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2013.02/11 弊社の問題解決法について<25>

ところで問題の構造について、課題や課題相互の関係がわかるように系統図で表現しますと、問題の理解が深まるだけでなく、得られた系統図をコミュニケーションツールとしても使えます。

 

問題の構造を系統図で表現する作業については、知識に基づく我流でかまいませんが、参考までに新QC七道具にある連関図法を用いた手順の一例を以下に示します。この手順では連関図を用いますが、系統図の下書きを作る目的で使用しますので、新QC7つ道具の説明にあるような厳密な因果関係を作り上げる必要はありません。慣れてくれば、以下の作業を行わなくても、いきなり問題の構造を示す系統図を作成可能です。

 

まず大きな紙を用意し、その紙の真ん中に、「あるべき姿」や「現実」の具体化作業から明確になった「問題」を書きます。

 

①  問題を結果とみなし、その原因を考える。可能な限り問題の周りに思いつく原因を並べます。原因と思えないものでも課題として必要ならば書き加えます。ここで原因を考えるように説明していますのは、発想を刺激するためです。この手続きで、仮に原因1、原因2、原因3、原因4、原因5と考えることができたとします。

②  次に原因1から原因5までの各原因を結果としてとらえ、それぞれの原因を考えます。

 

問題を中心にして、これをどんどん外側へ広がるように行いますが、この時、「あるべき姿」が最も外側にあることをいつも忘れないようにします。

 

もしこの連関図の作成作業で、同じ階層レベルに位置しながら、強い因果関係で結びつく項目があるならば、片方がノイズであるか、あるいはどちらか一方に含まれるべき情報かもしれません。ここでの作業は、問題の構造を示す系統図を作るために、補助的に連関図を作成しているだけですから、通常の連関図のように因子をすべて書き出す努力をする必要もありません。

 

 以上のようにして作成した連関図から系統図への展開方法は、難しくありません。中心にすえられた問題を左端に寄せて、系統図のように並べ替えれば良いだけです。

 

 この系統図を作成する作業に慣れますと、逆向きの推論を最初から行いこのあと説明するK1チャートを一気に作成でき、すぐに思考実験を始められるようになります。すなわち第一節から第四節までの作業を短縮してできるようになります。

                                     <明日へ続く>

カテゴリー : 連載

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2013.02/10 弊社の問題解決法について<24>

 それでは「考える技術」として日常の問題から科学の問題まで使用可能な新しい問題解決法を説明します。本書における問題を考えるという作業の意味は、「現実」が「あるべき姿」に改善されてゆく道筋を見いだすことと、その道筋を用いて「あるべき姿」に至る思考実験を行い問題解決のアイデアを検証し練り上げる作業までです。

 

 また、問題を解決するとは、「あるべき姿」を実現するために行動をおこし、成功することです。問題を考えるのも問題を解決するにも意志の力が必要です。すなわち、問題を考えるとは、すでにその段階から問題解決のステップがスタートしているのです。本書では、問題を考える時に必要となる発想力を引き出すための工夫を独自のK0チャートとK1チャートというツールで実現しています。

 

しかし、実際の問題解決では、ここで説明しているステップを段階的にすべて行う必要は無く、問題の規模に応じて途中のプロセスを省略することができます。ここで説明する各プロセスの良いところだけを取り出して、我流の「考える技術」を創りだすのもいいと思います。

 

ところで、すでに説明しましたように、問題解決の道筋は、問題の構造に影響を受けます。

 

問題の構造が単純で、課題が一つのときには、その課題が解決されれば、「現実」と「あるべき姿」の乖離は無くなります。しかし、通常の問題は複数の課題で構成されていたり、課題がさらに細かい課題で構成されていたりと問題の認識の仕方で変化します。また、課題を問題に転化できますので、問題が複数の問題で構成されている構造として認識することもできます。

 

問題を分析的思考で解決しようとした場合に、問題の構造の複雑さや課題が問題に転化する性質は分析結果に大きく影響するので大変困りますが、エージェント指向にも似た問題解決法では、問題の構造を自由に変化させて問題解決を進めますので、問題解決途中に「問題」に内在するこのような性質から影響をうけることはありません。

