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2013.02/15 弊社の問題解決法について<29>

 全てのK0ポイントについて作成されましたK1チャートを眺めますと、あるべき姿にむけて取るべきすべてのアクションが書かれています。そしてそれぞれのアクションについて失敗した時と成功した時の二つの事象が書かれております。アクションの中には、これまでの問題解決法では考えつかなかったアクションも書かれているはずです。

 

例えば成功確率が高いアクションが実行されるケースでは、普通は失敗した時のアクションまで考えませんが、この問題解決法では必ず失敗した事象も考え、その対策となる次のアクションも考えるルールにしています。

 

このように本問題解決法で作成するK1チャートでは、すべてのアクションについて成否でまとめていますから、すべての可能性を考えていることになるはずです。よく知られている科学的問題解決法では、確率の低い場合や起こりえない事象について考えませんが、この問題解決法では、このような冗長化を行うことによりリスク対策や余裕ある万全の準備ができますので不確実性の時代に対応しています。

 

 それでは、このK1チャートを眺めて、最短経路で「あるべき姿」を達成できる道筋を見出してください。その最短経路は、すべて可能性が高いアクションになっているでしょうか。もし、すべて実現の可能性の高いアクションであれば、その最短経路で、頭の中のシミュレーション、すなわち思考実験を行います。もし、最短経路の中に成功確率の低いアクションが入っているならば、失敗した場合の経路も入れて思考実験を行います。このような吟味を繰り返し、全体の成功確率が高くなるように経路を選択してください。

 

このようにして選択された経路を基に物語を作成し、思考実験を行います。思考実験は歴史的にも非科学的なヒューマンプロセスとして知られ、ニュートンやアインシュタインも使用して科学的大成果を出しています。思考実験には基本的に細かいルールはありません。K1チャートで見出されたあるべき姿を実現するアクションを使って頭の中でシミュレーションを行うだけです。

 

思考実験は、前向きの推論で進めますので、K1チャートに示されたアクション以外のアイデアを思いつくこともあります。

                  <明日へ続く>

カテゴリー : 連載

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2013.02/14 難燃剤の分散

樹脂の混練は固体分散が基本で、液状物の添加剤を通常用いない場合が多い。しかし、液状の難燃剤を用いたい場合も出てくる。同等の機能の固体の難燃剤を選択した方が良いが、液状の難燃剤を使うために二軸混練機のサイドフィーダーで対応する場合もある。あるいは、他の添加剤とあらかじめバッチ式分散機でプレミクスを行い添加したりする場合もでてくる。いずれもコストにも関わる問題であり、二軸混練機で樹脂を混練する場合には液状の難燃剤が敬遠されがちな理由である。また、プロセスの問題以外にブリードアウトなど製品においても液状の難燃剤が問題となる場合がある。

 

製品の問題については後日触れますが、本日はプロセスの問題に限定して液状の難燃剤を樹脂に混練する場合について考えてみます。液状の難燃剤を二軸混練機で分散する場合に経験的には、マスターバッチ法で作った高濃度の難燃剤を含む樹脂として添加する方法が良いと思っています。コストでは若干不利になりますが、安定した製品を作ることができます。

 

サイドフィーダーで行う方法もよいですが、マスターバッチ法に比較し、ばらつきが大きくなります。サイドフィーダーの問題は液状の難燃剤に限ったことではありませんが、ペレットのばらつきを生じる原因となっています。L/Dが十分大きな混練機であればよいが、そうでない場合にはばらつきの問題を対策する必要がある。ばらつきの問題を回避するために、できあがったペレットをタンブラーで混合してから、それを1バッチとして扱う場合もある。しかしこれが原因不明の問題を引き起こすことがある。

 

何も市場で問題が発生しなければ、選ばれたプロセスは妥当なプロセスとして採用されるが、二軸混練で樹脂を混練する場合には、分散のばらつきをいつも抱えていると覚悟した方が良い。液状の難燃剤の分散ではそれが顕在化するだけである。二軸混練機の抱えるばらつきの問題を小さくする技術も開発されています。ご相談ください。

 

 

カテゴリー : 高分子

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2013.02/14 弊社の問題解決法について<28>

 K0チャートが作成されましたら、各K0ポイントごとに、K1チャートを作成します。K1チャートとは課題を実行するアクションとその成否を新QC七つ道具のPDPC図のようにゴールに向けて進行状況を見える化したものです。

