難燃剤は赤燐で、加水分解されなければ絶縁体、と安心しきっていたそうだ。しかし、赤燐は加水分解されればリン酸を生成する。表面が加水分解された赤燐は、10の3-4乗Ωcm程度の導電性を示す。
パーコレーション転移を起こせば10の6乗Ωcm程度まで絶縁性高分子の電気特性を変化させる。このように高分子マトリックスに絶縁性フィラーを分散する時には、その表面抵抗がどのような性質を持っているのか調べなくてはいけない。さらにパーコレーション転移という現象がどのような現象なのかも理解しておかなければならない。
面白いのは、高い絶縁性の2種の高分子をブレンドした時に、高分子に不純物が含まれており、相分離して界面にその不純物が偏積する現象が起きたときである。10の10乗Ωcmレベルまで抵抗は下がる。すなわち100倍程度導電性が上がるのだ。このことは以外と知られていない。また学術的に確認することも難しい(できないことは無い)。ただ、これまでの経験から、推定している現象である。
PPSにナイロンとカーボンを分散したときには、単純にカーボンのパーコレーション転移だけで抵抗変化を説明できない。ナイロンの状態によりマトリックスの抵抗が1000倍近く変化するためだ。インピーダンスなどを測定するとそのあたりの現象は見えてくる。もし興味のある方は実験してみて欲しい。
この系では、分散しているカーボンの凝集状態でも全体の抵抗は変化する。すなわち、カーボンの抵抗は1-10Ωcm程度の導電体であるが、凝集体になると接触抵抗の影響により10の4-6乗Ωcm程度まで導電性は変化する。高分子中でカーボンが分散しているときに一次粒子まで分散している例は珍しい。大抵は凝集粒子として分散している。その結果、パーコレーションの扱いも、1Ωcm程度の粒子のパーコレーションを考えていてはだめで、凝集粒子1個の導電性を問題にしなくてはいけない。
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白川先生により導電性高分子が発見され、その分野の研究が進み、多くの導電性高分子が開発された。高分子半導体技術なども実用化され始めた。ここでは絶縁性の一般の高分子について考えてみる。
高分子材料の多くは比誘電率が3前後の誘電体である。導電性を直流で計測するためには精密な電流計が必要になる。高電圧を印加すれば電流が増加するので計測可能と言われるが、高分子材料のVI特性の線形性は材料により異なる。
誘電率が3程度の高分子材料は、10の13乗Ωcm以上の体積固有抵抗を示す絶縁体であるが、誘電率が3.5以上の高分子材料になってくると10の12乗Ωcm前後になってくる。すなわち一応絶縁体領域であるが、高誘電率の材料になってくると絶縁性と詠っていても10の11乗Ωcm程度の半導体領域の抵抗を示すようになってくる。
注意しなければいけないのは、フィラーを添加したときである。絶縁性のフィラーを添加したつもりでもフィラーの添加により材料の抵抗が変化する場合がある。これはフィラーとマトリックス高分子との界面の問題が大きいが、10年以上前に富士通のハードディスク問題を引き起こしたのは表面が一部加水分解され導電性になっていた難燃材を用いたためである。
このとき材料メーカー担当者にはパーコレーション転移の恐怖が分かっていなかったらしく、実験室で問題が無かったのでそのまま市場に出したらしい。実験室で問題が無くともパーコレーションの閾値は容赦なく下がる。当時の原因解析では、成形体の中でフィラーの再分配が生じ、表面付近に難燃剤の量が増加した状態になっていたという。その結果、パーコレーション転移が生じ半導体領域まで本来絶縁体で無ければならない材料の抵抗が下がった。
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ポリマーアロイの材料設計になると複雑になってくる。この欄では書きにくいノウハウが存在するので相談して欲しいが、公知のポリマーアロイ以外は、高分子のブレンド結果に落胆させられる。すなわち樹脂で2種以上の未知の高分子のブレンドは、素人は行わない方が良い。
この分野の考え方として強相関ソフトマテリアルというのが有名である。この考え方は怪しいから使わない方が良い、という学者もいる。確かによく分からず高分子をブレンドすると狙った物性通りの材料はえられず、大抵は1+1が1以下というひどい結果にもなったりする。
もともと強相関材料という考え方はセラミックス分野で提唱され、教科書も出ていた。最近は見かけないので廃れてしまったのかもしれないけれど、このコンセプトは理解できれば便利である。すなわち未知のポリマーブレンドで材料の改質が可能となる。
セラミックス分野では相溶という現象よりも新たな結晶構造ができる面白さも有り、特にガラスなどではブレンド研究が今でも行われている。高分子ではフローリーハギンズ理論のχパラメータの制限からブレンドして良い結果が得られる高分子の組み合わせは限定的となる。
