中間転写ベルトの現場で起きている現象の続きを書こうとしていたが、WEBニュースでNHK「いだてん」の視聴率が悪いという話題を見つけて、少し思うところがあり、キーを叩いてみた。
この番組は結構面白いが、真剣に見ようとすると少し疲れるドラマである。初回を見たときにそのように感じて、適当に見ている。適当に見ていても笑えるドラマである。これは45分間真剣に見続けるドラマではない。たまたま世界記録を出したために、日本人初めてのオリンピック選手となり、その運命に従い使命を全うした四三さんの噺である。
但し、この人は、日本人初めてのオリンピック選手というチャンスを活かし後世にその名を遺すような最高の栄誉を得たわけでないらしい。だから織田信長とか徳川家康などと同列の扱いを受けていない。当方もその名前を知らなかった。こうして書いていても名字を思い出せないくらいである。
ところで、時々噺家の解説がはいるが、このような解説は適当に聞いて笑えばよい場面である。しかし、笑えないような噺もある。おそらく演出家は大河ドラマの視聴者が真面目であることを忘れているのかもしれない。
このドラマを従来の大河ドラマのような姿勢で見たらわけが分からなくなる。これは何かをしながら適当に見るドラマである。適当に「ながら視聴」していても物語を理解できる、いわゆるテキトーなドラマだ。
テキトーなドラマだが、その演出は結構凝っている。真剣に見ていると作り手が随所に仕掛けをしていることに気がつく。だから疲れるのである。視聴者はそのような仕掛けに期待をしていない。むしろ文句なく腹を抱えて笑えることだけを期待している視聴者の方が多いのではないか。
このドラマ、主人公には失礼だが、いっそのこと完全な漫画仕立てにしたら視聴率が上がると思う。垣間見える作り手の真面目さが今のドラマの障害になっているように思う。このドラマの背景となっている歴史については年配の視聴者なら皆知っている。だから小細工がつまらなく見えるのだ。
初回を見てこの番組が低視聴率になると、当方には予想された。いっそのこと低視聴率を無視して全話作り上げたら面白いと思う。おそらく総集編の視聴率はこれまでの大河と異なり高視聴率になるような気がする。アマチュアスポーツとは何かを考えるのに良い番組だから。
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高分子の相溶という現象は、フローリー・ハギンズ理論に従えばχ=0となる条件でなければ生じない。学生時代に授業で触れられていないのに試験に出てきて驚いたのでよく覚えている。
試験は満点を取った時よりもひどい点を取った時の方が勉強になる。人生も同じで、高い授業料と言われたりする「人生のちょっとしたつまづき」は、その深みを増したりする。
ただし、失敗を失敗として放置していては成長は無い。失敗したなら嘆いていないでその失敗から学ぶ努力をすべきである。
学生時代にフローリー・ハギンズ理論を教科書だけでなくオリジナルの文献まで読む努力をした結果、いろいろ疑問点を抱え、その結果、大学院進学は無機材料の講座へ進学している。
フローリー・ハギンズ理論は、当時から理論というには雑な内容と感じていた。当方のセミナーで説明するパーコレーションの説明よりもざる理論である。
これを授業で説明せずにテストに出す教授の無神経さには驚いた。ただ、授業で説明できないと教授が思っていたなら誠実な先生とも思える。
テストに出したのは授業では説明しないが、覚えておいた方がよい、という思いやりの心である。しかし、そのような場合には5点程度の配分にすべきで20点の配点はきつかった。
ところで、これまでの研究結果で、結晶では相溶現象は見つかっていない。すなわち、相溶はすべて非晶質で起きる現象といえる。高分子の非晶質はすべてガラスである。
一方、押出速度を早めた結果、サイジングダイにおける冷却は不十分となり、徐冷状態で断裁されることになる。自動断裁機は、その押出速度に同期できないので、生産時と異なり裁ちばさみを用いて二人がかりで断裁している。
徐冷状態なので安定生産時よりもPPSは結晶化しやすいはずであるが、工場で起きている音の変化は、逆にガラス状態のベルトを扱っているような現象が起きている。
また、二人がかりでベルトにしわができてもお構いなしに切り刻んでいることから、金属音ならば大きくなるはずである。それが鈍い音になっている。