 

問題の構造を考えるにあたり、ここでは、問題が課題だけで構成された構造を持っていると仮定して系統図を作成してゆきます。しかし、この段階で通常行われるような、問題の構造の正確な全体像を表す系統図(ロジックツリーと呼ばれる)を作るわけではありません。叩き台程度でかまいませんから知識ベースを活用して、気楽に作ります。

 

これまでの問題解決法の中には、問題を分析する目的で系統図を用いる場合があります。本書でも問題の構造を系統図で表現する作業を行いますが、問題を分析するために系統図を使うわけではありません。問題に含まれる課題を知識に基づき整理し書き上げ、それをまとめるために系統図を書きます。

 

問題を分析する従来法との相違点は、問題に含まれるすべての課題を書き上げることに集中する必要はなく、アイデアをまとめる気分で気楽に作ればよい、と言う点です。自分たちの所有する知識ベースで考えられる課題だけで問題の構造を書き上げる作業を行います。

 

問題の構造を分析的思考に頼らず、保有している知識の範囲でまとめあげる点は、この問題解決法の特徴です。知識の範囲でまとめてゆきますので、完成前におおよその階層構造もあらかじめ推定できる長所があります。類推などにより思いつく課題だけで系統図を作成しますが、課題に漏れがあるかどうかという心配をする必要はありません。仮にこの段階の作業で課題を見落としても、この後の作業で、「あるべき姿」から逆向きの推論を行い見落とした課題を探索し追加してゆきますので大丈夫です。

 

また、この作業の後半において思考実験で使用するK1チャートを作成する時に、アクションの結果について有効であった場合と無効であった場合についてすべて書きあげる作業を行いますので、ここで仮に課題を挙げ忘れても思考の漏れが発生することはありません。

 

普及が始まっている科学的問題解決法USITでは、問題の構造を見えない世界として扱い分析的思考で探索してゆく手順で行われますが、高い能力が要求されます。しかし、ここで行う系統図作成作業と、逆向きの推論で行う「あるべき姿」から課題を見いだす作業は、分析的思考に必要な高い能力まで要求されません。実務で培われた知識と発想力があれば作業を完了できます。

 

                   <明日へつづく>

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2013.02/09 B787の蓄電池事故の原因

ボーイング787の二次電池が黒こげになった原因として、二次電池が原因とする論評を見つけた。しかし、現在のところその論評の意見は正しくない。特定の二次電池が特にひどく壊れていたことに注目しているのだが二次電池の製品としてのばらつきを考慮すれば、パワーマネジメントシステムに異常があったとしても起こりうる結果である。

 

それでは原因は何か、と問われると、現在のところ大電流が流れたらしい、ということは推定できるが、大電流の流れた原因が不明である。これが現在のところ正しい見解だと思っています。パワーマネジメントシステムの回路が公開されていないのでこれ以上のことは推定になりますが、特許を見る限りまだ不十分なシステムです。二次電池については、鉛蓄電池よりも危険性が高い電池という認識を開発者も持っており、その対策を行っていたと思います。

 

一番の問題は、ボーイング社が軽量化のためになぜLiイオン二次電池を初めて採用したのか、そして蓄電池とパワーワーマネジメントシステムと別々の会社に発注しなければいけなかったのか、という点である。飛行機の搭乗手続きでは、Liイオン二次電池の持ち込みを厳しく制限しているにもかかわらず、なぜ蓄電池システムとして採用したのかという疑問があります。安全を犠牲にした軽量化は、飛行機の機能を考えた時に誤った設計と思います。少なくとも二次電池の持ち込み制限をしなくてもよいようになってから採用すべきではなかったか、と思います。

 

トヨタはハイブリッド車にニッケル水素電池を使用している。当初は安全のため、と思っていたが、プリウスαではLiイオン二次電池を採用してきた。安全のためというよりもコストのためだった、とがっかりさせられたが、ニッケル水素電池をボーイング787では採用すべきだった、と思います。実は二次電池の安全設計科学という学問が重要であるにもかかわらず、研究者がいない現実が一番の問題です。

