アメリカでシェールオイルの生産が本格化するという。その結果世界のパワーバランスまで変化し、日本のエネルギー環境も大きく影響を受ける可能性がある。原発0を目指すにしても、安直に宣言していては足元を見られ石油の値段が高騰しそうな予感もします。
とにかくシェールオイルのニュースは衝撃的でした。日本のエネルギー戦略を早急に見直さなければなりませんが、「産油国日本」という可能性があります。日本で使用する2日分のシェールオイルが採掘できた話ではありません。バイオオイルの可能性です。
シェールオイルの話は、30年以上前から知られておりましたが、コストの問題が指摘されていました。それが解決されてこの騒ぎになっているのです。資源の量の問題、例えばクラーク数などは時代が変わっても大きく変化しませんが、コストは技術革新で変わる因子です。すなわちコストが高い原因が産出量にあるのでなければ、コストを下げる技術革新を行うと実用化できる、と考えるべきです。
バイオオイルについて産出量の問題はありません。人間が育てればよいだけです。油を取り出す技術にコストがかかっているわけですから、技術革新でコストが下がる、と予測できます。日本でもシェールオイルを探索するのか、バイオオイルを開発するのか、いずれにしても未来予測として「産油国日本」というシナリオを描けそうです。
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昨日セミナー会社の依頼を受け、ブロッキング防止と滑り性付与の講演をしてきました。複数の講師による講演会でトリとして講演を1時間半行いました。
この分野の講演で困るのは、聴講者が対象としている商品に必要な物性が様々であること。例えば写真分野であれば、感材の支持体の表面処理までの過程ではブロッキングが問題となりますが、半製品の状態ですので工程の一時的対策が取れれればよいわけで、マット剤だけで対応できます。しかし、写真フィルムに完成した状態では、レントゲン用フィルムと35mmフィルムでは表面の設計が異なります。後者では、現像処理まで機能があれば何とかなりますが、レントゲン用フィルムの場合には保管され、時々取り出して観察する、という取り扱いがされますので、数年は表面設計した機能が発揮されなければなりません。
常時こすられている摺動部分の表面になると、写真フィルムと異なる材料設計と評価技術が要求されます。学術的には物質の拡散や相溶まで考えるべき、ともいわれますが、厳しい使用条件になればなるほど、学術的な話が心細くなるのがこの分野であり、説明する側から見れば難しい課題です。一応約50年前誕生したトライボロジーという学問がありますが、約100年前の技術者が軸受けの研究を行いまとめたStribeck曲線をしのぐ成果が出ていません。技術として理解し割り切って開発するのが寛容な分野であります。
しかし、学術の世界を全く知らなくてもよいのか、というと、どのような技術分野でもそうですが、科学の正しい知識は重要で、この分野でも知っている場合と知らない場合とでは、品質問題のとらえ方が異なります。ただし、必要な知識を正しく知っていることが大切で、生半可な知識であれば無いほうがましで、中途半端な知識で失敗した若いときの事例などをお話ししました。このような失敗を防ぐために最低限の正しい知識を短時間に整理する、というコンセプトで「高分子材料のツボセミナー」を販売していますのでご活用ください。
実務で高分子材料科学を活用する視点でまとめました。 高分子科学の全体像について学べますので、専門外の技術者にも学生にも役立ちます。
本書は高分子に関する知識を持っていない人の為に、写真と絵を中心に分かり易くまとめました。項目毎に穴埋め式の復習問題もあるので、学習内容の確認もできます。
また、電子書籍ならではの特徴として、購読者様からの質問を受け付けその回答が毎月反映されていきます。是非ご活用ください。
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2012年10月21日の夜、たまたまテレビのスイッチをいれたところ、NHKの番組で、山中博士がiPS細胞を発明したプロセスについて、実験結果をまとめた資料とともに解説をしていました。この話題をもう一度取り上げてみます。
