チェックインカウンターの一番端まで連れて行ってくれた。
チェックインカウンターの一番端は、搭乗時刻が迫っているときに優先的に荷物預かりをしてくれるところだが、7時10分の搭乗時刻まで40分あり、そこを利用しなくても十分に間に合うと思った。だが、早い手続きに不満は無いので荷物を預けた。
この荷物を預けるところも、チェックインカウンターのお姉さんとの交渉も怪しい中年男がやってくれたのだが、そこで、荷物検査室に行かなくてはいけない、と言われた。
怪しい荷物は、お土産で購入した白酒ぐらいで、何かの間違いと思いとにかくチェックインカウンターのすぐ横の小部屋へ案内されるまま入った。
そこには空港職員の制服を着た男一人がおり、怪しい中年男が、その職員に何やら交渉している。手振り身振りから時間が無いから急げと中国語で言っているようにも見える。
空港の制服を着た男は、当方のバッグを開けるように言ってきて、バッグを眺めている。急ぐ様子もない。何やかやと荷物の中をゆっくりと調べて異常がないからバッグを閉めろと言ってきた。異常がないのに20分も時間を消費した。
怪しい中年男は、バッグを閉めたら急げと言って、また当方の手を引いて、出国手続きの入り口まで連れてゆき、これだけ並んでいるから、間に合わない、交渉するから400元出せ、と言ってきた。
パスポートとチケットをとにかく取り返さなくてはいけないので、おとなしく400元をだし、まず旅券とチケットをくれと言ったら、素直に渡してくれて400元を当方の手から取り上げると、当方の手を引いて、客室乗務員の通路まで案内するや否や、そこに立っていた整理係に中国語で何やら話した。
その後、怪しい中年男は、この男についてゆけと言って去った。さてその整理係は、小生を出国手続きのカウンターへ特別に案内してくれて、結局飛行機の搭乗時刻に間に合ったのだが、飛行機に乗ってびっくりした。
前方のエコノミークラスの席に空席が10席ほどあった。当方の席は後方の団体席の中央付近だった。この時騙されたことに気がついた。発券機で一席しか空いていない、と言うところから詐欺が始まっており、チェックインカウンターの女性も、荷物検査員、整理係もグルだった可能性がある。
400元をだまし取られたことになる。以前出国手続きのゲートを出た直後、空港職員に日程がオーバーしているからと、わけのわからない小部屋へ連れていかれ中国語で説教されて、その後英語で一言今から日本で手続きするのかここで違反料金を支払うのか二つに一つだと言われ500元を騙し取られた(これは詐欺だとわかっていても飛行機の搭乗時刻が迫っており、お金を支払う以外に方法が無い状態である)が、今回は手の込んだ詐欺である。
オレオレ詐欺には注意しているが、空港職員によるこのような詐欺には、十分な余裕を持って空港に行くだけではなく、隙を見せず、すべて自分で手続きを行う覚悟でいなければいけない。発券機のところでうっかりとパスポートとチケットを敵に渡してしまったのが間違いの始まりだった。中国では空港職員相手でもパスポートを渡してはいけない。
中国では、職員もこのように詐欺を働くので、対策は自信をもって行動する勇気しかない。中国では日本にいるよりも真面目に行動しなければいけない。今回は上海市内で購入した高い白酒を隠し持っていた(3本までは許されるはずだが安い酒ではないので不安だった)ところを狙われた。
15年ほど前に同僚と中国出張をしたときに、同僚が上海市内で3本ほどお酒を購入した。そして、空港の入り口の荷物検査で引っかかった。お酒をすべてそこで取り上げられた(1000元近い損害だった)のだがこれは怪しい処理である。ゆえに高いお酒を隠し持っているときにはいつも不安だった。
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高分子材料のDSC測定で生じるTg曲線の昨日のような変位が現れるのを避けたいならば、DSCの昇温速度を変えて期待通りのTg曲線が得られるように条件を探す作業が必要になる。
このような変位以外に、現れるはずのTgが観察されない、といった現象も時折発生する。この現象では、Tgが現れる直前のところで昇温をいったん止めてその温度で2-5分程度保持後測定を開始すると、きれいなTg曲線が現れる。
これは、アニールと同じ効果を応用したDSC測定のコツであるが、なぜか分析関係の教科書に書かれていない。
やや胡散臭い方法に思われる方もいるかもしれないが、測定データについて不安がある時には、複数の試料を計測してTg曲線の異常の原因を探る必要がある。ただ、混練の実務でこの努力の優先順位は低い。
TGA同様にDSCを用いて動力学的解析を行うことが可能である。例えば結晶化速度の評価にDSCを使用できる。