強相関ソフトマテリアルというコンセプトを怪しい、という人に話を聞くとこのあたりの話となり、論理的にコンセプトが否定される。ここでフローリーハギンズ理論から解放されるプロセシングができたとしたらどうなるであろうか。強相関ソフトマテリアルというコンセプトで材料設計が可能となる。
退職前の短時間にこの技術について実験を行い大成功の結果を得た。退職後このプロセシングの研究を進め、新たな装置を開発した。現在その装置の図面ができあがるところである。ご興味のある方は問い合わせて頂きたい。
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単体の高分子材料を用いるときに成形体の力学物性は、高分子の一次構造と密度に関係する。弾性率は密度と相関するので、引張試験の結果も密度と相関することになるが、こちらは靱性という因子も関係する。靱性は材料に含まれる欠陥に大きく影響される。
射出成形体における力学データは、カタログ値を見ると高分子の一次構造に支配されているように見えるが、実際には一次構造以外の因子も影響するのでコンパウンド技術と射出成形技術は重要である。これらの技術が存在する前提で、材料の配合設計技術を力学物性について考えてみる。
単体の場合には、熱分析結果が重要となる。熱分析の結果から結晶化度や結晶化速度等がわかる。単体の材料でも重合条件が異なるとこれらの物性も変わる。ゆえに材料メーカーから技術情報データとして一次構造以外に熱分析データももらうと良い。
単体の高分子をマトリックスに用いてフィラーを添加するとパーコレーション転移が力学物性を支配するようになる。その結果フィラー添加量の少ないところでは、射出成形場所が異なると力学物性がばらつくことになる。ゆえにフィラーを添加する場合には体積分率でパーコレーション転移の閾値以上添加する必要がある。
その他老化防止剤などの添加剤を用いると弾性率をわずかに低下させる。また低分子といえども分散が悪ければ力学データに影響が出る。ゆえに低添加率のこれらの材料は、マスターバッチ形式で添加すると力学物性を安定化できる。また分散性が上がるのでわずかに添加量を減らすことが可能である。そのような特許も出願されている。
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かつて高分子のレオロジーについてはダッシュポットとバネのモデルで研究を進めていた時代があった。今このようなモデルは使われなくなったが、材料設計の分野では結構便利な考え方であった。
特に粘弾性試験を行い、その結果を用いて材料設計を進めようとするときに、ダッシュポットとバネのモデルで材料をイメージすると分かりやすい。30年以上前に防振ゴム材料の開発を担当したときに、数値計算の方法も含めその考え方の指導を受けた。
その時その考え方は、電気回路における抵抗とコンデンサーのモデルからきている、とも教えられた。多くの高分子は絶縁体であり、その電気特性を研究するためにインピーダンスが測定されていた。もっとも高分子に限らずセラミックスも含め誘電体材料はすべてインピーダンスを測定しなければその特徴を理解することができないのだが。
この誘電体の電気特性を考えるときのモデルからレオロジーのモデルは考え出された、と説明を受けて納得した。そしてこの方法は将来使われなくなるだろう、という予言まで聞いた。予言の根拠は高分子のクリープという現象がバネとダッシュポットのモデルで説明することができない、というものだ。
それから10年以上すぎて、高分子学会の報告でバネとダッシュポットのモデルがめっきり少なくなったことに気がついた。当方は、社会人になって3年弱高分子を扱ったが、その後10年間はセラミックスの研究開発を担当していたので学会におけるレオロジーの変化にはびっくりした。指導社員の予言通りの変化であった。
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ネイチャーに投稿されたSTAP細胞の論文をハーバード大バカンティ教授は取り下げない、と言っている。彼はSTAP細胞を15年以上追いかけてきた、とも。彼の発言はSTAP細胞のアイデアは自分にある、と主張しているのだが、植物では存在する現象が動物では存在しない、というのが学説であった。
彼の主張が正しければ、小保方氏の果たした役割は大きい。すなわち、15年以上の研究において、関係した科学者および科学者の卵が彼女の手順と同様のことを行いながら、現象を見落としていたことになる。これは科学の発見が行われるときの条件を示していると思われる。
過去に白川先生がノーベル賞を受賞されたときに、ポリアセチレンは学生が触媒量を間違えた結果合成できた、と発言し、失敗学が注目された。しかし、この白川先生の発言は、「非科学的な手順で新しい発見が成された」と捉えるべきだろう。
かつてiPS細胞の生まれた背景についても非科学的プロセスの重要性をのべた。山中先生の場合には学生が行った非科学的で典型的なヒューマンプロセスである。それでは小保方さんの場合には何が非科学的か?
