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2016.02/21 企画を実現する(5)

繰り返しになるが、企画を実現するコツは、貢献を軸に物事を考える習慣をつけることである。すると、人間関係に気を配ることの重要性を理解できる。また、企画段階から周囲にヒアリングするアクションは組織への働きかけのアクションであり、組織への貢献として重要であることに気がつくはずだ。
 
これまで書いたことだけでも実行すると、どんなへぼ企画でも実現できる。実際に写真会社でそのようなへぼ企画(注0)が推進され、コストが下がらずに困っている風景を見てきたし、当方の非科学的で企画として通過しないようなコンパウンド工場も実現している。後者はエセ科学者のへぼ企画とは大きく異なり、十分に事業に貢献している企画であるが、その内容はエセ科学者でも見れば猛反対したくなる企画だった。
 
企画を実現するために、良い企画内容を作り上げることを優先して書いてある指南書があるが、これは現場を知らない書物だと思う。企画によりイノベーションが少なからず起こされるわけであるから、企画実現で一番重要となるのは会社内の人間関係論だろう。
 
しかし、難しい専門の人間関係論は不要で、上司や部下、協力会社の人々に謙虚に接する努力こそが日々の活動で必要である。そのためには「聞く力」を養うことである。企画段階から周囲にヒアリングを行うことで企画内容の情報が流れるので、企画をあげたときに通りやすくなる。もし会社の風土に不適切な企画内容であれば、ヒアリングの時にアドバイスしてくれる人も出てくる。
 
例えば、立案しようとしている企画が大きすぎるときや、企画内容を受け入れる部署が存在しないか、あってもその部署が企画反対の立場を取りそうなときに、会社の風土に詳しい人にヒアリングすれば指導してくれる。
 
ゴム会社に勤務していたときに超伝導フィーバーがあり、ある若手Aが常温超伝導を活用した企画を立てていた。その企画書が経営会議にかけられる前に上司から当方に回覧されてきた(注1)。企画内容を見ると、あまりにも大きな夢のような企画で実現できそうにない内容だが、研究企画として書き直したら面白い内容だった。
 
しかし、上司から当方に言われたのは、若手Aが相談に来るまで動くな、という指示だった。残念ながら若手Aは、当方の上司にも相談に来なかっただけでなく、年齢の近かった当方にも電話一本かけてこなかった。もし、研究企画に書き直せば採用されたかもしれない企画だったが、投資額と事業規模の観点から検討されて企画は却下された。
 
この時の上司は、自分の部署が企画が通ったときに受け入れ先となり、若手Aも人事異動することになる問題を挙げていた。ちょうど高純度SiCの事業プロジェクトが縮小されたばかりで、上司は開発負荷につながる企画を避けたかったのである。ただ、世間の超伝導フィーバーとこの若手Aの企画の影響もあり、常温超伝導材料に関する特許を2ヶ月以内に数件書くように役員から指示が出た(注2)。
 
このように企画提案は、仮にボツになったとしても関係部署に少なからず影響が出る場合があるので、事前の根回しが企画実現のために重要となってくる。この点が、企画段階における広範なヒアリングが必要な理由でもある。ちなみに当時マイスナー効果の特許や超伝導体の酸素欠陥ができやすい問題を回避する技術、フレキシブル常温超伝導体など怪しげな特許を出願し、2件ほど成立している。
 
若手Aの企画が研究企画として提案されていたならば採用されていたかもしれない。恐らく経営陣の中にもそのように感じた人がいて、特許出願の指示が下りてきたのではないかと推定した。また、上司はその後異動となった。後味が悪い企画騒動だった。
 
