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2013.01/24 高分子同友会第一次東アジア化学企業調査団報告

昨日高分子同友会第一次東アジア化学企業調査団報告を拝聴いたしました。

 

この活動は、高分子同友会が1979年以来5年ごとに行っている化学企業の調査ですが、以前は先進国の調査が目的でした。しかし、今回は成長著しいアジア諸国が対象で、その第一回ということだそうです。

アセアン地区のベトナム、タイ、マレーシア、インドネシアが候補で今回はタイとインドネシアの状況報告です。

 

詳細内容は高分子同友会で訪ねていただきたいが、タイではPPT Global Chemicalという巨大コングロマリットが生産活動を行っており、その規模と技術に驚きました。基礎化学品の生産能力があれば20年後日本の企業はいらなくなるのではないか、と思われるような状況です。

 

インドネシアではPT.Chandra Asri Petrochemical社へ訪問したそうですが、ここは天然ゴムベースのABSを製造している会社で興味を持っていたのですが、詳細説明はありません。

 

終了後の懇談で事務局に問い合わせましたら、今回はバイオ関係のテーマは調査からはずし、基礎化学品に絞ったとのこと。ベトナムも含めこの地区の特徴はケナフやジャトロワ、そして古くからある天然ゴムという非可食バイオポリマーの産地であり、それを利用した産業が重要と思います。

 

しかし、研究開発力が未成熟の為、バイオケミストリーまで手が回らないとのこと。感心したのは、これだけ化学工場が活発に生産活動を行っていても、公害が起きていないことです。訪問団の感想として、日本よりも空気がおいしかったとのこと。おそらく日本をよく勉強したのだと感じました。次回は2年後。

カテゴリー : 一般 高分子

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2013.01/24 弊社の問題解決法について<7>

この第一の山場までの刑事コロンボの「考える技術」は、刑事という役職の制限からくる通常の証拠集めと証拠に基づく演繹的推論を前向きに展開しているだけですが、真犯人に結び付く証拠が揃わないだけでなく、肝心のアリバイ崩しもできません。すなわち、証拠やアリバイを基にした前向きの推論では犯人を特定できないのです。

 

そこで犯人が証拠隠滅までやった、と逆から推論し、空港の荷物検査における往路の荷物が帰路の荷物よりも2kg多い点を精神科医フレミングに問い詰めます。犯人は嘘の説明を行うので、嘘とわかっていても逮捕のための決定打になりません。

 

しかし、ここで精神科医フレミングが刑事コロンボの追跡をかわすために友人の検事に頼んで捜査に対して圧力をかけたのです。刑事コロンボは、精神科医フレミングに自分が捜査を外され彼に敗北したことを告げます。勝ち誇った精神科医フレミングは、夫婦の間のもめごとの解決手段が殺人しかなかったことをほのめかし、刑事コロンボの精神分析結果を語り始めます。視聴者は第一回のこのシーンで刑事コロンボのキャラクターを知ることになるのですが、刑事コロンボの反撃を期待させる場面でもあります。

 

その夜、刑事コロンボは、女優ハドソンに会いにゆきます。そして、殺人事件の全容を説明し、彼女に自首を勧めました。しかし彼女は承知しませんが、精神的な弱さから不安になり、精神分析医フレミングにすぐ来て欲しいと頼みます。しかし、精神分析医フレミングは冷たく拒否します。刑事という制約から攻め口には制限がありますが、犯人という結論に直接つながる共犯者を責めるアクションがあったのか、と視聴者を納得させるシーンです。ところが、刑事コロンボのすごいところは次の結末です。

 

刑事コロンボは女優ハドソンを責めることで、精神分析医フレミングが必ず動くことを読んでいたのです。すなわち、愛人ハドソンの精神状態を心配になった精神分析医フレミングは、翌朝彼女のマンションを訪問しますが、プールで自殺した彼女そっくりの女性が救急車で運ばれるシーンを見ることになります。驚く彼に刑事コロンボが質問を浴びせかけます。その質問は捜査に関するものではなく、人間の愛情に関する質問です。視聴者の予想を超えたアクションが取られたことで、このシーンが第二の山場として盛り上がります。そこでフレミングはハドソンを愛していなかったことを話してしまいます。その一部始終を隠れて聞いていたハドソンが現れ自分が共犯者として自首することを告げ、物語は終わります。