新聞や週刊誌情報で彼女の人柄や力量を伺われる情報が多数出てきた。さらに野依理事長は科学倫理の欠如と未熟な科学者の問題を指摘した。彼女は科学というものをよく理解しないまま、科学の作法を身につけないまま、先端科学の現象が起きる現場に居合わせたのだ。そしてSTAP細胞の発見を行った。
これは、裸の王様の物語と同じで、科学を知らないその純粋さで自然現象の真実の姿を捉えることができたのだ。もし彼女が科学に誠実で真摯な研究であったならば15年以上その研究に携わってきた研究者同様に見落としていたのかもしれない。STAP細胞の騒動で学ばなければいけないのは、いつも科学的な視点で自然現象を見ていると自然の真の姿を見落とす場合がある、ということだ。それではどうするか?( www.miragiken.com )のサイトで一つの方法を示しています。
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STAP細胞の騒動で人生の歯車が一度狂ったときの怖さを改めて学んだ。ノーベル賞候補から一気に未熟な研究者へ、そして今、学位の再審査と自主退所に追い込まれているという。あまりにも大きな変化である。このようなときにはドラッカーの誠実で真摯な姿勢が重要となる。
例えばもし学位論文だけでも誠実に作成していたなら学位の再審査は免れただろう。もし科学論文には真実が厳しく求められると言うことを軽く考えなかったら今回の騒ぎにはならなかったろう。さらに今回のヒーロー的取り扱いを辞退していたなら展開は変わっていただろう。
このような人生の歯車を狂わせるような出来事は、誰でも一つや二つある。当方もあの事件が無ければ、今はゴム会社で半導体用高純度SiCの事業化成功者あるいは発明者として評価され、人生は現在と変わっていただろう。
それでは今の人生が不満足かと言えば、20年写真会社で専門外の高分子技術開発をマネージャーとして担当し、ゴム会社で考案した問題解決法で外部の賞を頂ける成果をいくつも出すことができた。不満足なのはその成果が写真会社で評価されなかったことだ。
デジタル化の流れの中で悔しい思いで豊川へ単身赴任し、PPSに6ナイロンを相溶させた中間転写ベルトの開発やポストコンシューマー材を用いた環境樹脂の開発など成果をあげることができ、成果を出しても早期退職を促され勇退を決心したところ最終出社日に東日本大震災が発生し、退職のその日は、送別会その他のイベントが中止になっただけでなく会社に宿泊することになった。
人生の歯車は狂ってばかりであった。しかし、何とかリセットし人生をそれなりの軌道に乗せることができるのは、いつまでも腐ってばかりいないで、とにかく誠実たらんと努力した結果だろう。ドラッカーはまことに良いことを教えてくれた(注)。
STAP細胞の騒動は彼女一人の責任ではない。学位論文の問題でも指導の段階における責任が大きい、と思われる。しかし彼女にとって厳しい状況である。ここは誠実真摯に振る舞うことで狂った人生の歯車を正常に戻す判断をした方が良い。
(注)ドラッカーの遺作「ネクストソサエティー」では、誰も見たことの無い世界が未来のキーワードとして出てくる。( www.miragiken.com)では、だれも見たことが無い世界を考えるために運営を開始しました。
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この活動報告では、弊社のPRも兼ねて、30数年間のサラリーマン生活における研究開発体験を元に世間に役立ちそうな過去の技術情報を書いている。すべて特許に公開されているかあるいは公知情報であるが、多くの読者が集まってきた。
今後もこのサイトでは当方の身につけている技術を中心に書いてゆくが、もし当方が20代であればこのような技術開発をやってみたいといった夢の話を書くサイト( www.miragiken.com )を立ち上げました。