ちなみに、無機材料の結晶成長に関する速度論では、結晶成長機構が多数存在するので速度式の解析は複雑になるが、高分子では核生成を仮定したアブラミ式だけが知られている。
これは、球晶の生成機構が必ず核の生成を伴うからである。すなわち紐の一部が局所的に規則正しく並び、そこから結晶成長が始まる。
そしてラメラが生成し集合体となり球晶となる。あたかもラメラの生成と球晶への成長との二段階で進んでいるかのように思える。
無機材料で一段階の結晶成長機構について速度論的解析を行うと、80%以上成長する領域までうまく解析できる。
ちなみに、高分子と同じように核生成機構で結晶成長が進行するシリカ還元法のSiC生成機構解析では、95%前後の結晶成長までグラフは直線になっていた。
ただし、高分子のこのようなグラフでは、30%過ぎたあたりからずれてくることもある。ここまでの指摘にとどめる。
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DSCの測定装置の試料室には、独立に制御されるヒーターが3組存在する。
Aのヒーターで、Bのヒーターの上に置かれた試料(アルミナ粉と混ぜ合わせるとよい)とCのヒーターの上に置かれた参照試料(一般にアルミナ粉を用いる)が常に同じ環境で加熱されるように設計されている。
Aのヒーターで炉の温度が制御されているときに試料に熱的変化が無ければ、チャートに変化は現れない。しかし、試料が吸熱的変化をした場合には参照試料との間に温度差が生じないようBのヒーターで試料を加熱する。
この時チャートには吸熱側へヒーターに流れた電流変化が現れる。試料が発熱的変化をした場合には、同様の動作として参照試料側のヒーターCに電流が流れそれがチャートに発熱変化として記録される。
測定結果の概念図を描けば、結晶化温度(Tc)と融解温度(Tm)は、それぞれ相転移に伴う熱量変化を示し、ガラス転移温度(Tg)は、単なる比熱変化によるベースラインの移動現象として記録されている点に注意してほしい。
なお、Tgについては、試料の熱履歴とDSCの昇温速度との関係で、吸熱ピークが現れたりする。まず、DSCで測定されたTgにこのような現象が生じる理由を説明する。
徐冷ガラスあるいは急冷後アニールされたガラスでは、昇温した時に、徐冷ガラスのT-V曲線に従い体積は膨張してゆく。
この時、溶融状態から冷却した時のT-V直線との交点や、さらに急冷ガラスのガラス転移温度よりも高い温度で急激に体積膨張し、溶融状態のT-V直線に合流する。
この急激な体積の増加では、徐冷あるいはアニール処理により生成した安定な構造を壊すために過剰な熱が必要になり、高い温度でガラス転移を起こすことになる。
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混練の実務で役立つ熱分析装置には、先に紹介した機械的熱分析(TMA)と熱重量分析法(TGA)、示差走査熱量計(DSC)、粘弾性測定装置などがある。
TMAは熱膨張の測定だけでなく、粘弾性測定も可能な装置が市販されている。試料に押し棒を乗せ、温度を上昇あるいは下降させて押し棒の変位を計測するTMAの熱膨張測定では、各温度における線膨張率が求まり、そこには、主に高分子の一次構造や高次構造因子の情報が含まれている。
天秤と加熱炉を組み合わせたTGAは、試料を加熱してその重量減少を調べる装置だが、高分子の一次構造因子が測定データに反映される。昇温速度を変えて測定して熱分解の動的解析もできる。この原理を理解できると、TGA曲線の変化から混練時に化学反応の有無を予測できるようになる。
また、熱天秤の精度も高いので混練時の熱による微量ガス発生の有無を調べることが可能である。特に高分子の難燃化技術を検討するときには、経験知的方法になるが難燃剤の作用機構を調べる簡便な実験もできる。
TGAもTMAも測定装置を実際に使用すれば、その機構と原理をすぐに理解できるが、DSCは、外観からその測定原理が分かりにくい。
TGAは昇温条件で測定し、TMAやDSCは一定速度で昇温あるいは降温の両方向で測定できるが、TGAもTMAも試料で生じる現象を直接観察しているのに対してDSCでは比較サンプルに対する熱量変化を観察している点が異なる。
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情報通信分野で5Gが注目を集めています。5Gで世の中がどのように変革されるのか。
高分子材料の誘電率制御に関して、下記のようにセミナーを開催します。
弊社へ申し込まれますと、36,000円(消費税含まず)となります。
また、7月中に弊社へ申し込まれますと、弊社にて高分子材料の基礎についてセミナーを1時間無料で受講可能です。
記
1.主催 サイエンス&テクノロジー
