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2015.11/07 碧志摩メグの公認撤回

碧志摩メグは、民間企業から「地域おこしのため」として志摩市へ提案されたキャラクターである。市が受け入れて昨年11月にデザインを公開したが、今年8月、現役海女を含む309人分の公認撤回を求める署名が市と市議会に提出されていた。
 
本騒動が起きるやいなや、萌えキャラデザインに関する知見と来年行われるサミットへの影響を考慮して、リスク管理の観点からキャラクター運営に関し、弊社は提案を行い、市から丁寧な回答を頂いていた。
 
5日の産経新聞には、提案者側から公認撤回の申し出があった、と書かれていたが、無難な収束の仕方である。一方クールジャパンの方針に沿い、少し異なる展開を提案していた弊社にとりましては、少し残念でした。
 
弊社では、「未来技術研究所(www.miragiken.com)」を運営し、クールジャパン推進の一翼を担おうと活動中ですが、そもそも萌えキャラという形式知では定義づけられていない暗黙知の世界では、今回のような騒動が起きやすく、公共の活動へキャラクターを導入するときには、細心の注意が必要です。
 
各企業におかれましても、安易なデザインを広報活動で採用いたしますと、今回のようなマイナスイメージを生じるリスクがありますので、もし萌えキャラを企画されている方は弊社へ一度ご相談ください。お客様のご希望に添うように、豊富な実践知と暗黙知を活用し、一つの形式知として回答を用意させていただきます。
 
 
 
 
 

カテゴリー : 一般

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2015.11/06 科学者と技術者の倫理観

科学者はなぜ高い倫理感が求められるのか、それは性善説で科学者の世界が運営されているからだ、という話を読んだことがある。しかし、この見解は抽象的であり必ずしも満足な説明になっていないと思う。それよりも科学者の高度な知識から生み出される成果に対して、その時代の大衆には正しく評価あるいは理解ができず、科学者だけにしかそれができないから、と思っている。
 
それでは、技術者についてはどうか。一般の技術は(注)、まず機能が正しく働くことが求められる。それにより大衆が評価できる価値が生み出されなければ社会に受け入れられないので、そこで技術者の倫理感は大衆のチェックを受けることになる。大衆の倫理感がその時代の技術者の倫理感になる、という特性がある。
 
例えば、VWの不正プログラムの問題について興味深い点は、排ガスの環境規制が最初に登場したときに大きな社会問題にされなかった実車走行のデータと評価時の走行データの乖離が、大きな問題になっている点である。ご存じのように排ガス規制とそれを遵守させるためのテスト方法には歴史的変遷がある。
 
排ガス規制登場時の評価方法は稚拙であり、評価値だけが低くなるような事例が多く、その方法の見直しがこれまでなされてきた。今回不正プログラムが判明したのも、現在の評価方法のデータが実車走行の状況を正しく表しているかどうか調べていて偶然見つかった。
 
誤解を恐れずに言えば、今回の事件はメカニカルな仕組みで不正を行っていた内容をコンピュータの進歩でソフトウェアーによる不正に切り替えただけ、という見方もできる。VWの技術者には「どうして?」と今でも疑問に思っている人がいるかもしれない。
 
これは、大衆がメカニカルな不正を不正として捉えたのではなく、評価技術の問題として捉えたからで、不正としてその当時追求しなかったのである。しかし、ソフトウェアーの不正については、その内容を不正として取り扱っている。
 
類似例として、防火天井材について過去にこの活動報告で紹介したが、餅のように膨らみテスト用の火から逃れるように変形する材料技術が過去に開発された。冷静に考えれば、材料そのものが難燃化されていなければ、テストには合格できても、実火災では何の役にも立たないことは容易に想像できる。当方も配属されたときにそのインチキ技術にはあきれたが、市場で売れていたので開発した技術者はその問題に気がついていなかった。
 
結局実火災が発生したときに国の基準を満たしていた天井材で相次ぐ大火災が発生し、建設省による防火規格の見直しが行われるに至ったが、この時、誰もその結果を予見できなかったという理由で倫理感は問われていない。ただ、当時その分野の業界トップという理由で新規格を作る手伝いをやらされた。ヘルメットと安全靴を持って筑波へ通った思い出があるが、倫理感からポリウレタンをフェノール樹脂に切り替える開発を始めた。
 