このサイトは、運営を始めて約1ケ月ですが、弊社のHPが5ケ月後に達成した人数をすでに超えた。まだ夢の技術の話まで進んでいないがそれでも読者は増えている。当分は未来技術を考えるために欠かせない問題解決手法の話を進める予定でいます。
未来技術を語る前になぜ問題解決法か。それは今回のSTAP細胞の騒動やiPS細胞の発見経緯を見て頂けばご理解頂けるのではないかと思っています。すなわち従来研究開発で重視されてきた科学的方法でこれらの発見が成されたわけではなく、「技術」の芽があって発見が行われている。
また、30数年間研究開発を行ってきて、科学の研究と技術の開発における思考プロセスの違いも気になっていた。すなわち本来思考プロセスが異なって良いはずなのに科学的プロセス偏向の状態が20世紀の技術開発ではなかったのか、という疑問がある。企業の中にはTRIZやUSITを導入しようとして頓挫した企業もあるかと思いますが、TRIZやUSITは科学的に当たり前の結果しか与えない思考プロセスです。
イノベーションが要求される時代にはそれに適した思考プロセスを行うほうが賢明です。このような視点で未来技術研究部では、未来技術を語る前に問題解決プロセスを取り上げています。
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STAP細胞の騒動で科学者の倫理が問題にされたが、ニュースや週刊紙で報じられている内容を読むと、倫理という問題の前にドラッカーがリーダーに求めている誠実さとか真摯さという資質が研究者に欠如していると思われる事実が伝えられている。
すなわち誠実さや真摯さがあれば取られていただろうと思われる行動が、いくつか取られていないのだ。科学者という職業は知識社会のリーダー的存在であり、少なくとも公的研究機関で働く研究者には誠実さと真摯さが求められる。科学者というのはそのような職業である。
例えば週刊紙に報じられている研究ノートの問題について、いくらデジタル社会といえどもエビデンスとしてメモ程度でも肉筆で書かれた書類を残す教育が必要である。デジタル署名など認証技術が進歩してもデジタルデータは信頼性が低い。まだ肉筆のデータを残すのは面倒でも要求される時代であり、アカデミアでは、学生に徹底して実験ノートの重要性を指導すべきである。
企業でも会社指定の実験ノートを管理方法も合わせて仕組みとして備えている企業がある。知財対策のためである。例えばこんな事件を聞いたことがある。退職者Aが在職中に発明をした特許について部長だから発明者として名前を入れてもらえなかった、というおかしな訴訟が起きた。具体的な特許を訴訟の場で検証したときに、その特許の真の発明者はだれか、という議論になった。
Aは転職者で、自分の知識が無ければ発明できなかった特許だと主張した。しかし、Aが転職してくる1年前に書かれた某氏の研究ノートにその特許の発明のアイデアと簡単な実験結果が書かれており、某氏の上司の日付印がきちんと押されていた。結局裁判では、その実験ノートが証拠となりAの主張は退けられた。
科学者にとって実験ノートとは、単なる実験記録帳では無く、真実を確かめた人類の記録の証拠である。特に公的研究機関で研究に携わる人の実験ノートは税金が使われた記録でもある。実験ノートをそのように認識したならば、誠実な科学者であれば、デジタルデータとして実験ノートを残すだけではなく、真摯な姿勢として肉筆の実験ノートをつける重要性を感じるはずだ。
不誠実なAが目論んだ不当な対価の要求は、真摯に実験ノートをつけていた某氏のおかげで退けられ、企業は不要なお金を支払わなくても済んだ。ドラッカーが説く働く意味に「貢献」があり、公的研究機関で働く研究者にとって実験ノートとは社会に貢献している証拠となっていることを理解すべきだ。公的研究機関の研究者の実験ノートは単なるメモではない。社会に貢献している証である。
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今回のSTAP細胞について最初の段階における理研の発表には、ややまずい点があった。そのため新聞や週刊紙が今でも騒いでいるのではないか。某週刊紙や*スポの見出しには目を覆った。本人はともかくご家族がご覧になったらどのように感じるだろう。
