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2018.02/11 科学者のときめき(2)

文春砲など標的にしないだろうから、科学者が倫理観を喪失する問題を今日も少し書いてみる。当方は技術者だが科学者にあこがれたこともあり、科学者が不倫と意識せず論文不正に手を染めてしまう理由がよくわかる。

 

まず科学者と技術者の根本的違いをのべれば、科学者は自然を論理で支配しようとするが、技術者は自然を生活に役立てようと活動する。この違いからくる倫理観の差異は大きい。技術者は人類の幸福という問題をどうしても考える必要に迫られる(注)。

 

また、素粒子物理学の進歩を見れば明らかなように、技術者にとって原子や分子レベルの機能で十分だったにも拘らず、さらに細かい粒子の存在を科学者は技術者に提示した。その結果、技術者にしてみれば、そこから生まれる機能をどのように使うのか悩まなくてはならなくなった。

 

ただし、技術者は粒子であることを知らなくても、すでにその機能を活用していたので、科学者の成果物で余分な仕事を増やされたような気持ちになった者も技術者にはいると思う。

 

それだけでなく科学者はさらに細かいレベルまでつき進んでいった。その果てがどのように人類に役立つのか考えず、ただひたすら論理の導くままにコストがどれだけかかろうが、とにかく果ての果てまで論理の支配のもとに進んでいった。そして、その行為に倫理観は必要ない。

 

おそらく今や論文に書かれていることが本当に正しいかどうかがわかる技術者はいないのではないかと思われるレベルまで、素粒子物理は進んでいる。論理の正しさを確認するために実験が必要になってくるが、その実験でさえも正確な論理で裏打ちされた実験が必要となり、誰が見てもその正しさを理解できる状況ではなくなった。

 

だからほんの少しのデータの改竄でも論文不正として取り上げなければいけない、と科学者は考えるようになっていったのではなかろうか。ところが、論理で自然を支配しようとして行き過ぎると実験データを改ざんしたいという動機が生まれる可能性がある。

 

かつて生データの手動SN比改善など日常茶飯事の時代もあった。気に入らないシグナルをノイズの中に埋めることなど、卒論提出期限が迫って無意識にやっているのを目撃したこともある。一方ノイズのような信号のX線チャートを見て結晶に基づくピークと主張した大学教授もいた。

 

この点に気がつくと、科学者は不倫と紙一重のところで仕事をしている職業だと理解できる。ときめきだけで突っ走っていると、生臭坊主の説話をごもっともと聞かなければ救われない事態になる恐れがある。

 

人間は罪深い生き物かもしれないが、さらに罪を増やさない努力が幸せを約束する、と考えてほしい。不倫は文化だといったふとどき者もいたが、瀬戸内氏の言うような不倫など当たり前の社会にしてはいけない。転ばぬ先の杖として、特に科学者は倫理をよく学び不倫をしないように努力しなければいけない。

 

(注)今社会問題になっている企業の品質管理部門で行われているデータ改ざんは、一部の人の幸福だけを願った結果、と捉えることができ、技術者の行為ではない。技術者は誰もが幸せを感じるよう努力する職業なのだ。

 

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2018.02/10 科学者のときめき(1)

昨日のアサイチで瀬戸内寂聴氏が、不倫とは雷に打たれたようなもので私も何度もしたわ、と言われていたが、不倫による被害家族のことを考えていない。独身女性が妻帯者の男性に簡単にときめいてもらっても困るのだ。

 

瀬戸内氏は源氏物語も不倫を描いた名著とその痴性の歴史も語っていた。その他、恋にときめくのは女性の性の様なもの、とどこかで読んだような気がするが、科学者は自然現象にときめき、それが研究のモチベーションにつながる。それゆえ、瀬戸内氏の話を聞いているとその活動は不倫と同じように見えてくる。

 

同じ雷に打たれたような喜びならば、研究活動のほうが、よほど社会のためになる。文春砲は不倫だけでなく予算の少ない中で基礎研究に打ち込んでいる研究者の喘ぎも扱ったら面白いと思う。

 

山中博士が胸を痛めたのは、この科学者の性に気がついていなかった反省からかもしれない。瀬戸内氏との対談を組んだら面白いかもしれない。何故彼は簡単に辞職せず、給与返上としたのか。科学者としての心の問題が分かるとその行動を理解できる。

 