 

原子力発電に関しましては3.11でこの分野に関心が集まり、活断層などの立地条件の見直しが進みました。安全学という学問が重要な時代になりました。中国の汚染ガスから日本を守るには、どうしたらよいか?これも今ボーイング787の事故よりも重要な問題です。中国から日本を守るには?は国防の問題になります。弊社の簡単に学べる中国語シリーズで中国語を学び、友好関係になれるように願っています。近隣の国とは仲良くするのが一番で、言語はその手段の一つと思います。多くの人に学んでいただけるよう無料版も用意しています。

カテゴリー : 電気/電子材料

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2013.02/09 弊社の問題解決法について<23>

 探偵小説の世界だけでなく、コンピューターの世界でも推論の向きによる二つの世界観があり、逆向きの推論によるエージェント指向ではフリーズしないコンピューターができると言われてます。このエージェント指向に似た問題解決法であればどんな問題でも解決できるかもしれません。

 

ところでオブジェクト指向プログラミングで使用される前向きの推論については、結論に至る道筋をすべて吟味しなければ解決の道筋を見つけられない、という特徴があります。一方、エージェント指向の特徴である逆向きの推論については、必要十分条件を前提に考えていますので、必ず結論に至る道筋だけを追及できる効率の良さがあります。

  

この推論の向きの特徴について、帰宅難民になりました2011年3月11日に考えた問題を事例にもう少し具体的に説明します。その日、都心の交通機関は止まったままでしたが、八王子駅周辺の交通機関は、一部動いていました。

 

「八王子駅近くの会社にいて、板橋区内の自宅玄関へ、出発時に予定した到着時間に確実にたどり着くにはどうしたらよいか」、

 

という問題で前向きに推論しますと、電車に乗った場合には、どこかの駅にたどりつき直接自宅玄関に着けません。自宅玄関につくためには、どこかの駅から、さらに歩く必要があります。最寄り駅についた場合も同様で、最寄り駅から自宅玄関まで歩く必要があります。ゆえに電車が順調に動いていない状況では、到着時間を予測することができません。

 

京王バスに乗った場合には、京王バスのどこかのバス停につきます。どこかのバス停から玄関までは、また電車に乗るか、歩かなければなりません。途中で電車に乗りました場合には、電車のどこかの駅にたどり着けますが、自宅玄関まで、そこからさらに歩く必要があります。電車に乗って無事に最寄り駅につけたとしても、最後に自宅玄関まで歩かなければなりません。

 

最初に電車や、京王バスに乗った場合には、自宅玄関に直接つけませんから、災害時には到着時間の予測もできません。八王子駅近くの会社から自宅まで、すべて歩いた場合にだけ、予想した到着時刻に直接自宅玄関にたどり着けます。

 

前向きの推論では、八王子駅近くの会社から板橋区内の自宅方向へ推論を展開し、電車、バス、徒歩の3通り以上の組み合わせを考えることになります。

 

しかし、自宅玄関から逆向きに推論した場合には、徒歩という手段だけを考えればよく、自宅玄関から八王子駅近くの会社まで行く見通しが一発で得られます。このようにスタート地点は八王子駅ですが、逆向きの推論では、ターゲットとなる自宅を起点に考えます。

 

インターネット情報では、当時自宅周辺の駅に停車する電車は、すべて運休していました。八王子駅周辺では京王バスが動いていましたが、自宅を起点に逆向きに推論を行いますと、途中で交通機関に乗車できる可能性はありません。サラリーマン最後の日は会社へ宿泊するという結論をすぐに出すことができました。

 

帰宅難民の事例ではゴールである自宅は変化しませんが、不確実性の時代における「あるべき姿」は、時の流れにより変化する可能性もあります。もし「あるべき姿」の見直しが必要になったなら、すぐに修正し改めて問題を設定しなおさなければなりません。問題解決で大切なのは「あるべき姿」であり、この「あるべき姿」をいつも正しく決めなければなりません。