マウスやヒトの遺伝子の数は全部で約2万あるそうですが、研究を開始するときに、理化学研究所が2001年から無料提供を始めたマウスの遺伝子データベースを使い、そのうち、万能細胞の中でだけ働いているとみられる遺伝子を24個まで絞り込む作業を行ったそうです。興味深かったのは、この24個の遺伝子を候補として選び、まず1つ1つ遺伝子の機能を確認する実験を行い、何の変化も起きなかったが、選ばれた24個の遺伝子すべてをまとめて細胞に入れた思いつき実験を1水準同時に行い、その実験で変化が起きたので候補として選ばれた24個の遺伝子は正しかった、と判断されたそうです。
この実験結果の成功をヒントに、1個ずつ減らし、万能細胞ができなかったらそれが必須の遺伝子のはず、と狙いを定め、1ケ月ほど確認の実験を行い、4個の遺伝子を選ぶことに成功したとのこと。
この成功に至るプロセスで大切なことは、24個の遺伝子をまとめて細胞に入れた実験を行ったことである。この実験をこの段階で行うプロセスが科学的に正当性を持つためには、組み合わせた遺伝子の交互作用に負の作用が無く、いつでも特定の組み合わせで万能細胞ができる、という事実が科学的に証明されているときだけです。しかしこの実験を行った時に、iPS細胞が発明されていなかったわけですから、そのような事実が存在するはずもなく、それゆえ最初に注意深く1つ1つの遺伝子の機能を確認する実験を優先させたのです。
注意深く行った実験からは有益な情報が得られず、24個の遺伝子すべてを細胞に入れた大胆な実験で万能細胞の兆候が得られたのは、運が良かったからだと思います。もし遺伝子の交互作用に負の働きを示す組み合わせがあったなら、大胆な実験も失敗に終わったと思います。
この実験は科学的ではなく非科学的ですが、この成功の後のプロセスも非科学的プロセスで進められます。24個から1個ずつ取り除き、万能細胞ができなかったら、取り除いた1個は必須の遺伝子と判断する取り決めで実験を進めますが、この判断プロセスでは、取り除いた1個の遺伝子が独立に機能している場合と、交互作用が存在する時で、正の場合と負の場合を検討しなければいけないプロセスを省略しています。
実は24個の遺伝子から4個の組み合わせを選ぶ、という実験では、科学的に行った場合に10,626通りの実験を行う必要があります。10,626通りの実験で一つ一つ確認し、初めて科学的に検証された結果といえるはずです。それを不要な遺伝子を探すという科学的に証明されていない単純化された非科学的プロセスで効率をあげ成功に至っております。
さらに組み合わせが4個の遺伝子である、という事実も彼らの発明の前には無く、個数もわかっていなかったはずですが、非科学的なプロセスのおかげで、必須の遺伝子4個の組み合わせが簡単に選ばれてしまいます。
生化学分野は専門外なので邪推になりますが、科学的に追及していったならば、iPS細胞を作り出す遺伝子の組み合わせは、順列組合せの観点から他にもある可能性が残っているように思われます。24個の遺伝子を山中博士が選ばれた時点で遺伝子の働きを予測されていた、と考えると非科学的なプロセスでiPS細胞の発明を完成できたことを納得できます。彼らの考えるプロセスは、非科学的と言われるニュートンの行った思考実験により発明や発見の効率を上げる方法と同一だからです。
先日のテレビ番組を途中から見て一部不明点がありましたので調べてみましたら、あらためて非科学的考えるプロセスが、発明や発見を行うために重要なプロセスであると思いました。弊社の「なぜ当たり前のことしか浮かばないのか」や「問題は「結論」から考えろセミナー」では、ヒューマンプロセスに着目した問題解決法を公開しております。科学的に当たり前のことしか導かれないTRIZやUSITよりも易しい方法です。
本セミナーは受講者のペースに合わせて進めることが可能です。
ナレーションが無くても資料だけで内容を理解できるように一般のプレゼン資料とは異なる表現を行っています。
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高分子の難燃化技術は、科学的に開発を進めることができる部分と非科学的なプロセスが必要となる場面があります。
例えば評価技術。研究者により意見が異なるかもしれませんが、実火災の全体像を科学的に再現できる評価技術は存在しません。例えば空気中で燃えやすいか燃えにくいかを試験する極限酸素指数(LOI)には温度依存性があり、その依存度は高分子材料により異なります。ゆえに高分子材料のLOI評価では温度を一定に保ち実験を行う必要があります。しかし実火災の温度の高いところでは500℃以上になるので、ザイロンなど一部の高分子を除き大半の高分子材料でLOIの差はこの温度領域においてほとんど無くなります。このような理由から実験データの再現性や線形性に優れた方法でも実火災に対する高分子の難燃性を保証できる万能評価技術になっていません。