すなおにこの現象を解釈すると、押し出し速度を速くしたところ、PPSと6ナイロンの相溶が起きて、その現象は徐冷状態でもガラスのまま結晶化しないくらいに安定であることを示している。
科学的視点からは笑われるが、教科書よりも現場で起きている現象を信じることにした。収集されたゴミベルトをもらい受けてとりあえずDSCを測定した。
驚くべきことに、PPSと6ナイロンのTgは別々に観察されず、それぞれの本来現れるべきTgの間にたった一つのTgの変曲点が観察された。これは、PPSと6ナイロンが相溶している証拠だった。(明日に続く)
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昨日ニコン新製品Z6のストロボシューの破損でがっくりきて、一眼レフカメラの品質についてボヤキの様な事を書きましたが、3月にこのようなことが少なくなるように、信頼性工学についてセミナーを企画しております。セミナー内容は単なる従来の信頼性工学の枠にこだわらず、タグチメソッドによる開発設計段階におけるロバスト確保の手法はじめ開発手法まで講演します。
記
1.開発手法を中心にした信頼性工学の基礎
日時 2019年3月5日 (火)10時30分から16時30分
場所 千代田プラットフォームスクエアー
受講料 50,000円
2.高分子の難燃化技術
日時 2019年3月29日
場所 大井町きゅりあん
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ペンタックスの一眼レフを20歳の時購入して以来、45年間ペンタックスを使い続けてきた。しかし、デジタル化の流れの中で、安くなったニコンF100を購入し使い始めた。
ペンタックスと異なるシャッターを切った時の重厚感は、さすがはニコンF5弟と感じさせる感触である。
ある日ニコンD2Hが半額で投げ売りされていたのをみつけ衝動買いし、しばらくこのニコンカメラを使っていた。ペンタックスのデジカメも他社と遜色のない性能になってきたのでK20Dからペンタックスのデジイチを使い始めた。
その後投げ売りされていたペンタックスK7を購入した。このころのデジカメ新製品ラッシュと値崩れは、お客としてはうれしいが、メーカーの立場に立つと背筋が凍るようなところがある。
安売りにつられてカメラが増えた結果、運動不足の時にはニコンD3、遠出するときにはペンタックスK20DとK7の二台持ちと、状況に合わせて使うようになっていた。
八景島でボディーペイント世界大会が開催されたとき、その写真の部で一位を仕留めたのは、K20Dにリミテッド77mmレンズの組み合わせである。キャノンが協賛した某住宅メーカーのモデル撮影会では、あえてフィルムカメラF100に85mmf1.4レンズを組み合わせて参戦した。
このコンテストでは2位となり、キャノンの双眼鏡を頂いている。キャノンのデジタルカメラだったなら1位だった可能性はある、と言ってくださった人もおられたが、二位となった原因はフィルム選びの失敗にある、と当方は反省している。
(ちなみにその時の1位は、会場でPRしていたキャノンのデジカメ新製品「キス」で撮影された写真だった。)
この時のF100で用いたフィルムは「ママ撮って」という肌色が美しく映るコニカフィルムだった。ただその時のモデルは厚化粧であり、肌の表面に塗布された無機フィラーの影響がでたためと思われ、せっかくのこのフィルムの良さが生きていない写りになったのが残念。
「ママ撮って」で赤ちゃんを写すと本当にかわいく肌が健康的に写る。しかし、このフィルムで厚化粧の女性を写すと化粧品の影響と思われる色合いになってしまう。これは、美しい人は美しく、それなりの人はそれなりに写るフィルムとの品質の違いかフィルムの設計思想の違いかどうか分からないが、当時カラーフィルムを使用していてびっくりした現象だ。
ところで、写真フィルムの品質の違い以上にカメラの細かい部分の品質はメーカー間の違いが大きい。ペンタックスとニコンの両者を使ってきて思うのは、ペンタックスのカメラが価格のわりに高品質、と感じている。
なんといっても45年間ペンタックスを使ってきてクレーム0、撮影された作品がコンテストで高い評価を頂いた実績はプラスの印象になる。
