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2023.02/15 高純度SiC前駆体開発手法

ポリエチルシリケートとフェノール樹脂とはそのままでは均一に混合できない。これはフローリー・ハギンズ理論から自明であり、均一混合のためには相容化剤の添加かリアクティブブレンドかという選択になる。


リアクティブブレンドは、反応条件の選択が難しいが、これをラテン方格により1日で最適条件を見出している。どのような方法で行ったかは、本欄で数年前に書いているのでそちらを見ていただきたい。


科学こそ命と思っている研究者には、みかけ荒っぽいこのような手法を邪道と思われるかもしれない。しかし、あみだくじ方式の実験でノーベル賞を受賞する時代である。そろそろこのような手法も一般化してほしい。


40年以上前は大変だった。タイヤ開発を担当している部門では統計手法が日常化していても研究所ではそれをバカにしていた。


その研究所で、周囲から白眼視されながら、ひたすら効率的な研究開発手法を追求してきた。高純度SiC前駆体の合成技術はたった1日で得られたが、そこから高純度SiCまでの道のりは大変だった。


事業を立ち上げてからはさらに大変で、I本部長の時には、業務妨害まで起きている。そのきっかけとなった電気粘性流体の耐久性問題でも一晩でデータサイエンスの手法により解決案を提案している。そしてその提案はすぐに科学的に検証された。


科学で否定証明されていても、肯定的な現象が得られたならば、それを科学的に証明すると新しい形式知となる。科学の方法のこの問題はイムレラカトシュが著書(寝苦しい夏に読むとよい本である)で詳しく解説している。


データサイエンスの手法は、科学こそ唯一の技術開発手法と信じている人には腹が立つくらいに効率のよい研究開発手法に見えるので注意しなければいけない、と言うことを転職前に学んだ。


転職先でも、やはり「仮説を設定した実験」が標準となっており、科学が唯一の研究開発手法だったが、タグチメソッドの導入が決まってからは仮説を設定して実験を行えという管理職が少なくなった。


データサイエンスの導入について弊社にご相談ください。企業風土の実情に合わせた研究開発必勝法を提案させていただきます。

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2023.02/14 データサイエンスとは何か

4年ほど前のコロナ禍直前に、アカデミアではデータサイエンスの講座設置ブームがあった。当方が社会に出たときに、情報工学科の設置ブームがあった時と少し異なり、一過性であり最近沈静化している。


そもそも情報工学科があるというのにデータサイエンス学科を新たに設置する発想を理解できなかった。さらに最近不思議に思うのは多変量解析も機械学習の一つ、などと説明している著書があることだ。


多変量解析のアルゴリズムを用いる機械学習はあっても良いが、多変量解析のすべてが機械学習ではない。さらに最小二乗法も機械学習のアルゴリズムになりうるが、機械学習にすべて含まれるわけではないのだ。


理由は、データマイニングにおいて、コンピューターには計算部分だけ依存し、解析は人の頭で行う多変量解析の手法が50年ほど前から行われていたからである。グラフ用紙だけで行う勘ぴゅーた方式もある。


勘ぴゅーたの性能が今でも向上しているか確認するために、早期退職前PETボトルをベースにした多成分ポリマーアロイ再生材の開発をエクセルを使った多変量解析で行っている。


中国で再生材の開発を行ったので手元にソフトウェアーが無かった。それでエクセルと頭脳を使って材料開発を行ったのだが、勘ピューターは冴えていた。


そもそもデータサイエンスは、サイエンスの意味が、材料科学という時の科学と少し異なることに気がつかれているだろうか。サイエンスという意味は科学であり、ややこしいことを書いているが、材料科学では、材料が関わる、あるいは材料そのものの真実を明らかにする研究が主体である。


すなわち実体が科学の対象として、存在するのだ。ところがデータサイエンスでは、数字の関係性について推論を科学的に展開する研究を行い、実体は科学で検証されて初めて現れる。


これがデータサイエンスのサイエンスと材料科学という時の科学と大きく異なるところである。数字を扱うのでデータサイエンスは数学と捉えると、これまたおかしなことになる。数学を研究実現のために、あるいはその成果を実用化するために用いるが、データサイエンスは数学ではないのだ。


本日のこの欄を理解できた方の頭脳は40歳より若い柔軟性を持っている。恐らく孔子のような人は理解できないかもしれない。40過ぎても惑うことができなければデータサイエンスを理解できない、と思っている。


惑うことは未熟を意味しない。新しいアイデアが湧き出てきても惑うのだ。ゲーテは老人になっても少女に恋をした詩を書いているが、技術者はいくつになっても新しい技術にチャレンジし続ける。データサイエンスの導入について悩んでいる方はご相談ください。

