10月30日から東京モーターショーが公開される。公開に先立ち、一足先に昨日プレス発表に出席した。取材結果については、モーターショーが終了した頃に未来技術研究所(http://www.miragiken.com)にて公開しますので、一度ご訪問ください。
ここでは、今年のモーターショーの見どころを簡単にレポートします。二年前のモーターショーでは、電気自動車や水素燃料電池車が話題をさらいましたが、これらは既に実用化されました。今年は自動運転が話題になるのか、と期待していましたが、日産など一部のメーカーが細々と紹介していた程度でした。
NHKの夜9時のニュースでは、若者に配慮した、わき役としての車を主題にしているかのような紹介がなされていましたが、当方は、トヨタブースの展示に今年のモーターショーの本当のテーマを見たように感じました。午後2時15分から15分間プレス向けに行われたプレゼンテーションで、トヨタ社長は、「WOW!を形にしたい。」と宣言しました。
そして、「今の非常識を常識にする」、その為には、「居心地のよいところから抜け出さなければいけない、常に新しいチャレンジが必要!」とメッセージを発し、ビッグゲストを舞台に招き、そのゲストの口から同様のメッセージを語らせる、という演出がなされました。
これも若者へのメッセージと捉えれば、NHKのニュースのような取り上げ方になるかもしれないが、当方には80点主義トヨタの並々ならぬ決意表明のように思われました。実際にブースの展示は、二年前の「都市型タクシーのコンセプト」や、「水素燃料電池」、「Fun to Drive 」のように複数のメッセージをちりばめたものではなく、新型プリウスを中心に展示した、トヨタの大胆なチャレンジの姿勢を世界に発信しようと努力した内容になっていました。
ところで、トヨタブースのビッグゲストとは、あのイチローで、彼は、毎年バッティングフォームを変更し、チャレンジしている体験を引合いにだし、トヨタ社長のメッセージをわかりやすく解説していました。
今年はフォルクスワーゲンの不正が発覚して、自動車業界に激震が走りました。若者の車離れもあり、トヨタは自動車産業全体に危機感を感じて、今年のモーターショーのプレス発表を企画したのでは、と推測しました。会場全体のイメージも、少し地味でした。
自動車産業の動向は、他の産業への影響が大きいので、ぜひ自動車メーカー各社はイノベーションを心がけ、新しいモータリゼーションの大波を創りだすことに期待したい。やはり、モーターショーは、若者が押し寄せ、お祭り騒ぎのような状態になっている姿が似合っている。
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高分子へ微粒子を分散するには技術が必要である。特に超微粒子になるとその必要な技術レベルは格段に高くなる。例えば、混練プロセスで分散するときには、その濃度が高くなるにつれ、指数関数的に難しくなる。
微粒子の分散を促すためにその表面処理を行うアイデアは古くから検討されてきた。その結果、各種カップリング剤が市販されている。しかし、微粒子の表面処理に成功しても、20vol%を過ぎたあたりからクラスターを作りやすくなる。
ゆえに20vol%以上添加する場合には、プロセシングによる分散制御技術が重要になってくる。これをカップリング剤あるいは何らかの界面活性剤等の技術だけで行おうとするとうまくゆかないケースが多い。
高分子へ微粒子を分散するときに、ラテックスを使用するのはよいアイデアだが、コストが高くなる問題がある。しかし、設計した部材によってはコストよりも性能を重視する必要からラテックスを使用するケースもある。
この場合、コロイド科学の知識があれば混練よりも技術的難易度は少し下がる。さらに実践知もあれば、50vol%程度までクラスターの生成を抑えた分散に成功できる可能性が出てくる。
いずれにしても微粒子を高分子に分散しようとするときには、科学の形式知だけでは難易度は高く、開発を始める前に予備実験を行い実践知を蓄える必要がある。微粒子の濃度やその他の状態によっては、開発不可能な場合や実践知と暗黙知によるトリッキーなアイデアで簡単に成功してしまう場合などさまざまである。
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昨日のレジ担当を知識労働者として扱ったことに違和感を持っている人がいるかもしれないが、今世間を騒がせているマンションの基礎の「杭打ち作業」さえも知識労働として捉える必要があった、と指摘すれば、知識労働というものが、単純な高い専門性を要求される仕事だけでないことに納得していただけるのではないか。