(注)兵器産業の技術は、国によりその考え方が異なっているので、一般の技術として扱わない。

カテゴリー : 一般

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2015.11/05 FMEA

現場で発生する故障モード、エラーについて、後工程や製品への影響評価を行い、製品の品質マネジメントを行う手法をFMEAという。FMEAは、故障モードが発生しないように「カイゼン」するなど、現場の改善活動のツールにもなっている。
 
旭化成の子会社の杭打ち問題では、杭打ち時の故障モードとして、杭が硬い地盤に届いていない、そしてそれを確認する電流計が故障しているや、データプリンターの異常、チャート切れなど重大故障になる。
 
この重大故障が製品に与える影響として、建物が傾く、となるが、当方は建築の専門家ではない。専門家ではないが実施できるのがFMEAであり、現場の作業者とともにワイガヤ会議を行いながら作成すると、作業者の動機付けにもなり効果的なFMEAの一覧表ができあがる。
 
FMEAを行う時には、事前にFTAも行え、とQCの教科書には書かれている。これは故障モードをトゥリー状に表現する手法で、部品やプロセスで発生する故障モードをすべて書き上げることができる、とされている。しかし実際の現場では、FTAを作成しても、作成時には思いもつかなかった故障が発生する。
 
そのような場合には、QCサークルで議論し、FMEAに新たに見つかった故障モードを加え、改訂版を発行し現場に見える化する。これがFMEAを作成しているQC活動の一こまである。QC手法にはFMEA以外にも多数あり、QC7つ道具や新QC7つ道具としてまとめられている。
 
QC活動は、戦後デミングプランとしてアメリカから輸入され、「カイゼン」活動など日本で発展成長した現場マネジメント手法であるが、転職した20年以上前には、企業間で大きな活動ばらつきのある状態になっていた。QC大会も形骸化し、すべての管理職が出席する仕組みになっている会社もあれば、くじ引きや暇な管理職を指名して参加させる会社などがあった。
 
当然のことながら前者の会社ではQC活動は現場で活発に行われているが、後者ではQC大会が近くなるとわざわざテーマ設定してまとめる状態になっていた。
 
日本の現場は、研究所ブームで科学的手法が重視されるに従い、低調になっていったように見えるが、QC手法も科学的手法である。FTAは、集合論そのものである。かつて社会問題になった三菱自動車のリコール隠しの時以来現場の崩壊が進んできたが、今回の旭化成子会社の杭打ち問題では、QC活動の言葉も評論家からでなくなっているのが気になっている。QCサークルによる活発な品質維持のQC活動は、日本の現場のあるべき風景である。
 
 
 
 
 

カテゴリー : 一般

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2015.11/04 PPSと6ナイロンの相溶

ポリマーアロイを設計するときに重要な理論としてフローリー・ハギンズ理論がある。この形式知では、χパラメーターが定義されているが、その実体は自由エネルギーである。だからこのパラメーターが正の時に高分子は相溶しない、というのは容易に納得できる。
 
しかし、これは平衡状態における話だ。非平衡状態ではこの限りではない。当方の実践知によればしかるべき条件が揃ったときに、コンパチビライザイーが無くても二種の高分子の組で相溶が生じる。
 
この実践知を獲得したのは新入社員の時だ。二種類のゴムをロールに巻き付け混練すると、相溶しないので全体は白っぽくなる。形式知に合致した現象が起きているのだが、ある日、それが透明になる瞬間を発見したのだ。どのようなゴムの組み合わせでも透明になるこの不思議な現象は、カオス混合装置を考えるヒントになった。
 
最初にその現象を発見したときには、目を疑った。その後頭を疑った。そして学生時代には理解しにくかったフローリー・ハギンズ理論をすっきりと整理できたのでびっくりした。形式知と実践知をうまく組み合わせて考えることができるようになったのだ。教科書では曖昧な説明がなされているχパラメーターの問題について、その曖昧の中身が見えた瞬間である。指導社員は当方を熟練者の仲間入り、と褒めてくれた。
 
STAP細胞の騒動では未熟な研究者が話題になった。あの事件では、彼女の年齢と一時期でも学位を授与されたキャリアから彼女自身の責任は大きいが、もっと責任が大きいのはこのような研究者を生み出している大学である。自動車ならばリコールすべき事態である。リコールとは修復して社会に戻す作業を言う。スクラップにするのは損失が大きいので、リコールで修復するのである。リコールして修復しないのは、社会的責任が欠如していると言っても良い状態だ。
 