たびたび起きる論文不正は、不倫同様に倫理の視点で科学者を教育しなければ、無くすことができない。瀬戸内氏同様に、私も昔は論文不正をやったわよ、という老科学者は多いはずだ。デジタル機器の無い時代では、データをロットリングを用いて手書きしていた。

 

論理的に出てもらっては困るノイズで汚れたアナログ信号のチャートを論文用に書き写すときに、頭の中でSN比の改善を行っていた研究者は多いはずだ。例えばNMRは、ノイズの中から信号を拾い出さなければいけない時代があった。家族の存在を忘れて不倫に走るように、そのノイズを忘れたかのようなチャートが書かれた論文のあふれていた時代がある。

 

グラフのわずかな歪曲も許されず、今や大学の研究者の中には、桃色吐息をしのぐ青色吐息で生活保護まで受けなければいけないような人も出てきた。自分で選んだ道だから自己責任と言ってしまえばそれまでだが、少し政府や国会議員は、現在の文部科学行政を見直した方が良い。

 

iPS細胞の論文不正では研究者の収入の不安定さが事件を引き起こしたように報じられたが、実態は、そうではないはずだ。論文不正をやってしまう科学者の性が原因と当方は思っており、そこにスポットをあてて文春砲がさく裂したら面白いと思う。

 

実は、科学者という職業は、時として倫理観を喪失するような、人間の欲望が原動力となる職業である。換言すれば倫理観など忘れ、論理の美しさとその美しさの中で自然現象を捉えることができたときに、科学者は知的な支配欲を満たされたような言い知れぬ恍惚感を味わう。

 

当時600万円前後で熱天秤(測定上限1200℃)が買えた時代に、品質管理をするためにSiC生成機構を正しく知る必要に迫られ、2000万円かけて測定上限が2000℃の熱天秤を自作した。

 

その熱天秤で当方の合成した低コスト前駆体を分析したところ、世界で初めてSiCの反応機構が解明され、一瞬我を忘れ、出力されたチャートをみながら恍惚感に浸っていた。今から思えばそのトキメキは、脳科学の成果によると不倫と変わらない。ただし、この場合は倫理に反することをしていない。

 

ところが、周囲からは2000万円かけて熱天秤を自作したことについて、いろいろ言われた。趣味で仕事をしているとか、学会発表のためとかは、まだ我慢できたが、2億4千万円投資された金を好きなように使っている、と言われたときには傷ついた。

 

「分子レベルで均一に混ざっていることを固形の状態でどのように品質保証するのか」、という問題は、均一固相反応の取り扱いが反応速度論を用いてできる、という科学的な証明を用いると最も確実にできる。

 

量産プロセスにおいて抜き取り検査により1時間熱分析を行えば、すぐに判定できる。数値ではなく、熱重量分析で得られる曲線の形状が品質保証データなのでねつ造のしようがない。

 

顕微鏡で相分離していないことを確認するのも一つの方法であるが、生産はマクロ的な行為であり、その品質保証では一定量の大きさでその均一性を保証できる必要があった。ミクロ領域の情報しか得られない顕微鏡だけで量産性を判断するのは、危険である。

 

科学ではミクロ領域における情報で証明できれば論理を構築できて、それで仕事は終わるが、技術では、ミクロからマクロまでうまく機能しているかどうかの視点が求められる。これは科学と技術の相違点だが、技術者は均一固相反応で解析できる結果が得られたからと言って恍惚感に浸っていては許されない。量産出来て初めて喜ぶべきストイックな職業である。

カテゴリー : 一般

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2018.02/09 高純度SiC前駆体の発明が生まれたとき(3)

ゴム練りをやっているときに、フェノール樹脂とポリエチルシリケートのリアクティブブレンドを思いついたのだ。ただ、その時はそのようなことを言えない。ほかのことを考えながら仕事をしていたのか、と叱られるのがおちである。

 

ほかのことを考えていたわけでなく、何も考えず言われたことだけ素直に作業していた(注)ので、思いついたのである。肉体は動いていたが、頭など働いていなかった。天秤でゴムを秤量し、バンバリーを運転するぐらいは、無意識にできた。だから、便利に使われていたことも理解していた。

 

自分の仕事だけが唯一ゴム会社に貢献している、と思いあがった年上の研究者は、上司も通さず、その自分の職位のパワーで便利な当方を時々小間使いとして使っていた。ただ、そのおかげで、いくつかアイデアが生まれていたので、煩わしいと思っていても手伝っていた。

 