2.日時 2019年8月30日(金)10時30分-16時30分
3.場所 品川区大井町きゅりあん
4.詳細 https://www.science-t.com/seminar/B190850.html
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自由体積部分では動ける範囲の運動が行われている。その他、高分子鎖が積み重なり運動が凍結された部分でもレピュテーション運動が起きているかもしれない。
その結果、分子同士のあたかも忖度が働いたような運動、すなわち、より構造的に全体が安定な状態になろう、あるいは歪を緩和しようとして全体で動く。この構造緩和現象により体積収縮が起きる。
ここで、急冷ガラスのTgをTgqとし、徐冷ガラスのそれをTgaとすると、Tgq>Tga。すなわち、冷却速度と高分子材料のTgは関係しており、高分子がプロセスの履歴をひきずる、と言われる原因の一つである。
ところで、高分子材料を混練できる温度領域について。二軸混練機を用いた熱可塑性樹脂の混練では、よくTm付近の温度がシリンダー温度として設定されるが、Tm以下でTg以上の低い温度に設定しても、モーターの能力さえあれば混練可能である。
ちなみに結晶性樹脂では、Tc前後の温度設定でも分子量低下を起こさず混練可能である。ゆえにシリンダー温度は、Tg付近に設定しても混練可能で、そのような特許出願もされている。
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このガラス化過程の歪について、昇温条件でDSCの測定を行うと、冷却時の履歴がTgに反映されてピークとして現れることもある。
この現象は、例えば結晶化速度の速い結晶性高分子で観察される。この時、体積が減少して高分子鎖の一部分が規則正しく並び、折れ曲がりながらラメラ晶を形成していく。
混練された高分子からペレットを製造するときの熱的変化は、急冷過程となる。このように溶融状態から冷却速度を早くした場合には、体積の収縮が冷却速度に追いつかず、そのままの構造が凍結されるので自由体積が多くなり、その結果密度は低くなる。
この時生成されるのは急冷ガラスであり、結晶化速度の遅い高分子であれば、全く結晶化しない場合もある。
結晶化速度が早い高分子でも結晶化しない場合や部分結晶化で止まる場合などまちまちで、これがペレットのばらつきの原因となる。
もし、これをゆっくりと平衡状態に近い条件で冷却をしたならば、徐冷ガラスとなる。厚みのある成形体の中心部はこのようになる可能性がある。
結晶性高分子であれば、昇温条件でDSC測定を行ったときに結晶化ピークが現れないほど結晶化が進む。
ここで注目していただきたいのは、急冷した場合と徐冷した場合では体積が異なる現象である。もし、急冷ガラスについて、Tg付近でアニールしたならば収縮して徐冷ガラスの密度に限りなく近づく。
余談だが、一般にアニールを行う時にはTg以下Tg-20℃以上の温度領域で長時間かけるが、Tg以上で急速アニールする特殊な技も開発されている。この場合も徐冷ガラスの密度に限りなく近づく。
いずれの条件で行っても、アニールにより急冷ガラスの体積収縮は生じる。もし結晶性高分子であれば、ラメラ間の非晶部分のパッキングが進み密度が上昇する。この現象を観察するための実験はガラス状態を理解するのに役立つ。
すなわち、ガラス状態はマクロな視点(通常の観察時間)で見る限り固体と同じであるが、紐のモデルの如く高分子鎖一本一本のレベルで見ると、高分子材料の温度に相当するエネルギーレベルで運動している融体(液体)の状態と同じである。
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大船渡(岩手)最後の夏は、不完全燃焼で幕を閉じた。花巻東との決勝で、2-12と大敗した。昨日の高校野球情報は、このニュースが一面に来ていた。
そして、お決まりのことだが、賛否両論の意見がネットに上がっていた。理由は佐々木投手を温存した監督の判断にあった。
続投が続き、腕に違和感を感じていた佐々木投手を決勝戦で使うかどうかについて、今の時代でなければ、ベンチ入りの判断にはならなかったろう。
高校野球という舞台を考慮すると、これは正しい英断である。某高校の監督は、甲子園を目指していたのだから、佐々木投手を使うべきだった、と述べていたが、これは時代錯誤の判断というしかない。
例え英断であったとしても、結果が悪い場合に批判は避けられない。それが分かっていても、ベンチ入りを命じた監督を当方は優れたリーダーだと思う。