 

 すなわち、ある課題を解決するためにアクションを実行しますと必ずアクションについて成功か失敗かという二つの事象の内どちらかの結果が出ます。通常アクションプランを考える時にはアクションが成功することを前提に計画表へ記入し、判断が必要なところで分岐点を設けるように計画表を作成しますが、K1チャートにつきましては、すべてのアクションについて、その結果の成否を記入するようにします。失敗する可能性が極めて低いときでも失敗の事象を記入します。

 

こうすることで、福島原発の事故でよく言われた想定外という言い訳が無くなります。すなわち、とるべきアクションについて成功と失敗の両事象を事前に考えていますから、不測の事態に迅速に対応できます。また、この方法はアクションの結果をすべて考えていることになりますので、アイデア漏れを防ぐ手段にもなっています。

 

それでは具体的な手順を以下に示します。

 ①各K0ポイントのゴールを確認する。K0ポイントが一つの場合には、そのゴールと「あるべき姿」とは一致する。

 ②K0ポイントに存在する課題を確認する。この作業では、問題の構造を表した系統図を用います。系統図に示された課題の中で、優先順位の高い課題、すなわち最初にやり終えなければならない課題を選択する。系統図は階層構造を表現しておりますので優先順位の高い課題を決めるのは難しくありません。系統図を作成せずにK0チャートを作成した場合には、この段階で課題を考えてください。

①  ②のプロセスで求めた課題について、知識ベースで達成手段すなわちアクションを

書き上げる。それぞれのアクションにおいて、それが成功した事象と、失敗した事象に分け、それぞれについて、次のアクションを考える。このアクションを考える場合には、必ず何か記入すること。具体的なアクションが無くなれば、その時点で失敗と記入する。アクションを思いつかないだけであれば“?”を記入する。

④  ③の作業において、アクションを起こした結果、問題の構造の系統図に示されている課題が発生したならば、アクションの結果に課題を書き入れる。そして次のアクションについては、この課題に対するアクションを考えることになる。

⑤  ④の作業において、アクションを起こした結果、問題の構造の系統図に示されていない新たな課題が見えてくることもあります。その時はアクションの結果に新たに見えた課題を書き入れる。そして次のアクションについては、この課題に対するアクションを考えることになる。

①  ③から⑤をゴールに到達するまで繰り返す。

 このゴールとは各K0ポイントのゴールのことですが、少なくとも一つはあるべき姿と一致します。

 

このK1チャートを作成するときのコツは、推論の性質をうまく使うことです。慣れてくれば、推論の性質を用いなくとも、K0チャート作成までの段階でK1チャートの様子が見えてくるようになります。問題の構造を系統図で表現するプロセスにおいて、ゴールである「あるべき姿」から逆向きの推論により課題を追加する場合があったなら、その時にK1チャートの全体像が見えたかもしれません。

 

本問題解決法に慣れますと、問題設定後すぐにK1チャートを作成することができるようになります。ここではK1チャートの意味を理解しやすいように前向きの推論を使用する方法で説明いたしましたが、「あるべき姿」から逆向きの推論で作り上げると必要なアクションが前向きの推論よりも少なくなります。K1チャートは逆向きの推論で作成するのが本来の姿ですが、逆向きの推論に慣れていない時にはK1チャート作成に時間がかかるようです。もし読者が逆向きの推論を日常使用してきたならば、K1チャートは逆向きの推論で作成してください。次の章で山中博士の研究を用いてK1チャートを後ろ向きで作成するとアクションが少なくなることを示します。

 

プロジェクトの成功体験を重ねるにつれ、K0チャートやK1チャートのパターンができてきます。また、K0チャートからK1チャートを作成する作業も、パターン化され、いわゆる問題解決の必勝パターンというものができます。研究開発において技術を伝承する時に、この問題解決の必勝パターンを伝承するのも良い方法です。

 

この問題解決法の長所は、ここまでの手順において、あるべき姿から問題を見直す作業が何度も出てきます。あるべき姿を具体化する作業と同様に、この作業はこの問題解決法の特徴で、問題解決案を得るために問題を詳細に分析する従来の問題解決法と異なる点です。

 

この問題解決法では、問題解決の道筋を重視し、問題の理解については、何度もあるべき姿を参照することで深めていきます。そして、このステップで作成するK1チャートは、問題解決の道筋を具体的なアクションで表現するためのものです。