アルビントフラーが指摘した「第4の波」は、過去の肉体労働を機械で置き換えるだけでなく、新たな知識労働を生み出した。すなわち、機械ではできない、あるいは機械で置き換えるとコストがかかる,人間にしかできない仕事を創りだしたのである。
また、過去において肉体労働として誤解されていた知識労働も存在し、第4の波は、それらの労働も知識労働であることをクリアにした。例えば職人の仕事はその例の一つであり、機械で置き換えることが可能な仕事は機械で置き換えられ、そうでない仕事は今も残っており、それらは知識労働として認められ保護し未来まで暗黙知を伝承しようと検討されている。
先進諸国では、ホワイトカラーの合理化が進められ、知識労働の仕事がかなり減少したが、過去において肉体労働として見られた分野について、知識労働としての見直しが進んでいない。その結果発生したのが旭化成の子会社で起きた杭打ち作業における不正問題である。
杭打ち作業をマンションの品質を高めるために要求される、「知識が必要な仕事」として考えていなかったために、作業者に対して十分な研修を行っていなかったばかりか、親会社役員の口からいい加減な作業者と語らせるような人材配置になっていた。
故ドラッカーがすでに指摘したように、現代の仕事は知識が必要なので、それに携わる人は皆知識労働者なのである。職人には暗黙知が重要で、レジ担当はその店独自のソフトウエア―に裏付けられた研修で教育されなければ売り上げ増加につながらない。杭打ち作業者には、その作業についてマンションの品質に与える影響を知識として身につくように十分に教育しなければいけなかった。
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この数年表題の話題が多い。24日土曜日夜には、NHKスペシャルでその討論会が行われていた。小泉政権時代の負の遺産とか言う人もいるが、働き方の多様性を広げるためと、どこまでも高くなる人件費削減のために必要な改革だった。後者に着目すると暗い改革に写るが、前者に着眼すれば夢のある改革となる。NHKスペシャルでは限定正社員なる制度も紹介された。
NHKスペシャルの討論会でもそうであったが、労働者の意識が40年以上前と変わっていない点は大きな問題である。すなわち、昇進や出世、あるいは正社員になることにとらわれすぎている。
重要なのは知識労働者が貢献するために自分は何をすべきか考え自己実現に努力することである。わかりやすく言えば、自分がどのような知識やスキルで貢献できるかをよく考えることが重要である。
かつては会社が研修を通じて社員の能力やスキル向上のサービスをしてくれたが、終身雇用が崩れたので自分の能力は自分で磨かなければいけない時代になった。その磨くべき方向は、競争相手が少ない方向で社会に価値を提供し貢献できる能力(注1)である。
誰でも安直に身につけられる資格をとってみても、それがすぐに実を結ばないのは当たり前である。学位はとうの昔に価値が無くなったが、いまや一部の資格を除き、それが雇用を約束するものではなくなった。
さらに知識労働者は受け身ではだめで、積極的に自ら職探しを行わなければいけないが、今日本で一番の問題は、その仕事が少なくなったことである。かつての知識労働者の仕事の大半は、バブル崩壊後のホワイトカラーの合理化、すなわちコンピュータに取って代わられたのである。
さきの討論会で提案されなかったが、知識労働者に要求される仕事を社会が創出するための努力が必要で、それは各企業の定年を迎えようとしている運よく「出世できたサラリーマン」に課せられた義務ではないかと思っている。
定年後再雇用の制度のある会社は多いが、出世したサラリーマン、とりわけ役員までなられた方々は、それだけの能力があるのだから、また退職金も多くもらえるのだから、是非仕事創出のため起業して欲しい。
今の日本に一番必要なのは、知識集約型の仕事であり、出世できた有能なサラリーマンが、その能力を発揮し仕事と新たなコミュニティーを創出すれば、表題の問題は解決してゆくと思われる(注2)。既存の企業の努力だけでは、新たな仕事創出に限界がある。
(注1)NHKの番組では、レジ担当を非正規雇用から正規雇用へ転換する動きを紹介していた。レジ担当はスーパーマーケットの顔であり、お客とのインターフェースの役割がある。すなわち人と人の高いコミュニケーション能力と好感度の高い印象を与える動作が要求される知識労働の仕事で、これを単純労働としてとらえ、非正規雇用としていてはお客を増やすことはできない、と考える経営者が増えてきたためである。