 

このように、刑事コロンボでは犯人逮捕(結論)に至る彼のアクションを推理する、あるいは彼と犯人(結論)とのやり取りがドラマの面白さになっています。一般の探偵小説では、犯人(結論)を捜す、すなわち結論へ向かう前向きの推論を展開するのに対し、この物語では、彼自身も勘で犯人を見出しているので、視聴者とともに結論から事件の原因へ遡るような逆向きの推論を展開することになります。

 

(明日へ続く)

 

 

 

 

 

 

問題は「結論」から考えろ!

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カテゴリー : 連載

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2013.01/23 バイオディーゼル

日産自動車からスーパーチャージャー付自動車が販売され好調という。常時ターボを効かせるターボチャージャーよりも燃費が良い。HV一人勝ちの自動車業界で、燃費を改善する様々な技術が出てきている。マツダからはヨーロッパと同様のディーゼルエンジンを環境対応とする技術の提案があった。従来のディーゼルエンジンと異なり、排気ガスの浄化レベルとエンジンの振動レベルが著しく改善されているという。

 

燃費改善手段として、このディーゼルエンジンを選択するというアイデアは、バイオディーゼルの技術の進展と結びつけると、面白い展開になる。デンソーは藻からバイオディーゼルを取り出す技術開発を進めているが、これが事業化されるとHVよりも環境対応力が向上する。バイオディーゼルについては、ジャトロワなどの開発が進みすでに実用化され、問題も出てきた。バイオディーゼルもあと20年すれば、技術が収斂すると思われるが、単純に植物から油を搾ればよい、という問題ではなさそうである。なんでもそうだが、量産してみて初めて分かってくる問題もある。

 

自動車の動力について電気自動車が環境対策として本命になっているが、バイオディーゼルが普及すれば、状況が変わってくるように思われる。コードレスで充電する技術も開発されつつあるが、電気自動車の泣き所は、燃料電池以外では、エネルギーの補給に時間がかかることである。急速充電技術にも限界がある。長距離の移動体はバイオディーゼルエンジンが本命のように思われる。

 

あるいは小型のバイオディーゼルガスタービンエンジンを発電機として使用する電気自動車というアイデアもあるが、いずれにせよ、植物から油を経済性よく取り出す技術は、今後発展すると思います。日本は四方が海に囲まれていますから海洋植物で経済性良く油を産出する植物が見つかればメタンハイドレート並みのブームになるかもしれません。

 

海洋植物から油を取り出す技術は、藻から油を取り出す技術よりも長所がいくつかありますが、風力発電システムとの組み合わせプラントが、化石燃料も使わない究極のエコ技術です。

カテゴリー : 一般

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2013.01/23 弊社の問題解決法について<6>

「殺人処方箋」という第一回のドラマを題材に刑事コロンボの「考える技術」を見てゆきます。まず、倒叙探偵小説の定型で最初に殺人事件のミニドラマから始まります。第一回ということで、犯人に刑事コロンボのキャラクター解説をさせるためでしょうか、犯人は精神分析医フレミングです。彼には神経症で野心家の若い女優ハドソンという愛人がいて、夫婦仲は破綻し離婚訴訟を妻は準備していました。

 

精神分析医フレミングは、訴訟を起こされる前に妻を殺す目的で夫婦和解旅行計画を立て、アリバイ工作のため女優ハドソンに妻の身代わりになる段取りを説明して協力させます。女優ハドソンは精神的に弱く精神分析医フレミングの指示に従い、空港まで妻の身代わりとして精神分析医フレミングに寄り添い、飛行機に搭乗し突然夫婦喧嘩を始め怒って飛行機を降りてしまいます。精神分析医フレミングは、あらかじめ空港に行く直前に自宅で妻を後ろから絞殺していますから、飛行機が飛び立ったあと精神分析医フレミングはアリバイ工作が成功して完全犯罪を確信します。ここまでが殺人事件のドラマのあらすじですが、殺人方法から犯人並びに共犯者のキャラクターの説明に至るまで、ここまででもドラマとして成立するくらいの細かい描写です。

 

