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2016.03/16 企画を実現するために(続編)

「企画を実現するために」と題して、当方の体験をもとに企画という業務について連続してこの欄で書きましたところ質問がきました。個人を特定できるような情報を書きますとまずいので、質問の要点だけ書きます。質問内容は「事業部門における企画では、人間関係論は不要ではないか」、すなわち「事業目的が明確なので企画内容に人間関係の影響は出ないのではないか」という質問でした。
 
方針管理が徹底し、方針に基づく企画を行う限り、当方が書きましたような問題が起きないかもしれません。特に製品の組み立てを中心に行っているメーカーでは、ロードマップが社内で公開され、そのロードマップからブレイクダウンされて作られる技術企画では、企画内容はすんなり周囲に共有化されるでしょう。
 
しかし、当方が中間転写ベルト用コンパウンドの内製化企画を立案しましたときに、最初に立案していた企画を誰にも見せませんでした。それはコンパウンド内製化企画という内容ではコンパウンドの基盤技術の無い会社で認められないばかりか、反発をされる場合も想定されたからです(注1)。
 
一度周囲にダメだしをされた企画は、ほとぼりが冷めてから再提案しない限り、受け入れてもらえません。そこで最初は、外部のコンパウンドメーカーに企画内容を説明し、新たな混練技術でコンパウンドを製造してもらえるように働きかけを行っております。
 
外部のコンパウンドメーカーが当方の提案を受け入れてくださっていたら、子会社でコンパウンドのプラントを慌てて建設するような仕事のやり方を進めていなかったと思います。しかし、外部のコンパウンドメーカーは、「コンパウンドに技術的な問題は無く、あくまでも押出成形技術に問題がある。」という立場を変えませんでした。
 
かつてゴム会社の現場で学んだ、当方の実践知(経験知)では、「押出成形は行ってこいの世界」すなわちコンパウンドの性質がそのまま成形体に現れてしまうプロセシングです。押出成形技術のあるべき姿として、成形体物性の問題をコンパウンド技術までさかのぼり解決するのは当然のことだったのです。
 
そのコンパウンドメーカーは6年の開発期間で選択されてきたメーカーであり、そのメーカーとの調整が難しかったので、単身赴任してすぐに担当テーマが失敗する、と結論を出しました。そしてその結論を各部門の管理職と共有化し、対策を考えなければいけませんが、最初に上司であるセンター長に準備していたコンパウンド内製化企画を見せて、相談しています。
 
この時、相談相手としてコンパウンドメーカーの役員クラスと調整する道も残っていました(知財の所属を検討しなければ行けない開発契約は締結まで最低1.5ケ月かかる)。しかし過去の経験から、その道は早々とあきらめました。理由は時間がかかるからです。時間は経営資源としてお金と異なり取り返すことができません。当時中間転写ベルトの量産化めどを周囲の納得する形で完成させるために残された時間は6ケ月を切っておりました。
 
当方の役割として早々と白旗をあげセンター長に相談するのは、管理職として社外調整できない無能な管理職というレッテルを貼られる可能性が高かったですが、現状を正しく理解し残された時間が無いという問題を共有化できる人間関係の対象として直属の上司を選んでおります。
 
相談の結果、センター長の意思決定で「他のカンパニーの子会社からコンパウンドを購入し開発を進める」という企画に変更されました。ゆえにコンパウンド内製化企画は日の目を見ることなく、基盤技術も何も無い中で粛々と子会社でコンパウンド製造ラインの建設を当方が進める事態になりました(注2)。
 
事業目的が明確な環境下の企画であっても、人間関係が仕事の成否を左右することはまれにあります。特に時間という要素がかかわるときに最初の相談者の選択は重要で、その相談者への説明に特化した企画資料は大切です。
 
