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2014.12/29 学ぶ(1)

ゴム会社では、入社して3年間樹脂補強ゴムやポリウレタンの難燃化を担当した以外はセラミックスの研究開発担当者として過ごした。セラミックスについては無機材質研究所で本格的に学んだ。ちょうど焼結理論について激論が学会で行われていたころである。

 

SiC焼結体がなぜ緻密化するのか、旧来の理論では説明がつかなかったのである。無機材質研究所の研究者が自由エネルギー理論により、それに対して新説を提案していた。

 

当方の考案した高分子前駆体による高純度SiCは、理想的な反応条件下で合成すると微粒子一粒が単結晶に近い状態で得られる。従来に無い純度の高さだけでなく結晶子も大きかった。カーボン2%に相当するフェノール樹脂をそこへ添加してホットプレスを行うと緻密化した。

 

カーボンとボロンを併用しなければ焼結しない、とされた学会の定説をひっくり返すような成果だった。実験結果は大切な機密扱いにし、これが後にゴム会社のセラミックスヒーターの技術シーズとなった。

 

STAP細胞の騒動はデータの扱いを丁寧に行えば起きなかったはずである。当方は学会の定説と異なる実験結果が得られたことを研究所の先生と相談したが、不純物が入ったのではないか、という説明を受けた。しかし得られた焼結体を分析しても不純物は見つからなかった。

 

この結果を学会発表する前に改めて自分で理解できるよう教科書を勉強したが、教科書の説明では理解できなかった。しかし新説である自由エネルギー理論では説明可能な現象であった。

 

学会の定説と異なる現象に遭遇したらどうするか。まず自分で納得のいくまで学ぶことである。STAP細胞の問題において残念だったのは、この学ぶ姿勢よりも成果誇示の姿勢が優先したことである。研究者も技術者も新発見をした場合には、その現象をまず自ら理解できるまで学ばなければいけない。

カテゴリー : 一般 連載

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2014.12/28 ES細胞混入の可能性

STAP細胞の騒動について理研の調査委員会はES細胞の混入可能性を指摘し、それがどうして起きたのかという解明までは委員会の限界として結論を出さなかった。またその理由の一つに実験室には誰でも入れる可能性を挙げていた。

 

ES細胞がSTAP現象で出現したのか、誰かがES細胞を混入させたのかについては、前者を否定している見解だった。後者は小保方氏の否定により小保方氏以外とされた。このように組織内の事件についてはこれ以上の捜査ができないというのは、20数年前経験した騒動と同じである。

 

S社とのJVである半導体用高純度SiCの事業が立ち上がり、一部の時間を割いて担当していた電気粘性流体の仕事(注)を離れようとしていた矢先に、データを書き込んだFDへ当方が触れることが出来ないFDのデータをコピーされるなどの出来事が続いた。

 

当方はせっかく立ち上げた事業の存続も含めあるべき姿を会社に提案し、写真会社へ転職した。自らが発明し、無機材質研究所で技術の実証を行い、2億4千万円の先行投資を受け開発開始から8年苦労して立ち上げた仕事をなぜ手放したか。

 

これは真摯に開発を続けてきたためであり、自分の利益を中心に活動してきたわけではないことを示したかったからである。新規事業の成功は組織メンバーで共有されるべきものであり、自己責任の問題として収拾したのである。

 

半導体用高純度SiCの事業は現在も継続され、転職後もこの事業にまつわる様々なドラマに当方は巻き込まれた。来年はそのあたりも活動報告に書いてみたいと思っているが、STAP細胞の騒動で理研を辞職した小保方氏にはどのようなドラマが待っているのか。

 

誠実さと真摯さで仕事を進めれば、必ずどこかで誰かがそれをみており、報われるといわれている。60年という短い人生の教訓としてもこれは本当だと思っている。小保方さんがSTAP細胞の実現に努力されることを期待している。当方は会社とのお約束でセラミックス技術以外の職に就くことを余儀なくされたが、彼女にはその制限は無い。

 

(注)オイルのレオロジー特性安定化技術や粉体設計に成果を出すことができ、多数の特許出願を行っている。

カテゴリー : 一般

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2014.12/27 小保方氏に期待

STAP細胞の騒動では、それがES細胞だったとしてその存在が完全否定された。その存在は否定されたが、なぜES細胞が混入したのかその経緯は不明である。

 