話が脱線したが、STAP問題の原因の一つに形式知と実践知、暗黙知という知識の特性をよく理解していない「無知」の問題があった。そして倫理感も含め、科学者として未熟という言葉が使われた。「PPSと6ナイロンを相溶させる技術」では、もし当方が無知な状態であれば、実用化できなかった。この技術開発では、周囲の理解と期限内にプラント建設の資金を得る必要があった。そのため形式知と実践知を迅速に周囲と共有化する必要があり、未熟な状態ではゴールにたどり着けなかった。
 
すなわち形式知と実践知を周囲に理解させる手段や方法は大きく異なり、前者は科学的論理で正しく行えば良いので容易だが、後者はそれだけではダメで納得を得るための細心の配慮が必要なのである。前者は、仮に理論だけであってもそれが真理の積み重ねであれば周囲の支持が得られやすい。そして、新たな仮説を確認するための実験を行うチャンスもできる。ところが、後者では、実体が経済性も含め再現よくできることが厳しく求められ、繰り返し再現性が否定された時点で、議論は終わりとなる。
 

カテゴリー : 一般 高分子

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2015.11/03 小保方氏の学位問題

小保方氏の博士の学位を早稲田大学は取り消したという。それに対して、小保方氏は弁護士を通じて早稲田大学に失望したという声明を出した。事件直後新聞にも書かれていたように、コピペの学位論文に博士の学位を出すような大学に、彼女は何を期待していたのだろうか。
 
そもそも学位の審査は大学ごとに異なる。また、偏差値の高い有名大学の学位の価値が高く、地方の無名大学のそれは低い、という社会的な評価などなく、博士の学位は、その学位論文の中身で価値が決まるのである。また、それゆえに博士の学位は、一人前の研究者としてスタート地点、出発点に位置づけられるのである。
 
当方は、かつて旧七帝大に属す大学で学位を取得したいと努力していたが、たまたま転職する事態になった。事情を3年間お世話になったその大学にお話ししたところ、審査の主査となられた教授に、転職先から奨学金を出すように言われた。このときゴム会社が当方の学位授与でお世話になっているという理由で、多額の奨学寄付金を払っていてくださったことを知り涙が出たのだが、転職先からも持ってこい、という一言で出かかった涙も引っ込んでしまった。
 
学位も取得したかったが、奨学寄付金の話が障害となった。写真会社における役職及び立場で判断すると、新しい職場の業務とは関係ない高純度SiCの研究が半分以上占める学位のために奨学金を出すわけにいかなかった。退職金があったので、それを使うことも考えたのだが、学位とはそのようなものではないという結論に至り、英文の学位論文はまとまっていたがその審査を辞退した。
 
まとめていた学位論文の中身については、その大学の過去の学位論文と比較して十分なレベルとの自信(注1)があったので、一応製本して人生の記念とした。見本にしようと図書室で読んだ学位論文には、研究テーマとしてひどいものがあった(注2)。一応論理展開が科学的に行われているので、学位としての体裁がとれてはいるが、技術者である当方の目で見て新規性や進歩性の観点で明らかに0点の論文もあった。だから自信をもって辞退する決断をすることができた。
 
この話を学生時代にお世話になった恩師にした所、中部大学に無機高分子の研究者がいるので、そこで審査してもらったらどうだ、という情報をくださった。恩師はまだ教授ではなかったので主査になれないという理由で、中部大学の研究者を紹介してくださったのだ。
 
恩師が紹介してくださった中部大学に製本した論文を提出したところ、半年ほどして赤ペンが多数入って返却されてきた。そして、すべて日本語に修正するようにとのコメントもつけられていた。旧七帝大の先生と共著で書いた論文に赤ペンが入っていたので感動するとともに、自分の中にわずかに残っていたわだかまりもすっかりなくなった。なお、すべて日本語に書き直す目的は、コピペ防止のためでもあった。
 
その後、主査の先生の指示に忠実に従い論文を作成しなおし、学位審査料8万円を支払い、試験も受けて、無事工学博士の学位を中部大学から頂いた。9月末の学位授与式は小生一人しかいなかったが、学長から学監、大学理事長など総勢10名ほどご列席の中で壮大に行われた。
 
ところが、授与式の前日は業務出張で福井県にいた。そして台風が接近していたので名古屋へ新幹線で向かっている途中で車中泊となり、そのため授与式には着替える間もなくヨレヨレの姿で出席することとなった。授与式の会場で主査の先生は角帽とマントを当方に着せてくださり、登壇するように背中をたたいてくださった。転職したストレスと戦いつつ、苦労の中で多くの人に支えられての学位取得は人生の良い思い出となっている。
 