(注1)どこまでの領域を自社で行うのか、という議論はよくおこる。例えば、コンパウンドはコンパウンドメーカーで行うべきで押出成形技術だけやればよい、という杓子定規の意見である。中間転写ベルトの開発では、開発期間の制約とそれまでの経緯から外部に依頼している、あるいは他のメーカーを探すという選択肢は無くなっていたのである。自前で開発する、というのは難しいとかリスクがあるとか考えがちであるが、情報が容易に入手出来る時代では簡単である。だから技術のコモディティー化の進行速度が速くなっているのである。ヒトモノカネの経営資源さえ調達できれば自前開発が有利な時代になった。中間転写ベルトでは子会社に工場建設を行ったが、このあと担当した環境対応樹脂については、外部に生産を委託している。これは生産量が桁違いに多く設備投資が嵩むためである。現在の情報化時代には、自社で行う領域を杓子定規で即断しない方が良い。
(注2)基盤技術も無い状態で工場建設ができるのか、という質問はナンセンスである。ここはゴム会社で実績のある会社に協力をお願いしている。know whoが重要という原則を実行しただけである。成功するための仕事のやり方については弊社へお問い合わせください。

カテゴリー : 一般

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2016.03/15 備忘録:高分子の相溶(2)

東京農工大名誉教授秋山三郎先生の著書「エッセンシャルポリマーアロイ」(2012)は、ポリマーアロイを手っ取り早く勉強するためには大変良い本である。なんといっても、「---そしてFloryの格子理論の延長上に相溶性の熱力学が確立されてきた。」と現在完了進行形で書かれている。
 
この表現は、読む人により、「今もその深化に努力が続けられている」あるいは「ほぼ完成した」と意見が分かれるに違いない。この本は、曖昧さの残っているところはそのように丁寧に書いている。当方が学生時代に使っていた教科書よりも謙虚で初学者に誤解を与えない良書である。
 
高分子の相溶は、今も研究が続けられているテーマであり、フローリー・ハギンズ理論におけるχについても議論が行われている。すなわち、未だ学術的に完成した領域ではない、と言うことを技術者は知っておくべきである。
 
ゆえに秋山先生の本の出だしも言葉の整理から入っている。すなわち相溶という現象を表現する言葉も厳密に使われていない(とは本に書かれていないが)と考えた方が良い。換言すれば日本語の論文を読むときでさえその言葉の意味をよく考えなければだめだ、ということである。
 
英文では、miscibility(相溶性)とcompatibility(混和性)は分けて使用されているが、これが日本語になると、両者を相溶性と表現している場合もある。前者は、混合系が単一相を形成する能力であり、後者は非相容性ポリマーブレンドまたはポリマーコンポジットにおいて各成分物質が界面結合をする能力があることを意味している。
 
すなわち、セグメント運動を単位とする狭義の相溶性(miscibility)とミクロ分散構造を示す混和性(compatibility)とはっきり区別しなければいけない。後者は「溶」の「さんずいへん」をとり、相容という用語が用いられたりするが、これは避けるべきだと先の著書にはある。
 
このような厳密な視点で高分子材料を眺めると相溶系はごく限られたポリマーアロイだけになる。一方でミクロ分散構造を見分ける方法は実務上難しく、仮にそれを実施してもコストが高いという問題が生じる。20年ほど前、学会発表のために、ラテックスで製造したミクロ分散構造を某社に依頼してきれいな写真を撮っていただいたが、満足した写真が得られるまで1サンプル200万円ほどかかった。
 
あるコポリマーのラテックスが二種以上のコポリマーの混合物であり、技術的に安定性の悪い多元系コポリマーを製造するよりも、製造安定性の良い二種のラテックスを混合した方が経済性が良い、という結論を導き出すまでに人件費も含め2000万円ほどかかった。自分で指揮をとっていた仕事であるが「-----」と感じている。

カテゴリー : 高分子

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2016.03/14 備忘録:高分子の相溶(1)

活動報告では、当方のサラリーマン時代の成果を中心に書いているが、日々の活動で学んだ事柄を中心にした内容を書いてみる。学術的な内容を書いてみてもアカデミアの先生にかなわないから技術者の視点で実践知を中心にまとめてみたい。
 
セラミックスから有機高分子まで32年間材料開発に携わってきた。その中で、「二種類の物質が溶けあう」ほど難解な現象は無い、と感じている。学術的には熱力学で論じると説明がつく話ではあるが、その現象に含まれる機能を活用しなければいけない技術分野では単純な問題ではない。
 
料理でも、例えばカレーのルーを溶かし込むときに無精をして火を弱めずに行うとこがしてしまうことがある。見た目に均一であると油断をしていると突然吹き出したりすることがある。初めてカレーを作ったのは中学時代であるが、母親に叱られながら焦がした(注)カレーを食べた苦い思い出がある。
 