(注0)技術に関する企画をいつでも正しく判断できる、と勘違いしている人が多い。機能の目標を明確にしても、その目標に巧妙な嘘があった場合には、判断を誤る。例えばPETフィルムの表面処理技術に下引き処理があるが、この下引き処理は、PETに機能性薄膜を接着するための接着剤の役目や帯電防止の機能をPETフィルムに持たせるために廃止できない。この下引き処理を廃止できる画期的技術が出来たとして、何年も開発が続けられ結局実用化できなかった実例がある。ひどいのはこの開発過程で、下引きは使用しないが応力緩和層というものをつけると実用化できる、などという企画も登場した。この応力緩和層と下引き層と何が違うのか議論してもかみ合わない回答を巧妙にしてくる。そのうち反対している当方が悪者扱いにされ企画が通っていった。ただ、この体験はPPSと6ナイロンを相溶させるカオス混合技術を実用化する時に参考になった。すなわちPPSと6ナイロンを相溶させる技術はフローリーハギンズ理論から科学的にナンセンスな技術と否定されかねない際物技術であった。だから技術開発するときにこの問題を応力緩和層のようにカプセル化してごまかしたのである(この結果は「ごまかし」ではなく技術が科学を牽引するような成果が出た。ただ、結果が出る前は「ごまかし」なので、正直に「ごまかし」とここでは表現している)。ただ、応力緩和層の技術と当方の技術では提案時の姿勢に雲泥の差があり、後者は実用化され現在も稼働し事業に貢献している。科学者の中には周囲が理解できないのをよいことにして経済性も無視した技術企画を平気で推進しようとする人がいる。注意が必要である。
(注1)どのような経緯でこの企画書が上司の元に回覧されてきたのか不明である。企画書の回覧部署には、研究開発部門が入っていなかった。しかし、この企画書が他の管轄を行っている役員経由で研究開発部門へ回覧されてきたことは、回覧部署名から分かっていた。回覧部署名が書かれていなくても検討前の企画書が回覧されたならば、貢献を軸に考えてコーポレートの研究開発部門は何らかのアクションを取るべきだろう。上司はそれが分かっていたので、当方が動くといけないので釘を刺したのかもしれないが、間違った指示だったと思っている。
(注2)この時特許とは権利書である、ということを実務として身につけた。常温超伝導体など結局未だに実現されていないが、特許は実現された前提で作成しなければいけないところに、この時の特許を書く難しさがあった。科学者の良心というものは不要で、必要なのは技術というものをどのように捉え権利化するために何をしなければいけないか、真剣に考えることだった。科学者の良心とは異なる軸あるいは視点である。指導してくださった上司は恥ずかしながらの姿勢であったが、今から考えると、なぜもっと素直に機能を権利化するために特許を書くと言われなかったのかと不思議だ。大学ではないのである。常温超伝導体ができた、という特許は嘘となるが、できたとして、このような技術が必要になるのでそれを権利化する特許ならば、嘘ではない。実際に当方が書いた酸素不足にならないように超伝導体を被覆して用いる技術は、他社において銀で実用化されている。当時そのような着眼点は初めてだった。弊社の研究開発必勝法を用いればこのような全く情報が無い新材料の場合における特許対応が可能である。

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2016.02/20 企画を実現する(4)

30年間のサラリーマン生活で一番苦労したのは人間関係である。ゴム会社の人事部長は、当方のことをリトマス試験紙に例え、当方を悪く評価する人は悪い人で、良く評価する人は優れた人だ、と指導してくださった。この教えは、ゴム会社で高純度SiCの事業を推進するときに大変役だった。
 
ゴム会社の研究部門以外には、科学者ではなく技術者が多くいて、その方々から多くの助言を頂いた。技術者以外の方からもマーケティングの助言など助けて頂いた。しかし、写真会社では、苦労続きだった。企業風土により、適さない個性がある、と知ったのは、勤務して数年後でやや遅すぎた。
 
写真会社には悪い人ばかりだったのか、というと、そうではなく、風土という抽象的などうしようもない環境の企画に与える影響を当方が知らなかっただけである。この企画に与える抽象的な影響を理解したうえで臨んだ中間転写ベルトのコンパウンド工場建設では、短期間に企画を実現できている。
 
企画を実現するために一番大切なことは、社風とか職場環境とか企業風土という抽象的な事象をよく理解することである。これが抽象的で良く理解できない場合には、徹底的に謙虚な態度で人に接するべきである。
 