しかし、ニコンのカメラについては、防湿庫に3年静置していたF100の裏蓋フックが触っていなくても自然と壊れたり、ブリードアウトでカメラがべたべたしてきたり、さらには6年前購入したストロボ用のほとんど使用していないコードが、ボロボロになって内部の線がでてきたり、と材料系のトラブルに悩まされ続けた。これでは、高価なニコンカメラの品質に対する印象が悪くなる。
いずれも品質期間を過ぎてからのトラブルなので、これらの困った問題でクレームをつけていないが、1ケ月ほど前にニコンZ6を購入したらD3で使用できていたストロボコマンダーがうまくストロボシューに入らないトラブルが発生し慌てた。
繰り返し脱着をおこなったらシューについていたスプリングが飛び出して壊れた。高い買い物なのに1ケ月で壊れたので冷や汗をかきながらサービスセンターに相談に行ったら、なんと品質保証期間を過ぎたコマンダーのシューの修理が必要という。
なんやかやと窓口で材料屋から見たときに明らかに材料の設計ミスと感じられる壊れたフックやボロボロ崩れるコードなど泣けてくる悲惨な話をしんみりとしたら、ようやくZ6のシューの部分を無償で検査修理するということになった。
このような体験から、ニコンのカメラは確かにペンタックスよりも優れた性能の部分があるが、使い勝手や値段を考慮したときの品質はペンタックスのほうが優れているような印象を偏見かもしれないが持っている。
また、ペンタックスカメラでニコンカメラより優れた写真が撮れたりする。すなわち安いから品質が悪いわけではない。安くても高品質という印象のペンタックスカメラが、なぜか世の中のシェアーと無関係に我が家では輝いている。
もし機会があればニコンの技術者に、高分子材料技術についてご指導させていただきたい。ニコンのくっきりとした男気のある写りは他社では味わえないので、ニコンカメラの弱点と当方が思っている材料関係の品質向上のために貢献をしたいと思っている。
今のままの品質ではソニーに抜かれるかもしれない。最近パナソニックもフルサイズミラーレスを販売したので、ツアイスだけでなくライカとも戦わなければいけなくなった。高分子材料技術が引き金となり、一気にシェアーを落とす可能性がある。
クリープ破壊で壊れたフックやゴムの配合設計に失敗したコードの被覆について、ちょうどよい事例としてセミナーでその問題をとりあげさせていただいた。また、デジカメの購入について相談を受けると迷わずペンタックスを勧めている。
ちなみに、今デジカメの御三家は、キャノンとニコン、ソニーでペンタックスのシェアは風前の灯状態である。しかしペンタックスは決して御三家に劣るような悪い製品ではなく、使いやすくて高品質である。おまけに低価格だ。
レンズやアクセサリーを廉価販売の店でそろえるとニコンの定価の半額程度で揃えられる。安いカメラであってもコンテストで優勝できるような写真が撮れるのでコストパフォーマンスは高いといえる。
高分子材料技術の観点で劣っていると感じたニコンカメラの話を書いて、キャノンやソニーについて欠点を書かないのは不公平と思われるので少しその体験を書く。
キャノンのデジカメをカメラ店で触っていたら、ファインダーカバーのゴム部分に亀裂を見つけた。ニコンD2Hが投げ売りされていた時である。亀裂が無ければキャノンのデジカメを買おうと思っていたのだが、ほんの一瞬問題を見つけたばかりに消費者の心理は変化した。
店頭品なのでお客の扱いが十分影響しているが、これ以外にもいくつか店頭品のカメラが破損しているのを見つけたので、キャノン製は壊れやすい、という誤った印象を持ってしまった。
壊れるぐらい多くの人が触り人気がある、と解釈もできるが、壊れている部分がもしかしたら設計起因ではないかと疑い始めるともう駄目である。
ソニー製品について同様のトラウマがある。初めて購入したペンタックスMEの買い替えを検討していたときに、木陰でモデルが水着を着替えるCMの影響もあり、思わずミノルタカメラを手に取っていた。しかし、プラスチックを多用したデザインが手にしっくりとこない。ふと見たら底部に傷が入っていた。
この時購買意欲が一気に沈み、その時安く売られていたペンタックスMEスーパーを購入し10年使い続けた。