「溶解現象」あるいは物を溶かす作業は、材料技術で必ず遭遇するが奥が深い。大学では物理化学の一コマで熱力学的な現象として習う。物理化学の教科書では低分子あるいはイオンの溶解現象を扱い、高分子の授業では、高分子物性を調べる手段として低分子溶媒に高分子を溶かした現象を学ぶ。
 
当方の学生時代の教科書には、二種類の高分子を混ぜたときの現象について、いわゆるフローリー・ハギンズ理論は、2ページ程度しかその説明に裂かれていなかった。相溶という言葉の説明も格子モデルのようになった状態として説明されているだけだ。教科書の大半はフローリーの書いた高分子を短く焼き直し、そこへ高分子の合成をくっつけた内容だった。
 
ごれがG.R.Strobl”The Physics of Polymers”(1997)という学部学生向けに書かれた教科書では、3割以上がこの議論である。 この本は、ゴム会社で長くセラミックス技術に従事していたために、転職して必要に迫られ改めて高分子科学を勉強するために購入したが、転職後のストレスで眠れないときに大変役だった。
 
(注)熱力学でエネルギーの状態を知るためのパラメーター「温度」が強度因子であることを体験したのはカレーが最初である。粘度の高い物質の入った鍋の中の系を均一な温度に保つのは大変な作業である。ゆえにカレーのルーを添加するときは加熱しないで攪拌した方が安全である。またルーを溶かし込んだ後、粘度の高い物質の混合技術が無いならば、弱火で時間をかけて混合する以外においしいカレーを作る手段はない。カレーを作る作業で,非平衡状態では系の温度が不均一であることを学ぶ。ものづくりの現場でも温度計測を行うが、非平衡状態の温度計測は注意した方が良い。カレーの鍋の中は、実測すると分かることだが、50℃以上の温度差(表面94℃、鍋の底176℃は実測値である)が生じている場合もある。だから油断すると焦がす。平衡状態以外では系の温度を均一にすることは不可能である。そもそも系の温度が不均一なときは非平衡状態である。

カテゴリー : 高分子

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2016.03/13 偏差値29で北大合格騒動

某予備校が、PR目的で偏差値29の生徒が北大を合格したことを公開し、それがネットで話題になっている。詳細は、ネット情報で確認していただきたいが、そもそも偏差値29であることと大学合格を結び付けたCMが話題となることに関し、疑問に思っている。
 
サルが大学受験し合格したならば話題になってもよいかもしれないが、人間がその学力にふさわしくない大学に合格したことは、それが不正でない限り、どうでもよいことである。このケースでは、本人の努力によるものか、第三者のサポートによるものか、明確に分離できないし、そもそも学力が生まれつきの特性として本質的に低い人が偏差値の高い大学に入ったらどうなるか考えていただきたい。
 
そもそも偏差値の高い大学に入ること自体が意味のあることかどうかが不明となった時代(注1)である。さらにいえば、現代は、その人の能力で幸不幸が左右される時代ではないのである。人生の幸不幸は能力とは異なるファクターで決まるので、偏差値が29だろうがなんだろうが、どうでもよいことである。
 
働き成果を上げる場合にも、ドラッカーは頭の良い人ほど成果を上げられない、とはっきり指摘している。働いて成果をあげる作業は全人格的な行為である(注2)。
 
大学受験でも偏差値の高い大学に入ることが良いことかどうかは、そろそろ考え直したほうが良い。偏差値の低い大学でトップになっり、授業料を免除されたほうがはるかに良い。偏差値の低い学校でトップになり、学費を最小限に抑え、社会に出て働き多くの成果をあげるような人生こそ効率の高い生き方だと思っている。
 
人生で挫折は重要といわれるが、勉強につながる挫折のレベルならばよいが、それ以上の挫折は人生の幸福感を減ずるので好ましくないと思っている。バブル崩壊後日本全国不幸な人が増えた。かつてのバブルの様な時代はもう来ないのなら、そろそろ人生観を変えて幸福になる道を探したほうが良い。偏差値で振り回される受験生に考えていただきたい。自分の学びたい大学でトップを目指す生き方もある。明確な目標に対して努力して、その努力が確実に報われるのは学生時代しかないのである。
 