 

 複数のK0ポイントがある場合も同様ですが、K0ポイントが一つの場合との違いは、各K0ポイントのゴールを具体的に決める作業をしなければいけない点です。

 

    <明日へ続く>

カテゴリー : 連載

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2013.02/13 弊社の問題解決法について<27>

前節で完成した系統図について、新QC7つ道具の親和図法の考え方を適用し課題の整理を行います。すなわち、課題が階層的に結びつけられている系統図を眺めた時に、各課題を結びつけている線、すなわち各課題の関係を一度忘れてください。そして、親和性の高い課題を集めてグループを作成してみてください。

 

多くの場合、課題の系統図を眺めて、おおよそ見えてくるグループを手掛かりに整理できますが、状況によっては、系統図の関係を完全に破壊してグループ分けをしなくてはならないケースも出てきます。しかし、それでもかまいません。そして、このグループ分けの作業で作られた、それぞれのグループにふさわしい名前を付けてください。この名前が付けられた各グループをK0ポイントと呼びます。

 

K0ポイントの名前は、グループに含まれる課題を概念化したものを使いますと、K0チャートを考えるときに便利です。K0ポイントの数は、問題の構造に依存します。すなわち、問題の構造が複雑であるにもかかわらず、K0ポイントが1つだけの場合もあれば、課題の数だけK0ポイントができる場合があります。

 

この親和図法を用いてK0ポイントを導き出す作業は、改めて問題の構造を見直す作業となっています。この作業で、問題を2つ以上の問題に分けた方がよいと思われるのならば、問題を分割しここまでの作業を再度やり直してください。ここでは、問題が一つの場合を前提に説明しますが、問題が2つ以上になりましても、ここから先の作業は、それぞれの問題について共通です。すなわち、このK0ポイントを決める作業は、問題が1つであるかどうかを検証する作業でもあります。

 

ここまでの作業に慣れますと、系統図を用いて問題の構造を作らなくとも、直接K0ポイントを導き出しK0チャートを作ることができるようになります。

 

しかし、問題の認識を共有化するツールとして問題の構造を表す系統図を用いることができるので、直接K0ポイントを導き出した場合でも、問題の構造を課題で表す系統図を作成したほうがよいでしょう。問題を他の人と共有化する必要が無い場合であれば、問題設定後作成するK0チャートだけでもかまいません。

 

K0ポイントができましたら、K0ポイントを問題解決のゴールである「あるべき姿」から、後ろ向きの推論を行い並べます。一本の道筋でK0ポイントがつながることもあれば、並列にK0ポイントが並ぶこともあります。このK0ポイントを並べる作業は、慣れるまでは課題で形成された問題の構造を見ながら行うと、簡単にできます。

 

こうしてでき上がった、K0ポイントを「あるべき姿」へ向けて並べた図がK0チャートです。K0チャートは、問題解決の道筋を概念的に表現したものです。すなわち、各K0ポイントを攻略すれば問題解決できる、ということを表しています。

 

どんな複雑な問題でも、その構造が明確になりますと、問題解決が容易になります。それゆえ従来の問題解決法では分析的思考を行い、問題の構造を細かく解析することにエネルギーを使用してきました。そして得られたそれぞれのアイデアについて、問題解決に結びつくかどうか、前向きの推論を用いて検証する作業を行い、解決策を探しました。

 

これに対し、エージェント指向を真似た本問題解決法では、問題の詳細な分析を必要としていません。それどころか、系統図で表した問題の構造を改めて親和図法によりK0チャートとしてまとめ直すなど、分析とは逆の手法、すなわち、課題を大きな概念でまとめ上げ、総合的に問題を眺めるようにしています。そして、問題に対して答(ゴール)となる「あるべき姿」から逆向きの推論を行い、知識を用いて得られた仮の問題の構造とゴールである「あるべき姿」との比較で、プランを立て直しながら問題解決の道筋に隠れている課題を求めています。

 

これはエージェント指向のパラダイムの特徴であるプランニング機能です。常にゴールである「あるべき姿」を目標に、逆向きの推論を駆使して問題解決の道筋を求めるゴール至上主義は、エージェント指向が登場するよりも前に著された宮本武蔵の「五輪書」にもその思想があり、問題解決の必勝法と思っています。