ゴム練りをテーマとして担当したのは3ケ月しかないが、このような小間使いをやっていたおかげで、スキルだけは上がっていった。

 

さて、リアクティブブレンドのアイデアは生まれたが、フェノール樹脂の難燃化プロジェクトの仕事として実施する時間は無かった。ゆえにプロジェクトが終了した時に、余った原材料の片付け仕事を率先して申し出た。

 

余ったフェノール樹脂や検討に用いた触媒の処理のために一日とり、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂の反応条件を調べながら、失敗した反応物を次々とごみ袋へ廃棄していった。このような実験は気楽である。ごみ処理過程で高純度SiCの前駆体反応条件の手掛かりが見つかっている。

 

(注)転職するきっかけとなった電気粘性流体の増粘問題の仕事では、お手伝いではなく、その問題解決が主の仕事になるといわれた。高純度SiC事業立ち上げのため住友金属工業とのJVを検討し始めていた時である。さらに、電気粘性流体はゴムに封入して用いるので、ゴムに配合剤が入っていなくても耐久性のあるゴムを開発するのが当方の仕事だという。

経験知から判断して不可能と思われた仕事なので、人事が発令される前に問題解決しようと一晩で問題解決できる界面活性剤を見つけた。あとから知らされたのだが、増粘問題は界面活性剤では解決できない、というマル秘の報告書が提出されていた。一年ほど検討されたらしいがプロジェクトにとってあまりにも致命的な結果なので研究所内にその結果は知らされていなかった。

界面活性剤で問題解決できたのだが、やがて上司となる方が、界面活性剤ではまずいから第三成分と呼びなさい、と言われた。配合剤の入っていないゴム開発という非常識なテーマから解放され、第三成分による電気粘性流体の増粘問題解決がテーマとなった。一応第三成分とその後の会議では言っていた。しかし、研究所内の発表会では、過去の報告書をマル秘という理由で見せていただいていなかったため、第三成分すなわち界面活性剤で問題解決した、と丁寧に説明してしまった。

それから不可思議な事件が起き始めたが、住友金属工業との高純度SiCのJVが立ち上がり、一人で二つの難度の高い仕事をしていたので、雑事を無視して真摯に仕事に邁進していた。当時新婚ほやほや状態で、何があっても幸福感という状態だったのが良くなかったのかもしれない。

今から思えば定時退社でありながらよくあれだけの業務をこなせたと感心している。電気粘性流体の第三成分による実用化と高純度SiCのJVの二つの仕事を一人でこなしていた。また、高純度SiCの研究について役員からの指示で学位論文にまとめていた。

会議では基礎データが不足している点を指摘する人が大勢いたが、新しく上司になられた方がたった一人の部下をかわいがってくださり、会議の場ではそれらの批判をうまくかわしてくださった。

基礎データなどとる時間は無かったが、実用化に向けて毎日着実に進歩し、さらに電気粘性流体用難燃性油や高性能電気粘性流体用粉体3種の構造理論と実際、などという怪しいテーマ提案をしていた。どこが怪しいのかというと、突然変異的に、それまで存在しなかった高い性能で機能するすぐに実用化できそうな電気粘性流体が会議の席で提示されたのである。

これは電気粘性流体実用化プロジェクトの会議でありながらその基礎研究に重点が置かれ、なかなか実用に耐えうるモノが見えていなかったので、会議の方向を変えるため当方が頭に思い描いた構造の物質を作って見せたのだ。2億4千万円の先行投資でスタートした高純度SiCの技術は、当時先端素材をすぐに作り出せるレベルまで上がっていた。

実際に出来上がったモノ(製品)を示していたので、基礎データが無い点を指摘する人はしだいに減っていった。

実際にモノを示していたので、一部の科学者が行うようなデータねつ造など不要であった。技術では実際に再現よく機能するモノが必要なのだ。美しい理論ではない。

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子

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2018.02/08 高純度SiC前駆体の発明が生まれたとき(2)

昨日の続きだが、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂とのポリマーアロイについて合成条件を探索する仕事は、サラリーマンを続けるためにあきらめなければいけない妄想だった。無機高分子でフェノール樹脂を変性するアイデアは、当時特許も公開されていない画期的アイデアだったが、フェノール樹脂発泡体の開発は、このポリマーアロイの検討を計画からはずし、常識的な手段で実用化している。

 