 

本書では「あるべき姿」は不変として扱いますが、実際には変化するケースも出てきます。しかし、あるべき姿が変化する場合にもあるべき姿を修正した新たな問題で問題解決を進めればよいだけです。「あるべき姿」が時代に合っているかどうかの検証は、常に心がけねばなりません。あたかも「マトリックス」でエージェントがターゲットを追い続けたように、問題解決する時には時代に合った「あるべき姿」を追い求めねばなりません。

                       <明日へ続く>

カテゴリー : 連載

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2013.02/08 高分子の混練技術

過去にも高分子の混練技術に触れましたが、混練時に発生する重要な機構として剪断流動と伸長流動が重要です。10年ほど前に推進された高分子の精密制御プロジェクトでは、伸長流動についてかなり研究されL/Dの大きな二軸混練機まで試作された。伸長流動について集中的に研究されたのはナノ構造を達成するためである。剪断流動は混練効率の高さに比べ分散してできる構造の大きさがミクロンオーダーまで、と言われている。過去の実験で混練時間を伸ばしても伸長流動の場合はナノオーダーまで達成できていたが、剪断流動ではミクロンオーダーまでであった。

 

同プロジェクトでは高速剪断についても研究され装置も試作された。一般の二軸混練機の2倍以上の回転数すなわち1000回転以上の高速で混練し、ナノオーダーまで達成できたことになっているが、市販された実験装置で実験を行うと、分子量の低下が著しく使いモノにならない。また実用レベルの装置を作るとなると巨大なモーターが必要になる実用性のない装置でありました。

 

カオス混合という幻の混練技術がある。新入社員時代指導社員に教えていただいたパイ生地の混練方法であるが、伸長流動と剪断流動がうまく組み合わさり、混練効率と達成できる構造の緻密さでこの右に出る混練方法は無い。過去にロール混練をいろいろ工夫してみたが、ロール混練でも同様のことを達成可能であるが、専用装置にはかなわない。ロール混練はバッチ式となり生産性が悪い。

 

混練の世界についてはシミュレーション方法も発展し、かなり解明が進んだが、問題はラボのデータを生産機で実現できないことである。新入社員の時に指導してくださった方は混練の神様のような人で、その方曰く、「実験室でも生産機を使え」であった。周囲が小さなニーダーで実験していたのをしり目にパイロットプラントで豪快に実験をやっていた思い出がある。大きなロールで混練を行うのは恐怖でしたが混練という技術を学ぶには良い体験でした。

カテゴリー : 高分子

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2013.02/08 弊社の問題解決法について<22>

 ところで、エージェント指向のパラダイムは、オブジェクト指向プログラミングの普及が始まった1980年代に登場しています。しかし、人工知能の技術が必要なため、そのパラダイムを実現できる安価な普及型言語は未だに登場していません。エージェント指向の解説書を読みますと、そのパラダイムはゴール至上主義であり、メッセージ至上主義のオブジェクト指向のパラダイムと全く異なっている、と説明されています。

 

例えば、オブジェクト指向では情報を頼りにしてアクションが決まるので受け身的振る舞いとなりますが、エージェント指向では状況判断が加わり能動的な振る舞いとなります。すなわち、この能動的振る舞いの特徴があるので、情報が無い時にアクションが止まってしまうオブジェクト指向の欠点が解決されています。そして情報が無くともアクションを中断することなく必ずゴールまでプログラムを実行し続けると説明されていますが、この仕様はエージェント指向の一番の特徴であり、「ゴール至上主義のパラダイム」と表現されたりします。不足している情報を「逆向きの推論」により自分で探し出したり作り出したりする仕掛け、人工知能がプログラムに組み込まれているので実現可能となる仕様です。

 

そのほか、エージェント指向プログラミングには、ゴールへの最短経路を探す性質や、不足している情報を探し属性やメソッドを自由に変化させて知識が増えてゆく人の成長を模倣した仕組みなど、問題解決プロセスに参考となる仕様がいくつか含まれています。 

 