しかし、昨日まで傲慢なキャラで生活していて、企画を提案したとたんに謙虚になったのでは、逆に反感を買う。おそらく当方に対する人事部長のアドバイスはその点を読み込んだ上でのアドバイスだったのだろう。かなり遅すぎたが、写真会社で、それに気がついたときに結構落ち込んだ。
 
当方のこのような失敗経験から、企画実現のための大切な具体的なアクションを書くと、企画作成段階から社内の多くの人にヒアリングを行う、となる。自分で十分に理解している事柄でも教えを請えば、相手に好ましい印象を与える。このとき、そんなことも知らないのか、という人がいるかもしれない。それでも我慢して教えを請えば良い結果となる。
 
ある物事について分かっている人からみると、未熟にも関わらず物怖じしない人は傲慢に見えたりするものである。傲慢とか不遜な態度には、人生で未熟にも関わらず物事に対して怖いもの知らずで積極的な人物が受ける誤解も含まれる。一方で相手により傲慢な態度と謙虚な態度を使い分けている、本当に人格の良くない人もいる。組織活動においては、謙虚はプラスの効果があるが、傲慢な態度は誤解も含めマイナスの効果しか無い。
 
だから「君が推進していて大丈夫か」と面前で言われるのは悪いことではない。人生経験からそう言いつつも、そのような人は「あいつの企画を実現させてやろう」ともり立ててくれる人が多かった。多かった、という表現は、そうではなく本当に担当を外すように陰で動いていた人もいた、ということだ。社会とは、そういうものだ。しかし、人の意見や忠告には素直に耳を傾ける、すなわち聞く姿勢を取る限り、周囲には少なからず謙虚に写り、援助者が自然と増えてゆく、これは経験で学んだ真実だ。
 

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2016.02/19 ES細胞の盗難事件

JNNによると、小保方晴子氏の研究室から見つかったES細胞が別の研究室から盗まれたとする刑事告発を受け、兵庫県警が17日までに小保方氏から参考人として任意で事情を聴いていたとのこと。
 
本件は、彼女の著書「あの日」に、マウスへES細胞を混入させた事件について「私がES細胞を混入させたというストーリーに収束するように仕組まれているように感じた」と書かれている。
 
また、「実際に、これら一連の発表は、私の上司にあたる人たちによって、周到に準備され、張り巡らされた伏線によって仕掛けられた罠だったとも受け取れた」とまで表現されている。
 
この一連の内容が真実かどうかは法廷で争われることになったが、組織内の事件がこのように公にされ裁かれる状況を見るのは複雑な気持ちである。
 
ドラッカーの言葉によると、社会が経済を変える時代になったそうだが、もしこの言葉が正しいとすると、経済を安定に成長させるためには、まず社会を健全な状態にしなければいけない。小保方氏の事件がどのように裁かれるのか注視したい。
 
(注)ゴム会社のホームページを見ると、高純度SiCすなわちピュアβ開発の歴史には、住友金属工業とのJVを終了した後の歴史が書かれている。当方の無機材質研究所における発明(特許第1557100号、特許第15527295号)や、国から斡旋をうけて事業をスタートしていること、そして利益が上がり国に特許料を支払ってきたことなど産学連携の歴史が欠落している。学会賞の受賞の経緯も含め情報はやがて漏れるものである。世の中の面白さであり、オリンパスや東芝の例のように、やがて真実が明るみに出るものである。
 
 

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2016.02/18 企画を実現する(3)

貢献を軸にした思考では、自己責任の原則が重要である。会社で事業企画をする機会は誰でもある。企画部門に属していない担当者の企画でも、今の時代において新事業の企画を拒む経営者はいない。すべてが知識労働者と呼ばれる時代では、誰もが企画マンである。
 
そのとき、企画した人の責任は大きい。それは給与とか権限に依存しない。少なくとも企画を提案した時点でその責任は発生する。すなわち、企画は自己責任の原則で提案すべきである。権限とか給与にとらわれるとよい企画はできないし、視点も低くなる。少なくとも自分が社長になったつもりで企画内容は考えなければいけない。
 