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2023.02/13 重回帰分析(1)

データサイエンスにおいて、多変量解析はデータとプログラムさえあれば簡単に結果を出せるので活用できる分野は広い。


技術開発の現場では現象の変化に線形性が見られるケースが多いのでわざわざディープラーニングまで持ち出さなくても、重回帰分析か主成分分析で十分にデータ解析できる。


開発対象の機能なり物性目標、あるいは品質特性の予測シミュレーションを行いたいとか、それらに寄与する因子、例えばそれらを改善したいときにまず注目したい因子を知りたいときなど重回帰分析は便利である。


とりあえず、それらを目的変数にして解析を行うと多変量の一次回帰式がえられる。弊社のサイトで公開しているプログラムを用いれば、偏回帰係数だけでなく標準偏回帰係数も出力してくれる。


標準偏回帰係数から目的変数へ寄与率が高い因子を知ることができる。このとき重要なことは、一次回帰式を構成する説明変数がそれぞれ一次独立であることだ。


一次独立とは、説明変数間に相関が無いことである。しかし、用意されたデータ群において偶然の相関が現れたときに工夫が必要になる。ゆえに、弊社のサイトのプログラムでは、入力されたデータの説明変数間の相関係数も出力している。


(注)重回帰分析では、y=f(x1、x2、ーーーn)という関数関係で現象をとらえようとする手法とも言える。ここでyは目的変数で、xnを説明変数と呼ぶ。これをテイラー展開して2次以降の項をすべて誤差項としたのが重回帰分析で求まる一次回帰式である。ゆえに説明変数の係数は、偏微分の形になる。

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2023.02/12 研究開発必勝法

弊社が販売している研究開発必勝法は、高純度SiCの事業化で実践した体験をもとに開発した。関連事業を行っている企業及びその他の製品組み立てを行っている企業に有効な方法である。


高純度SiCの事業化は40年以上前に始めた仕事だが、この時の仕事の手法を15年ほど前に担当した半導体無端ベルトの事業化で、古くなっていない切れ味の鋭い手法であることを再確認している。


ゴム会社や写真会社で研究開発を担当してきたが、十分な成果を出すことができたと思っている。日本化学会や、日本化学工業協会、写真学会で受賞するなど研究開発必勝法の成果は、外部の受賞もしている。


もちろん社長賞などは当然受賞しているのだが、半導体無端ベルトでは、基盤技術0の状態からコンパウンド工場を半年で立ち上げることに成功しているアジャイル開発である。


高純度SiCの開発でも粉体製造法は無機材研における4日間の研究期間で基本機能を完成している。これは、今流行のデータサイエンスを活用している。


弊社の研究開発法は、アジャイル開発からデータサイエンスまで先端の手法を顧客の希望に応じてアレンジし指導している。日本の顧客の中には非科学の手法にアレルギーを示す企業もあるが、中国では皆無で導入実績は多い。

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2023.02/11 高純度SiCのコストダウン(2)

フェノール樹脂とエチルシリケートとを混合するとうまく均一に混ざらない。これはフローリー・ハギンズ理論から自明である。


格子理論をここで説明するつもりはないが、χが十分大きくなる組み合わせでは、リアクティブブレンド以外均一状態にすることは不可能だ。


エチルシリケートの代わりに高純度石英を使用したり、フェノール樹脂の代わりに高純度炭素を用いる研究も当時行われている。しかし、工業的に成功したのはフェノール樹脂とポリエチルシリケートとのリアクティブブレンドだけだ。


理由は前駆体として安定にSiCを製造できるからである。それでは他の方法が工業的に使われなかったのはなぜか、と言う疑問が出てくる。うまくやればラボスケールならば問題は生じないが量産になるとある問題が発生する。


それについても40年以上前に問題解決されており、イビデンのSiCはその手法により製造されている。ゆえにフェノール樹脂とエチルシリケートの前駆体法では、どちらかを固体に用いて高純度SiCを量産できそうに見える。


詳細は弊社に相談していただきたいが、石英が不純物として残るのである。また、量産時にはウィスカーが製造される問題もでてくる。


中部大学で審査を受けた学位論文でポリエチルシリケートとフェノール樹脂のリアクティブブレンドにより合成された前駆体の反応速度論的研究を公開している。中部大学か国会図書館にでもいけば閲覧可能だ。


