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2017.02/04 携帯電話の画質

iPHONEでRAW撮影が可能と聞いた。当方の所有している携帯電話は富士通製スマートフォンなので、RAW形式で写真撮影できない。しかし、かつての携帯電話と比較して4年前のスマートフォンでもきれいな写真が得られる、と思っていた。このレベルのJPEG画質でRAW形式のファイル保存ができるならば、もうRAW形式のファイル保存ができないデジカメは不要である。

 

RAW形式とは一眼レフやレンズ交換可能なミラーレス一眼のデジカメで採用されているファイル形式で撮影情報をすべて記録する形式である。8ビットで圧縮されたJPEGファイルよりも容量は大きくなるが情報量は多い。

 

画像の情報量が多いRAW形式だと仮にJPEG形式の画質で白飛びや黒つぶれ,ノイズがのったとしても現像処理で改善することが可能となる。ただし専用の画像処理ソフトが必要になるが、もうコンパクトデジカメが不要な時代になった。これでセンサーが大きくなれば一眼レフやミラーレスも不要になる可能性がある。

 

ただし携帯電話では小型化が必要なので大型画像センサーが搭載されることはないが、大型画像センサーのメリットが問題になる。すなわちそのメリットがユーザーに必要なければ一眼レフやミラーレスカメラも不要になる可能性がある。最近のカメラ雑誌にはこのあたりの議論が毎号何処かに載っている。扱っているテーマが異なっても一言一眼レフの長所として画像センサーの大きさをコメントしている程度だが、携帯電話だけで写真を見るならばもはや一眼レフも不要な時代になった。

 

少なくともA5以上に引き伸ばさなければ一眼レフのありがたみ、すなわち大きな画像センサーの長所が分からなくなっている。ちなみにA4サイズでは640万画素以上であれば画素数の差が分からないが、画像センサーの大きさの違いは画像に表れている。ただしそれは表現の違いといえるような差であり、もはや携帯電話は一眼レフの地位も脅かし始めている。デジタル化の波は凄い!まだまだ進歩の波で荒れ狂っている。

カテゴリー : 一般

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2017.02/03 高分子材料(23)

PPSは、ベンゼン環とイオウ原子とが交互にひも状につながった高分子である。そのフィルムは金属音がする。これは結晶相が多く弾性率が高いためだが、その結果靭性が低くなり少し傷がついただけでびりっと簡単に破れる。

 

高い弾性率のおかげで引っ張り強度はPETなどに比較して高いのだが、靭性は低い。このような脆いフィルムは、引張強度が高くても動的部品に使いにくい。

 

例えば、カラー複写機に使用されている中間転写ベルトは、高速で動く部品のため、一般に販売されているようなPPSフィルムでは、引張強度が高くても、すぐに切れてしまう。しかし、このフィルムの結晶化度を下げて非晶質相を多くなるように成形すると引張強度は下がるが靭性が改善され切れなくなる。

 

フィルムの靭性の尺度としてMIT値がある。これは同じところを何度も繰り返して折り曲げ、切れるまで何回折り曲げることができるのかを評価した値である。一般に販売されているPPSフィルムはこの値が1000未満と小さい。

 

特殊な成型方法でフィルム化すると非晶質相が増えてMIT値が3000前後まで改善される。ただし先に述べたように脆さは改善されるが非晶質化により弾性率が大きく低下し引張強度は30%以上下がる。

 

引張強度が低下してもMIT値がこのくらい改善されると印刷速度の遅い低価格のカラーレーザープリンターに使用できるようになる。すなわち動的部品では、引張強度よりも脆さ、靭性値が重要になってくる。さらに高速のカラーレーザープリンターに使用できるように、このPPSを改良するためにはどうしたらよいのか。これは明日説明する。

カテゴリー : 高分子

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2017.02/02 高分子材料(22)

高分子の実務では、プロセシングに対する考え方が重要になってくる。ここでプロセシングの知識としなかったのは、ノウハウや体で覚えている具体化できない暗黙知の扱い方も含めたいからだ。