(注2)問題のとらえ方として、非正規雇用の賃金の低さが指摘されているが、仕事が多くあり労働力不足になれば、賃金は増えるはずである。労働力不足になれば、安定な労働力を確保するために、魅力的なコミュニティーを形成しようとする努力が社会に生まれる。今社会に要求されている価値を生み出す仕事が圧倒的に不足しているのである。
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これまで計算には、古いPC9801を立ち上げ、MS-DOS環境でLattice Cを使うか、エクセルを使用していた。不便な使い方だが、結構重宝していた。理由は、行列計算や複雑な関数のライブラリーが揃っていたためだが、不便であることには変わりない。
15年ほど前にボーランドC++に挑戦し、古いDOSのプログラムをマージしたりして使おうとしたが、バグに悩まされ断念した。いつの間にかボーランド社は無くなり、マイクロソフト社からC#が発表された。
C#はビジュアルBASICに似ていて使いやすい、という評価がソフトウェア―雑誌に出ていたが、統合開発環境(IDE)が、ボーランド社と異なり使いにくかった。また、ボーランド社のコンパイラーでは、機械語レベルまでコンパイルされ、プログラム動作が早いという特徴があった。
一方C#は、中間言語に翻訳される、と雑誌に説明されていた。10年以上前に雑誌に書かれた手順に従い、簡単なプログラムを作ってみたが、コンパイル速度も含め、ボーランド社のようなきびきび感が無かった。一応C++の上位言語にあたる、というプログラム言語だが、その言語仕様を新たに勉強しなおさなければいけないなど、50歳を過ぎた当方にとってハードルは高かった。
若いつもりでいても、新しいことを始めようとすると、脳みその訳の分からないところからSTOP信号が出てくる。年を取るとはこのようなことか、と味わいながら、10年ほど前に20万円出して、開発環境を整えてみた。すなわち、お金の力で目に見えぬSTOP信号を消去しようとした。
あれから10年。ようやくC並みにプログラミングできるようになった。いまや、開発環境は無料で手に入る時代となった。やはりコンピューターは計算機なので、プログラミングが自由にできると、道具を使っている、という感覚になる。
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高分子の難燃化技術で最も難しい点は、生産技術によりその性能が左右される場合があるところだ。実験室で技術開発に成功しても量産過程でそれが再現しない、ということがある。タグチメソッドを用いても、制御因子や誤差因子がうまく選ばれなければ、痛い目にあう。
特にフィラーを添加していると、ローソク現象も加わり、現場で手直しが難しい場合がある。難燃化技術開発になれてくると、量産時に備えた実験計画を立てることができるようになる。しかし、それでも量産設備の制約から研究時の性能を再現できず、あわてることになる。
樹脂の製造に用いられる二軸混練機は、L/Dやそれに対応したスクリューセグメントの組み方が重要になってくるが、現場で使用されている二軸混練機の大半は、L/Dが50以下である。これが50以上あっても恐らく満足な結果は得られないかもしれないが、50以上になってくると樹脂によっては、プロセスによるダメージを心配しなくてはいけない場合も出てくる。
すなわち、高分子の難燃化技術では、難燃剤の分散をどのように均一にあるいは不均一に行うのかが重要である。不均一の制御は難しいが、均一ならば二軸混練機の吐出口にカオス混合装置を取り付けると実現できる。
以前面白い体験をしたが、UL94-V2合格品の市販PC/ABSをカオス混合装置で処理したところ性能が上がりV0になったのでびっくりした。難燃剤を分析したところリン酸エステル系の化合物が検出されて納得ができた。
30年以上前、軟質ポリウレタンフォームで実験をした時の経験知があり、現象の理解は容易だった。しかし、分散状態で難燃性能が大きく変わるという現象は、分散状態の数値化が難しいこともあり、科学的にうまく実証されていない。
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旭化成建材と親会社の旭化成は昨日の夕方、記者会見で過去11年間に旭化成建材が行った杭(くい)打ち工事は全国で3040件で、このうち41件に横浜のマンションの杭打ちを担当した現場代理人が関わっていたと発表した。