(注1)いまやタレントの特性としての位置づけになったような気がする。企業では東大卒の肩書きが本人にとって重荷となる時代でもある。情報がこれだけ世の中に溢れ、誰でもその情報を活用できる時代になった。今何ができるか、今どのように貢献できるのかが問われる時代である。かつて亀*氏が東大卒でもないのに首相を務める時代になった、と言われたが、田中角栄氏がすでに学歴とは無関係に首相を務めている。
(注2)会社の業績が悪いため社長が辞任する。その時の挨拶で時折使われる言葉に、「不徳のいたすところ」というのがある。業績が悪い理由が、本当にその人物の責任で無くても、問題があれば辞任しなければいけない役割がその組織のトップの仕事である。それを理解しているかどうか、そして誠実に実行できるかどうかは大切なことである。

カテゴリー : 一般

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2016.03/12 配合設計に関する講演会

この3年間、弊社が中国で活動してきました成果を踏まえ、5月までに3件ほど混練技術に関する講演会を開催致します。いずれも異なるセミナー会社で開催されますが、申し込みは弊社で行いますのでご案内をさせていただきます。弊社で申し込みをされますと電子ブックを提供させていただきます。
 
特に、4月と5月開催の講演会につきましては、今期の予算で処理できないことになりますが、弊社に申し込みいただく場合には、「DL版高分子のツボ」を購入していただきますと、その付録として参加証を付けさせていただく形態の販売となりますので、期末の経理処理が可能です。是非ご利用ください。
 
お申し込みは、弊社インフォメーションルームへお問い合わせください。詳細のご案内を電子メールにてさせていただきます。
 
 
1.混練技術のトラブル対策に関する講演会

(1)日時 4月21日  10時30分-16時まで

(2)場所:高砂ビル 2F CMC+AndTech FORUM セミナールーム【東京・千代田区】

(3)参加費:27,000円

(4)http://ec.techzone.jp/products/detail.php?product_id=4152
 
2.混練の経験知を伝承する講演会

(1)日時 5月19日  10時30分-16時まで

(2)場所:江東区産業会館  第1会議室

(3)参加費:49,980円(税込)

(4)https://www.rdsc.co.jp/seminar/160522

カテゴリー : 学会講習会情報

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2016.03/11 企画を実現する(13)

企画書に盛り込む内容については、すでにのべたが、その詳細について説明していない。実は企画書を作成するタイミングや内容は、担当する業務や社内の事情に影響を受け、変化する。仮にSTAGE-GATE法やその類似手法で管理されている状況においても企画書の作成時期は戦略的に判断すべきである。上司に指示されたから作りました、ではまずいのである。
 
そもそも企画書を誰がどのようなタイミングで作るのかは、貢献と自己責任を意識し働いておればわかるはずで、それがわからないのは、サラリーマンとしてまずい。知識労働者は、入社したその日から企画書を作成できるような心構えでなければいけない。弊社の研究開発必勝法プログラムは単なる問題解決法ではなく、意識改革の内容も含んでいる。
 
「企画を実現する(12)」で書いた中間転写ベルトのコンパウンド内製化の企画については、センター長の判断が出て、品質保証部のサポートが得られることを確認してから作成し始めている。単身赴任して所属したカンパニーでは、STAGE-GATE法に似た開発管理手法が実施されており、開発の初期の企画から部長あるいはそれに準ずるクラスがデザインレビューを開催することになっていた。
 
最初はセンター内からスタートし、最終的には経営会議にかけられ審議される仕組みだった。しかし、コンパウンド内製化企画は、子会社でコンパウンド工場を立ち上げ、そこから購入する方針となったので、社外のコンパウンド業者と同等扱いで、新たなコンパウンドメーカーの検討を開始するデザインレビューを行えばよく、経営会議まで不要であった。
 
ただ新たなコンパウンド購入先が新製品開発途中から特別に増えることになるので、調達部門と品質管理部門の調整は最重要の課題となる。特に品質管理部門が責任を持てないと言われたならば、もうおしまいである。ゆえに企画前に相談することが最も重要で、企画前に企画そのものに同意してもらう必要があった。また、この部門の見解に応じて企画内容も大きく影響を受けた。
 