 

これだけ科学が進んだ時代でも「カン」という、言葉で表現しにくい暗黙知、技術者の心眼以外では見ることのできない世界が高分子材料技術には存在する。当方がこの年になっても、光散乱熱伝導樹脂などという科学的には設計が難しい材料を実現できたりするのは、この心眼のおかげである。

 

また、単なるスリットを通すだけでカオス混合を実現できるプロセシングを考案できたのもこの心眼のおかげである。ただしこの心眼はヤマカンや第六感ではない。言葉では表現できないが心の中で思い描くことができる知識の体系である。

 

高分子をひもの塊で表現し、高次構造として非晶質相ができ、それがガラスと自由体積部分に分かれる様子は心眼だけで描くことのできるイメージである。高次構造を設計するときに当方はいつもこのイメージを用いる。カオス混合を考案したときも剛直と言われていたPPSの分子と6ナイロンを並べたイメージが描かれそれが狭いスリットを通過したときに働く機能が頭に描かれた。この描かれたイメージをすぐに実行してカオス混合装置を発明した。

 

カオス混合装置から出てきたPPSと6ナイロンの相溶し透明となった様子をみながら、PPSは柔軟な分子ではなかろうか、という疑問を持った。芳香環とイオウ原子の結合は芳香環と酸素原子との結合のように柔軟で、その結果6ナイロンを非晶質相で相溶できたのでは、などと頭の中で思い描いたりした。

 

このような心眼による自由な発想は、たとえそれが非科学的であっても高分子材料を考えるときに大切である。それは高分子材料が成形体になるときに多くの場合非平衡状態だからである。逆に学会の研究発表や教科書に書かれた話は平衡状態を仮定している内容が多い。

 

統計熱力学が進歩したといっても非平衡状態を科学で論じることが難しいため未だに怪しげな材料設計手法が大切になってくる。怪しくても新しい材料を設計でき実用化できればそれは立派な技術である。技術が出来上がってから科学的にそれを考察し公知の科学理論でその技術を表現し、その結果を知識として共有化する仕事のやり方が高分子材料開発では必要になってくる。

 

この欄でゾルをミセルに用いたラテックス重合技術について数日にわたり書いたが、この技術で科学的に明らかにできたのは、シリカゾルの周りに高分子活性剤が一分子巻き付いている様子だけだった。ラテックス重合時やゼラチンを投入したときの変化などうまく解明できていない。科学で不明点の多い技術だがロバストは高かった。

カテゴリー : 高分子

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2017.02/01 高分子材料(21)

高分子材料の力学物性を改良するには、高分子の高次構造に関する知識が重要になってくる。しかし、当方が大学で学んだ高分子の知識は重合反応が中心で、すなわち一次構造の知識が重視され、高次構造については相分離した海島構造を学んだ程度だった。

 

一次構造から知識を階層化させて高分子を体系として学ぶために一次構造の知識は大切である。ただし、それは一次構造で高次構造をすべて制御できる、という前提が必要だ。ところが高分子加工では、非平衡状態で成形体を製造する場合が大半であり、一次構造で高次構造を制御し材料設計するといった手順で多くの場合に開発できない。

 

実務では手元にある高分子の高次構造を解析し、この高次構造と高分子成形体の物性との相関を考察し因子を探る、という作業が中心で、この高次構造を変化させる可能性のある因子の一つとして一次構造を考える、という手順である。

 

1970年代にはすでに用途が決まると高分子のおおよその種類が決まる、すなわち一次構造と用途の概略の関係が分かってきており、高分子材料メーカー(高分子合成メーカー)と高分子加工メーカーとが別々に事業を展開していた。就職したゴム会社では、合成部門が1970年ごろに社内に存在し合成ゴムの開発をやっていたようだが、1970年末にはその合成部門が独立して別会社になっていた。

 