記者会見では不正が手の込んだものであり調査に時間がかかるとの見通しを述べたが、ニュースで報じられた限りでは41件以外についてどうするのか明言を避けていた。
これは推定になるが、今回の事件が起きた背景として杭打ち作業についてトラブルが発生した場合に、どのように対応すべきかの行動指針が明確でなかった可能性がある。すなわち、杭打ち作業のトラブルは必ず工事のやり直しを行う、という手順が徹底されておれば、発生しなかったと思う(注)。
さらにその工事のやり直しで工事期間が遅延するのは了解事項にしてあれば、今回の不正を防止できたものと思う。すなわち、杭打ちエラーは、初期段階で対応しなければ費用がかかるとの視点で、現場の行動指針を徹底するのである。
これが工期優先、コスト優先の行動指針になっていると、今回のような不正は再発する。事件が発生した時に性善説で運営されているというコメントがあったが、問題点のとらえ方が異なると思う。これは現場の作業手順書にエラー回避の配慮が不足していたのである。杭打ちデータを揃えておくことが単なる作業手順の一つとして簡単に処理されていたのではなかろうか。
その後に与える影響まで知識として作業者に知らされ、エラー回避する方向で作業手順が作成されておれば、問題は起きなかった。エラーがさらに大きなエラーの連鎖を生む可能性がある場合に、エラー回避に努めることが作業者のメリットになるよう作業手順が組まれておれば、作業者は必ずその手順に従い、うっかりミス以外を防ぐことが可能となる。
作業のエラーが重大な事態を招くような場合に、コストダウン重視の手順を徹底すると結果として大きな損失を招くものである。すなわち作業手順について冗長性やエラーが起きた時にそれを報告する行動が有利に働く手順にすることが大切なのである。
例えば車のリコールが多発していることがニュースになったりするが、これはリコールしなかった時のペナルティーが大きいので各社リコールするのである。このリコール制度があるにもかかわらず、三菱自動車はリコール隠しを昔行っていたが、これは明確な悪意として罰せられた。その後リコール隠しは再発していない。
(注)QC手法にFMEAという方法がある。これは作業工程や部品、材料までさかのぼりエラーが発生したときに製品にどのような影響が出るのかを予測する品質管理手法である。日本でQCを導入しているあるいはISO9001を取得している企業ならば皆実施しているはずである。杭打ち作業は、ニュースで報じられている状況からFMEAを行うとそこで発生するエラーの大半は重大エラーになるはずで、必ずエラー防止の対策を行うことになる。一流企業ならばこの手法を理解しているはずで「性善説で」という寝ぼけた発言は出ないはずだ。当然こうした手法の全社への導入は、経営者の責任となる。また、これは技術経営として重要なことだ。
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ホスファゼンおよびその多数の誘導体は高分子の難燃剤として1960年代から期待されていた。しかし、その事業化に成功したのは1970年代に入ってからで、今はブリヂストンの子会社となったファイアーストーン社から販売された耐熱ゴムが最初の商品で、宇宙船ジェミニに採用された。
その後世界で事業化に乗り出す企業が多数現れ、1980年代には10000円/kgの商品も現れた。修士論文も提出し、就職まで1ケ月近く暇だったので、ホスファゼン誘導体を数種類、また当時としては世界で初めての環鎖状型高分子を1種類合成して論文とショートコミュニケーションを書いた。
ご褒美として、自分で昇華精製したホスファゼンを1000g試験管に封管して頂いた。これが一年後ゴム会社で役立った。軟質ポリウレタン難燃化技術の企画事例としてホスファゼン変性ポリウレタン発泡体を開発できたのだ。以前この活動報告で始末書騒ぎになった顛末を書いた。
紆余曲折はあったが、この開発成果は高分子学会でも報告でき論文としてまとめることができた。まだ、企業の研究所は、そのような時代だった。その後この技術は、電気粘性流体のオイルやリチウムイオン電池の電解質用難燃剤としてゴム会社で発展するが、とにかく高価だった。
昔は日本で10社以上、世界で4社(?)程度ホスファゼンの事業に名乗りを上げていたが、今は日本で3社、世界で2社程度になった。事業を行っている会社は少なくなったが、難燃剤としての魅力は衰えていない。未だに特許でさまざまな技術が公開されている。
