浜名湖はウナギの養殖が盛んで、観光みやげはウナギにちなむ物品が多い。名古屋駅で売られなくなったうなぎパイもその一つである。JR東海は浜名湖土産を理由に名古屋駅でうなぎパイの取り扱いを中止した、という記事を見つけた。
新幹線の中では販売しているので問題はないという見解が、WEBを探したら載っていた。とんでもない話である。浜名湖土産のうなぎパイを名古屋駅で販売するのは少なくとも40年以上の歴史があり、当方が子供の頃から名古屋駅の定番の浜名湖土産であった。ひよこを東京駅で販売しているのと同じだ。なぜ赤福やながもちが販売できてうなぎパイがだめなのか。
どこかに陰謀めいた裏の話が出ていないか探したけれど見つからなかった。例えばうなぎパイには、ウナギのエキスが入っていることになっているが、それが入っていないと判明したので取り扱いを辞めたとかいう話を期待した。
どこにもそのような記事が出ていないので、ウナギエキスはわずかながら入っているのだろうと思う。源氏パイや不二家のホームパイよりも美味で独特の味がする。パイ生地の練り方がカオス混合であるが、プラント立ち上げの願掛けの食べ物としてパイ関係はふさわしい。
中間転写ベルトのコンパウンド工場を立ち上げるために10年ほど前、毎日豊川から袋井へ通う生活を3ヶ月ほど続けた。浜名湖のドライブインにはよく立ち寄り、袋入りの安いうなぎパイを買って帰った。
安くても正真正銘のうなぎパイで小腹の空いたおなかにはごちそうだった。豊川に着くと開化亭の白ラーメン大盛りを食べていたので不健康な毎日だった。単身赴任は自炊生活を習慣にしていたが、コンパウンドのプラントを立ち上げているときには自炊の時間が無かった。
浜名湖のドライブインに、平日は作業着の人が比較的多かった。当方も作業着だったので気楽に徘徊できた。そこで某会社磐田工場のSiCウェハーのプラントの噂話を聞いた。外で仕事の話をするのは注意しなくてはいけない。その道に詳しい人には、ちょっとした小声の話でも耳に届いてしまう。
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当方の所属している団体の一つで旅の本を出版するという。そのための一節を執筆するにあたり、愛知県を先月取材した。名古屋は当方の故郷だが、両親も亡くなったため実家を整理したので生活の拠点が無くなり朝早くから一日かけて日帰りの取材となった。
生活の拠点は無くなったが、思い出の地は幾つかあり、そこでデートすると恋は実らない、という伝説がある東山公園はその一つだった。しかし、伝説ではなく事実であることを体験してから行かなくなったが、名古屋大学のすぐ裏手の歩いて行ける距離に位置していることをこの取材で初めて知った。
学生時代にグラウンドでテニスなどをしていたときに、動物の声が聞こえており、近くにあることを知っていたが、歩いても行ける距離であることを発見した。昔は気の利いた散策のできる場所が少なかったので東山動物園はちょっとした繁華街だったが、今は平日閑古鳥が動物と一緒に鳴いている。
8月の暑い日なのでお客が少ないのかもしれないが、旅の本で取り上げることをやめた。地下鉄東山線で名古屋駅に出て徒歩12分でノリタケの森に着く。そこは東山動物園とは少し異なった趣のデートスポット(?)で、暑い日差しの中、日傘をさして相合い傘で歩くアベックが多い。但し平均年齢は60を超えている。
ノリタケの森には無料ギャラリーもあり、芸術の秋に向けて人で賑わうと思われるが、今回購入した旅行のガイドブックに取り上げられていない。旅の本では、この地を中心に取り上げて書くことにした。
帰りにお土産を買おうと駅の土産店を何件か見て歩いたが、有名な「夜のお菓子」が無い!売り切れかと思ったら名古屋土産ではないから名古屋駅に置いていないという。しかし、伊勢の名物「赤福餅」が置いてあるからおかしな話だ。なが餅もある。三重県の名物ならばOKで静岡県がダメだというのはどのような理由だろう?愛知県知事と静岡県知事とがけんかしたのか?