当方は、すでに写真会社で15年近く勤務していたので、その風土なり企画の扱いなど熟知していたが、カメラ会社との統合後のこともあり、初心者のつもりで丁寧に進めた。単身赴任前に、どの段階で企画書を作成し始めるのかなど、作成した戦略図と戦術図を使い決めていた。戦略図と戦術図とは、弊社の研究開発必勝法の独自ツールである。
 
外部のコンパウンドメーカーが当方のアイデアを受け入れ、カオス混合装置を導入してくれていたなら、最も楽な業務の進め方ができたのだが、偉大なる国の研究所から生まれたメーカーの流れの会社で科学命の技術畑出身の営業から「素人は黙っとれ」と一喝され、楽ができなくなってしまった。
 
企画の実現において、形式知に反する場合における調整作業の難しさである。しかし、ゴム会社で交流のあった混錬機器の中小企業の社長から最後の花道に協力すると励まされ、自ら苦労する道を選んだ(注)。
 
企画書をどのようなタイミングでどのような内容で書くのかは、このように状況に大きく影響を受ける場合もある。だから単純な企画の指南書は参考になっても実用にはならないような気がしている。もし企画にお困りの方は弊社にご相談ください。実践的な企画書作成術を指南いたします。
 
(注)この仕事に失敗しても成功しても55歳で早期退職する道を選ぶ予定でいた。しかし、中間転写ベルト開発に成功した後、2011年発売の事務機に搭載する環境対応樹脂の相談をうけて早期退職を2011年3月11日まで延期した。たまたま金曜日のその日を選んだわけだが、おかげで退職記念講演もパーティーもすべて吹っ飛び、帰宅難民となって会社に一泊することになった。忘れられない思い出となった。

カテゴリー : 一般

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2016.03/10 1週間ほど前の記事で恐縮しますが

3月4日のニュース記事に「ホリエモン、28カ国58都市を巡って考えた「衰退する日本」での生きぬき方」というのがあった。「君はどこにでも行ける」(堀江貴文著)という書籍の紹介記事である。
 
弊社は、今月決算と新年度の開始で忙しく、まだ読んでいないが、紹介文でその内容に感銘を受けたので取り上げてみた。ホリエモンは単なる前科者ではないのだ。日本の将来を真剣に考えている事業家の一人かもしれない。時間が出来たら是非読んでみたいと思うと同時に、若い人に筆者の志を伝えたくて書いている。
 
「街角で〝爆買い〟する中国人観光客を横目で見た時に感じる「寂しさ」の正体はなんでしょう。出口の見えない不況の中で、気づけば日本はいつの間にか「安い」国になってしまいました。」と書かれているように、バブル崩壊後の日本は、アベノミクスでようやく衰退が一時停まったが、まだこの先どうなるか分からない状況である。
 
そのような日本の現状を踏まえ、筆者は、若い人たちに広い世界へ飛び出すことを勧めている。書籍のタイトルから想像できるように、この本の要旨となる提案は、グローバル経済というパラダイムでは、もっと叫ばれて良いことだと思う。
 
弊社は創業して3年ほど国内で頑張ってみたが、累積赤字のため中国へ出稼ぎに行くことにした。約2年中国で真剣に仕事をやってみて理解できたことは、いまや国の垣根は大変低くなった、と言うことだ。中国語など話せなくても、中国で仕事が出来るのである。
 
「中国の仕事はリスクが高いでしょう」と時折聞かれるが、今や国内も海外もリスクの高さは同じである。例えば国内企業でも合法的に詐欺まがいのような活動をしているところがあり、3度ほど国内企業の社長や担当者に痛い目に遭った。
 
また、国に有益な提案で補助金申請をしても審査員は真剣に技術を考えていない(注)ので、良い技術提案でもはずれる。同じ内容で3回はずれた技術ならば日本で不要とお墨付きを頂いたようなものだから、中国へ提案しても問題ないだろうと、ローカル企業へ持ち込んだところ、すぐに大きな成果が出た。日本の補助金審査はこの程度なのだ。
 