精神分析医フレミングが自宅に帰ってきたところで、家宅捜索中の殺人課の刑事コロンボと出くわします。この時点で、刑事コロンボは精神科医フレミングの帰宅時の挙動に幾つか疑問を持ち、刑事の勘で真犯人ではないかと疑います。すなわち、ここで用いている「考える技術」は、観察力と過去の経験に裏付けられた勘です。

 

刑事コロンボがこの段階でフレミングに対し真犯人という疑いを持ったことは、ドラマの後半部分で事件から担当を外されたことを彼に告げるシーンにおいて、「刑事は年に100回殺人事件を見てるんだ。しかし真犯人はたった1回の経験だから必ずどこかにミスがあるはずだ」と、語りフレミングを初めから疑っていたことを告げています。

 

このドラマの最初のシーンでは、フレミング夫人がまだ生きている設定ですが、その後フレミング夫人は意識が回復することなく病院で亡くなり、大切な証人が死んでしまいます。そして、ここから精神科医フレミングと刑事コロンボの戦いが始まります。

 

刑事コロンボは執拗に精神科医フレミングを追い込みますが、アリバイを崩せないどころか証拠も見つかりません。視聴者も刑事コロンボも真犯人が分かっている状態ですが、証拠がないために真犯人を逮捕できないじれったさで盛り上がり、物語の第一の山場を迎えます。

 

(明日へ続く)

 

 

 

 

 

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2013.01/22 EFM

EFM(The extensional flow mixer)は、ウトラッキーが開発した伸長流動装置です。単軸あるいは二軸押出機もしくは混練機の先にとりつけて使用します。EFMの中で樹脂は細いスリットの効果で伸長流動状態になり、ナノオーダーまでの混練が進むことになります。

 

ただし、多くのスリットを通過するために樹脂圧が高くなり、通常の100kg/h以上の生産機の仕様に合わせますと、馬鹿でかい装置になります。しかし伸長流動の効果を得たい場合には現在のところこの装置が最も良いのかもしれません。

 

かつて剪断流動ではミクロンオーダーまでが限界だが混練効率が高く、伸長流動では、ナノオーダーまでの混練が可能だが、混練効率が悪い、と習いました。しかし、産業総合研究所の研究結果では、剪断流動でもナノオーダーまで混練が進むことが分かりました。しかし、分子量低下も同時に起きています。産業総合研究所の装置については特許も出ていますが、モーターの設計が難しくなりそうです。

 

ウトラッキーはポリマーアロイの分野で有名な研究者で、EFMを考案したのは伸長流動でナノオーダーの高次構造のブレンドを達成したかったからでしょう。EFMは実験室レベルならばそこそこ使えるそうです。

 

EFMよりも良い装置ができないものか、と考えたのが疑似カオス混合装置です。ご興味のある方はお問い合わせください。

カテゴリー : 高分子

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2013.01/22 弊社の問題解決法について<5>

刑事コロンボのドラマの展開は典型的な倒叙探偵小説と同様で、最初の場面で犯人と犯人周辺の生活が丁寧に描かれ、犯人と被害者の人間関係及び犯行の動機などすべてが視聴者に提示されます。そして殺人事件が起きますが、殺害方法や現場の状況など一般の探偵小説では推理して明らかにする答に相当する部分まで、視聴者はすべて見ることになります。ここまでが短いドラマになっていますので、その後の展開における視聴者の興味は、もはや犯人にはなく、どのように刑事コロンボが捜査を進め犯人に迫り、逮捕に至るのかという点に集中することになります。

 

視聴者は刑事コロンボの事件捜査におけるアクションに注目していますが、すでに事件の結末を知っていますので、あたかも結末の位置から結末につながる刑事コロンボのアクションを推理するような視点になります。一般の探偵小説ならば、物語の進展に伴い探偵もしくはワトソンのような語り手から結末へ向かう方向に視点は動いてゆきますが、刑事コロンボにおける視点の動きは全く逆になります。これが一般の探偵小説と異なる面白さを生み出す秘密になっています。

 

面白さの秘密と関係している推論の向きとその性質について少し説明します。一般に行われる仮説から結論あるいは原因から結果へ向かう推論を前向きの推論と言い、これに対し結論や結果から推論を展開する場合には逆向きの推論(後ろ向きの推論と呼ぶ場合もある)と言います。この推論の向きの違いは、問題を考える時の見通しのよさと関係するので重要です。