先日大阪府知事は小池知事に冷たい、という橋下氏の発言が記事になっていた。昔名古屋駅の定番だった土産物の一つ「うなぎパイ」が突然消えた珍事はどのような理由だろう。時間があるときに調査したい。
ところで、名古屋名物ならばういろうが有名だが、両口屋の千成りはどら焼きの最高峰だと思う。えびせんのゆかりもおいしいが、うなぎパイは方向性が異なるお菓子である。うなぎパイを名古屋で販売しても、それが浜名湖土産であることを誰でも知っている。是非名古屋駅の土産物店に、また、並べて欲しい。
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高分子材料は熱伝導性が悪い。ゆえに熱伝導性を向上するためには、熱伝導性の良好な微粒子を添加することになる。この時にもパーコレーション転移が問題となる。ただ、絶縁体である高分子に導電性を賦与する場合と異なるのは、微粒子の物性があまり大きく影響しない(注)。
すなわち、ある微粒子Aと熱伝導性が20倍30倍良好な微粒子Bとを高分子に添加してその熱伝導性の変化を比較しても、同じような挙動を示す。あたかも微粒子の熱伝導性の差の影響が無いような変化である。
あるセミナーに参加した時には、熱伝導性樹脂を設計する時に微粒子の熱伝導性はあまり影響しない、とはっきり言われた。熱伝導性樹脂を開発された経験のある方は、大抵は同様の体験をしている。
導電性の場合とどこが異なるのかと言うと、電子伝導ではトンネル効果で微粒子の接触抵抗の影響が小さくなるが、すなわち接触していなくてもホッピング伝導で電流は流れるが、フォノンではトンネル効果を利用できないので、十分な接触が無いと伝熱ができないという説明がもっともらしい。
すなわち、熱伝導性樹脂では微粒子どおしの接触状態が重要になる。そこで、粒度分布を制御したりして熱伝導を改善する、というアイデアが生まれ、過去にそのような発明が公開されたりしている。
しかし、それでも大きな改善は難しいし、このアイデアでは力学物性の制御が難しくなる場合も出てくる。そこで高分子そのものの熱伝導性を改良しようというアイデアが生まれ、幾つか熱伝導性の良好な高分子が開発されている。ただこのような高分子はえてして他の物性がダメな場合があり、結局汎用高分子に熱伝導性フィラーの分散技術の開発となる。またコストも安くなる。
(注)絶縁体と導電体では、材料の電気抵抗は10の14乗倍異なる。しかし、材料の熱伝導率の差はせいぜい10000倍程度である。ここでは、フィラーの電気抵抗を10倍、1000倍と変えるとパーコレーション転移の様子が大きく変化するが、フィラーの熱伝導率を10倍、1000倍と変えても同じようなパーコレーションの様子を示すという意味である。
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材料技術に関し、現代は基礎研究など不要で技術開発だけも良さそうな状況である。当方は研究が必要な領域の開発でも研究を無視してアジャイル開発をしている。しかし、それだから研究は不要と思ってはいない。例えば高分子科学やセラミックスさらには生命科学との学際部分には星の数ほど研究テーマがころがっている。
手前味噌で恐縮だが、高純度のSiC微粉開発を行っていた時に、偶然の結果ではあったが、最適製造条件が見つかり、いきなり量産設備をつくりあげることも可能となり、横型異形プッシャー炉という電気炉の特許も出願していた。この技術の重要なポイントは、SiC化の反応と冷却ゾーンとを間仕切りし、前駆体の反応終了後、別ゾーンで冷却を行うことを可能にする炉の構造である。
前駆体の製造条件も見つかり、SiC化を行う電気炉の設計もできて、技術開発としてほぼ完成に近い段階だった。すなわち、すでに研究は不要と思われた。しかし、それでも2000万円投資して超高温熱天秤を開発し、SiCの合成反応について、速度論的研究を行っている。これは、中部大学渡邉誠先生のご指導で学位論文としてまとめた研究の中心部分である。
なぜ、2000万円もかけて研究を行う必要があったのか。それは、当時SiC化の反応機構がよくわかっていなかったからだ。大学の先生の中には、幾つかの研究論文を並べて、反応機構を説明される人もいた。すなわち研究者として終わっている先生だ。
確かに従来の気相経由の反応機構でSiCの生成を十分に説明できそうな状況だったが、シリカ還元法においてウィスカーと粒子が共存したり、粒子だけ合成できたりする点について、研究データが不足していた。明確に言えば、SiC化の反応機構は当時わかっていた気相成長以外にも少なくとももう一つ反応機構があるように思われた。
有機合成について卒論で研究していた当方の目には、セラミックス研究者の反応機構に関する研究がザル研究に見えた。この点以外に、もし気相成長論が正しければ、当方の発明した前駆体はあまりありがたみの無い発明になる。前駆体法が他のSiC製造プロセスと大きく異なる、あるいはSiC合成のために大きな長所を持っていることを示す必要からもSiC化の反応機構解析は重要な研究だった。