小保方氏がそれを隠しているとすると、この事件は小保方氏の単独犯で完全に論文ねつ造を目指した事件となる。しかし小保方氏が誠実に真摯に対応してきたとすると、ES細胞が混入したのではなくSTAP現象でES細胞が生まれたことになる。

 

この分野について当方は全くの素人だが、新聞報道をまとめるとこのような二つの仮説が生まれる。また専門家の中にもこのような仮説を立てている人もいる。

 

科学の世界は性善説で成立している世界である。故笹井氏は後者の可能性を考えていたのではなかろうか。ところが小保方氏の実験室に無いとされたES細胞がそこにあった冷蔵庫から見つかり、二つの仮説で悩んだあげく結論を出すことの恐怖から自殺されたのでは、と想像している。

 

ただここで小保方氏が未熟で低レベルでありこのような研究を一人でできない科学者だったとすると理解ができる。このような人で根拠の無い自信とやる気満々な人は時にはとんでもない発見をする可能性があるからだ。

 

ただ技術者としてのスキルも低かったのでせっかくの大発見の再現もできず、今回の事態になっている、という流れは起こりうることだ。ここで優れた技術者が現れてその再現を示せば、状況は逆転する。

 

今回の事件は、理研により幕引きされそうな雰囲気があるが、科学的な完全否定証明ができていないので、実際には科学的に正しい結論が出された状態ではない。STAP細胞を技術的に作れる可能性が残っている。

 

恐らくバカンティー教授はその技術を将来発表するかもしれない。その時小保方さんがバカンティー教授のもとで割烹着を着てドヤ顔している光景を期待したい。

カテゴリー : 一般

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2014.12/26 風邪をひきました

朝鼻の周辺の感覚がおかしくのどが痛い。声を出してみるといつもの自分の声と異なる病の声。風邪をひきました。

 

会社を起業してから忙しく、風邪をひく間も無かったが、昨晩ゴム会社時代の友人と酒を飲み気持ちが緩んだせいもある。昨日の今日だから友人のウィルスを拾ったわけでなく、潜伏期間のあとなので自分がウィルスをまき散らした可能性がある。

 

参加者の一人は正直申告で本日娘がインフルエンザに罹ったので、と言い始めたので、予防接種を打ってない人、とかぶせたら、誰もいなかったから、安心して鍋にしましょう、と言った本人がウィルスを培養し拡散していた可能性がある。

 

他人にうつすまいと思っていてもウィルスはどこかに潜んでいる。風邪のウィルスは誰のウィルスを拾ったのかわからないので気持ち悪い。誰かの体内で培養されたものを無意識に拾うのである。

カテゴリー : 一般

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2014.12/25 データ修復

HDのデータ修復サービスというビジネスを知った。どうやら同じような経験をする人が多いようだ。7年前のPCのHDなので業者に依頼する以外に方法は無い、と決断したら、値段が高い!

 

息子に相談したら問題は解決した。うまくできるかどうかわからないが新しいPCを一台組み立て試してみることにした。

 

安い!インテルのコアi7のCPUと16GBのメモリー、RAIDで4台の1TbのHDを使用するが、全部で10万円以下であった。久ぶりに1台PCを組み立ててみたが、起動してびっくりした。確かに7年の進歩はあった。ただし、MZ80KからPC9801へそしてDOS/VからWINDOWS95への流れにおけるCPUの速度変化に比べると緩やかに感じた。

 

息子から教えられたのは、立ち上げた新しいPCの一部のHDを読み出したいHDと置き換える方法である。すなわちPCをだますのである。WINDOWSは、NT以降アクセス権限の管理が強化され不可能だと思っていたが、息子の話によると簡単だという。

 

半信半疑で息子に言われたように、RAID1を2組くんで立ち上げ、その一組を壊れたPCの一組のHDと置き換えてみた。驚いたことに簡単に認識され、アクセスも簡単にできた。さっそくデータを全部新しく汲み上げたPCのHDへ転送した。

 

DOSやWINDOWS 98の時代には、ためらいもなくやっていたが、WINDOWS NTになってから、PCを組み立てた時に古いPCのHDを再利用することができなくなった。一度DOS環境でフォーマットしなければNT系のマシンに使用したHDを再利用することができなかった。DOS環境でのフォーマットでさえ特殊なコマンドが必要であった。

 