 エージェント指向については、論文でその仕様を理解しただけですが、派手なワイヤーアクションで有名になった映画「マトリックス」は、まさにエージェント指向の世界観を取り込んだ秀作です。続編「リローデッド」や完結編「レヴォリューション」は少し本題から外れますので触れませんが、第一作では、仮想現実空間でネオがエージェントに執拗に追いかけられます。エージェントは人工知能で動いているのですが、どこからともなく現れてネオを追いつめてゆきます。あたかも彼らはネオの動きを逆向きに推論しているかのようです。結末はビデオで観てください。

                                        <明日へ続く>

カテゴリー : 連載

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2013.02/07 ボーイング787のバッテリー問題

昨日の朝刊にボーイング787のバッテリー問題について、詳細な写真が公開された。以前にも指摘しましたが、蓄電池は蓄電池本体とパワーマネジメントシステムから出来上がっている。今回蓄電池本体は日本製であるが、パワーマネジメントシステムはフランス製と言われています。なぜ重要なシステム部品が1社ではなく複数の会社に分けて発注されたのか不明ですが、飛行機用の部品と考えた時に問題のある部品調達の仕方です。

 

今回のパワーマネジメントシステムがどのような電気回路になっていたのか不明ですが、公開されている特許を見る限り、DCDCコンバーターが用いられているはずなので、蓄電池へ外部回路の影響が及ばないはずです。溶断したヒューズの写真もあり、外部回路とパワーマネジメントシステムの間に大容量の電流が流れています。写真から、パワーマネジメントが機能せず電池に大電流が流れたように見えます。

 

ここから先は推定になりますので詳細を知りたい方は問い合わせていただきたいのですが、パワーマネジメントシステムの回路が公開されなければ原因はわからないだろうと思います。おそらくボーイング社には回路図があるので、ヒューズが切れるような大電流が流れた原因の解明が進むと思います。

 

ボーイング787の問題は初期不良は発生して当然と考えられている情報が一部で流れ、社会不安にもなっています。また、蓄電池の問題については、意外な危険が潜んでいたことも明らかになりました。飛行機の設計というものが自動車や複写機などに近い感覚で設計されていた可能性すら疑われます。3.11の福島原発の事故で、原子力発電が通常の製品と異なり、実験段階に近い状態で商用運転されている実態にびっくりして2年たちますが、安全性に対するメーカーの良心が業界によりこれほど差があるのか、と驚いています。原子力発電機や飛行機よりも事務用複合プリンターの方が用いられ方を基準に評価すると安全側に設計されています。モノ創りと安全安心について全産業で一度見直す必要があるのかもしれません。

 

かつてメーカーで製品開発を担当した経験から、こうしたお粗末な事故が続きますと、業界ではシェアートップではありませんが、安全安心の商品を業界全体で送り出しているメーカーの誇りのようなものを退職しているにもかかわらず感じます。

 

 

カテゴリー : 電気/電子材料

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2013.02/07 弊社の問題解決法について<21>

 問題と課題が定義され、問題は課題を用いた構造で表せることがわかりました。また、問題認識や問題の共有化で生じる問題とその解決方法についても少し触れました。新しい問題解決法の説明に入る前に、なぜ問題解決でフリーズするのか、その原因について考えてみます。

 

コンピューターのソフトウェアー技法としてオブジェクト指向とエージェント指向という2つのパラダイムがあります。科学的問題解決法として有名なUSITの問題分析法は、このオブジェクト指向のパラダイムと似ています。

 

 オブジェクト指向プログラミング言語としてC++やC#、JAVAなどが知られています。これらはソフトウェアーに擬人化を持ち込んだ初めてのプログラミング技法と言われ、1980年代初めに登場しました。プログラムの固まりであるオブジェクトは、モノを構成するデータである属性と、モノの持つ機能であるメソッドで構成され、カプセル化(隠蔽化)されています。このオブジェクトにメッセージを与えるとプログラムの実行、すなわちアクションを起こします。

 

言い換えれば、データと機能を有するプログラムの「かたまり」をオブジェクトと言い、このオブジェクトにメッセージ、例えばデータを与えると、そのプログラム機能に沿ったアウトプットを吐き出す、ということです。