なぜ論文発表の段階において、理研の名前だけで発表しなかったのだろう。研究の内容や社会へ与えるインパクトを考えると、個人を前面に出した発表には意図があると疑われても仕方がないことだろう。
30年以上前に有機無機ハイブリッドの発明をゴム会社で行った。まだゾルゲル法さえ一般的に知られていなかったときに、有機高分子と無機高分子のリアクティブブレンドを成功させたのである。ゴム会社から特許が出ているが、これを前駆体にして高純度セラミックスを製造する技術についてゴム会社では意見が二分した。
しかし、世間でセラミックスフィーバーが起き、無機材質研究所(現在の物質材料研究機構)へ留学する機会を得た。無機材質研究所へ留学後ゴム会社では、セラミックスの研究をやめた、というような電話が研究所にあり、当時の研究所のI総合研究官が当方のモラールダウンを防ぐために、1週間だけの限定付きで自由な研究時間をくださった。
その一週間で有機無機ハイブリッドを用いた高純度SiC新合成法を無事開発した(注1)のだが、その新聞発表は無機材質研究所名で行われた。基本特許も当方が書いたが、無機材質研究所名で出願している。これは、研究の大半を無機材質研究所の設備を使い行ったからである。すなわち国民の税金で行った研究だからである。
セラミックスフィーバーのさなか、半導体ウェハーにそのまま用いることができる高純度SiCが簡単に合成できる、という新聞発表は、工業新聞の第Ⅰ面に載り、社会に与えたインパクトはそれなりにあった。しかし、ゴム会社の海外留学を蹴って無機材質研究所に入所したセラミックスの研究未経験者がたった1週間で発明した、などという点は、それなりに面白い話ではあるが世間に出なかった。
ただ、それでも当方は大変であった。ヘッドハンティングの会社から転職の勧誘が多数来たのである。企画から実験まですべて当方が行ったことなど表に出ていなかったが、そうしたニュースをリークする人がいるものだ。また、この発明がすぐに国研としてプロジェクトが組まれる話まで進んだら、ゴム会社が騒ぎ出した。
昨日までハシゴをはずされたような状況だったのに、すぐに会社に戻ってこい、ということになった。特別昇進のおまけまでついた。STAP細胞ほどではないが、個人名など公になっていないにもかかわらず、それなりの騒ぎであった。
やがて日本化学会賞まで受賞するのだが、その受賞まで本件の研究について当方の名前が研究成果とともに載ったのは学位論文だけである。さらにその学位論文の主要部分となる論文については、何も関与していなかった国立T大助教授が当方のデータを用いて勝手に提出した論文(注2)である。さらにその助教授は学位の指導をほとんどしてくださらなかった。自分の研究として発表することを指導と思っていたのだろう。
このような経緯も含め、セラミックスフィーバーのさなかに発明された高純度SiCの技術で公的機関や無関係の人の名前で研究が発表されていても、中心人物の周辺では大騒ぎになったのである。今回のSTAP細胞の発表では、発表の初期段階から尋常ではない予感がしていた。最近スタートしたホームページ( www.miragiken.com)は、リケジョを主人公にしているが、この騒ぎに便乗したわけではなく、1年前から準備していた企画である。出だしのストーリーには話題を使わせて頂いたが、便乗商法に誤解されるのではないかと心配している。
(注1)現在でもゴム会社は当時実験で見いだした方法とほぼ同様のプロセスで生産を行っている。相違点は触媒に用いた酸が変更になっているぐらいである。
(注2)他人の研究をさも自分の研究のように、論文筆頭者として論文を提出することは研究者の倫理に反しないか。40歳過ぎても”未熟な研究者”がいる。学位審査の過程の一コマである。
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