社長になったつもりで、といわれても給与は低いし権限も無い、さらには花の窓際族だ、という考えがあるならば、企画をしない方が良い。さらには、その企画で給与が増えることや昇進することなど期待しない方が良い。会社によっては、他人の企画を横取りする人もいるのである。また、人事システムがそのようになっている場合もある。
 
企画する気が失せるような極端なことを書いている、と言われそうだが、本欄では巷にあふれている自己啓発書のたぐいのようなキャリアポルノを書くつもりはない。企業の実戦で役立つ弊社の販売しているプログラムの内容の紹介が目的である。
 
どこの企業でも様々な人が勤務しており、その人々は善人ばかりではない。また、最近発売された「あの日」を読めば、おぞましい人間関係がでてくる。そして、著者の視点で書かれた一方的な悪書ともいえないどこの研究所でもありそうなシーンも出てくる。
 
これらを特殊な問題として甘く考える人には企画をしようなどと考えない方が幸せと、とりあえず結論を書いておく。企画によりイノベーションの規模が大きくなるほど企画者に対するストレスは大きくなる。
 
しかし、企業ではイノベーションが常に求められており、質の高い企画は企業の成長のために重要である。ゆえに質の高い企画を提案すれば、それは採用され、提案者はそれなりの処遇なり報酬があるかもしれないが、企画者は、あくまでも企画した後のリスクを十分考慮し、すべて自己責任として捉える覚悟が重要である。
 
そのような覚悟をして企画提案すれば、何が起きようとも企画実現のために邁進できる(注)。重要なことは、サラリーマン生活で一度は組織を動かすようなイノベーションを起こしたいと考えるかどうかである。今の日本では、プロジェクトに失敗しても首にならないし、チャレンジした醍醐味を味わえる会社は多い。そして、その気になればチャンスは誰にでもある。
 
(注)転職時に、子供二人がまだ小さく可愛い盛りだった。また、学位も国立T大を蹴っ飛ばしたばかりで、ここで書いているような社長の気持ちで企画を立てる勇気は無かった。せいぜい本部長あるいは部長の視点で、気軽にフィルムやフィルムの表面処理技術の企画を立てて推進していた。それでもドラッカーが言っているように、習慣としていくつか成果が出て、その中で3つほど外部の賞を頂ける仕事は出来た。
気持ちよく仕事をやっていたら、それまで倉庫として利用されていた部屋を区切り、日当たりの良い暇な席に異動になった。
そこで、一念発起早期退職をする覚悟をし、フローリー・ハギンズ理論では説明のつかない技術を企画した。科学では説明がつかないので高分子学会技術賞は逃がしたが、この企画は、基盤技術0からコンパウンド工場を産み出し、高純度SiCの企画同様にサラリーマン生活の良い思い出となっている。
その技術で生まれた押出成形によるベルトは、キャスト成膜によるPI樹脂ベルトを置き換えることに成功し、コストダウンと環境負荷軽減に貢献した。
また、ゴム会社で指導社員に頂いたカオス混合の実用化という宿題もまとめることができた。貢献と自己実現を行い、満足して退職しようとしたら、最終日2011年3月11日は会社に宿泊することになった。永遠に残る退職日の思い出を天からご褒美として頂いたが、サラリーマン誰でも褒めて持ち上げられる機会がつぶれてしまった。
やはり、死ぬ気の覚悟まではいらないが、本気度が足りないと満足の行く企画はできない。出世は運もあるのでコントロールできないが、少なくとも思い出に残るような企画は、それなりの本気度を出せば誰でも出来るはずだ。そのコツが弊社の研究開発必勝法である。

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2016.02/17 混練の講習会

 
この3年間、弊社が中国で活動してきました成果を踏まえ、5月までに3件ほど混練技術に関する講演会を開催致します。いずれも異なるセミナー会社で開催されますが、申し込みは弊社で行いますのでご案内をさせていただきます。
 