超高温熱天秤を用いた速度論的解析により、フェノール樹脂とポリエチルシリケートとのリアクティブブレンドで合成された前駆体を用いた時のSiC化の反応機構は、気相を経由しない均一固相反応機構であることがわかった。この科学的研究成果から当時公開されていた多数の特許が同じ技術であることも証明でき、前駆体法だけが100%完璧に固相反応を実現できる方法であることも証明できた。そしてこれは前駆体法の簡便な品質管理技術の発明でもあった。
科学に基づく研究は新たな真理を生み出すために重要で、新たな真理が無くても技術開発は可能であるが、新たな真理が無ければその技術の本質を明らかにすることができない。技術の本質がわからなくても市場で安定に機能する製品をタグチメソッドで開発可能であるが、技術の本質がわかることで、本当に大切にしなければいけない技術、伝承すべき技術が明確になってくる。このために企業で研究が必要な時もある。
アカデミアで企業に先んじて研究を進める重要性は、この意味から明確であり、企業の現場から良い研究が生まれる状況をアカデミアは作ってはいけない。それがアカデミアの使命である。アカデミアで新しい真理が企業の技術開発に先行して生まれている状況が、アカデミアのあるべき姿である。SiCの反応速度論に関する投稿論文は、研究を着想からデータ収集まですべて行いながら当方がファーストオーサーになっていない問題がある。おまけに渡邉先生の名はそこには無い。企業研究者は注意すべき点である。
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独身寮の受信料についてどのような結末になったのかここでは書きにくいが、とにかく双方が納得する結論に落ち着くまで、かなりのエネルギーを消費した記憶がある。さらにそれだけのエネルギーを消費しても過払い金の返金を求めるためには訴訟しかない、と言う結果にかなりの理不尽を憶えた。
妥当なところでまとまったので、寮の管理人からは、いつまでも独身寮にいてください、ご協力ありがとう、と感謝されたが、受信料の結末以上に素直に喜べなかった。
もし受信機全機種からNHKの受信料を徴収したいとNHKが真剣に考えているならば、NHKは受信機全機種を管理すべきである。いまや放送は双方向になっており、技術的に可能なはずだ。そして受信料の支払いのない受信機には電波を受信できないようにロックしたら良いのではないか。
以前NHKの電波だけを受信できなくする受信機の発明が公開されていたが、普及していない。もしこれが普及したときにNHKの受信料支払いはどのように扱われるのだろうか。
NHKの受信ができない受信機では、受信料を支払わなくても良い、ということになったら、恐らく国民の大半はNHKを受信できない受信機を設置するようになるだろう。インターネットが普及しTVの視聴率が落ちている上に、いまやNHKの存在価値は災害情報だけである。
もし携帯用ワンセグでも受信料を支払うことになれば、おそらくワンセグ機能が付いていない携帯を選ぶ人も出てくるのではないか。iPhoneにはTVの受信機能がないのでこのシェアーが伸びる可能性がある。この裁判の行方は、どちらの結論になってもNHKにとって良い結果になると思えない。
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「研究者の6割が大学など所属先から支給される個人研究費が年間50万円に満たないことが、文部科学省による研究者約1万人対象のアンケート調査(回答率36%)で分かった。「10万円未満」と答えた研究者も14%おり、厳しい研究環境が浮かんだ。
10年前と比べて「減っている」とする回答は43%で、「おおむね同じ」(28%)や「増えている」(9%)を上回った。国公立大の方が私大より減る傾向が大きく、国立大では「おおむね5割以上減っている」との回答が24%に上った。
文科省学術研究助成課は減少の原因について「収入減などによる大学の経営環境の悪化が要因の一つだろう」と説明。特に国立大では、主な原資となる運営費交付金が過去10年で10%減少しており、その影響が大きいとみられるという。」
以上は、9月5日の毎日新聞の記事である。実は大学の研究費については、一般論で論じると昔から少なく、今が特に少ないわけではない。ただ、この10年文科省が運営費交付金を毎年減額しているのでその影響が大きい。
ところが運営費交付金が毎年減額されていることは分かっていることだから、研究者の数を減らせば良いだけである。それを実行していないので研究費圧迫が起きているのだろう。自助努力が足りない。
企業では容赦ないリストラが行われており、大学だけそれが行われない、というのは世間感覚からずれている。学会には時間の都合がつく限り参加努力をしているが、そこでの発表を見る限り、この研究者は引退した方が良い、と思われる研究がかなりある。学会にもでてこない研究者がいるとも聞いている。