<明日へ続く>

カテゴリー : 連載

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2013.02/12 難燃剤とOCTA

樹脂を難燃化するときに一般的な手法は難燃剤を添加する方法です。難燃剤には(1)樹脂に相溶して分散する難燃剤、(2)相分離し分散する難燃剤、(3)固体として分散する難燃剤の3種類があり、それぞれ効果が異なる。

 

同一分子構造の難燃剤で比較することは難しいが、軟質ポリウレタンで実験を行った結果では、予想通りP基準の添加量の順番は(1)<(2)<=(3)である。リンの含有率対LOIのグラフで考察すると、赤燐の形態すなわち(3)で添加した場合には、3-4割ほど(1)の場合よりも多く添加しなければならなかった。しかし、赤燐粒子は9割以上がリンなので全体の添加量は少なくなるが。

 

興味深い結果となったのは(2)と(3)である。(3)と等しくなる場合もあれば(1)と1割前後の差しか生じない場合があった。(2)でも樹脂へ一部相溶して分散していると考えればこの結果を容易に理解できる。しかし(1)と(2)に差が生じるならば難燃剤と樹脂の相互作用を考慮し、難燃剤の選択をしなければならない。

 

ポリマーブレンドの場合にはさらに複雑な結果が予想されるが、OCTAを使用すると最適な難燃剤を選択することができる。SP値だけでもおおよその比較はできるが、温度依存性や各相への分配を考えるとなるとSUSHIが便利である。

 

たった1割前後の節約のためにコンピューターシミュレーションまで持ち出すのか、と思われる方もいるかもしれませんが、難燃剤のコストを考えると1割の節約効果は大きい。高価なエンプラならば難燃剤のコストへの影響は小さいが、kgあたり200-300円程度の樹脂の場合には、半日程度かけてシミュレーションを行うだけの価値はあります。

カテゴリー : 高分子

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2013.02/12 弊社の問題解決法について<26>

知識ベースで作成した前節の系統図を見ると、左端に問題が書かれ、右端にはいくつもの課題が並んだ構造になっています。その中に、「あるべき姿」を暗示させる課題があるでしょうか。例えば、右端のある課題が解決されたときに、あるべき姿が実現されるような系統図ができていれば良いわけですが、右端にある課題と「あるべき姿」に論理の隔たりが残っている場合があります。あるいは、幾つかの課題を組み合わせると、「あるべき姿」を実現できる場合もあるかもしれません。

 

いずれにせよ、系統図で問題の構造が明確になり問題解決の糸口が見えればよいですが、見えないときには「あるべき姿」から逆向きの推論を行い、不足している情報を探し出し追加すべき課題を考えます。すなわち、系統図で示された最も右端の課題に向けて、「あるべき姿」から逆向きの推論を行い、隠れている課題を探索するのです。具体的には、次のような質問をすればよいのです。

 

a.「あるべき姿」が達成されるためには、課題Xは、どのようになればよいのか。

b.「あるべき姿」が達成されるためには、課題Xに、どのような条件が揃えばよいのか。

c.「あるべき姿」が達成されるためには、課題Xの解決策として、何が考えられるのか。

 

これらの質問により、隠れていた課題が見えてきます。このような質問をしなくとも、単に末端の課題と「あるべき姿」との間の不足する情報を調べたり、「あるべき姿」の前段階の状態を考えるだけでも出てくる場合があります。この作業も慣れますと「あるべき姿」を達成するアクションを直接考えて課題として捉えることができるようになります。

 

しかし、どうしても「あるべき姿」に直接つながる課題が見つからなければ、専門家に相談してください。そして「あるべき姿」に直接つながる課題を必ず一つ見つけてください。この段階で見出された課題の一部、あるいは系統図に書かれた全ての課題を用いて、「問題」から「あるべき姿」までつながる問題解決の道筋のストーリーができたならば完成です。

 

ここまでの説明では、問題から前向きの推論を展開し系統図を書き上げる方法を説明しましたが、慣れましたら「あるべき姿」から逆向きの推論を展開して系統図を作るようにしてください。おそらく慣れますと逆向きの推論で系統図を作成するほうが簡単に思えるはずです。

 