この仕事を担当していたある日、終日他の人の仕事のお手伝いをすることになった。企業の若手研究者は、ときどきこのように小間使いとして使われる。ここで嫌な顔をしていてはサラリーマンとして失格だ。

 

他の人の仕事の手伝いなので何も考えなくてよいメリットがある、ぐらいの気持ちは許されると考えた。ここで、つまらない仕事を手伝わされている、自分だったらもう少し気の利いた方法でやるぞ、などと考えるようではいけない。ひたすら頭を空っぽにして手伝っておれば、依頼した側は、それで満足している。

 

学生時代ならば、このような依頼に対して一言二言言っていたが、社会に出て半年もすればそのような言動は、例え有益なアドバイスであっても嫌われることを自然に学ぶ。いわゆる忖度などということよりも、せっかく良いアイデアが浮かび、相手にとってメリットのある一言であったとしても、その後自分が傷つくむなしさを味わいたくないだけである。

 

年を重ねた今、当方のアドバイスでうまくいったかもしれない仕事が幾つか思い出され、どうせお手伝いだからと黙って失敗する仕事を手伝っていたのは少し不誠実だった、と反省したりする。

 

その現象が起きるメカニズムを理解すれば、用途が限定されるつまらないデバイスと思っていた電気粘性流体の増粘問題が起きたときに、高純度SiCの事業化を進めていた当方にお手伝い仕事が回ってきた。この時は早く仕事を片付けたかったので、お手伝いを頼まれてすぐに問題解決した結果、FDを壊されたような経験をしてもこのような気持ちになれるのは、ドラッカーが著書で述べている「貢献」の意味を本当に理解できたからかもしれない。

 

しかし、当時は社会で身についたわずかに素直さの欠けたこのような態度が、頭を空っぽにする機会を作りアイデアを生み出すのに役だっていたのかもしれない。一言二言言いたくなる自分を押し殺すために何も考えず、ただひたすら他人の仕事を手伝う時間は、当方にとって脳の休息時間だったのだろう。

 

バンバリーでゴムを練っていた時に、危険作業という理由でその作業に注意を払っていたが、それは職人のように身についた自然な行動であり、頭の中は全くの空っぽになっていた。すなわち、ほかのことを考えていては危険なので、作業以外のことを考えていなかったが、その作業は定常作業だったので脳を働かせる必要はなかった。

 

このような状態で、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂をリアクティブブレンドするアイデアが突然ひらめいた。アイデアと無関係な他人の仕事を手伝っていて、失敗もしていないのに突然「あっ!」と叫んだものだから、手伝いの依頼をした人はびっくりしていた。実験室では大きな声を出してはいけない。

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子

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2018.02/07 高純度SiC前駆体の発明が生まれたとき(1)

高純度SiCの前駆体は、フェノール樹脂とポリエチルシリケートとのポリマーアロイである。このポリマーアロイは、有名なフローリー・ハギンズ理論に反するブレンド物だ。すなわちこの理論によれば絶対に混ざり合わない組み合わせである。

 

ゆえに高分子の形式知を重視する優秀な科学者は、絶対に思いつかないアイデアであり、もしそのアイデアが、成功したりしたら、嫉妬にとどまらず恨みまで買いそうなキワモノ技術となる。実際にこの発明やその他形式知にとらわれないアイデアの成功でFDを同僚の研究者に壊されている。

 

この発明の原点は、フェノール樹脂発泡体の難燃化技術開発である。フェノール樹脂発泡体は、特定の反応条件で合成すれば、それ自身で高い難燃性を有する材料である。しかし、製造技術が無い場合には、LOIが21前後の発泡体しか得られず、かろうじて自己消火性を示す材料しか得られない。

 

開発スタート時に、無機物質とのハイブリッドにすれば、ハイブリッドの製造条件を満たす限り高い防火性を兼ね添えた発泡断熱材になるのではないかと考えた。ただ、これはひらめきではなくて、当方が無機高分子研究会の運営委員を当時担当していたので、その研究会の発表ネタとして考えた企画である。

 

詳細は省略するが、この時は、可能性のありそうな無機高分子を手当たり次第でフェノール樹脂と混ぜてみて、フェノール樹脂と無機高分子の両者の良溶媒存在下で混合すると均一に混ざることを見出した。ただし、これは両者のSP値が一致している高分子を混ぜているのでフローリー・ハギンズの理論通りの結果である。

 