一方で地味ではあるが、大学で是非今後も続けてもらいたい、という研究もあり、弊社が黒字であれば寄付もしたくなるような研究者が何割かいることも確かである。研究者への引退は言いにくいが寄付の申し出はできるので、黒字回復したら、毎年一定額このような研究者に寄付したいと考えている。
本当は儲かっている企業が弊社のような感覚で寄付を目指せば、アカデミアの研究者ももう少し淘汰が進むだろうと思われる。実は40年以上前の研究所ブームの時代は、企業からアカデミアへの寄付が多かった。そして研究費の多い講座は学生の人気が高かった。
また、これは旧無機材質研究所へ留学したときに所長から伺った話だが、故石橋正二郎氏は大阪工業試験場へ年間研究費に匹敵するほどの額を寄付されたという。この話を所長が記憶されており、当時セラミックスフィーバーで留学が難しかった研究所へ無関係の業界人でセラミックスの知識の無い当方だったが受け入れてくださった。
その結果所長や周囲の研究者のご指導もあり高純度SiCの研究を花開かせることができた。石橋正二郎氏という経営者のアカデミアへの寄付という社会貢献は時代を超えて生きていた。この例のように企業のアカデミアへの寄付は余裕があればどんどんすべきだろう。恩を受けた研究者がその恩を未来ある優秀な若人達に機会を与えるという別の形で社会貢献として還元する、このような健全なサイクルが回る社会が理想である。
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高度経済成長時代は独身寮も満杯で、部屋数と入居者の数は一致していた。当時独身寮に入居できなかった独身もいたそうだ。ところが第二次オイルショック後採用人数が激減し、独身寮に空きが目立ちはじめた。当方が入居したときには80%の入居率であった。
20%減少したことで受信料の支払いに疑義が生じたのだが、いかにもお役人が書いた文章で、さらに受信料をごまかしているような決めつけで書かれた問い合わせのアンケートを頂いた。あまりにも無礼な手紙で寮の管理人もカンカンに怒っていた記憶がある。
実体は、4月に80%の入居率であっても翌年の3月には50%程度まで下がるが、80%の入居率を基準に年間定額の支払いをしていたのである。すなわちNHK受信料の過払いが生じていた。
そこでアンケートに答えず、会社の総務課も同席してNHKの受信料担当者と受信契約の見直しをすることになった。この時の議論ではNHK側は事務処理の煩雑さから、4月の入居率を基準に一括払いで良い、と発言している。
当方は、過払い金の返還を要求したところ、受信料担当者は年間契約なので、と訳の分からない回答をしてきた。すったもんだのあげく、4月の入居率と翌年の3月の見込み入居率の平均値で契約する案で一度落ち着いた。
しかし、改めて契約するときに3月の見込み入居率をどのように算出するのかでもめた。当時は入寮者でまだ結婚する独身男性が100%近くだったが、それでも3月の入居率は10%前後変動しており、受信料担当者は、見込み値を高い値で設定するように求めてきた。この時NHKは受信料を過剰に徴収したい気持ちが強いように感じた。
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さいたま地裁が8月、ワンセグ放送を受信できる携帯電話を持っているだけではNHKの受信料を支払う「義務はない」と判断したことについて、高市早苗総務相は2日の閣議後記者会見で「携帯受信機も受信契約締結義務の対象と考えている」と述べたという。
裁判では、ワンセグ機能つき携帯電話の所有者が、放送法64条1項で受信契約の義務があると定められている「放送を受信できる受信設備を設置した者」にあたるかが争われている。高市氏は「NHKは『受信設備を設置する』ということの意味を『使用できる状況に置くこと』と規定しており、総務省もそれを認可している」と説明した。
高市氏の見解は、NHKを認可する立場で述べられたものであるが、三権分立の日本では司法の見解が優先される。この裁判の行方がどうなるかは、今後の司法の判断を待ちたいが、もし、携帯電話のワンセグも受信料を支払うという結論になった時の社会の混乱が予想される。
なぜなら、今や各家庭でもテレビは2台以上有り、それらの受信料の問題にも影響する恐れがあるからだ。今一台ごとに受信料を支払っている家庭はどれだけいるのか。
新入社員時代に独身寮で生活し寮長に任命された。このとき独身寮の受信料でNHKから疑義の説明を求められた。NHK側の言い分としては、部屋数だけ受信料を支払えというのだ。
当時独身寮の入居者それぞれがNHKと受信料の契約をしているわけではなかった。独身寮の入居者の人数をNHKに報告し、一括して寮費の一部から納入する仕組みになっていた。事務処理の煩雑さからNHKもそれを了承していた。(続く)
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高分子の大半は絶縁体である。ゆえに世界で初めて導電性高分子を発明した白川先生はノーベル賞を受賞された。絶縁体高分子に導電性を与えるためには、導電性のフィラーを添加すればよい。多くの場合コストが安いカーボン粉末が使われ、1000Ωcm程度まで抵抗をさげることができる。