 

すなわち逆向きの推論を行う場合には、結論へつながる推論の道筋を結論から考えていますので結論に至る道筋が明確です。しかし、前向きの推論を展開する場合には、推論の展開を始めた段階では結論につながるかどうかわからないので見通しが悪く複数の道筋を考えることになり、解決策については、その中から最良の推論を選ぶことになります。

 

この前の節で引用しましたが、探偵ホームズが「ブナ屋敷」で最初に七つの仮説を推論し、その後依頼人の情報を基に一つに絞り込むような手順が前向きの推論による解決策の選び方です。この時、思考実験を用いて推論を検討する方法が、非科学的ではありますがアイデアが出る「考える技術」として知られています。すなわち思考実験を通常行う時には前向きの推論を使い頭の中で結論に向けて推論を展開してゆきます。

 

この推論の向きと物語の面白さとの関係は、主人公の役職にまで影響を与えます。

 

すなわち、一般の探偵小説で謎を解く主人公は、探偵や民間人の場合がほとんどです。そして探偵という職業は警察組織に属さないので社会的拘束から解き放たれています。それが事件解決のための幅広い情報収集を可能にしていますが、多くの情報が提示された結果、読者に謎解きの視点の幅を広げて考えなければならない事柄を増加させるので、推理を難しくする効果を出すことができます。

 

一方、コロンボは探偵ではなく刑事なので、捜査する時には常に社会的規範や捜査組織の制約を受けることになります。それが犯人逮捕という結末に直接つながるアクションの推理に難しさを加えます。すなわち、コロンボが探偵ならば自由に取ることができるアクションを複数考えることができますが、警察組織に属する人間としての制約を受けることにより尋常なアイデアでは結末にたどり着けない状況も生まれ、知的ゲームとしての娯楽性を高めています。すなわち、「犯人は誰か」という結論を求めるような探偵小説の面白さの手法を使えませんので、探偵小説とは異なる技巧を凝らさない限り、推理小説としての興味は半減します。その技巧も何でもありではなく、法律という制約を設けることにより、考える領域に制限が加わり推理の難しさが増加します。ゆえにコロンボは探偵ではなく刑事でなければなりません。

 

第一回の「殺人処方箋」では、犯人の愛人によく似た女性の自殺シーンを見せ、犯人に愛人が自殺したような錯覚をさせています。おとり捜査に似たようなところもありますが、この刑事でなければできないトリックにひっかかり、錯覚した犯人は墓穴を掘ります。

 

「指輪の傷跡」では、刑事の立場を利用して、死者のコンタクトレンズが証拠品という嘘の情報を犯人に流します。それを聞いた犯人は、慌てて車の修理工場へ忍び込み、自分の車のトランクの中を探していて、その場で不法侵入の罪で逮捕されます。そしてその場の行動が殺人事件の犯人という唯一の証拠だ、と迫り、犯人の自白を引き出します。犯人の車が都合よく修理工場へ運ばれた理由も含め皆合理的な説明シーンが展開され、それらは刑事コロンボが刑事という立場を利用して合法的に仕組んだものでした。

 

「指輪の傷跡」も含め、犯人に重要な証拠情報を流し、犯人の証拠隠滅を図る行動を利用して犯人逮捕に結びつけるパターンを刑事コロンボはよく使います。これは、「そんな大事な情報を流して大丈夫か」と視聴者に思わせる効果もあり、刑事という役職を活用した情報操作までがドラマの面白さを盛り上げています。刑事コロンボでは、結論である犯人とルールに則り接触することができる刑事という役職も面白さの大切な要素となっています。

 

(明日へ続く)

 

 

 

 

 

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2013.01/21 ハードディスクの寿命

ハードディスクはコンピュータの部品の中で脆弱な部品の一つです。WINDOWSで使用していて突然ブルーの画面になり、わけの分からないメッセージが出たなら、ハードディスクのクラッシュが起きた可能性があります。

 

NT以降のWINDOWSでは、ハードディスクへ頻繁にWINDOWSがアクセスしています。何をしているのか知りませんが、95や98とは異なる動きをしていることは確かです。95や98ではハードディスクのエラーが起きると起動しなくなります。あるいは起動中にフリーズするだけでした。しかし、NTの系譜は親切にメッセージを出してくれます。