しかし、実火災を想定した高分子材料の評価技術は材料開発に必要なので、使用状況、用途に応じた難燃規格が各業界に存在します。1980年頃からUL規格が注目され、この規格を採用している業界は多い。UL規格には測定条件が細かく規定され、実験データの再現性をあげる努力が見られます。この規格は30年以上の実績があり、難燃性の規格として信頼できるのですが、実火災との関係において評価手順がすべて科学的に裏づけられているのか、というと疑問の余地は残ります。それでも使用されているのは、UL規格のこれまでの採用実績にあると思っています。
高分子の難燃性評価技術の開発は現在でも行われていますが、すべての実火災に適用でき、評価プロセスの意味をすべて科学的に裏付けできる評価技術はできていません。このような理由から高分子の難燃化技術には、どうしても非科学的プロセスが入ってきます。
すべての実火災を実験室で再現することは不可能、と感覚的に理解でき、無意識のうちに非科学的プロセスを容認していますが、高分子の難燃性評価技術以外に製品開発における様々なシーンで非科学的プロセスが使われていることをどれだけの技術者が認識しているのでしょうか。非科学的プロセスを科学的ではないから、と言う理由で否定するのではなく、科学的プロセスを尊重しつつうまく活用する「技」が不確実性の時代に新しい技術を生み出すために大切と思っています。そのためのヒントは「なぜ当たり前のことしか浮かばないのか」に書かれています。ご一読ください。
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昨日NHKでiPS細胞の発明に至るプロセスを解説していました。興味深かったのは、最初に20数個の遺伝子を候補として選び、1つ1つ遺伝子の機能を確認する実験を行ったが、何の変化も起きなかった。しかし、選ばれた20数個の遺伝子すべてを使った試料で変化が起きたので候補として選ばれた20数個の遺伝子は正しかった、と判断した。それから1ケ月ほど確認の実験を行い、4個の遺伝子を選んだ、というものである。
ここで大切なことは、20数個の遺伝子をすべて使った試料の実験を行ったことである。この実験を行う科学的論理があるとするならば複数の組み合わせで機能することがわかっている科学的事実が既にあった時である。しかし、この科学的事実が無かったからこそ、新発見として今回のノーベル賞受賞につながっているのです。ゆえに、少なくともはじめてこの実験が行われたことについては、非科学的論理に基づく実験という評価なります。
NHKの解説ではこのあたりの詳細な説明を行わなかったが、実はこの非科学的論理に基づく実験こそが新発見に重要なプロセスです。
冷静に考えていただければご理解いただけると思いますが、科学的論理に基づく実験では当たり前のことしか出てきません。科学的に考えて当たり前の実験結果が得られなかったなら、それは科学的に正しくないか、単なる実験の失敗である。この前提があるから、仮説を設定して、その仮説の正しさを確認するために科学者は実験を行うことができるのです。
実はこの科学的プロセスは、論文を書く時に重要であるが、何か新発見をしようとするときに、あるいはブレークスルーを行う時には不向きなプロセスです。新発見された現象について科学的な説明が与えられるので、我々は、新発見が得られるプロセスまで科学的に行われている、と錯覚しますが、有名なアインシュタインの相対性理論でさえ、思考実験という非科学的方法で生まれ、その後科学的な説明が与えられる、という手順です。高校で学ぶニュートン力学に至りましては、科学の無い時代の産物を、科学的に学んでいるのです。
多くの新発見は非科学的論理を適用したところで生まれている事実に注目すべきです。
不確実性の時代が発表されてから30年以上たち、ますます不確実な先の読めない時代になってきました。このような時に、既存のビジネスプロセスや科学的な方法論で問題解決しましても、隘路に入り込みました時のブレークスルーができません。
この点に着目した問題解決法が弊社のコンサルティングのエンジンであり、弊社販売の「なぜ当たり前のことしか浮かばないのか」や電子セミナー「問題は「結論」から考えろ」で公開しております。ぜひご利用ください。また、出張講演もいたしますので弊社へ気軽にご相談ください。
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1990年代にバブルがはじけてから、失われた10年とか失われた20年とか表現されていますが、実は1980年前後からこの状況は始まっていましたが、ただ10年間はバブル景気に隠され気がつかなかっただけではないでしょうか。