余談だが、このゴム会社の研究所にはDNAとして基礎科学から事業を起業するという思想が就職したときにも残っており、研究所の業務の進め方は大学同様のスタイルだった。また、高純度SiCの新合成法を当方が開発したときには、このDNAのおかげですぐに2億4千万円の先行投資が決まり、当方の高純度SiCの事業を将来子会社として独立させるシナリオが大歓迎された。

 

もしこのシナリオどおり進んでいたなら今頃当方は子会社の社長としてパワートランジスタの開発をやっていたかもしれない。当時の鉛筆書きのプレ資料を時々眺めては若い時を思い出し気持ちを奮い立たせている。

カテゴリー : 高分子

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2017.01/31 東芝

以下は現代ビジネス1月28日号記事からの抜粋である。

 

「東芝が経営層から一般社員までを対象に実施したアンケート結果が社内で大きな話題になっているという。

 

「昨年度に比べて会社の組織風土は改善してきたか」という問いに対して、そう思うと回答した人の割合はマネジメント層で67%だったのに対し、管理職層で51%、非管理職の役職者で38%、一般社員で30%にとどまったというのだ。

 

東芝は2015年に巨額の会計不正が発覚したが、経営トップが発してきた「チャレンジ」という言葉を受けて、様々な部門で利益のかさ上げが行われていた。その「組織風土」が現場に近いほど、今になっても「変わっていない」と捉えられている、ということだ。社内改革の旗を振って来た経営層と、現場との認識ギャップがあまりにも大きい事に、経営幹部の間では衝撃が走っているという。

 

東芝がこのタイミングでアンケートを実施したのは、「組織風土は大きく変わった」という事を対外的にアピールするためだったとみられる。会計不正によって東芝は、東京証券取引所から「特設注意(特注)市場銘柄」に指定されてきたが、1年たった2016年9月に「内部管理体制確認書」を東芝が提出、指定解除を求めていた。

 

ガバナンスの見直しなど「内部管理体制」を改善し、社内のムードは一変したというのが東芝の立場だった。一般社員も含め、過半の社員が「改善した」と答えたならば、それを証明する傍証になるはずだった、というわけだ。」(現代ビジネス1月28日号から転載)

 

企業の経営は難しい。弊社は起業し6年が経過して現在従業員は3人である。このような小さな会社でも起業時の電子出版の失敗で抱えた赤字を解消しつつ浮上するのは大変であり、ようやく光明が見えだしたところである。東芝ほどの大企業になれば、危機に陥ったときに一層その困難度は増加する。教科書通りの対策を行ってもその効果が現れなかった、それだけでなく経営陣は自画自賛をしようとしたらさらに悲劇的な結果だった、と先の記事は述べているのだ。

 

ところで東芝の一番の問題は現在の経営陣も含めた不誠実さであって、それを従業員も理解し経営陣の刷新を願っている(注)。さらに会社が現在の状況になっていても管理職の51%が風土の改善効果があったと答えている情けなさ。非管理職の役職者が一般社員と同じような回答をしているにもかかわらず、管理職は経営層の顔を伺い黒を白と言おうとしている様子が垣間見えるどうしようもないアンケート結果だ。

 

思い出されるのはゴム会社入社3年目の出来事。ゴム会社では年に1回、部下の書いた一年の振り返りと今後についてのアンケートを基に上司と部下の面接が行われていた。その面接で上司から、当方以外の全員がこの課を出たいと書いているが扇動者は誰かとの質問があった。小生は留学をまじかに控えていたので留学の夢を今後の欄に書いていた。「来月から留学でなかったら私も同様の意見を書いていたと思います。」と正直に上司に答えた。上司は上位職者に評判は良かったが、全員が異動希望を出したとしても不自然ではないような管理職だった。このようなはっきりと意見の言える風土がゴム会社の長所だった。

 

 