 

最初にメッセージが出た時に対応しますとほぼ完全に復旧できますが、そこをさぼりますとにっちもさっちもいかなくなります。おまけにデータファイルも失うことになります。30年マイクロソフトのソフトウェアーとお付き合いしてきますと、できの悪いOSでもあきらめがつきます。カンと度胸でOSの至らないところを補ってゆきます。

 

昨日5年間使用してきたPCが突然ブルー画面になり、「はじめてこの画面がーーー」というメッセージがでました。さっそくハードディスクのクラスタースキャンをかけ、ファイル修復など行い、無事復旧しました。すぐに新しいハードディスクと交換して安定に動くようになりました。

 

ブルーの画面になる前に、OS自らハードディスクのスキャンをかけて、修復もしくはハードディスクの寿命を知らせてくれるとありがたいです。CPUが4つもついているのでそのくらい仕事してもパフォーマンスの低下は小さいと思います。

 

今回円安になりましたのでHDの値段を心配していたのですが、1Tで5000円弱と信じられない値段でびっくりしました。今まで500G2台をストライピング(RAID0)で使用していたのですが、500Gの半値(5年前基準)で1Tを買うことができました。おまけにアクセスが早い。ストライピングで使用していた時と大きな差はありません。

カテゴリー : 電気/電子材料

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2013.01/21 弊社の問題解決法について<4>

「欧米探偵小説のナラトロジー」でも「シャーロック・ホームズの推論の大部分は、厳密な科学の外見をもっているだけである。推理によって、彼は敵手のみか読者をも催眠させる。彼の推理の魅力は、この催眠の魔力なのだ」とべた褒めです。ところが、「僕は消去法によって、この結論を得たのであって、これ以外の仮説ではどうしても事実と符合しない。」、と述べている部分も「緋色の研究」にあり、科学的ではない消去法という手法も使用していると公言しています。消去法は、○×のテストで正解が分からない時に使用するおなじみの方法ですが、用意された事象の中に正解があることを前提にする推論なので科学の世界では非科学的方法と言われています。

 

探偵ホームズが使用していた非科学的な「考える技術」はこれだけではありません。短編集「シャーロック・ホームズの冒険」に収められている「ブナ屋敷」には「僕は七通りだけ説明のつけかたを考えた。七つとも、いまわかっているだけの事実とは矛盾しないのだ。そのうちのどれがあたっているかは、これから先方へ行って新しい事実を聴取してからでないとわからない。」と、七つも仮説を考えて、新しい情報が入ったら正しい仮説を選択する姿勢を見せています。この場合は消去法でなくとも、新しい情報を加えた演繹的推論で正しい仮説を選ぶぐらいのことは探偵ホームズの能力があればできます。この後、依頼人ヴァイオレット・ハンターから新しい情報を聞くと、「ありがとう。ところでこの不思議な話をここで一応研究してみましょう。むろんこれにはたった一つしか可能な説明はありません。」と仮説を一つに絞り込んでいます。

 

この前後にはどのように七つの仮説から一つに絞り込んだのか書かれていませんが、この「ブナ屋敷」における仮説設定からその絞込みの過程における文章の行間を推理しますと、複数の仮説を考える時に便利な「考える技術」の一つ、思考実験を使っている可能性があります。思考実験とはニュートンが始めたと言われている頭の中で推論を展開する方法で、アイデアについて頭の中でシミュレーションを行う非科学的な「考える技術」の一つです。

 

探偵ホームズが思考実験を使っていたかどうかは、「ブナ屋敷」と同じ短編集に収められている「ボヘミアの醜聞」に描かれた次のシーンからも推理できます。 玄関からホームズの部屋まであがってくる途中の階段の段数をいつも見ているワトソンが、階段の段数が十七段であると答えられないことに対して、「そうだろうさ。心で見ないからだ。眼で見るだけなら、ずいぶん見ているんだがねえ。僕は十七段あると、ちゃんとしってる。それは僕がこの眼で見て、そして心で見ているからだ」と探偵ホームズはワトソンを諭しています。

 