さすがに当方も日本で事業をやっているので、中国企業だけにサービスをしていては、将来問題とされても仕事がやりにくいので、3月末から5月にかけて4つほど講演を行い、中国ローカルメーカーで育てた技術(日本では誰もお金を払って育てようとしてくれなかった技術)を日本で公開することにしている。
 
当方のこの体験も、ホリエモンの提案「世界へ飛び出して仕事」をした方がよい、という事例のような気がする。今大手の日本企業も余裕が無くなってきており、またお役人は未だにバブル期の感覚で仕事をやっているような状況なので、国内のリスクも海外のリスクもあまり大きな差は無くなっている。ホリエモンが言っているように若い人は思いきって海外へ飛び出してはいかがか。
 
日本では受け入れてもらえないような新しいコンセプトでも、儲かる話であれば、海外の方が意思決定が早い。国内の技術を海外へ持ち出すのは問題があるが、海外で新たな技術を創るのは、国内でそれを実現できないような国なので、生きてゆくために致し方の無いことである。
 
国の補助金審査は、新参者の中小企業には冷たい。海外で技術を育てるのは日本のためにならない、という人がいるが、日本に本社があれば税金や社会保険料を日本で支払うことになるので十分日本に貢献しているのである。だから弊社はもう国への提案をやめて、海外企業へ新たな技術提案を行う活動を始めた。
 
頭脳流出は問題ではないのである。形骸化している補助金審査を初めとした、古い仕組みの社会が問題だ。若い人はどんどん海外へ出て行き活動して欲しい。君の人生は一度しか無い。そして力をつけて成功したなら、日本を良くするように戻ってきて欲しい。
 
(注)審査に落ちたときなど審査に通過したテーマを恨めしげにみたりするが、なぜそれらが選ばれているのか不明な場合が多い。一方経産省のお役人が出席されるパーティーなどに出れば、審査に合格したテーマの成功率が悪い話を聞いたりする。大概は失敗したときに返還の義務が無い。税金をどぶに捨てていても学習効果が見えない。

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2016.03/09 女子サッカーの敗退

女子サッカーのリオ五輪出場の可能性が、アジア予選の最中に消えた。東京五輪に向けてすでに体制作りが動き出した。これまでの反省と批判がWEBの話題になっている。澤選手の話題は当然その中心になってくる。
 
一人のスーパーヒーローの寄与がこれだけ明確に出るのは、その選手の能力が総合的に極めて高いときである。単にサッカーのスキルの高さだけでは今回のような落差は生まれない。サッカーの様なチームワークが重要となる競技では、スーパーヒーローに集団をまとめるカリスマ性が求められる。
 
今回の女子サッカーを見ていると、特にひとりひとりのスキルが低下したようには見えなかった。正確なパスワークも要所で決まっていたが、チームとして攻撃する気迫がTVの画面から伝わってこなかった。
 
試合後、まとまりのない集団でありがちな、選手の中から個人攻撃の声が聞こえてくるのは当然である。そもそも今回のチームは集団としてまとまっていたのか、という疑問を当方は感じている。集団としてまとまるとは、チームプレーだけでなく、日々の練習における信頼関係も含めてである。
 
このような集団をうまくまとめる作業は、監督の重要な仕事の一つで、チームの中にスーパーヒーローがいるときには、比較的易しいこの仕事が、どんぐりの背比べの集団では途端に難しくなる。個々のスキルが高くてもチームプレーが求められるサッカーでは、集団としてまとまっていないチームの場合、接戦で力を出すことができない。
 
スーパーヒーローのいないチームをどのようにまとめ、集団としての能力を高めてゆくのか。ビジネスの世界では、ドラッカーの意思決定の考えかたが参考になる。彼は成果を出すためには並みの能力で十分と言っている。むしろ頭の良い人物がなかなか成果を出せない現実を指摘している。
 
まず、問題の多くは基本にかかわるものであり、原則や手順についての決定を通してのみ解決できる。二つ目は決定が満たすべき必要条件を明確にする。第三に決定が受け入れられるために妥協ではなく正しい答えについて徹底的に検討することである。第四に決定に基づく行動を決定のプロセスの中に組み込むことである。第五に決定の適切さを結果によって検証するためにフィードバックを行うことである。
 