(注1)ゴム会社はこの研究を元に事業を開始し、学位論文に書かれた高純度SiCの合成手法で日本化学会から化学技術賞を受賞している。
(注2)傲慢に見えるかもしれないが、実際に公開されている学位論文を見ていただきたい。最近はワープロが高性能になったので見た目やできばえは良くなっているが、20年以上前は、手書きの論文も存在し、怪しいグラフが書かれている論文を見つけることも可能である。研究の中には、自明のことを一生懸命分析して、写真をいっぱい載せ、という内容の論文もある。研究者としてスタート地点に立つ、という趣旨ではいいかもしれないが---。
 
 
 
 

カテゴリー : 一般

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2015.11/02 旭化成子会社の杭打ちの問題

杭打データ改竄問題は、泥沼の様相を呈してきた。すなわち、杭打ちに失敗したらデータをごまかすことが常態化していた、と新聞に書かれていたからだ。そして横浜のマンション以外にもデータを改竄していた建築が見つかった。
 
ゴム会社と写真会社の二つのメーカーに勤務してきた経験から、現場のマインドは会社の風土により形成されると思っている。この体験から、今回の事件について最も恐ろしいシナリオは、杭打問題以外にも、と想像が膨らんでゆくが、建築業界に詳しくないため現場のあるべき姿について述べる。
 
そもそも日本の製造業の成功は、トヨタ看板方式等で世界的に有名になった「カイゼン」という言葉が示すような、現場力にあった。これは、日々少しでも品質向上を図るためにQCサークルで、現場を少しでも良くしようとする活動から生まれる力である。
 
そこではデータを改竄しようという発想は出てこない。生データは、カイゼンのための重要な情報の一つであり、データ取得に失敗したら必ず取り直すのが決まりごとになっているからだ。むしろデータ改竄は現場で仕事をする人たちの首を絞める事態になるので絶対にしない。日本の健全なメーカーの現場とはそのようなものだ。
 
新聞には工期に追われて改竄する以外に道が無かった、と書かれているが、それが本当ならば、現場で改善活動が機能していなかったことになる。旭化成は、化学メーカーでありながら、へーベルハウスという商品を販売し、化成品の販売チャネルまで自社で構築することにより、効率的な事業展開を行い、斜陽化した繊維事業を立て直した日本の伝説的なメーカーである。
 
すなわち化学という強みを活かして事業再生に成功した、日本を代表する化学メーカーの一つである。日本のQC活動も繊維事業で十分に学んできたはずだ。しかし事業を転換する時に、メーカーにとって大切な現場を軽視するミスを行った可能性がある。
 
技術を重視するゴム会社では、現場現物主義が今でも徹底しているが、科学を重視していた写真会社は、やや現場軽視の傾向があった。またそのような風土だったので、電子写真機の製造現場をすべて中国に移す大胆な経営も可能となり、中国の安価な人件費の恩恵を過去に享受することができた。しかし、今、人件費の高騰で過去のメリットと、日本の大切な製造現場も無くなった。
 
新たに開発された技術を安定に商品へ転写する作業が現場で行われているので、優れた品質を造り込むためには、現場力が重要である。すなわち、開発部隊がいくら優秀でも現場力が弱ければ高い品質の製品を消費者に供給できない。現場力が弱くなったメーカーで何が起きるのか、ご心配な方は弊社へご相談ください。
 

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2015.11/01 環境技術が車を変える

金曜日から東京モーターショーが一般公開された。ゴム会社に就職した時に、自動車部品会社だったので、平日に出張扱いで見学することができた。それ以来、二年おきに開催される乗用車のショーを欠かさず見学している。
 
セラミックスフィーバーの時には、各社夢の技術として、セラミックス部品を搭載したエンジンを展示していた。かつてジウジアローデザインの117クーペやピアッツアのような話題となる車を生産していた、いすゞは、東京モーターショーに先立つ半年前に、オールセラミックス断熱エンジンの「セラミックスアスカ」を公道で走らせることに成功し、それを展示していた。
 
また、各種環境規制の法律が整備され、環境技術が未来技術として注目されるようになると、ケナフをはじめとした環境負荷の低い材料技術が東京モーターショーの中心テーマになり、前回から、それらは常識となり、燃料電池やパワートランジスタなど心臓部の革新を中心とした環境対応技術がテーマになった。
 