今回も壊れたPCのシステム用HDへWINDOWS8のシステムを入れる試みをしたが、昔同様にできなかった。しかし、このシステムに用いたHDでさえも息子が教えてくれた方法を行うと、すべてのファイルにアクセスできてしまったのだ。

 

理由は不明だが、WINDOWSの脆弱性のおかげで、無事すべてのファイルを新しいPCへ移すことができた。アクセス権限の制約から難しいと思っていたファイルの扱いがいとも簡単にできてしまったので助かったが、見方を変えるとPCを廃棄する時にHDは金槌で叩いて破壊しておかないと個人情報が漏えいする、ということだ。

カテゴリー : 一般

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2014.12/24 データ管理

先日7年間使用していたPCが壊れた。当時最速の状態で、データの安全性も高めるために冗長性も確保し、HDはミラーリングで組んでいた。そのミラーリングで組んでいたHDの片方が壊れたのだ。修理のため壊れたHDを交換しようとしたが、7年前のマザーボードのため規格が古く、マザーボードに適合するHDが販売されていない。

 

仕方がないので秋葉原にでかけ中古を物色した。思いおこせば秋葉原を徘徊するのは7年前にi7の4コアが出た、ということで大枚はたいて安全性と速度を兼ね添えたPCを組み立てて以来である。路上でメイドがオッサンに呼びかけている風景は7年前よりも下火になっていたが、店舗が様変わりしていた。新しくなったラジオ会館も顔見知りの店員がいる店はいくつか無くなっていた。

 

アニメやわけのわからない店が多く、中古専門店も大半が淘汰されていた。わけの分からない店は昔もあったが、それは訳の分からないものを売っている楽しい店だったが、今の秋葉原のわけのわからない店は、のぞくのも躊躇する。きょろきょろしていたら、”おじさんどうぞ”とメイドに呼びかけられキャンディーを渡された。

 

挙動がメイドの店のお客と勘違いされたのか、と思うと恥ずかしくなった。結局今は経営者も代わったツクモ電気で物色していたら、新しいマシンはこんなに早いですよ、とデモを見せてくれた。いくら早くても空は飛べないだろう、と言ったら、店員はきょとんとしていた。

 

規格に適合するHDが見つかり足早に帰り取り付けたが、PCからビープ音が発生した。マザーボードの説明書を読むとその鳴り方は、ビデオ関係だった。グラフィックボードが壊れたのかと思い、ハードをはずし、チップ内蔵に切り替えた。それでもビープ音がなる。HDを修理をするつもりが、マザーボードまで壊してしまった。注意はしていたが、おそらく静電気の仕業だろう。

 

結局新しいマシンを一台組み立てることになったが、問題は500GB近くあるデータである。どうするか。年末の中国出張から帰国し、溜まっていた仕事をかたずけようと思ったらPCのHDが壊れとんでもないことになった。顧客情報もあるのでファイルサーバーを使わず、自分のマシンにデータをすべて貯めていた。ファイルサーバーでバックアップを取りながら管理する意味をよく理解できた。さてどうするか。

カテゴリー : 一般

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2014.12/23 セラミックスと混練技術

セラミックスの成型方法はいろいろ用途に応じて使い分けられている。その泥漿を練り上げるにも今日では連続式混練機が一部で使用されている。30年ほど前にその話を初めて聞いた時には驚いた。その泥漿を練り上げる専用の混練機も存在する。

 

主に剪断混練が使用されていると思われるが、スクリューの摩耗が心配である。知人の技術者に聞いたところ、専用の材料が使用されているとのこと。昔は摩耗が激しかったが最近は良い材料も開発されたとも言っていた。

 

中間転写ベルトの開発を行っているときに、セラミックス材料の混錬で使用されている、と言われたKCKと呼ばれる、いわゆる石臼型混練機を使用する機会があった。PPSとカーボンを混練するためにそれを用いたのだが、一般の二軸混練機に比較して混練効率は悪いと感じた。

 

剪断混錬は効率が良いはずだが、機械の消費電力の割に生産性が悪い。同一電力に換算して比較した時に時間当たりの混練される量が6割ぐらいだった。PPSにカーボンの咬みこみが悪いからだ、と装置を貸してくれた会社の技術者は言っていたが、不思議に感じた。

 

面白いのは混練して得られたカーボンの分散状態で、二軸混練機のそれと異なっていた。1台購入し材料開発に使用したが、得られた混練物の性能は二軸混練機が60点とすると70点前後で100点に到達できなかった。