キャノンやニコン、ソニーのデジタル一眼レフは、今や世界市場において寡占状態の商品である。一方で昔国民に愛されたペンタックスというブランドはどんどんシェアーを落としている。しかし、商品の品質について細かいところを見ると、必ずしもペンタックスの品質がこれほどシェアーを落とすほど悪いわけではない。
判官びいきではないが、キャノンやニコン、ソニーの商品には、ペンタックスに負けている一部の品質が改善されないまま現在の状態にあるように見えてくる。それが高分子材料技術の問題ならば、トップスリーのメーカーは弊社に相談された方が良い。
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無端ベルトの押出成形は、リップ部が円形のダイで行う。ベルトの内径を決めるため、冷却用のサイジングダイがリップ部の近くに取り付けてある。
このあたりはノウハウになるので詳細を書けないが、PETの成膜で用いるTダイとは少し構造が異なる。
写真会社ではフィルム開発を担当していたので、押出成形についてそれなりのスキルを持っていたが、無端ベルトの押出は、ダイの形状も異なるので現場に入る前に少し勉強していた。
ゆえに押出速度を早めているのに音の高さが低音側に変化するのは、ダイの構造から考察すると異常な現象ではないかとすぐに疑問がわいた。
押出速度が早めたためにPPSの結晶化が起きなくなった、すなわち非晶質PPSのまま安定に押し出されている状態は、ダイの構造以外に全体のプロセスから考えても説明がつかない。
ただ一つの現象として、それを説明できるのは非科学的ではあるがPPSと6ナイロンが相溶し非晶質状態で安定化している高次構造のベルトができている場合だ。
(月曜日に続く)
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中間転写ベルトの押出成形の現場でボーっと眺めていたら、突然工場内の騒音の音色が変わった。
この音色の変化に対して当方が敏感に対応できたのは、自宅で仕事をするときに、いつも音楽を聴きながら仕事をしていた習慣のおかげである。
金属音が中心の高域成分の多い工場内の騒音が、ボムボムという低域成分の多い音に変わった。イメージとして寺井尚子からロンカーターに変わったような感じだ。
この音の変化の原因は、一日の規定の生産本数を終了し、単軸押出機のシリンダー内に残ったコンパウンドを押し出したいために、押出速度を早めたからである。
PPSというポリマーは結晶化しやすいので、生産時の金属音はベルトが押出されて冷却後一本一本採取されるときや、押し出し後断裁されるときのほんの一瞬力がかかる時に出ている。
生産終了後は、一本一本丁寧に採取はしていないが、適当な長さになるとはさみで乱暴に切り取っている。すなわち、生産終了後のほうが本来金属音がうるさくなってもよいような状況だ。
本来騒々しくなってもよいような状況で、逆に金属音が無くなり落ち着いた音質に変化していた。現場の人たちはこの変化を日常の変化として慣れっこになっていたが、当方には大変不思議な変化に思われた。(明日に続く)
カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子
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先日小鯛の笹漬けの話を書いたら質問が届いた。質問の内容はマンペイさんの即席ラーメン以外に具体例はあるのか、という質問である。
当方の開発した技術は、ゴム会社で30年間事業が続いた高純度SiCの技術はじめ多くの技術は、試行錯誤による独創の成果である。思いつきと言ってもよいような技術もある。
非科学的な表題の技術も、当方の営みから生まれた思いつき技術の一つである。以前この欄で紹介しているが、この技術は、豊川へ単身赴任が決まり、単身赴任先の下見のため現場でボーと中間転写ベルトの押出成形を眺めていて思いついた技術である。
PPS中間転写ベルトという技術テーマは、写真会社が他の会社と統合されたときにお荷物テーマの一つだった。
このテーマに終止符を打つことを期待されて当方が前任者から技術リーダーを引き継ぐ役目として研究所から派遣された。
その状況は、このテーマが成功し生産が始まったときに、本来研究所で開発が終了していなければならなかった技術が完成していなかったために中間転写ベルトの生産に影響を与えていることからも明らかである。