一部だけ逆向きの推論を用い、系統図の大半を前向きの推論で作成する方法を最初に示しましたのは、これまでの指導経験で「あるべき姿」から逆向きの推論を行い、系統図を作ることに違和感を持たれる方が多かったためです。おそらく日常の技術開発で前向きの推論に慣れ親しんできたためだと思います。しかし、ここで作成する系統図を最初から逆向きの推論を展開して作成できるようになりますと不思議なことに開発現場でアイデアが出やすくなります。目の前の現象からすぐに逆向きの推論を展開できるようになるためと思っています。

<明日へ続く>

カテゴリー : 連載

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2013.02/11 弊社の問題解決法について<25>

ところで問題の構造について、課題や課題相互の関係がわかるように系統図で表現しますと、問題の理解が深まるだけでなく、得られた系統図をコミュニケーションツールとしても使えます。

 

問題の構造を系統図で表現する作業については、知識に基づく我流でかまいませんが、参考までに新QC七道具にある連関図法を用いた手順の一例を以下に示します。この手順では連関図を用いますが、系統図の下書きを作る目的で使用しますので、新QC7つ道具の説明にあるような厳密な因果関係を作り上げる必要はありません。慣れてくれば、以下の作業を行わなくても、いきなり問題の構造を示す系統図を作成可能です。

 

まず大きな紙を用意し、その紙の真ん中に、「あるべき姿」や「現実」の具体化作業から明確になった「問題」を書きます。

 

①  問題を結果とみなし、その原因を考える。可能な限り問題の周りに思いつく原因を並べます。原因と思えないものでも課題として必要ならば書き加えます。ここで原因を考えるように説明していますのは、発想を刺激するためです。この手続きで、仮に原因1、原因2、原因3、原因4、原因5と考えることができたとします。

②  次に原因1から原因5までの各原因を結果としてとらえ、それぞれの原因を考えます。

 

問題を中心にして、これをどんどん外側へ広がるように行いますが、この時、「あるべき姿」が最も外側にあることをいつも忘れないようにします。

 

もしこの連関図の作成作業で、同じ階層レベルに位置しながら、強い因果関係で結びつく項目があるならば、片方がノイズであるか、あるいはどちらか一方に含まれるべき情報かもしれません。ここでの作業は、問題の構造を示す系統図を作るために、補助的に連関図を作成しているだけですから、通常の連関図のように因子をすべて書き出す努力をする必要もありません。

 

 以上のようにして作成した連関図から系統図への展開方法は、難しくありません。中心にすえられた問題を左端に寄せて、系統図のように並べ替えれば良いだけです。

 

 この系統図を作成する作業に慣れますと、逆向きの推論を最初から行いこのあと説明するK1チャートを一気に作成でき、すぐに思考実験を始められるようになります。すなわち第一節から第四節までの作業を短縮してできるようになります。

                                     <明日へ続く>

カテゴリー : 連載

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2013.02/10 弊社の問題解決法について<24>

 それでは「考える技術」として日常の問題から科学の問題まで使用可能な新しい問題解決法を説明します。本書における問題を考えるという作業の意味は、「現実」が「あるべき姿」に改善されてゆく道筋を見いだすことと、その道筋を用いて「あるべき姿」に至る思考実験を行い問題解決のアイデアを検証し練り上げる作業までです。

 

 また、問題を解決するとは、「あるべき姿」を実現するために行動をおこし、成功することです。問題を考えるのも問題を解決するにも意志の力が必要です。すなわち、問題を考えるとは、すでにその段階から問題解決のステップがスタートしているのです。本書では、問題を考える時に必要となる発想力を引き出すための工夫を独自のK0チャートとK1チャートというツールで実現しています。

 

しかし、実際の問題解決では、ここで説明しているステップを段階的にすべて行う必要は無く、問題の規模に応じて途中のプロセスを省略することができます。ここで説明する各プロセスの良いところだけを取り出して、我流の「考える技術」を創りだすのもいいと思います。

 

ところで、すでに説明しましたように、問題解決の道筋は、問題の構造に影響を受けます。

 

問題の構造が単純で、課題が一つのときには、その課題が解決されれば、「現実」と「あるべき姿」の乖離は無くなります。しかし、通常の問題は複数の課題で構成されていたり、課題がさらに細かい課題で構成されていたりと問題の認識の仕方で変化します。また、課題を問題に転化できますので、問題が複数の問題で構成されている構造として認識することもできます。

 