ところが、10の10乗レベルの抵抗を有する半導体をこの方法で製造しようとすると大変難しい。パーコレーション転移が起きるために、抵抗が下がり過ぎたり、抵抗があがったりするからである。もしカーボンの導電性が低く、10の5乗前後であればこの変動を小さくできる。
この微粒子を高分子に分散し、目標とする抵抗の半導体物質を安定に製造するための微粒子の抵抗やその分散状態については、科学で推定可能で、技術目標まで科学的に立てることが可能である。すなわち、パーコレーション転移のシミュレーションプログラムを科学的に作ることが可能で、現実の現象をコンピューターで予測することができる。
このプログラムでカーボンのような導電性が良い微粒子を用いて、安定に10の10Ωcmの半導体を製造するには、微粒子の弱い凝集体を高分子中に発生させればよいことが示される。すなわち、弱い凝集体が10の5乗Ωcm程度の半導体微粒子として機能し、パーコレーション転移による変動を小さくする。
科学では、このようにパーコレーション転移を制御し高分子の高次構造設計目標まで示すことができるが、実際にこの高次構造を実現しようとすると大変である。科学では易しい問題でも技術ではかなり難しい問題となる。混練技術が科学で完全に解明されていないからだ。
カーボン超微粒子の弱い凝集体を均一の大きさで高分子中に均一に分散させるためには、分配混合を進めればよいことが教科書には書かれている。そのためのスクリューセグメントも経験的に知られている。しかし、それでもうまくゆかないのだ。
10年ほど前、日本を代表するコンパウンドメーカーの技術者から「素人は黙っとれ」と言われた。すなわち素人では理解できない世界であるというのが当業者の認識である。ところがそのコンパウンドメーカーを信頼していたら、とんでもないことになり、半年で自前の混練工場を建てなければいけない事態になった。
教科書に書かれていた混練技術は役に立たなかったが、ゴム会社で3ケ月間担当した樹脂補強ゴムの開発経験は大変役立った。残業代も出ない新入社員時代であったが、徹夜したり、サービス残業の毎日が定年前の開発で役立った。
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現代の科学の知識を活用しても解けない問題は、今でも多い。そのような問題を前にして技術者はどのように問題解決をしたらよいのか。これは、11月度の講演テーマだが、少しその内容の一部を書いてみる。
iPS細胞を知らない人はいないだろうが、あのノーベル賞が非科学的方法で問題解決されたことを知っている人は少ない。表現は異なるが要約すると、山中博士は意図的に非科学的方法で問題解決したのでその方法をノーベル賞受賞まで黙っていた、と語っている。
山中博士が研究に取り組まれた時に、iPS細胞ができそうなことは当時得られていた科学的情報から予測されていた。ただ科学で解明された遺伝子情報が膨大な量のために実験回数は天文学的になる。すなわち、iPS細胞はできそうだが、それを実現するための方法を短時間で見つけよ、と言う問題は科学的に解くには膨大な数の遺伝子情報を検証しなければならず、不可能に近い難問だった。
実際にヤマナカファクターを発表した時にどのように見つけたのか権威者から質問があったらしいが、彼は特許の問題があるので答えられない、と応答している。頭のいい研究者である。
例えばPPSと6ナイロンを相溶させた材料の実用化技術について退職前に高分子学会賞に推薦されたが審査会でウソだろう、と思われ落選した。あるいは、古い話だが高純度SiCの合成法を日本化学会で発表した時に故S先生に前駆体合成法について聞かれ、正直に試行錯誤で見つけた、と答え、痛い目に合っている。
学会と言う場所ではたとえそれが優れた成果であっても、科学的でなければ全否定される。全否定されたが、フローリーハギンズ理論で説明できない複写機の部品は、問題なく10年過ぎた今でも無事使われている。SiCの前駆体については未だに科学的な解析はされていないにもかかわらず、事業は30年以上続いている。
iPS細胞もその発見方法は非科学的であったが、応用研究はどんどん進んでおり日本が先端を走っている分野だ。この分野は素人が学会に参加してもなんとなくわかるところが面白い。研究者が応用研究を重視している学会は非科学的でも成果が素晴らしければ柔軟に受け入れる。
すなわち、科学で解明されていないか、科学情報があってもそれを活用する時に何らかの障害がある時には、山中先生のように非科学的方法で問題解決する以外に方法は無いのである。ノーベル賞学者ではないので当方の説明では説得力が無いかもしれないが、ゴム会社の指導社員に教えられて以来非科学的方法を実践して多くの問題を解決してきた体験を11月に公開する。
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