すなわち、当方が開発に失敗しテーマが終了することを見込んで、研究所の担当者は中間転写ベルトに必要なある技術の開発テーマを中断していた。
しかし、当方が技術開発に成功したものだから、慌てて開発を再開したが、基盤技術が完成したと言われているのに納期に間に合わなかった。このあたりには**技術ゆえに悲哀あふれる笑い話があるが、他人の技術なのでここで書かない。
ところで、表題の技術は中間転写ベルトの現場観察で生まれているが、何故6年近く誰も技術アイデアを思いつくことができなかったのか。
それは非科学的な現象だったからだ。フローリー・ハギンズ理論という少し適当な、それでいて重要な理論が高分子の教科書に載っており、この理論で表題の技術は否定される。
当方がノーベル賞学者の理論に対して懐疑的に見ている理由については、以前この欄に書いているが、少なくとも実際の生産における非平衡状態においてはこの理論を適用するのは技術開発の障害となる。(明日に続く)
カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子
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昨日のNHK朝ドラ「まんぷく」では、アジャイル開発を想起させるような場面が登場した。揚げ麺でゴールを実現したかのように見えたその時、「最適な揚げ麺の状態を想定して麺の配合をやり直す」と言い出したマンペイさんにフクちゃんはじめ皆びっくりした。
2000年前後からソフトウェアー開発技法として成功したアジャイル開発が注目されている。アジャイル開発は、ある程度形ができたところで市場にそれを投入し、市場の中で製品を完成させる方法である。
すなわち従来の様なシーケンシャルで開発を行っていたのでは、市場の変化に開発スピードが追いつかなくなって考え出された方法だ。コンピューターのソフトウェアーの進歩は加速度的で、いちはやくアジャイル開発が考案された。
アジャイル開発は材料の様な商品でも可能である。特性の一部が性能未達の新素材について、例えば耐久性はそこそこであるが、それを市場投入し、市場の中で素材の配合を最適化してゆく。
現代の技術があれば、材料に限らずなんでもとりあえず機能する部品なり製品を創り出すことは可能である。それを市場に投入し、市場での使われ方を見ながら新製品を作りこんでゆくのである。時にはマンペイさんのように市場において顧客を満足させる観点から再度設計しなおすことも。
スバル自動車は、毎年のマイナーチェンジで性能向上が著しいことで有名で、スバル車を購入する場合には、フルモデルチェンジ間際の新車を購入するとよい、とさえ言われている。もしかしたらアジャイル開発を行っているのかもしれない。
アジャイル開発の良いところは、開発段階でわからなかった市場情報を活かすことができる点である。マンペイさんは即席ラーメンの開発過程で、当初揚げ麺にすることなど考えていなかった。
しかし、最終商品の形態を揚げ麺にすると決まったならば、その揚げ麺で最高の味になる処方を再度作りなおすのは市場で勝ち続ける商品開発手法としてよい方法である。
市場投入間際まで商品の最終形態が決まらなかった時に、最終形態が決まったところでスタートから見直しをかけるのもアジャイル開発の一手法である。すなわち、アジャイル開発とはゴールから発想し、ゴールの状態で最適化する開発手法である。
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NHK朝ドラのマンペイさんはついに揚げ麺による即席ラーメンの製造法を見つけた。フクちゃんは、ようやく完成した、と喜んでいたら、マンペイさんはこれからだという。
研究開発のステップを御存じない方は、この場面をどのように感じられたのだろうか。実は、現代の多くの企業で行われているステージゲート法の研究開発では、ようやく企画が完成した段階なのだ(注1)。
番組を毎日見てこられた方は、その長い苦労を見て、昨日の場面がゴールに見えたのかもしれないが、まさにマンペイさんの言葉のように、これから研究開発を始められるようになったのだ。