ただ、得られたポリマーアロイは高い防火性と力学強度の優れた材料となった。しかし、製造プロセスは多段階となり、さらにジオキサンを用いていたので、実用化できるプロセスではなかった。その結果、無機高分子研究会で発表するための研究となった。

 

実用化できない材料ではあったが、水ガラス抽出物とフェノール樹脂とのポリマーアロイはケイ酸とフェノール樹脂が分子レベルで混合された魅力的な構造をしていた。だからこれを何とか経済的なプロセスで合成できないか、と考えるようになった。「君の名は」と問いたいが、初対面ではなかなか言い出せない、そんな気持ちと通じる、毎日が悶々とした欲求不満状態だ。

 

ポリエチルシリケートとフェノール樹脂との組み合わせが一つの正解だ、とわかっていたが、形式知であるフローリー・ハギンズ理論が邪魔をして、第一線を越えられないのだ。とりあえず形式知を総動員し、無機高分子研究会発表データを得るために水ガラスからケイ酸を抽出する実験を繰り返してみた。

 

抽出物を安定化する有機溶剤とともにフェノール樹脂と混合し、有機溶剤を真空蒸留で取り除き、同時に発泡体に仕上げる技術は、実用化は難しいが、面白い材料を生み出した。しかし、実験をやりながら、ホスファゼン変性ポリウレタンフォームの開発で始末書を書かされたことを思い出した。欲求不満の上に、これをテーマ提案した時に受けるパワーハラスメントが頭に浮かんだ。

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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2018.02/06 アイデアがひらめくとき

4日日曜日夜9時のNHKで脳について放送していた。シリーズの特番物でタモリ氏と山中博士がが司会を務めている。その番組の中で、ひらめきが脳のどのような状態で生まれるのか、を説明していた。

 

説明によると、ボーっとしているときの脳は、ひらめきを生み出す状態を作っているという。そしてひらめいたときには、脳の情報ネットワークが活発に動くとの説明があった。

 

山中博士は、自身の体験としてそれが1回しかなくて、その一回はお風呂に入っていた時だという。論文を読み、一生懸命考えていてもなかなか思いつかなかったが、たまたまお風呂に入っていた時に、突然iPS細胞のアイデアがひらめいたという。

 

おそらくたった一回は謙遜だろうと思う。あるいは、科学者ゆえにひらめきだけで仕事をやっていないことを表現されたかったのかもしれない。この思いに至った時に、昨日この欄で書くことをためらった。

 

なぜなら、当方のしてきた仕事がすべてひらめきの成果と誤解されるのを恐れたからだ。ただ、日曜日のひらめきについての説明は、当方の仕事のスタイルで成果が出たことをうまく説明できるので、ここで誤解を恐れず公開することは、社会貢献になると思い、明日から少し連載で書いてみたい。

 

すなわち、日曜日に解説していたひらめきを生み出す脳の話は、仕事のやり方を工夫すると、日々活用できるからだ。小生は、日曜日の解説を知らなかったが、高純度SiCの事業を推進していたある日、アイデアが出やすいタイミングに自分で気がつきそれを今でも実践している。

カテゴリー : 一般

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2018.02/05 高分子の難燃化技術(10)

高分子材料の中には、耐熱性が高く難燃性の優れた高分子が存在する。例えばPPSは難燃剤を添加しなくても空気中では自己消火性を示す。ゆえに電子機器に普及している。

 

耐熱性が高ければ難燃性も優れているかというとそうではない。耐熱性が優れていても可燃性の高分子が存在し、さらに基本的な骨格(一次構造)は難燃性がありそうに見えても製造プロセスにより高次構造が変化すると一気に燃えやすくなる高分子も存在する。

 

例えばフェノール樹脂は、硬化触媒の種類や製造条件で、LOIは30以上から19前後まで変化するから要注意の高分子材料だ。

 

40年近く前、初めてレゾール型フェノール樹脂発泡体を合成してびっくりした。ポリウレタン並みによく燃えたのだ。しかし、熱分析すると窒素中の耐熱性は高い。空気中の耐熱性はポリウレタン並みである。

 

自主研究でいろいろと調べ、ある結論にいたり、フェノール樹脂とポリエチルシリケートの相溶した高分子を発明したのだが、これは高純度SiCの前駆体として発展した。

 

小生が講師をする高分子の難燃技術の講演会では、これまでこの周辺技術を話してこなかったが、次回の講演会ではフェノール樹脂の難燃性について経験知としてお話する。論文にも公開されていない話である。