おもしろいことに今回のなでしこJapanの相手ゴール前におけるプレーを見ていたら、ゴールすべきところでしかゴールをしていなかったことである。これで点が入れば勝てるのだが、はたしてサッカーというゲームを考えたときに、それは正しい意思決定なのか?世界一になった時のゴール前における澤選手のつま先の残像が今でも頭に残っている。
 

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2016.03/08 企画を実現する(12)

中間転写ベルトの開発では、コンパウンドを外部から購入し、押出成形技術の開発で製品を立ち上げるシナリオがグループリーダーに赴任する当方が説明を受けた企画の根幹だった。コンパウンドを内製化する考え方は、その企画から排除されていた。
 
すなわち、コンパウンド技術が0の状態でコンパウンドから開発するのはリスクが大きい、という考え方である。高分子材料技術に詳しい人であれば、これは間違った考え方であることに気がつくはずだ。
 
特に押出成形技術に詳しい人であれば、押出成形で得られる成形体は、コンパウンドの性質を80%以上(人によっては100%)引きずっていることを知っている。すなわち、コンパウンドの改良をしないかぎり解決がつかない問題が必ず押出成形体に存在する。
 
ただし、技術が分かっていない人たちにこれを理解させることは至難の技である。なぜなら、射出成形では、コンパウンド技術よりも射出成形技術が重要で、という伝統的な考え方が存在しているからである。
 
このような状態でコンパウンド内製化という企画をまともに提案し、合理的調整を行うのは、至難の技である。徳のあるセンター長が子会社でコンパウンド工場を立ち上げるアイデアを出した理由も、コンパウンドの内製化という企画では通らないという判断が即座にできたからである。
 
また、この判断をさせたのも企画の調整作業の一つである。当方の戦略では、外部のコンパウンダーで新しいカオス混合技術を立ち上げても良かったことになっているが、これは早い段階でコンパウンダーから否定された。そのため内製化の道しか無くなり、そこでセンター長の判断を仰いだのである。
 
豊川へ赴任して1ケ月ほどのことである。他のカンパニーから人事異動で単身赴任してきたグループリーダーがすぐにこのテーマは失敗します、と言い出したら、その上司はどうするか。当方の相談に対する回答となるセンター長の判断は、一つしか無かったのである。このような調整の仕方もある。
 
すぐに中古の混練機を購入し、これは工場建設を依頼することになる外部業者の工場敷地に設置された。そして、コンパウンド内製化の企画を作り始め、子会社との調整と品質保証部の調整を真っ先に行った。企画が完成する前に、品質保証部門で専従の担当者が指名され、子会社では、開発体制が整えられた。
 
最初のデザインレビューでは、子会社からコンパウンドを購入する企画として説明し、全社の承認も得られた。但し、コンパウンドの開発から子会社の生産まではブラックボックスのままで、これは子会社に技術があるという説明になっていた。一世一代の博打企画だった。それでも実現した。風土と調整の重要さを示す例である。

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2016.03/07 配合設計と混練に関する講演会

この3年間、弊社が中国で活動してきました成果を踏まえ、5月までに3件ほど混練技術に関する講演会を開催致します。いずれも異なるセミナー会社で開催されますが、申し込みは弊社で行いますのでご案内をさせていただきます。
 
特に、4月と5月開催の講演会につきましては、今期の予算で処理できないことになりますが、弊社に申し込みいただく場合には、「DL版高分子のツボ」を購入していただきますと、その付録として参加証を付けさせていただく形態の販売となりますので、期末の経理処理が可能です。是非ご利用ください。
 
お申し込みは、弊社インフォメーションルームへお問い合わせください。詳細のご案内を電子メールにてさせていただきます。
 
 
1.混練技術のトラブル対策に関する講演会

(1)日時 4月21日  10時30分-16時まで

(2)場所:高砂ビル 2F CMC+AndTech FORUM セミナールーム【東京・千代田区】

(3)参加費:27,000円

(4)http://ec.techzone.jp/products/detail.php?product_id=4152 
2.混練の経験知を伝承する講演会

(1)日時 5月19日  10時30分-16時まで

(2)場所:江東区産業会館  第1会議室

(3)参加費:49,980円(税込)

(4)https://www.rdsc.co.jp/seminar/160522

カテゴリー : 学会講習会情報

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