 

オブジェクト指向で作られた具体的なプログラムの例として、マイクロソフト社のWINDOWSプログラムがあり、アイコンをクリックした時に、そのアイコンのプログラムの動作する様子がオブジェクトのアクションに相当します。

 

クリックの仕方が悪いときには何も動作しない、というように、メッセージとメッセージが与えられた時のオブジェクトの条件が矛盾する場合には、アクションを起こさない、すなわちアイコンが指し示すプログラムが起動しないという現象が生じます。

 

このように、オブジェクト指向はメッセージ至上主義で、このパラダイムの特徴ゆえにオブジェクト指向を用いたプログラムでは、条件が完全に揃わない時にはプログラムが動作をしないケースが出てきます。すなわちソフトウェア―側でそのような場合の対応がされていない時には、プログラムは途中でフリーズすることになります。

 

オブジェクト指向によるソフトウェアーの作成プロセスは、オブジェクト指向分析に始まり、オブジェクト指向設計を行い、実装するという手順です。一般に、オブジェクト指向分析の結果が完成したソフトウェアーの品質を左右するといわれています。このソフトウェアー品質が、オブジェクト指向分析結果に依存する問題を解決するために、エージェント指向というパラダイムが同じ年代に登場しています。

 

オブジェクト指向のパラダイムでは、論理が「前向きの推論」でボトムアップ的に展開され、データ間の類似関係により体系化されてゆくという生物学の分類学にも似た美しさを持っています。オブジェクト指向のパラダイムとよく似たUSITなどが人気を集めているのは、その美しさからかもしれません。しかし、説明の美しさに比較し、USITを用いて問題解決した場合には分析的思考方法で苦しみ、前向きの推論における手続きの煩雑さに多くのユーザーが悩むことになります。そして苦労しても科学的な見地から当たり前の結果しか得られません。

                           <明日へ続く>

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2013.02/06 弊社の問題解決法について<20>

問題認識が大きくずれるケースとして、問題の存在について意見が分かれる場合について考えてみます。震災後に顕在化した問題以外に、平和な日々の生活でも細波のごとく多くの問題が発生します。水害の連想で安直ですが、1974年の多摩川水害から生まれた新聞小説「岸辺のアルバム」というTVドラマでは、不倫をしている主人公が偽りの笑顔で家族写真を撮るシーンがあり、それは平和な家庭において主人公以外誰も気が付いていない問題を表現する象徴的なシーンでした。

 

現実とあるべき姿に乖離が見えないなら、誰も問題の存在に気がつきません。ゆえに問題の存在に気がついた人は、まず現実とあるべき姿の認識を共有化するために、それぞれを見える化する作業が最初の重要な仕事になります。誰も問題に気がついていない段階で、問題だけを主張しても、他の人は現実とあるべき姿の乖離が見えないために、問題の存在そのものを理解できません。

 

原子力発電の安全神話はその典型的な例であり、科学的に検証したので事故は起きないという原発の専門家達による誤った現実認識と、発電コストが安価でCOを排出せず環境に優しい未来エネルギーというあるべき姿を国民が共有化したために、問題が見えなくなり福島原発の事故を引き起こした、と反省する必要があります。

 

原発につきましては、一部の学者やジャーナリストから警鐘が鳴らされておりました。チェルノブイリの事故以来数多くの問題が具体的に指摘されてきましたが、あるべき姿や現実がうまく伝わらず、問題が共有化されなかったため福島原発の事故に至りました。

 

福島原発の事故原因解明は現在も進められておりますが、今回の事故処理も含め発電コストの試算を行いますと火力発電よりも高くなるという結果も報道されました。さらに環境汚染や食の安全の破綻の状況なども見えてきました。これらの問題を抱える発電システムとしての原発を含めた将来のエネルギーについてあるべき姿が議論されるようになって、ようやく原発の問題を共有化できる下地が整いました。

 