当方は退職前、事務機の部品開発(内製化)を中途で引き継いだ。半年後には製品化という仕事だった。しかし、コンパウンドが原因で歩留まりが10%に満たないような仕事であり、内製化をあきらめ部品そのものについて外部調達という判断をすべき状況だった。
しかし、経験知からコンパウンドの問題を理解できて、混練さえうまくできれば歩留まりが上がると判断できた。
そこでコンパウンドメーカーに解決策をお願いしたところ、コンパウンドメーカーは、形式知からコンパウンドについて問題の無いことを説明し内製化技術に問題がある、と突っぱねてきた。
仕方が無いので、中古混練機を購入しコンパウンドの内製化まで行う決断をしたが、部下の課長から戦力の観点で猛反発された。
部下の課長に、外部のコンパウンダーと同等の扱いをしてもよいから、君が良いコンパウンドを選ぶように、と告げて、中途採用1名と現場の作業者1名でグループを編成しコンパウンド開発を進めた。
3ケ月後には歩留まり99%を実現できるコンパウンド技術が無事完成し、外部のコンパウンダーには状況を説明して諦めてもらった。決断で明暗は分かれる。判断を間違えないようにしたい。
今進められている働き方改革の思想を尊重すれば、部品の内製化そのものをあきらめ、外部調達するという判断が正しいのかもしれない。ただし、この判断は正しいが、コストダウンもできなければ新しい技術も何も生まれない。すなわちGDPで表現すれば0かマイナスの状態である。
3ケ月でコンパウンドプラントを作るために当方は土日返上、時には徹夜までした。明らかに働き方改革に反する判断である。また、このような働き方で成果を出しても退職前の当方は成果に見合う報酬が得られるわけではない。それが分かっていても貢献を第一にGDPの向上を目指し新技術にチャレンジして成功させた。
退職前のリーダーとして働き方改革の思想による判断が正しかったのだろう。しかし、世の中の流れや会社の風土に反した判断をしても、成功したので誰も何も言わなければ報酬も無い。判断が良かった、悪かったなどの批判も出ない。すべて何もなかったように時が流れ、2011年3月11日に最後の日を迎え、帰宅難民となり、最後の日に会社に宿泊できる幸運となった。天だけが応えてくれた。認知症になったとしても、地震が来るたび思い出す一生忘れることのない退職記念日である。
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これは、高分子材料では必ず非晶部分が存在するためである。すなわち、高分子材料について熱分析を行うと、測定条件の影響で相転移である結晶化は観察されないことはあっても、相転移ではなく緩和過程の現象を示すTgは、結晶性高分子でも必ず観察される。
Tgの理論的取り扱い方について、粘度が1012Pa・s付近になるとガラス転移が起きる、という等粘性状態の考え方や、自由体積分率が0.025になった時にガラス転移が起きる、という等自由体積状態の考え方、その他等配位エントロピーの考え方など多数存在する。
等自由体積状態の考え方ではVhが自由体積となり、Tg以下に冷却された時に一定値Vhgとなる。
ところが、混練して得られるペレットの密度ばらつきや成形体の密度ばらつきなど同一配合処方でも自由体積の量がばらついている、と考えなければ説明がつかない現象は多い。
これは、グラフが平衡状態における現象を示しており、混練で得られるペレットは非平衡状態で冷却されて作られるから、として説明できるが、Vh+ Vlを自由体積とする考え方も存在したりするので、形式知によるTgの理解は難しい。
経験知的には、溶融糸まり状の高分子が、冷却により体積が減少し、隣り合っている高分子のヒモ同士がぶつかり、歪を抱えたまま動けなくなる温度がガラス転移点Tgである。
これは、満員になっていない80%程度の乗車率の電車で急ブレーキがかかった瞬間を想像してみると理解しやすいかもしれない。高分子を急冷したときには恐らく悲鳴を上げる様な分子も存在するかもしれない。
ただし、電車がゆっくり停車するような状況では、乗客は皆自分の快適なポジションを探しつつ、それぞれの位置で落ち着く。高分子も同様で、溶融状態から平衡を維持しつつ冷却していったなら、結晶性樹脂の場合にはラメラができてそれが球晶に成長し、そしてガラスを生成して固まる。このガラスを生成した時の温度がTgである。
混練プロセスで平衡を維持しつつ冷却するのは困難であり、ガラス化過程で何処かの高分子に歪が残っている。ゆえに、Tg付近で試料の熱処理、アニールを行うと歪が緩和されて密度が上ったりする。
あるいは、溶融状態からフィルムを製造した時に、表裏で冷却速度が異なると、歪も表と裏で異なる。その結果、室温で放置した時に内部の歪が緩和してフィルムが反ったりする。
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