しかし、弊社にご相談いただければ、学術の背景だけでなく調達の問題までご指導いたします。技術開発において、調達戦略はコストに大きく影響します。

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2023.02/10 高純度SiCの製造方法

高純度SiCの製造方法は、ゴム会社で1980年に企画されたホウ酸エステルとリン酸エステルを併用して高分子を難燃化する技術として,そのシーズが生まれている。


ポリウレタンマトリックスへ均一に分散したホウ酸エステルとリン酸エステルが燃焼時に反応し、アモルファスボロンフォスフェートが生成する。それが燃焼面にチャー生成を促してポリウレタンを難燃化する。


難燃化技術であるが、高分子からセラミックス(ボロンホスフェート)を製造する方法にも転用できるこの技術は、始末書がきっかけで生まれている。この経緯はこの欄で以前書いたので省略するが、高純度SiCの企画はさらに紆余曲折を経て事業化された。


セラミックスフィーバーのさなか、ゴム会社創立50周年を迎えた。記念論文の募集があり、そこでこの企画を発表したり、昇進試験にも書いたりと、とにかく企画が採用されるまで粘り強く、提案を続けている。


社長方針として出された3つの新規事業、ファインセラミックス、メカトロニクス、電池の一つとして、研究所で最適なと考え提案したのだが、その過程で珍ドラマがいくつか生まれている。


珍ドラマの1シーンである1週間のチャンスを利用して、高純度SiC製造方法を完成した。今でもほとんどこの時の発明と変わらない方法で生産されている。4日間の実験で黄色い粉ができたのだが、その詳細はもう少し後で書きたい(注)。


これは、ゴム会社の研究所の許可も得て実施した実験である。許可が得られていたので、フェノール樹脂とポリエチルシリケートの前駆体はゴム会社の研究所の実験室で合成している。


特開昭60-226406(基本特許として公告となっている)は、無機材質研究所から出願された特許だが、この特許出願後、ゴム会社で2億4千万円の先行投資が決まり、事業化がスタートした。


始末書を書かされたり昇進試験に落とされたり、逆風ばかりだったが、研究開発本部長が交代してから、研究所に配属されてゆっくりと研究開発ができるようになった時代の思い出は、今でも忘れない。


(注)当時レーリー法しかなかった時代に簡単に高純度SiCを製造できたので無機材研で大騒ぎとなっている。しかし、所長はじめ直接当方をご指導くださった総合研究官や主任研究官の方は冷静で、理研で起きたSTAP細胞のような騒動にならないよう配慮してくださった。無機材研のリーダーによる研究マネジメントが優れていたので、当方はこの高純度SiCの研究で学位を取得できた。

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2023.02/09 高純度SiCのコストダウン(1)

日本の半導体技術を復活させようと政府も本腰を入れ始めた。半導体工場ではかつて高純度石英の治工具が主流だったが、最近はウェハーの大口径化もあり、高純度SiC治工具が伸びている。


高純度SiCの治工具を製造する方法として、高純度炭素製品の表面をSiCでCVDにより被覆する方法と全体を高純度SiCで製造する方法とがあるが、後者の方が長寿命であり、その市場ものびている。


問題となるのは高純度SiCの原料製造方法だ。やはり一番低コストとなるのは、フェノール樹脂とポリエチルシリケートを前駆体とする合成法である。これは40年以上前にゴム会社でデータサイエンスを用いて開発された。


その時ホウ素を添加すると粒度のそろった粉体を製造できる特許を出願していたが、同じ会社から4年ほど前に特開2018-135249が公開された。


もちろんこの特許は公告とならなかったが、40年以上前に出願された発明と同じ内容の特許が異なる発明者で出てきてびっくりした。


この技術は確かに優れた方法であり、40年以上前のことを知らなかったら、びっくりする発明である。ゆえにあわてて出願したのだろう。しかし、この特許を見て恥ずかしくなった。


技術の伝承がうまくなされていなかったからだ。当方は1991年10月1日に転職したがその後1か月ほどは最後の上司に頼まれ、技術の伝承をしている。それも無償である。


40年以上前なので当時の前駆体技術のことなど忘れられているようなので、少しこの活動報告に書いてみたい。高純度SiC治工具のコストダウンを狙うならば原料のSiCをコストダウンしたほうが効果が大きい。


例えばAGCのようなガラス会社であれば、高純度石英粉なども容易に手に入るはずなので、この前駆体法を応用するとよいが、単純にフェノール樹脂と高純度石英を用いてもコストダウンは難しいから技術とは面白い。

カテゴリー : 一般

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2023.02/08 ホスファゼン変性ポリウレタン(3)

ポリエーテル系軟質ポリウレタンフォームは、重合反応と発泡反応のバランスをとりながら製造される。例えば重合反応はイソシアネートと水酸基の反応であり、発泡反応はイソシアネート基と水との反応である。