ホスファゼンを難燃剤として用いたときに現れる魅力は、リン酸エステル系難燃剤と比較にならない。ただ、化合物としていわゆる”ホスファゼンオタク”にしかわからない姿もあるので、関心のある方は弊社にお尋ねください。日本では大塚化学が30年以上前から頑張って事業を続けており、供給の問題も解決し価格も下がり、利用しやすくなった。
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安倍首相は9月29日、米ブルームバーグ本社で講演し、「一にも二にも三にも、私にとって最大のチャレンジは経済、経済、経済だ」と述べたことに対する室井佑月氏の批判がYAHOOニュースに出ていた。
彼女の批評では、「経済、経済、経済」を「金、金、金」と捉えていた。一昔前の短絡的な意味であれば、それは正しいかもしれない。しかし、今日的な「経済」の意味には、「金」以外の要素が深く関わるようになった。
すなわち、現代において「経済」という言葉は、「金」という一つの因子で支配されない多因子用語だ。首相の講演内容の全文が紹介されていないので真意は不明だが、講演場所及びその対象者を考慮すると今日的な経済の意味の言葉を使っているはずであり、低次元の「金」という一因子的意味ではないだろう(もしこの推定がはずれたならば彼女が言うように恥ずかしい)。
故ドラッカーの言葉を借りれば、経済はもっとすごい表現になる。すなわち「社会が経済を支配するようになった」。この表現において、もう「経済=お金」ではないのである。
彼女の批評は、町の「おばさん」感覚的発言が多く大変わかりやすいが、その役割を活用して、「経済」の今日的意味を大衆に説明すべきだろう。経済の意味が単なる金儲けの話ではないことは、起業の今日的意味を考えれば明らかである。
これもドラッカーの請け売りになるが、それは「個人の能力を社会の貢献に活用できる機能を備えた組織を作ること」という意味である。20世紀末からNPOの起業が増えてきたが、これは非営利でお金儲けを目的とした組織ではなく、社会に有用なサービスを提供することにより、経済を活性化させてゆく。
知価社会において、知識はお金に換えることができるが、お金では買えない知識も存在することを知れば、「経済、経済、経済」がお金の連呼ではないことを理解できるのではないか。
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PPSやザイロンなど特殊なエンジニアリングプラスチック以外の大半の有機高分子は可燃性である。例えばPETやPBTなどのポリエステルはLOIは19前後なので空気中でよく燃える。多くのポリエーテル系軟質ポリウレタンはLOIが18.5程度で、ポリエステルよりもよく燃える。そしてこれらの材料は比較的難燃化しにくい高分子でもある。
高分子の難燃剤として、一種類だけ用いて効果があるのは、ハロゲン系化合物とリン系化合物だけである。しかし、この一種類で難燃化できる高分子は限られ、大半の高分子は、これらの化合物と他の化合物を組み合わせて難燃化しなければならない。
例えば、ハロゲン系化合物と三酸化アンチモンの組み合わせは有名で、特に臭素系化合物と三酸化アンチモンの組み合わせは最強であり、どのような高分子でも難燃化できてしまう。1990年代には大変多くの臭素系化合物が開発された。しかし、21世紀になり環境問題が騒がれるようになると、ノンハロゲン系難燃剤が技術のトレンドになってきた。
特に樹脂のリサイクルを考えると、熱分解しにくい難燃化システムが求められる。そこで新たな難燃化システムの開発競争が盛んになってきたが、その技術の中心はリン系化合物を中心とした組み合わせ技術である。
リン系化合物と他の化合物との組み合わせシステムについて、30年以上前に当方は燃焼時の熱でガラスを生成するシステムを開発し、ポリウレタンに実装して難燃性ポリウレタンの開発に成功した。この成功後高分子の難燃化をさらに研究したかったが、高純度SiCの事業化へテーマが変わったので中断していた。
カオス混合技術は指導社員から頂いた宿題であったが、この高分子難燃化技術は自ら生み出した宿題で、その宿題を完成できる機会を待っていたら、昨年から立て続けに高分子の難燃化技術の相談を受け、リン系化合物を中心とした組み合わせ技術について一つの解答が得られた。
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