(注)ドラッカーは経営者の資質として誠実で真摯であれ、と述べている。そうでなければ、何をやってもうまくいかないという。また、自己の強みを問うことの重要性を繰り返しのべている。東芝の強みは何か?強みのある事業以外はとりあえず売却して整理すべきだろう。ゴム会社で高純度SiCの事業が立ち上がり始めたのは、米国のタイヤ会社を買収し買収額以上の資金が必要になったことがわかり大変な時だった。リストラが進められ見通しのない事業テーマはどんどん整理されていた。その中で住友金属工業とのJVを社長が承認をくださったことに感謝している。

カテゴリー : 一般

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2017.01/30 高分子材料(20)

ゾルをミセルに用いてラテックスを重合し有機-無機複合ラテックスができた。この有機-無機複合ラテックスとゼラチンを複合化したバインダーは、ゼラチンよりも高硬度であるにもかかわらず、靱性がゼラチン単体よりも改善されていた。

 

すなわち硬くなたったにも関わらず割れにくいゼラチンバインダーが開発されたのだ。特許の追試で得られたコアシェルラテックスでも靱性を改善できるが、このバインダーほど高い硬度にならない。

 

理由は、コアシェルラテックスではシリカの周りを柔らかいラテックスが覆っているためで、開発されたバインダーではシリカが直接ゼラチンを補強しさらに架橋点としても働いているので高い硬度となる。

 

無機フィラーで樹脂を補強するとき、超微粒子でうまく補強すると高硬度高靱性の材料になることはすでに知られていたが、まさにそのような材料ができていたのだ。この成果は写真学会から評価されゼラチン賞を受賞した。

 

靭性という物性は線形破壊力学でよく研究されたが、引っ張り強度がこの靭性と弾性率の関数になるとらえ方は未だに経験論の範囲である。しかし新たなゼラチンバインダーは改善された靭性の寄与で引っ張り強度も増加した。後日PPS中間転写ベルトを事例にこの経験論について再度とりあげる。

カテゴリー : 高分子

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2017.01/29 高分子材料(19)

コアシェルラテックスの合成に失敗したコロイド溶液の中には、シリカゾルの分散状態に影響を与えずラテックスの重合だけがうまく進んだ有機-無機複合ラテックスと呼べるコロイド溶液が偶然できていた。

 

その合成条件の再現性は大変よくて、さらにスケールアップしたときの重合安定性も優れていた。ゾルをミセルに用いたラテックス重合というコンセプトでこのプロセスの各ステップを分析したところ、心眼で描いたとおりの微粒子に高分子活性剤が巻き付いた物質ができていた。

 

また、このような構造のミセルができていたので、有機-無機複合ラテックスにゼラチンを投入しても、あるいはゼラチン水溶液にこのラテックスを投入してもゼータ電位の乱れは起きなかった。その結果、コアシェルラテックスを用いなくても、シリカが全く凝集しないゼラチンバインダーを開発することができた。

 

数日にわたり同じようなことを書いているが、この有機-無機複合ラテックスの仕事は全く自分で実験を行わずコーチングだけで成功した事例の一つであり、思い出深い成功体験だからである。コーチングだけで技術開発がうまくいった経験をしたのは40歳を過ぎてからで、それまでは結局自分で実験を行わなければ成功できなかった。

 

コーチングという手法の難しさのためだが、研究開発部門では担当者の報告を聞くだけの管理者は不要だろう。日々コーチングスキルを磨き、担当者に成功体験をさせる管理者が理想である。もし実験スキルが不足している担当者の場合にはコーチングだけではだめで、自ら現場でやって見せるかコンサルタントの活用が時には必要になる。

 

退職前の5年間に担当した業務では、転職したばかりの担当者一名を直接指導しカオス混合技術を開発したが、コーチングが難しい場面では「やって見せる」指導が技術者育成に大切となる。

 

 

 

カテゴリー : 高分子

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2017.01/28 高分子材料(18)

粒子に界面活性剤を吸着させてミセルとする方法は、ゴム会社で実験した時にうまくゆかなかった。しかし、転職してコアシェルラテックスの合成条件を見ていたら、実験で失敗した条件の中には、それがうまくいっている反応もあるかもしれないという期待感が高まった。

 