ご存じのように日本ではハイブリッド車が環境技術の中心だが、欧州ではグリーンディーゼルが環境対応技術である。ところがフォルクスワーゲンの不正問題が今年世界を驚かせた。その影響があったためか、欧州各社はディーゼルエンジン車の展示は控えめで、フォルクスワーゲンはまったく展示していなかった。
 
日本車でも同様で、トヨタは関係会社のブースでディーゼルエンジンの環境対応技術の推移を展示しているにとどめていた。唯一マツダは、スカイアクティブ技術の目玉として1.5lと2.0lの二種類のディーゼルエンジンを展示していた。
 
そのマツダは、現在販売を中止しているロータリーエンジンについて、環境対応のスカイアクティブ技術を応用し復活する、というのがプレス発表の目玉だった。そして、展示舞台の中心に設置されたスポーツカーの新車がお披露目となったが、残念ながらそのパワーソースの展示はなかった。
 
週刊誌情報として、次世代のロータリーエンジンはハイブリッド化される、と言われている。その情報の真贋は不明だが、ロータリーエンジンが採用された初代コスモスポーツ以来、ロータリーエンジンのコンパクトさを活かした小型スポーツカーが定番だったが、RXビジョンとして紹介されたスポーツカーは大型だった。リアのデザインなどから4駆の可能性も伺われ、環境技術が車の設計へ影響しているかのようだった。
 
先にガンダムのようなコンセプトカーのデザインが多かった、とレポートしたが、パワーソースが、水素燃料電池や蓄電池で動くモーターの車にはよく似合う。ガソリンタンクに比較し、水素ガスのタンクや、蓄電池は、現在の技術では、どうしても大きく重くなる。その結果デザインに制約が出てくる。
 
一方電動モーターは、レシプロエンジンに比較し、補器類も含め小型化が可能で設置場所の自由度も上がる。ゆえに駆動輪周りのデザインはその影響を受ける可能性がある。その結果、駆動輪の設計も変わってくるのかもしれない。
 
駆動輪と言えばタイヤだが、そのタイヤについて、ブリヂストンからパンクしないタイヤが公開されていた。それは従来の空気タイヤとは全く異なる、樹脂の弾性を利用したタイヤでリサイクル可能な材料でできているという。

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2015.10/31 東京モーターショー2015「車のデザイン」

マツダ車のデザインが好評を博している。そのデザインには、独特の赤が似合うためか、モーターショーで展示されていた車のほとんどは赤色だった。モーターショーでは、「鼓動」に変わる新しいデザインとして、「越える」デザインが展示されていたが躍動感のあるデザインである。
 
マツダ車のコンセプトカーは、このように現在のデザインの路線でマツダカラーを打ち出していたが、面白く感じたのは、それ以外の日本車のコンセプトカーのデザインが、ガンダムっぽいデザインが採用されていたこと。
 
ガンダムっぽいデザインは、2年前、スバルのコンセプトカーで初めてみたが、今年はスバル以外にトヨタや日産、そして三菱自動車まで似たようなデザインの車の展示があった。
 
1980年代に、角型デザインの車が流行した時代があり、あの時には、折り紙細工のような自動車が街にあふれた。その中で、ホンダ車だけは、ホンダ独自のデザインで際立っていた。
 
その後、各社の個性が車に反映されるようになり、例えばマツダのプレマシーのOEMである日産のラフェスタは、日産車そのもののデザインになっている。この10年ほどの間に販売された車は、30年前と異なり、デザインが洗練されメーカーの顔をつけるようになった。
 
今回モーターショーに登場した各社のガンダムっぽいコンセプトモデルは、何を意味するのだろう。パワーソースがレシプロエンジンからモーターへ変わることを予見させるデザインにも見えるし、今の若者が好むデザインという見方もできる。
 

カテゴリー : 一般

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2015.10/30 デンソーのSiCウェハー技術

今年の東京モーターショーでデンソーは、SiCウェハーの6インチサイズを展示していた。クリー社から8インチウェハー技術ができた、という発表があったが、まだ市場に出ていない。ゆえに、現段階では最先端の商品であり、自動車に興味のない人でもこの分野に興味のある人には、一度見に行って説明員から話を聞くと勉強になる。
 