 

ただカーボンの分散状態は特徴的でもう少しその特徴が完璧に発揮されればゴールを達成できたが中途半端な状態であった。今改めて思い出してみるとセラミックス材料の分散でもこの「中途半端さは問題になるはずだがそのような情報はWEBに落ちていない。セラミックス協会誌を読んでいても出てこない。

 

もしセラミックス業界でKCKを使用されている方で何か疑問を持たれたらご相談していただきたい。どこまで期待に応えられるか不明だが、問題解決のヒント程度は出せるかもしれない。

 

カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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2014.12/22 高分子の難燃化と評価技術(6)

高分子の難燃性を評価する技術は、いろいろ開発されてきた。それらをすべてここで解説をしない。大切なことは、それら評価技術の細かい知識を習得するよりも、市場で要求される難燃化規格についてその知識を深める努力をした方が実務上役立つ。

 

ゆえにそれぞれの業務に必要な評価法を調べていただくこととして、ここではそれを活用するときのポイントを説明したい。

 

火災で高分子が燃える、という現象は、火源により高分子が熱せられて温度が上昇し、添加物や高分子の分解物がガス化、そしてその酸化が激しくなり、燃焼に至る。

 

この時酸素不足となれば、酸化が終結し火が消える。高分子の構造に二重結合を形成しやすい要因や脱水素を促進する触媒機能を示す添加剤やラジカル補足剤が存在すれば高分子は炭化する。

 

ここで生成する炭化物はチャーと呼ばれ、燃焼している面で発泡したチャーが形成されると、それが断熱層になり燃焼が停止する。

 

この燃焼の各段階すべてを一度に評価できる技術は、最初に述べたように大変難しくなる。ゆえに世の中に存在する難燃化規格では、燃焼現象の一部のプロセスを評価していることになる。

 

この燃焼という現象をすべてモデル化して記述できれば、実火災のシミュレ-ションが可能となり、一部それが成功しているが、材料設計にそれを活かすことができるかどうかは、別の問題がある。

 

カテゴリー : 高分子

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2014.12/21 高分子の難燃化と評価技術(5)

3日前に、高分子材料の難燃化と評価法についてその概略を述べたが、高分子材料の用途とその設計方針が最初に必要である。高分子材料の用途が決まると、その分野における難燃性規格が材料開発時に使用する品質評価法の一つとして決まる。設計方針とは後述するコンセプトのことであるが、難燃性規格を合格するためのコンセプトも許される。

 

規格を通過するためだけのコンセプトで材料開発する、というと科学的でもなくいかがわしささえ感じる読者もいるかもしれないが、難燃化規格が用途と実火災を考慮して開発されているはずなので、技術的には賢明な方法となる。

 

今となっては笑い話となるが、30年以上前にJIS難燃2級という建築材料向けの欠陥評価法があり、この評価法に合格するためにもちのように膨らみ変形する材料が開発された。サンプルを試験装置に取り付け試験を開始すると、炎から逃げるように高分子発泡体が膨れ、その結果、煙も出なければ燃焼による発熱も無く試験が終わる。

 

このような材料が市場に出た結果、耐火建築でも簡単に燃えるという事件が発生し、規格の見直しが叫ばれ、簡易耐火試験が建築基準として採用されるにいたった。筆者が技術者としてスタートした頃であり、当時の通産省建築研究所の先生方と規格の見直しのお手伝いをしたが、これは高分子の難燃化「技術」の重要性を学ぶ機会となった。

 

当時の上司は、材料が炎から逃げるように設計しているので、溶融型と同様の難燃材料の設計方法の一つ、と自慢していたが、溶融型では、溶融するときの吸熱効果で火を消す機能を発揮しているのである。

 

材料に足が生えていて逃げ出すのならともかく、燃焼試験装置の炎を避けるように変形するだけでは難燃建築材料ととして不適格であると同時に、そのような材料を合格とする評価試験法にも建築基準としての欠陥があった。

 

また、技術では、自然現象から生活に必要な「機能」を取り出し、それをロバスト高く再現できることが求められる。餅のようにふくれ、特定の炎だけを避ける機能では、材料に火がついたときの問題を解決できないので、建築用難燃材料の機能として不十分である。

カテゴリー : 連載 高分子

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