 

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2月13日に高分子難燃化技術に関する講演会(弊社へお申し込みの場合には参加費30,000円)を行います。詳細は弊社へお問い合わせください。経験知伝承が第一の目的ですが、形式知の観点で整理したデータも使用します。形式知のデータは、30年以上前高分子学会や無機高分子研究会、高分子の崩壊と安定化研究会で発表した内容です。経験知につきましては、中国ローカル企業を指導しながらその再現性を確認した結果で、樹脂の混練技術も講演会の中で説明致します。高分子の知識が無い技術者でもご理解いただけるよう、テキストには初心者用の説明も付録として添付します。形式知よりも経験知の進歩が著しい分野です。

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2018.02/04 WINDOWS10で注意すること

インテルCPUの脆弱性の問題でWINDOWS10の自動更新が行われ、PCが使えなくなった話を先日書いた。修復することをあきらめ、新しいPCを一台購入したのだが、CPUが3年前自作したものより新しいのに何か遅い。

 

以前のマシンはハードディスクをRAIDで使用していたが、今回の新品のマシンはSSDである。ゆえに起動は早いのだが、パワーポイントを作成したり、同時にWordを起動して編集したりを繰り返すと、何か以前とペースが異なる。

 

古いマシンも新しいマシンもCorei7であり、何が違うのかは、後日書くが、3年前の自作マシンが壊れた原因について症状の再現ができたのでWINDOWS10を使用されている方に注意を喚起する意味で、本日は当方の推定を以下に述べる。

 

システムは壊れたがデータはすべて復旧できた。ただダウンロードして購入したソフトウェアーはすべて失った。手作りマシンを復旧できても過去のソフトウェアーをOSは消去したのだ。ただ、データは別ドライブだったので消去されずに無事だった。

 

ここで、データをすべてファイルサーバへ退避し、あらためてデータドライブだけRAIDに組み上げたところ、OSがまたおかしくなった。どうやらドライブの単純な増設については大丈夫だが、BIOSの変更を伴うハードウェアーの変更を行うとOSが壊れるようだ。

 

今回の更新ではBIOSをOSが勝手に変更していると言われている。当方のパソコンもBIOSを変更された痕跡があった。RAIDの状態がデフォルトになっていたのはショックだった。

 

これは想像だが、CPUの脆弱性の問題はストレージのI/Oに関する部分ではなかろうか。AMDは今回の問題に関して、インテルと異なるアーキテクチャーゆえに無関係を表明している。AMDとインテルではメモリーのアクセスに関してアーキテクチャーが異なる。AMDのCPUのほうが安全かもしれない。

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2018.02/03 プログラミング(14)

C#がオブジェクト指向の言語としてよく考えられていること、そしてオブジェクト指向のプログラミングについて当方の視点でいろいろ書いてきたが、プログラミングの教科書を読むと、プログラミング言語の発達を促しているのは、1.可読性、2.チームワークプログラミングだそうだ。

 

すなわち、OSも含め最近のシステムは膨大なプログラムを必要とし、その肥大化したプログラムを過去のFORTRANレベルのプログラム言語のコンセプトで書いていたのでは、システム開発やその後のメンテナンスが難しい、ということだ。

 

BASICやFORTRAN、Cは、文法の概念はわかりやすく、文法書をさっと読んですぐにプログラミングできた。また、Cでは、構造化や、オブジェクト指向的なプログラミングが可能な自由な仕掛けがあった。しかし、それを使わなくても動くプログラムを作成できた。

 

しかし、他人の書いたプログラムを理解するには少し時間が必要だった。C#のプログラムはオブジェクト指向を理解していると、プログラム内容を容易に理解できる。すなわち何をしようとしてコードを書いているのかが、一目でわかる。

 

ただし、一目でわかるから自分がすぐにコーディングできるかどうかは別の問題で、分厚い文法書と格闘することになる。格闘して理解できれば良いが、オブジェクト指向そのものとコンピューターの仕組みが少しわかっていないとちんぷんかんぷんの部分が少なからずある。

 

当方は社会に出てからコンピューターを独学で学んできたので文法書を2回読み、プログラミングができるようになったが、コンピューターに忖度して考え出された文法の部分は、コンピューターを理解していないと使いこなすことが少し難しいと思う。次回からこの辺りを考慮してC#のプログラミング手法について具体的に解説してゆく。