問題を分析的思考で解決しようとした場合に、問題の構造の複雑さや課題が問題に転化する性質は分析結果に大きく影響するので大変困りますが、エージェント指向にも似た問題解決法では、問題の構造を自由に変化させて問題解決を進めますので、問題解決途中に「問題」に内在するこのような性質から影響をうけることはありません。

 

問題の構造を考えるにあたり、ここでは、問題が課題だけで構成された構造を持っていると仮定して系統図を作成してゆきます。しかし、この段階で通常行われるような、問題の構造の正確な全体像を表す系統図(ロジックツリーと呼ばれる)を作るわけではありません。叩き台程度でかまいませんから知識ベースを活用して、気楽に作ります。

 

これまでの問題解決法の中には、問題を分析する目的で系統図を用いる場合があります。本書でも問題の構造を系統図で表現する作業を行いますが、問題を分析するために系統図を使うわけではありません。問題に含まれる課題を知識に基づき整理し書き上げ、それをまとめるために系統図を書きます。

 

問題を分析する従来法との相違点は、問題に含まれるすべての課題を書き上げることに集中する必要はなく、アイデアをまとめる気分で気楽に作ればよい、と言う点です。自分たちの所有する知識ベースで考えられる課題だけで問題の構造を書き上げる作業を行います。

 

問題の構造を分析的思考に頼らず、保有している知識の範囲でまとめあげる点は、この問題解決法の特徴です。知識の範囲でまとめてゆきますので、完成前におおよその階層構造もあらかじめ推定できる長所があります。類推などにより思いつく課題だけで系統図を作成しますが、課題に漏れがあるかどうかという心配をする必要はありません。仮にこの段階の作業で課題を見落としても、この後の作業で、「あるべき姿」から逆向きの推論を行い見落とした課題を探索し追加してゆきますので大丈夫です。

 

また、この作業の後半において思考実験で使用するK1チャートを作成する時に、アクションの結果について有効であった場合と無効であった場合についてすべて書きあげる作業を行いますので、ここで仮に課題を挙げ忘れても思考の漏れが発生することはありません。

 

普及が始まっている科学的問題解決法USITでは、問題の構造を見えない世界として扱い分析的思考で探索してゆく手順で行われますが、高い能力が要求されます。しかし、ここで行う系統図作成作業と、逆向きの推論で行う「あるべき姿」から課題を見いだす作業は、分析的思考に必要な高い能力まで要求されません。実務で培われた知識と発想力があれば作業を完了できます。

 

                   <明日へつづく>

カテゴリー : 未分類

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2013.02/09 B787の蓄電池事故の原因

ボーイング787の二次電池が黒こげになった原因として、二次電池が原因とする論評を見つけた。しかし、現在のところその論評の意見は正しくない。特定の二次電池が特にひどく壊れていたことに注目しているのだが二次電池の製品としてのばらつきを考慮すれば、パワーマネジメントシステムに異常があったとしても起こりうる結果である。

 

それでは原因は何か、と問われると、現在のところ大電流が流れたらしい、ということは推定できるが、大電流の流れた原因が不明である。これが現在のところ正しい見解だと思っています。パワーマネジメントシステムの回路が公開されていないのでこれ以上のことは推定になりますが、特許を見る限りまだ不十分なシステムです。二次電池については、鉛蓄電池よりも危険性が高い電池という認識を開発者も持っており、その対策を行っていたと思います。

 

一番の問題は、ボーイング社が軽量化のためになぜLiイオン二次電池を初めて採用したのか、そして蓄電池とパワーワーマネジメントシステムと別々の会社に発注しなければいけなかったのか、という点である。飛行機の搭乗手続きでは、Liイオン二次電池の持ち込みを厳しく制限しているにもかかわらず、なぜ蓄電池システムとして採用したのかという疑問があります。安全を犠牲にした軽量化は、飛行機の機能を考えた時に誤った設計と思います。少なくとも二次電池の持ち込み制限をしなくてもよいようになってから採用すべきではなかったか、と思います。

 

トヨタはハイブリッド車にニッケル水素電池を使用している。当初は安全のため、と思っていたが、プリウスαではLiイオン二次電池を採用してきた。安全のためというよりもコストのためだった、とがっかりさせられたが、ニッケル水素電池をボーイング787では採用すべきだった、と思います。実は二次電池の安全設計科学という学問が重要であるにもかかわらず、研究者がいない現実が一番の問題です。

 