探偵ホームズの活用していた「考える技術」をこのように推理してみますと、探偵ホームズは科学的論理だけを忠実に用いて推理を行う奇人ではなく、非科学的と言われている消去法や思考実験までも「考える技術」として使いこなし、事件の推理を行っていた柔軟な頭脳の持ち主で、エキセントリックにふるまっていたのは探偵としてのカリスマ性を演出するためではなかったのかと想像したくなります。

 

探偵ホームズの「考える技術」は、これだけではありません。探偵ホームズについては頭脳明晰な理論派と表現され、やや二枚目半的な紳士としてこれまで映画やテレビドラマなどで表現されることが多いですが、「考える技術」の使いこなし方の視点で見ますと、むしろ現場観察重視の泥臭い一面と人並み外れた鋭い観察眼のある、加齢臭よりも煙草臭の強い職人的オヤジのイメージが浮かび上がります。

 

例えば「赤髪組合」には、ワトソンがホームズと一緒に依頼人の話を聞き、現場観察をおこなったあとのぼやきで、「私としては、彼とおなじく話を聞き、おなじだけのものを見ているのに、ホームズがすでに過去の事実はもとより、今後いかに事件が進展してゆくかについても、明らかな洞察を下しているらしい口ぶりをもらしている」と述べています。

 

これは、ワトソンがベーカー街の事務所で待合わせるとの指示を受け、探偵ホームズは事件解決の段取りを一人で行うために人ごみの中へ消えていった時のワトソンの独り言ですが、相棒のワトソンをほったらかしにして、問題解決の仕上げを一人で楽しみながら行うところは、長年の蓄積された経験で身に着けた知識と知恵を活用する職人的オヤジの姿そのものです。職人的オヤジにとりまして強力な「考える技術」は、豊富な経験から得た知識と知恵を用いて頭の中でシミュレーションを行う思考実験です。

 

(明日へ続く)

 

 

 

 

 

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2013.01/20 弊社の問題解決法について<3>

探偵ホームズの「考える技術」について、もう少し詳しく物語の表現から推理してみます。不評だった第一作「緋色の研究」には、探偵ホームズがやや人間性を欠いた推理の天才で、エキセントリックな人格であるなど主人公に関する説明が多く書かれています。ワトソンとの出会いのシーンでは、「いっしょに暮らすとなればそのまえに、おたがいの短所を十分知りあっていたほうが好都合ですからね」と探偵ホームズからワトソンに語りかけ、お互いの欠点を説明する部分まででてきます。

 

第一作ですから登場人物の説明を読者に詳しくする物語展開を否定しませんが、探偵ホームズが凡人とは全く異なる奇人で、音楽と臭いの強い煙草とコカインを愛し女嫌いであることまで最初に説明が出てくるのは、やや冗長で、このようなことは事件解決の過程で探偵ホームズの動作からわかるようになっていたほうが物語としておもしろいと感じました。第一作も含め彼の事件を推理する動作には、最初に説明された性格がにじみ出ています。

 

しかし、このような冗長性のおかげで、この書を読みますと探偵ホームズの使用していた「考える技術」を理解することができます。例えば「ただ一滴の水より、論理家は大西洋やナイアガラ瀑布など、見たり聞いたりしたことがなくても存在の可能なことを、推定しうるであろう」という探偵ホームズのセリフから、「部分から全体を推理する方法」を会得していたことがわかります。

 

これは、論理学で演繹的推論と呼ばれている「考える技術」を利用しますが、科学の研究分野でよく使われる方法です。例えば「一般的法則pが成立するならば、ある個別法則qが成立する」という表現が推論で、これを順次展開し結論を導き出してゆきます。

 

論理学の推論では、「pならばq」に対して、「qならばp」という表現を「逆」、「pでないならばqでない」という表現を「裏」、そして「qでないならばpでない」という表現を「対偶」と呼んでおります。高校数学で学習しましたように推論の「逆」や「裏」は常に成立するとは限りませんが、「対偶」の関係にある推論はいつも成立します。

 

すなわち「pならばq」を考えてもアイデアが出ない時に、その対偶である「qでないならばpでない」という推論でアイデアをひねり出す「考える技術」は有効でビジネスの問題解決でも使われております。こうした推論の表現と性質について、探偵ホームズが登場した時代には、すでに論理学の世界で解明されていました。