イソシアネート基と水との反応でゲル化が進行するので、それを気泡とするために界面活性剤が必要となる。すなわち、ポリエーテル系軟質ポリウレタンフォームの合成はポリウレタンの合成よりも技術的難易度が高い。


科学的に要素技術を解明できたとしてもゲル化と発泡反応のバランスをとる技術開発は試行錯誤となる。当時はタグチメソッドが無かったので、一因子実験の組み合わせでバランスをとるための反応条件を探っていた。


効率的に進める方法として実験計画法があったが、タグチメソッドよりも効率が悪かった。ラテン方格を用いる点では似ているが、タグチメソッドでは誤差要因を外側因子に割り振る。


このあたりの統計処理の意味が理解できていないとタグチメソッドと実験計画法の違いを理解できない。後日、気が向いたら数式使わずにこのあたりの説明を書いてみたい。


高純度SiC合成に用いる前駆体の合成条件についても同様の説明となる。しかし、高純度SiC前駆体の場合には、透明になる条件を追及すればよいので、発泡反応と重合条件の反応バランスをとるよりも易しい。

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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2023.02/07 熱硬化性樹脂の再生

熱可塑性樹脂のリサイクルはコンパウンディング技術を理解していると難しくない。しかし、熱硬化性樹脂の再生は、サーマルリサイクルかケミカルリサイクルぐらいしか思いつかない人が多い。


サーマルリサイクルは二酸化炭素が出るので、国際標準の環境対策ではない。今や日本だけの呼び名になっている。


ケミカルリサイクルは、使用されなくなった石油コンビナートの利用が考えられる。しかし、コストが見合うかどうかが問題である。LCAの観点では環境対策とならない場合もあるので注意する必要がある。


PETのケミカルリサイクルが実用化されているが、採算性の問題を解決しつつの運営となっている。しかし何とか生き延びている。10年以上前、東洋製缶の子会社だった時に一度見学しているが、環境企業としてきれいな工場だった。


熱硬化性樹脂ではないが、加硫ゴムの再生は40年以上前タイヤ会社の重要テーマだった。二度のオイルショックだけではなく、廃タイヤの山が各地で放火される事件が起きたためである。


新聞にはシェアーの高かった会社名が連日載っていたので、当方が入社した時研究所の重要テーマだった。ケミカルリサイクルも検討されたが採算性の無いことがわかり、テーマが中断された。


活性炭プラントが作られ試作レベルの検討がなされており、これが有望と沸いていた時に、環境管理部の知恵者が、セメントキルンにタイヤを放り込んだ。これが大変よい成果となって現在に至っている。


すなわち、単なるサーマルリサイクルではなくセメントの性能向上にも役立つ、ということがデータとして出されたので、ホームランの成果となった。そして、活性炭試作プラントはその後セラミックフォームの触媒研究施設となった。


このように高分子は、3次元の網目が形成されるとリサイクルが困難になるが、加硫ゴム粉が道路の添加剤やテニスコートの添加剤として利用されている点に注目すると熱硬化性樹脂を機能性素材に化けさせるアイデアが生まれる。特許出願が可能なのでここに書きにくいがーーー。

カテゴリー : 一般

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2023.02/06 ホスファゼン変性ポリウレタン(2)

ポリウレタンはイソシアネート化合物とポリオール化合物あるいはポリカルボン酸化合物類と反応させて合成されるTPEである。TPEは当時の新素材であり、その難燃化も重要な社会テーマだった。


先端材料の発泡化技術は、特許を読んでみてもうまくできるものではない。それなりの技術ノウハウが必要だった。しかし、ゴム会社にはすでにその材料の製品を生産していた部署があり、その現場にはノウハウが蓄積されていた。


アメリカ企業から導入された技術でポリウレタン発泡体が生産されていたので、この技術の習得をしている。技術習得しながら、ポリウレタンを変性するためのホスファゼン誘導体を設計し合成していた。


原材料の合成と技術習得を同時並行で進めたが、これは上司から命じられていたわけではない。工場の現場で技術を見学したときにやるべきことがすぐに理解できたからである。


この現場で技術をすぐに理解できる能力は、誰でも備えているわけではないことを当時理解していなかった。大学院までの3年間で育成された能力だった。それは、写真会社へ転職し、ゴム会社における12年間の反省をしていて気づいたことである。


生産現場では様々なノウハウが機能している様子を観察できる。この機能に着目し観察できるという能力は、実験をすることにより鍛えられる。ただし、何も考えずに実験していては能力を鍛えることができない。仮説の検証と機能の動作観察という二つの視点で実験を観察して能力を鍛えなければいけない。

カテゴリー : 一般 高分子

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