原子力発電に関しましては3.11でこの分野に関心が集まり、活断層などの立地条件の見直しが進みました。安全学という学問が重要な時代になりました。中国の汚染ガスから日本を守るには、どうしたらよいか?これも今ボーイング787の事故よりも重要な問題です。中国から日本を守るには?は国防の問題になります。弊社の簡単に学べる中国語シリーズで中国語を学び、友好関係になれるように願っています。近隣の国とは仲良くするのが一番で、言語はその手段の一つと思います。多くの人に学んでいただけるよう無料版も用意しています。

カテゴリー : 電気/電子材料

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2013.02/09 弊社の問題解決法について<23>

 探偵小説の世界だけでなく、コンピューターの世界でも推論の向きによる二つの世界観があり、逆向きの推論によるエージェント指向ではフリーズしないコンピューターができると言われてます。このエージェント指向に似た問題解決法であればどんな問題でも解決できるかもしれません。

 

ところでオブジェクト指向プログラミングで使用される前向きの推論については、結論に至る道筋をすべて吟味しなければ解決の道筋を見つけられない、という特徴があります。一方、エージェント指向の特徴である逆向きの推論については、必要十分条件を前提に考えていますので、必ず結論に至る道筋だけを追及できる効率の良さがあります。

  

この推論の向きの特徴について、帰宅難民になりました2011年3月11日に考えた問題を事例にもう少し具体的に説明します。その日、都心の交通機関は止まったままでしたが、八王子駅周辺の交通機関は、一部動いていました。

 

「八王子駅近くの会社にいて、板橋区内の自宅玄関へ、出発時に予定した到着時間に確実にたどり着くにはどうしたらよいか」、

 

という問題で前向きに推論しますと、電車に乗った場合には、どこかの駅にたどりつき直接自宅玄関に着けません。自宅玄関につくためには、どこかの駅から、さらに歩く必要があります。最寄り駅についた場合も同様で、最寄り駅から自宅玄関まで歩く必要があります。ゆえに電車が順調に動いていない状況では、到着時間を予測することができません。

 

京王バスに乗った場合には、京王バスのどこかのバス停につきます。どこかのバス停から玄関までは、また電車に乗るか、歩かなければなりません。途中で電車に乗りました場合には、電車のどこかの駅にたどり着けますが、自宅玄関まで、そこからさらに歩く必要があります。電車に乗って無事に最寄り駅につけたとしても、最後に自宅玄関まで歩かなければなりません。

 

最初に電車や、京王バスに乗った場合には、自宅玄関に直接つけませんから、災害時には到着時間の予測もできません。八王子駅近くの会社から自宅まで、すべて歩いた場合にだけ、予想した到着時刻に直接自宅玄関にたどり着けます。

 

前向きの推論では、八王子駅近くの会社から板橋区内の自宅方向へ推論を展開し、電車、バス、徒歩の3通り以上の組み合わせを考えることになります。

 

しかし、自宅玄関から逆向きに推論した場合には、徒歩という手段だけを考えればよく、自宅玄関から八王子駅近くの会社まで行く見通しが一発で得られます。このようにスタート地点は八王子駅ですが、逆向きの推論では、ターゲットとなる自宅を起点に考えます。

 

インターネット情報では、当時自宅周辺の駅に停車する電車は、すべて運休していました。八王子駅周辺では京王バスが動いていましたが、自宅を起点に逆向きに推論を行いますと、途中で交通機関に乗車できる可能性はありません。サラリーマン最後の日は会社へ宿泊するという結論をすぐに出すことができました。

 

帰宅難民の事例ではゴールである自宅は変化しませんが、不確実性の時代における「あるべき姿」は、時の流れにより変化する可能性もあります。もし「あるべき姿」の見直しが必要になったなら、すぐに修正し改めて問題を設定しなおさなければなりません。問題解決で大切なのは「あるべき姿」であり、この「あるべき姿」をいつも正しく決めなければなりません。

 

本書では「あるべき姿」は不変として扱いますが、実際には変化するケースも出てきます。しかし、あるべき姿が変化する場合にもあるべき姿を修正した新たな問題で問題解決を進めればよいだけです。「あるべき姿」が時代に合っているかどうかの検証は、常に心がけねばなりません。あたかも「マトリックス」でエージェントがターゲットを追い続けたように、問題解決する時には時代に合った「あるべき姿」を追い求めねばなりません。

                       <明日へ続く>

カテゴリー : 連載

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