 

また、「だいたい犯罪にはきわめて強い類似性があるから、千の犯罪を詳しく知っていれば、千一番目のものが解決できなかったら不思議なくらいなものだ。」、という表現から、先の推論とは異なる、「全体から部分を推理する方法」も使っているようです。これは個々の情報から一般事象を導き出す帰納的推論と呼ばれる方法で、論理学では演繹的推論と並ぶ代表的な「考える技術」であり、高校数学で数学的帰納法として学びます。

 

数学的帰納法では、n=1で成立することの確認から始まり、ある自然数kと自然数k+1で成立することを示し、すべての自然数で成立する、と結論を導いてゆきます。しかし、実際の現場ですべてについて成立することなど示せませんから、結論が蓋然的になる可能性があり「考える技術」として問題解決に使用する時には注意が必要です。

 

帰納的推論は、ソクラテスの時代から存在していた「考える技術」のようですが、数学的帰納法のように、その推論の展開でいつも完全に成立性が保証されているわけではありません。それゆえ長い間論理学の分野で議論が続けられていたようで、フランシス・ベーコンが現れ、帰納的推論を論理学の一手法として確立したのは16世紀のことです。

 

その後も改良が加えられ、帰納―演繹―検証の三段階からなる演繹的方法が19世紀のジョン・スチャート・ミルにより伝統的演繹推理を補強する形式で実現されます。すなわち、帰納の代わりに仮説を入れた、仮説―演繹―検証からなる「仮説法」が考案され、伝統的論理学が「考える技術」の体系としてこの頃完成します。

 

驚いたことに、探偵ホームズは、現代の科学でも使用されている伝統的論理学が完成した当時の成果を「考える技術」として駆使していたことになります。先に説明しましたが、短編のほとんどの物語は、「ベーカー街における問題設定、情報収集と分析、犯人が解明され、最後の説明」という構造になっており、この毎回同じ構造の美しさとその中で探偵ホームズが科学的に体系化された論理学を駆使して推理を展開する魅力で、探偵ホームズの物語が成り立っていることはこれまで指摘されてきました。

 

(明日へ続く)

 

 

 

 

 

 

 

 

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2013.01/19 高分子の高次構造の設計

原子が共有結合でつながり、分子となり、分子の分子量が共有結合でつながって大きくなり高分子となります。この高分子が集まってナノオーダーからミクロンオーダーさらには目で見えるレベルまでの構造ができると、それを高次構造と呼んでいます。共有結合でつながっている分子を一次構造と呼んでいますが、その上は二次構造三次構造と言わずにいきなり高次構造と呼んでいます。DNAような二重らせんを二次構造と呼ぶ人もいますが、高分子材料の専門家の多くは、一次構造の次は高次構造と大雑把にまとめてしまっています。

 

ナノテクノロジーが注目され始めたころから少し細かい構造だけに絞って研究する流れができ、メソフェーズ領域という言葉が出てきました。40年近く前に、炭素間の共有結合だけでできた分子を高分子と呼んでいたのを、炭素間の共有結合以外に、例えばSiO結合や、PN結合などの少しイオン結合性を含んでいる高分子を無機高分子と呼び、高分子の概念を広げた効果と同じように高次構造の研究手法や新材料の生み出されるスピードが上がりました。

 

コンセプトが変わると研究の視点が変化し新しい分野が広がるためでしょう。高分子の高次構造の設計をするために利用できる情報が豊富になりました。ただ残念なことにプロセシングが追いついていません。量産技術ができなければ材料を工業製品に応用することができません。実験室レベルでメソフェーズ構造を自由に制御できても、大規模なスケールでそれができなければ商業生産できません。

 

プロセシングの問題以外に高分子の一次構造の制御を大スケールで完璧にできていない問題も大切ではないかと思うようになりました。分子設計技術は20世紀かなり進歩し、その結果多くのスペシャリティーポリマーが登場しました。しかし、よく現象を観察してみますと、まだまだ分子の構造制御が十分できていないところが見えてきます。プロセシング技術が遅れているために目立っていませんが、プロセシング技術が進歩した後パーフェクトポリマーを要求される時代が来るのではないかと思います。

カテゴリー : 高分子

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