特に、4月と5月開催の講演会につきましては、セミナー会社に申し込みますと、今期の予算で処理できないですが、弊社に申し込みいただく場合には、講演会参加証が付録となりました「DL版高分子のツボ」配布版その他を購入していただく形態になりますので、講演会聴講料が不要となり大変お得であるとともに、今期の経理処理が可能です。是非ご利用ください。
 
お申し込みは、ぜひ弊社(info@kensyu323.com)へお問い合わせください。詳細のご案内を電子メールにてさせていただきます。コンパウンドメーカー以外の方にもご理解いただけるような内容を準備しています。
 
 
1.混練技術のトラブル対策に関する講演会

(1)日時 4月21日  10時30分-16時まで

(2)場所:高砂ビル 2F CMC+AndTech FORUM セミナールーム【東京・千代田区】

(3)参加費:27,000円

(4)http://ec.techzone.jp/products/detail.php?product_id=4152
 
2.混練の経験知を伝承する講演会

(1)日時 5月19日  10時30分-16時まで

(2)場所:江東区産業会館  第1会議室

(3)参加費:49,980円(税込)

(4)https://www.rdsc.co.jp/seminar/160522
 

カテゴリー : 学会講習会情報

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2016.02/17 野球殿堂入り

今年の野球殿堂入りの候補が決まり、星野元中日監督が落選した。ネットで一部話題になっている。当方は、星野元中日監督が殿堂入りしていないことを今回の騒動で知り驚いている。
 
星野元中日監督は、中日、阪神、楽天の3球団を率いて優勝監督となっている。web情報によれば、3チームで優勝を果たしているのは故・三原脩氏、故・西本幸雄氏を含め、3人しかいないそうだ。
 
さらに、監督として勝利した数は通算1181勝であり、新聞記事によればこの数字は歴代10位という成績だそうだ。上位の9人全員と、通算勝利数では13位の故・仰木彬氏などがすでに殿堂入りしているので10位の成績ならば殿堂入りしていてもおかしくない順位と感じている。
 
低迷していた阪神、楽天という2チームを闘将と呼ばれるほどの熱血リーダーシップで優勝に導いた功績は倒産しかかった企業を再生したようなもので、それだけでも殿堂入りしていておかしくない経歴だと思う。恐らく殿堂入りの問題は、審査員の好き嫌いという低レベルな判断が影響しているのではないか。
 
審査員は殿堂入りしている選手から選ばれているそうだから、同業者の評判がそのまま結果として出る。星野元中日監督は、個性の明確な人物で球界に敵が多い、と噂されていたが、スポーツの世界でも実績より仲良しグループに入ることが求められるのだろう。
 
競技の勝ち負けは動かしようがないが、殿堂入りは通俗的で適当な評価の世界なのかもしれない。星野元中日監督の個性の問題と言ってしまえばそれまでだが、少し寂しい感じがする。おそらく審査員に選ばれている元選手は小物揃いなのだろう。星野元中日監督のファンとしてではなく、その業績に敬意を持つものには理解できない評価結果である。
 
イノベーションはいつの時代でも求められており、尖った人材がもてはやされたりした。しかし、組織は必ずしも実績だけで評価しない。星野元中日監督は、当方の時代のスター選手だったが、同僚あるいは同業者から好まれていなかった可能性が高い。
 
ただし、その際立った才能と個性に強い魅力を感じていたファンは多いはずだ。また、殿堂入りしている他の選手と比較しても、TVや週刊誌で見る人物像は悪くなく性格も良さそうである。殿堂入りしている人の中には、TVの発言を聞いていて常識を疑いたくなる人もいる。
 
スポーツ界でもこのような状態である。もしサラリーマンとして成功したいならば、このような問題は軽く考えない方が良い。企画を実現しようとするときも同様で、いくら会社に貢献できそうな良い企画でも、組織が大きくなれば企画の品質だけでその採用は決まらないのである。30年以上前に高純度SiC事業の先行投資を決断した経営陣には感謝しているし、このような経営が業界トップになる会社を育てるのだと思う。
 

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2016.02/16 企画を実現する(2)