ゴム会社で検討していたときに使用していた界面活性剤は、すべて低分子かあるいはオリゴマー程度で、高分子活性剤の検討を数種類しかしていなかった。

 

また、ちょうど良いタイミングで三重大学川口先生の高分子吸着に関するレオロジー研究を拝聴し考え直すことができた。過去の経験と学会の講演、そして目の前に積み上げられた失敗のレポートがうまく調和し、ゾルをミセルにする方法として、コロイド溶液に分散している微粒子それぞれに、高分子活性剤をうまく巻き付ければ良いというアイデアが浮かんだ。

 

自分で実験してうまく巻き付けられるかどうかは自信が無かったが、シリカゾルを用いたコアシェルラテックスの合成で失敗した実験群の中には、そのような物質ができている、と仮定すると失敗をうまく説明できる事例が多かった。

 

すなわち、コアシェルラテックスだけを目標に考えているとその姿は見えないが、ゾルをミセルに用いたラテックス重合というコンセプトで心眼を働かせると、粒子一個一個に高分子活性剤が巻き付いていく姿が見えてきた、ということだ。

 

コーチングでは心眼で見えている状態を担当者に思い浮かべてもらうために、いくつか質問を投げかけた。担当者の中には馬鹿にする人もいたが、真剣に考えてくれた担当者が一人いて、会議室から飛び出し、数分後には、シリカゾルの中でうまくラテックスを重合できたフラスコを持って飛び込んできた。それは、コアシェルラテックスの重合に失敗した実験の一つだった。

 

高分子材料の開発では、教科書どおりに眺めていては問題解決できない場合がある。それは科学という制約の中で考えているからで、この制約を取り除いて高分子を紐と考えたモデルで素直に現象を眺めてみると解決できる事例が技術者人生で多かった。

 

また、思いついたアイデアで仮に実験がうまくゆかなかったとしてもあきらめてはいけない。そのような場合には、頭の隅にでも寝かせておくことが大切である。ひらめいたアイデアをすぐに捨ててしまう習慣の人は、このアイデアを寝かせる方法を実行すると新たなアイデア創出法を体得できる。詳細は弊社へ問い合わせてください。

 

 

 

 

カテゴリー : 高分子

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2017.01/27 高分子材料(17)

ゼラチンとシリカゾル、ラテックスの3種のコロイドを混合するときに、それぞれのコロイド溶液に分散している微粒子表面のゼータ電位が乱れる現象を避けることができない。このような多成分が分散しているコロイド溶液を調製するために一成分づつのコロイド溶液を用いたときには(成分数-1)の回数で混合することになるので、あらかじめ複数の成分が安定に分散しているコロイド溶液を一度に作成して、混合回数を減らす戦略が効果的である。

 

ゼラチンとシリカゾル、ラテックスの三成分のコロイド溶液を混合する場合、ゼラチンラテックスとシリカという組み合わせ、あるいはシリカゾルとラテックスがあらかじめ均一に分散しているコロイド溶液にゼラチンを組み合わせる方法、ゼラチンとシリカゾルが安定に分散しているコロイド溶液へラテックスを加える方法などがある。

 

ゼラチンを保護コロイドとしてラテックスを重合して製造されるゼラチンラテックスでは、シリカゾルをここへ加えるだけなので混合回数を1回に減らすことができたが、シリカゾルの凝集を防げなかった。ゆえにシリカゾルとラテックスが均一に分散している状態へゼラチンを投入した時にどのようになるのか期待されたが、シリカゾルとラテックスが均一に分散している状態を作り出す手段が問題となった。

 

この解決策としてシリカゾルでミセルを形成させてラテックスを重合する戦略が有効である。ただ、当時このアイデアで成功した人は世界で誰もいなかった。しかし、ゴム会社でゾルゲル法を検討していたときにこのアイデアが浮かび少し手掛かりが得られていた。その手掛かりとは粒子に界面活性剤を吸着させてミセルを形成する方法である。

 