ゴム会社のU取締役は、紙の企画書だけを持ってきた管理職に対し、まずモノを持ってこい、としかりつけていた。企画段階でまず具体的なモノまでできていることが研究開発を成功させる秘訣だともいわれていた。
まさにドラマはその言葉通りに進んでいるのだ。そして科学的裏付けを取るためにダネイホンでお世話になった大学教授に科学の視点で出来上がった技術について考察を求めている場面も紹介された。
ステージゲート法による研究開発では、企画が研究開発に移行する前にゲート段階で科学的視点から厳しい評価が下される。
しかし、企画に新しいシステムを盛り込むためには、マンペイさんがやられたような非科学的な試行錯誤も重要な技術手段だ。写真会社では試行錯誤で仕事をやるな、と言っていた役員がいたが、会社により試行錯誤を認めていないところもある。
しかし、試行錯誤により自然界から機能を見つけ出す作業は重要である。試行錯誤を否定するCTOのもとでは、誰でも気がつく当たり前の技術しか生まれない(注2)。即席ラーメンの様な世の中にない商品を生み出すためには、試行錯誤も重要な技術手段の一つだ。
余談だが、ラテン方格を用いるタグチメソッドは、試行錯誤法に他ならない。なぜなら、ラテン方格はすべての条件の一部実施を可能にするために考案された手法だ。
(注1)ゴム会社の高純度SiC事業では、フェノール樹脂とエチルシリケートの均一に混ざり合った前駆体が合成されただけでは、その企画がゴム会社で認められていない。企画が認められていなかったばかりか、世間でいうところの係長クラスの昇進試験で出された問題で「あなたが推進したい新規事業について述べてください」という問いに対し、その企画内容を書いても0点がつけられている。無機材質研究所に留学して6ケ月経過した時に人事部長からその結果を告げられ、傍らで聴かれていた所長が、その内容を1週間だけチャンスを与えるから実現してみたまえ、と言われたおかげで高純度SiCを生み出すことができた。前駆体を無機材質研究所の電気炉で焼成しただけなので、1週間で完成したわけだが、その1け月後には、社長から2億4千万円の先行投資を頂いている。このようにして生まれた企画が30年続く新事業になった。昨年10月にこの事業は名古屋の会社に移管されたが、事業移管先が名古屋の会社というのも不思議である。
(注2)だから科学的なのだ。論理的結果として導かれるモノは、科学がこれだけ普及した時代には、誰でも作り出せる状態にある。オープンイノベーションが叫ばれるようになった背景には、科学的に考えていては見いだせないような技術がどこかに転がっていないか、という期待感がある。本来はドラッカーが言い始めた言葉だが。
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結晶という言葉は、日常でも使われる大変ポピュラーな物質の状態あるいは相を意味する単語である。この言葉の学術定義は意外にも1992年に国際結晶学連合により行われている。
それによると、「本質的に離散的な回折を与える固体」となっており、之より以前の結晶の概念が広く拡張されている。また、この定義で高分子結晶も十分に結晶と呼んでもよい時代になった。
そもそも結晶とは鉱物学で生まれた言葉、と学生時代に無機材料科学の授業で習った。鉱物をたたき割るとへき開面で割れる。この規則正しさから鉱物を分類する方法として結晶という言葉が生まれているそうだ。
すなわち、もともとマクロの状態で定義されたような言葉である。長い間学術用語としては定義されず使われてきたのだが、1992年にかなり広い領域の物質まで含んだ言葉として定義された。
この定義前には、ナノ結晶という造語も生まれている。ただ、学生時代に無機結晶のX線回折実験を行ったとき、すべての方位の回折が現れていなければ結晶と呼んではいけない、と指導された。ナノ結晶は主に高分子材料研究者が使用していた。
無機材料の結晶化速度論については1980年代にほぼその体系が出来上がった。当方の学位論文では、その体系をまとめ上げているが、面白いのは、高分子結晶はすべてアブラミ式で議論される点である。
ラメラができるところまではそれでも良いかもしれないが、ラメラから球晶へ成長するところまでアブラミ式で整理している研究に出会うと質問の一つでもしたくなる。
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