STAGE-GATE法に限らずどのような開発管理手法の会社であっても、企画を実現させるために最も重要なコツは、その風土なり土壌を活かすことだと思っている。これは企画の内容によらず、その土壌、特に中間管理職を含めた担当者すべてが企画を成功させたいという思いが、あるかどうかで企画の成功確率は左右される。どんな優れた企画であっても人間関係が崩れたならば失敗を覚悟しなければいけない。
 
ゴム会社である騒動が起きたときに当方の頭をよぎったのは、高純度SiC事業の失敗である。住友金属工業とJVとして立ち上がった仕事をすべて住友金属工業に移管する、という解決策も残っていた。また、実際に契約後そのような動きもあった。
 
これは経営陣の意思と異なり、中間管理職の間で聞かれた噂話である。本来イノベーションを担当すべきコーポレートの研究所でありながら、大学顔負けの研究を指向するような風土の研究所が流行した時代であり、そのような風土では新事業など育たない。
 
当時研究所で推進されていた二次電池事業や電気粘性流体の開発の進め方を見てきて、高純度SiC事業については、絶対に成功させようという意思は強かった。その思いが研究所の風土に合わず人間関係が知らず知らずのうちに崩れていたのだ。
 
会社の仕事では、一人だけの力で企画が実現することはまれで、多くの上司、同僚、取引先の方々のバックアップや協力があって成功に結びつく。企画を成功させるためには、いつでもこのことを忘れてはいけない。ドラッカーの「貢献を中心にした思考」とは、このような人間関係に気を配ることも含まれる。そしてそれを重要視することは、企画を成功させるために最も大切な思考方法である。
  

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2016.02/15 企画を実現する(1)

昨日は弊社へ混練に関して質問があったので、混練について当方の考えを書いてみた。中間転写ベルト用のコンパウンド工場建設は、当方のサラリーマン技術者として卒業試験のような位置づけになった。約30年間、経営者を目標にがんばってきたが、結局サラリーマン時代はそのチャンスがありながらも、不心得者に対する対応を誤ったので夢が叶わなかった。
 
しかし、当方が企画し推進した高純度SiCの事業はゴム会社で現在も続いている。恐らく企画としては大成功だろう。さらに学会賞まで受賞している(その審査資料が転職し学会賞の審査員をしていた当方に回ってきたときにはびっくりしたが。)
 
写真会社では、過去のトラウマから徹底的に既存事業の技術開発企画に徹したが、デジタル化の波に押し流されて、豊川へたどり着き、そこで写真会社とは無縁のコンパウンド工場建設を思い立ち、企画立案し成功させた。その工場は、現在神戸へ移転され稼働していると風の便りに聞いた。
 
このコンパウンド工場建設の企画は、高分子科学の教科書に書かれたフローリー・ハギンズ理論からはずれた科学的に実現不可能な、すなわち100%成功できないといわれた仕事だったが、その実現不可能だったポリマーアロイの生産工場が10年近く安定に稼働している。これも100%成功した新事業企画といっても許されるだろう。しかも科学で否定される技術企画の成功事例である。
 
21世紀の開発プロセスと題して書き続けてきたが、本日からは実際に企画を成功させるための方法論を書いてみたい。21世紀の開発プロセス同様に、キモの部分は少し隠しているが、関心のある方は弊社へご相談いただければ対応致します。あるいは昨日の混練の考え方のように、本欄で回答させていただく場合もあります。
 
なお、弊社では現在混練技術のコンサルティングのために二軸混練機の設備のセットを3000万円程度で販売できないか企画中です。本設備に関してご興味のある方はお問い合わせください。詳細が決まり次第公開致しますが、国内の協力メーカーの調整が完了し、現在は実際の手順を詰める段階まで来ましたので、早期に導入希望のお客様には公開前でも対応させていただきます。
    

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2016.02/14 混ぜると練る

混練は、高分子をただ混ぜているだけのプロセスではない。練りも進めているのだ。練りのプロセスでは高分子のコンフォメーションも含めた変化がその理解を難しくしている。
 
混練の教科書を開くと分配混合と分散混合の違いが説明されている場合が多い。形式知として知っていても実戦ではあまり役に立たない知識である。なぜなら、L/Dが50程度の長い混練機でさえも、スクリューセグメントをどのように工夫しても100%完全な混合を実現できないのである。
 