ただゴム会社で実験したときには増粘したので、あまり筋の良いアイデアではないと思っていた。また、ゾルへ高分子を吸着させたときのレオロジーに関する川口先生の御研究を学会で拝聴したときにもこのアイデアの可能性はありそうだが、講演内容から推定するとゾル粒子と高分子の組み合わせを探索するのに時間がかかるだけでなく、試行錯誤で探索した場合に無限ループになるような予感がした。

 

しかし、写真会社へ転職し、ライバル会社の技術に抵触しない重合条件の探索実験を見ていて、あわよくばという気持ちが湧いてきた。それが先日この欄で紹介したホワイトボードを用いたコーチングの背景である。

 

科学は論理的ゆえに単なる思いつきのアイデアに対して、それを否定する時に強力な説得力をもつ。川口先生のご発表をうかがったときには自分のアイデアを一旦は否定的にとらえた。しかしあきらめかけたアイデアであったが、大事に頭の隅に寝かしておいた。頭の中に寝かしている間に熟成されて、コーチングで役立った。ホワイトボードの前で行ったコーチングでは、当方の発言に対して、否定証明の嵐が吹いたからである。

 

ただし自分でも一度は否定していた内容なので、嵐に立ち向かうことは容易だった。ある仮説なりアイデアについて科学的に否定証明を行うことは容易である。これゆえゴム会社では科学でモノを造ることはできない、と言われたりした。また、それゆえにできることについては、すなわち肯定的に物事を進めようとするときには、科学的ではなく直観に訴えるやり方が推奨された。いわゆるKKDによるモノづくりである。

 

開発現場で隘路に入ったときには、科学の制約を取り除くコーチングの進め方が大切である。科学は真理を導き出すには有効な方法だが、現象から機能を取り出さなければいけない技術開発では、現象をどのようにとらえるかが重要で、科学にとらわれない自由な発想で現象をとらえることができたときに新しい技術が生み出される。このことがよくわかっていない人が多い。科学にとらわれない自由な発想で現象をとらえるやりかた(問題解決法)について詳しくは弊社へ問い合わせていただきたい。アイデアを寝かせるという方法は一つの良い手段である。

 

 

 

 

 

 

 

カテゴリー : 高分子

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2017.01/26 高分子材料(16)

ゼラチンとシリカゾル、ラテックスの3種のコロイドを混合するときに、それぞれのコロイド溶液に分散している微粒子表面のゼータ電位が乱れる現象を避けることができない。

 

すなわち何らかの複数のコロイド溶液を混合するときに、この粒子表面のゼータ電位の乱れから偶然クラスターが生成する可能性が高くなる。ひどい時には沈殿が生じたりする場合もある。

 

だからコロイド溶液を複数混合するときに、混合順序が問題になったりする。混合したときに沈殿が生じない条件を科学的に求める方法もないわけではないが、このような場合には試行錯誤で肉体頼りに体育会系的実験を行ったほうが早く問題解決できる。

 

そしてうまくいった条件についてゼータ電位測定などを行い、理論を後付けで行ういわゆる「せこい方法」が効率的である。世の中には「せこい方法」を毛嫌いする人もいるが、これでノーベル賞をとった人もいるので侮らないほうが良い。

 

特に高分子材料の開発では、清く正しく科学的に開発を進めるという人は、なかなか成果を出せないと思ったほうが良い。企業の研究開発では、科学を重視しすぎると組織の足を引っ張る場合もある。

 

適当に実験を行い成果を出してから、その成果の考察を科学的に行い、全体を科学的に見せるような開発手法が効率的である。写真会社ではこのような手法で開発を進め、学会発表にも力を割くことができた。

 

シリカゾルをミセルとして用い、ラテックスを重合する手法は、昨日まで書いたようにホワイトボードに書いた漫画がきっかけで誕生している。そして技術が出来上がってから三重大学川口先生のご指導を仰ぎながら科学的に新発明の手法について解析を行っている。解析結果でもシリカゾルがミセルとして機能しているという結果が出たので、改めて驚いた。

 

 

カテゴリー : 高分子

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