このような問題以外に、福島原発は全電源喪失から回復までに1時間以上かかったという報告があります。電源車を慌てて手配したが、コネクターの形状が合わずに電源回復が遅れた現実やY所長はじめ現地の技術者が運転設備の構造を十分に理解していなかった現実も新聞報道されています。事故後の報道で次々に明らかになる原発の現実は、「安全でクリーンなエネルギー」というあるべき姿から日に日に乖離してゆきます。

 

 このように問題というものは、現実とあるべき姿の乖離が大きくなって初めてその存在が分かるものであり、問題を指摘してもその理解や共感が得られない時には、現実とあるべき姿の共有化から作業を進める必要があります。

                                  <明日へ続く>

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2013.02/05 迅速な研究開発を可能とするマネジメント<3>

高純度SiCのパイロットプラント建設と樹脂混練プラント建設、再生樹脂の開発の3例をもとに迅速な研究開発を可能とするのは管理者がどこまでリスクを深く理解し、そのリスクを回避する努力を行い常に成功しようとする決意にある、と説明してきました。この3例は研究開発のシーンでは異常な例なので参考にならない、と受け取られたかもしれませんが、通常順調に進められている研究開発でも高いリスクがあることを管理者は理解しているだろうか。

 

余裕のある開発計画で進めた場合でも、失敗のリスクを0にすることはできません。例えば高純度SiCのテーマの場合、S社とJVを開始するまで6年の歳月がかかりました。S社とのJV開始時には、短期間で完成させたパイロットプラントをそのまま使用しています。仮にパイロットプラントを3年かけて建設しても事業として成功するまでの期間は同じでした。

 

おそらくパイロットプラントの建設まで3年かけていた場合には、パイロットプラント建設の前にテーマが中断されていた可能性があります。技術として成功することが分かっていても事業として成功するかどうかは、先端技術の場合に企画段階でだれもわかりません。ゴム会社という半導体とは全く異なる業種で高純度SiCのテーマを推進するときの最大のリスクは研究開発中断という経営判断です。1g程度のサンプルで2億4千万円の先行投資を受け、1年弱の短期間でパイロットプラント建設を行った理由は、セラミックスフィーバーが終われば、テーマ中断の経営判断が出ることが予想されたからです。高純度SiCの事業は日本化学会科学技術賞を受賞し、現在もゴム会社で事業が30年近く継続されています。

 

事業の成功因子と技術の成功因子は異なります。前者のリスクと後者のリスクでは、後者のリスクの方が確実に予測可能です。100%可能な場合もあります。最初にあげました3例は技術として100%成功する自信がありましたので短期間でやり抜く決心ができたのです。しかし前者のリスクを100%取り除くことはできません。本来研究開発というものは技術のリスクのみ管理するステージと事業のリスクを下げるステージの管理とわけて推進できればよいが、どこの会社も研究開発管理者に対し、初期段階から両者を要求しています。

 

そのため初期段階に華々しい事業計画を示し、研究開発の途中でも技術の実力よりも事業可能性ばかり説明し、経営陣をだますような管理者が出てくるのです。およそ、その会社の事業として大きく育たない可能性が見えていても10年続けた馬鹿な研究開発事例も見たことがありますが、技術と事業の関係性よりも事業の華々しさだけを強調していました。経営がこのような管理職に騙されないためには、実務担当者に直接技術の市場における位置づけを聞くとよいです。実務担当者に10年続ける意思があるかどうか問えばよいのです。実務担当者にその覚悟が無ければトップの技術は育ちません。トップの技術が育たなければ後発で市場参入する場合に勝てるわけがありません。

 

高純度SiCのテーマは実務担当者として推進しましたので、トップレベルの技術の成功のみ考えていました。しかし、樹脂の混練プラントや再生PETの場合には管理者として担当していました。実は、管理者として担当したこれらのテーマは事業としての成功は100%、技術としての成功も100%分かっていたテーマです。むしろ、必ず事業で必要になる、とわかるまでテーマを推進しなかった、という言い方の方が正しい。研究開発を100%成功させるには、事業としての成功が読めるところで推進すればよいのです。

 

 

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