少なくとも実用的な工程では、100%完全な混合(注)を実現できているところは無いと思っている。何を持って100%とするのか、も問題があるが、ここでは仮に混合しようとしている材料の完全に平衡状態となった分散という意味とする。
 
かつてバンバリータイプの混練機で混練時間を変化させて取り出したサンプルについて、Tgやそのエンタルピーはじめ各種パラメーターを計測する実験を行ってみたが、30分以内の混練で、およそ平衡状態に到達したと思えるサンプルは得られなかった。
 
シリンダーの中の滞留時間は二軸混練機では30分未満だろう。完全に材料が平衡状態になるまで混練されずにストランドが押し出されていることになる。仮に分散効率をあげるために微粒子の表面を低分子で化学修飾してもこの状態は大きく変わらないと推定される。
 
やや話がそれるが、分散効率をあげるために微粒子を低分子で化学修飾したり、分散助剤を添加したりするが、力学物性にその効果が観察されても電子顕微鏡で分散状態の改良効果が見えなかったりする。もし電子顕微鏡観察で改良効果が見てすぐに分かるようであれば、それは大成功である。
 
たいていは電子顕微鏡写真を加工し、統計的に整理してその違いを議論することになるくらい効果がわかりにくいものである。だから、粘弾性試験も含めた力学物性は分散の効果を知るために感度の高い方法で、その昔、指導社員がご自分で製造されたサンプルの力学物性と同じになるまで混練の練習をしなさいと言っていたことがよく分かる。
 
(注)熱力学的に平衡な混合状態を混錬で実現しようとしたならば、ロール混錬を用いる以外に無いのでは、と思っている。しかしロール混錬で行ってもどのくらいの時間が必要なのか、ご存知の方がいらっしゃったら教えてほしい。
    

カテゴリー : 一般 高分子

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2016.02/13 21世紀の開発プロセス(23)

中間転写ベルトの成功で一番大切な技術は、カオス混合プロセスであるが、在職中は学会でも評価されず、あげくのはては混練機のメーカーではない、という理由で関連技術の特許出願をすることができなかった。早期退職して起業した一因でもあるが、その後中国のローカル企業で実績を積みながら在職中に開発したタイプと異なる構造の装置の改良を進め、2014年に高分子学会から招待されて講演を1時間行っている。また、二軸混練機とセットでこの時のプロセスの別様式バージョンを販売準備中である。
 
準備が整い次第、本欄で価格等の情報を発信するが、科学的に説明が難しい技術は日本の企業で扱いにくい。しかし、21世紀はこのような状態を打破しなければ、日本のものつくりは発展しないと思っている。科学を捨てよ、と言っているのではなく、科学を道具として使い、人間の6つの感覚をフルに活用した技術開発が重要と提案したい。
 
科学教育が科学の普及を達成でき、科学の時代を実現できたように、日本の教育に欠落している技術教育を弊社は指向したいと思っている。今、日本では実績が無いが、中国では少しずつ実績が出ており、ローカル企業の開発力向上に役立てていただいている。
 
日本でメソッド単体の販売は難しそうなので、二軸混練機に混練機の使い方としてメソッドの普及を考えている。二軸混練機は、科学的には完全に説明できていないプロセスであり、混練されて吐出されたコンパウンドが中途半端なモノであることがあまり知られていない。
 
中間転写ベルトの開発で一番障害となったのが、根拠の無いコンパウンドメーカーの自信である。科学的に満足な説明のできないコンパウンドを自信を持って販売している、という不思議な状況である。もし機能性コンパウンドを開発したい企業があればいつでもご相談ください。コンパウンド技術について0からご指導させていただきます。射出成形や押出成形を行っているメーカーで既存のコンパウンドに不満があれば内製化した方が良いと思っている。弊社は、そのお手伝いを致します。
  

カテゴリー : 一般

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