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2018.02/02 パチンコとゼロックス

パチンコ業界は縮小し続けている。今回は出玉規制で倒産する店がすでに40店舗を超えたという。数年前ご近所のパチンコ店が2店舗ほど消えたと思ったら、1件大型店が登場した。しかし、中をのぞくと閑古鳥が鳴いている。

 

パチンコは戦後名古屋で生まれた。創業者の正村の名を冠したパチンコ店が西区にあり、豊川へ単身赴任していた10年ほど前まで正村ビル3階に博物館が開設されていた。名古屋の産業観光の目玉になるのかと期待していたら、資金難で閉鎖されたままだ。

 

パチンコ業界の心配をしていたら、富士フイルムホールディングス(HD)は31日、子会社の富士ゼロックスと米事務機器大手ゼロックスを経営統合させたうえで買収する、というニュースを見つけた。

 

球体のトナーを静電気で操作して情報を紙に表示する技術は、ゼロックスで発明され、当初ゼロックスは複写機の代名詞だった。少なくとも当方が学生時代までは、高価な複写機は、U-BIXもゼロックスと呼ばれていた。

 

輪講の資料作りは、例の臭い青色コピーが使われた。A4一枚当たり二倍ほど値段が違うからゼロックスは使うな、と言われた。研究室には複写機が二台あり、一台は臭い複写機で、もう一台にはU-BIXと書かれていた。間違えてそれを使用したら叱られた。

 

U-BIXと書かれていてもゼロックスと呼ばれていたのだから、ゼロックスの影響力はパチンコの正村以上である。名古屋人であれば、パチンコは正村の発明であることを皆知っているが、名古屋を一歩出ればパチンコが趣味だという人でも正村の名前を知らない。

 

当方が上京した時、パチンコは郊外の大型店が発展している最中だった。いわゆるデジモノが登場し始めた時代である。フィーバーが登場した時には、バブルと重なり日本中フィーバー状態だった。当方はセラミックスフィーバーに夢中でいつの間にかパチンコとは疎遠になった。

 

パチンコ玉もトナーも球体であるが、その大きさは異なる。パチンコ玉は、天4ピンにはじかれ、なかなかヤクモノに球がはいらないが、トナーは器用に99%近く静電気で描かれた情報通りの場所に鎮座し、紙にそれが転写されその後加熱されて画像となる。

 

ハジキと呼ばれる汚れは1%以下である。パチンコ玉とは正反対の挙動だ。これはハジキを少なくしようと技術開発を進めた結果である。パチンコはいくらスキルを上げても大半の球は天4ピンに弾き飛ばされる。

 

だからトナーで情報が美しく描かれるという現実を見たらそこに努力した技術者たちの汗を思い浮かべるとともに、ゼロックス社の発想に感動しなければいけない。当方は学生時代に見たU-BIXの汚れた画像が、転職した時にゼロックスよりも美しい画像になっていたのを見て、複写機をゼロックスと呼ばなくなった。

 

努力が進歩として結果に表れないと飽きてくる。レーザープリンターの画質は著しく向上したが、パチンコで生計を立てているという人を知らない。技術開発には飽きは無いが、パチンコには飽きる人も多いと思う。

 

しかしゼロックス社が複写機を世に送り出した時にトナーは、パチンコ玉の様なきれいな球体ではなかった。画像の美しさを追求する技術の進歩がトナーをきれいな球体に仕上げていった。

 

カラー複写機は写真画質を目指していたが、インクジェットの写真画質には追いつけなかった(注)。大きさと精度でインクジェットに負けてしまった。ゼロックスの衰退は同じ市場においての勝敗だが、パチンコは多くの規制の中で発展してきたのに時代の流れで消えゆく運命にある。

 

パチンコの衰退については、衰退が始まった20世紀末から多様なゲームが登場したことが原因とされているが、本来は賭博でありながら賭博として扱ってもらえなかったことが大きいのではないか。名古屋では一時換金率が75%まで高かった時代がある。寒い日でも毎日店の外まで行列ができていた。

 

(注)普通紙に印刷した時には、圧倒的にトナー画像のほうがきれいである。インクジェットに対するレーザープリンターのアドバンテージはどのような紙に印刷しても同じような品質が得られるという点である。10万円以下のカラーレーザープリンターでは、magicolorブランドが最も美しい出力である。これは雑誌などの商品テストでも明らかにされている。高いオフィス機と同じ中間転写ベルトが使われているからだ。

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