東京モーターショーでは、よくコンパニオンが話題にされるが、美しいコンパニオンに目が奪われている技術者は、企画マンとして失格である。自動車は我が国の基幹産業であり、そこに展開される技術のトレンドを調査する現場として、東京モーターショーはコストパフォーマンスの大きい有益な情報源である。
 
今自動車は、石油原料から水素燃料へ、あるいは電気自動車へ技術革新が始まったばかりである。これから30年間進められる技術革新で、未来の車の姿が明確になり、新たな産業も立ち上がる。SiCウェハーは、インバーターに絶対必要なパワー半導体の本命であり、この産業がどのような展開をしてゆくのか興味がある。
 
すでにシリコーンウェハーと異なる発展の様相が見えてきており、異業種から新規参入するには良い機会である。おそらくこの10年は、最後の参入の機会になるのかもしれない。
 
デンソーは、従来の昇華再結晶法(レーリー法)と気相成長法の二刀流で技術開発に取り組んでおり、やがてクリー社を技術開発で追い抜く可能性がある。ウェハーからその応用されたデバイスまで開発できる市場のリーディングカンパニーという立ち位置が強みである。
 
かつてブリヂストンも日本化学会化学技術賞を受賞した時にSiCウェハーの開発を行っていると報告していたが、2011年にその開発をやめ、高純度SiCの創業時の事業である、ダミーウェハーやヒーターなどの半導体治工具(注)へ特化している。
 
ブリヂストンの高純度SiC技術に用いられる有機物前駆体からは、様々な状態の高純度SiCを合成することが可能で、昇華再結晶法に適した技術、と期待していただけに残念である。なお有機物前駆体法による高純度SiC技術の合成法とその速度論については学位論文として公開しているのでご興味のある方は問い合わせていただきたい。
 
(注)元住友金属工業(株)小島荘一氏のご尽力の賜物である。
 
 
 
 
 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料

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2015.10/29 東京モーターショープレス発表

10月30日から東京モーターショーが公開される。公開に先立ち、一足先に昨日プレス発表に出席した。取材結果については、モーターショーが終了した頃に未来技術研究所(http://www.miragiken.com)にて公開しますので、一度ご訪問ください。
 
ここでは、今年のモーターショーの見どころを簡単にレポートします。二年前のモーターショーでは、電気自動車や水素燃料電池車が話題をさらいましたが、これらは既に実用化されました。今年は自動運転が話題になるのか、と期待していましたが、日産など一部のメーカーが細々と紹介していた程度でした。
 
NHKの夜9時のニュースでは、若者に配慮した、わき役としての車を主題にしているかのような紹介がなされていましたが、当方は、トヨタブースの展示に今年のモーターショーの本当のテーマを見たように感じました。午後2時15分から15分間プレス向けに行われたプレゼンテーションで、トヨタ社長は、「WOW!を形にしたい。」と宣言しました。
 
そして、「今の非常識を常識にする」、その為には、「居心地のよいところから抜け出さなければいけない、常に新しいチャレンジが必要!」とメッセージを発し、ビッグゲストを舞台に招き、そのゲストの口から同様のメッセージを語らせる、という演出がなされました。
 
これも若者へのメッセージと捉えれば、NHKのニュースのような取り上げ方になるかもしれないが、当方には80点主義トヨタの並々ならぬ決意表明のように思われました。実際にブースの展示は、二年前の「都市型タクシーのコンセプト」や、「水素燃料電池」、「Fun to Drive 」のように複数のメッセージをちりばめたものではなく、新型プリウスを中心に展示した、トヨタの大胆なチャレンジの姿勢を世界に発信しようと努力した内容になっていました。
 
ところで、トヨタブースのビッグゲストとは、あのイチローで、彼は、毎年バッティングフォームを変更し、チャレンジしている体験を引合いにだし、トヨタ社長のメッセージをわかりやすく解説していました。
 
今年はフォルクスワーゲンの不正が発覚して、自動車業界に激震が走りました。若者の車離れもあり、トヨタは自動車産業全体に危機感を感じて、今年のモーターショーのプレス発表を企画したのでは、と推測しました。会場全体のイメージも、少し地味でした。
 
自動車産業の動向は、他の産業への影響が大きいので、ぜひ自動車メーカー各社はイノベーションを心がけ、新しいモータリゼーションの大波を創りだすことに期待したい。やはり、モーターショーは、若者が押し寄せ、お祭り騒ぎのような状態になっている姿が似合っている。

カテゴリー : 一般

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