1980年前後第一次および第二次オイルショックで就職状況は最悪となっています。しかし、「Japan as No.1」という著書が発表され、バブル景気が10年続きます。同時期には「不確実性の時代」という著書も出版されていますが、産業界はバブル景気に沸きました。
日本ではファインセラミックスフィーバーが吹き荒れ、「第3の波」がもてはやされたり、と新規事業ブームや第3次ベンチャーブームに沸きます。モータリゼーションもピークになり、自動車は若者の大切な遊び道具と化し、テニスやスキーにマイカーで彼女を誘って出かけるのがブームとなりました。「私をスキーに連れてって」という映画もヒットしスキーブームになっています。セリカやプレリュードなどのスペシャリティーカーというジャンルの車が飛ぶように売れ、昨今の若者の車離れなど理解できない状況です。
当時と現代の状況は全く異なるように見えますが、異なるのはバブル景気の状況だけでその他はすでに当時時代が変わり始めていたのではないか、と最近思い始めました。そのような視点に立ちますと、政府の強いリーダーシップが今の時代大きく欠けている点が、今日最大の不幸のような気がしてきました。少なくとも1980年代は、バブル景気を誘導したという問題はありますが、ゆけゆけドンドンと政府のリーダーシップが機能していたように思います。
冷静な判断は大切です。何もしないのは賢い選択という賢者のアドバイスも正しいでしょう。しかし、就職状況も改善されず、何もしないならば不景気まっしぐらの状況が続くと思われますので、ここは一発お祭り騒ぎのような産業界のブームを政府主導で作っていただくと、1980年代の再来となるような気がします。バブルの時代は、現在の状況を作り出すような間違った施策ばかりではなかった、と思います。バブルとならないような1980年代の再来であれば、「Japan as No.1」を本当に目指せるように思います。
たとえば「エネルギー大国日本」というキャッチフレーズで技術開発ブームを起こすのはいかがでしょうか。2番はだめです。エネルギー大国として1番を目指す技術開発を国をあげて推進すればバブルとならない1980年代の再来になるように思います。技術シーズは芽生えていますのでそれを育てるだけです。
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意思決定と問題解決のシステムエンジニアリングにはビジネスプロセスとヒューマンプロセスの2つがある、と滝谷敬一郎著「行動する意思決定」にありました。不確実性の時代である今日には、ビジネスプロセスの問題解決法だけでは問題解決できず、ヒューマンプロセスの問題解決法と両立させる必要があるとのこと。
この本を読みますと、弊社の「なぜ当たり前のことしか浮かばないのか」や、「問題は「結論」から考えろ!」セミナーで展開しています問題解決法は、ヒューマンプロセスによる問題解決法になります。弊社の問題解決法では、非科学や非論理を問題解決法の中に取り入れることに成功し、その手順を公開しています。
閉塞感漂う今日の日本において、目の前の壁をブレークスルーするためには、斬新なアイデアが必要で、そのアイデアを導き出せるような問題解決法が求められております。ぜひ弊社の「なぜ当たり前のことしか浮かばないのか」や「問題は「結論」から考えろ!」セミナーをご活用ください。また出張講演も受け付けておりますので弊社企画部へお申込みください。
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弊社は技術から芸術までを活動範囲にしておりますので、本日は芸術の話題を取り上げます。
小田急江ノ島線湘南台駅の地下通路に設置されたバルーンアートが、一部住民のクレームで撤去されることになったそうです。作品は、27、28日に開催される「藤沢市民まつり湘南台ファンタジア」を盛り上げようと実行委員会が、バルーンアートで実績のあるアーティストに制作を依頼した空間オブジェで、祭りの人気イベントで恒例のサンバパレードをイメージした作品に仕上げられていたようです。天井からつり下げられた直径数十センチ程度のバルーン50個には、女性の下着に見える手作りのサンバの衣装が着けられており、巨大な下半身型バルーンもセクシーな衣装をまとっている、と新聞記事には報じられておりました。
作者も合意されて撤去に至ったようですが、表現の自由には表現者の責任ならびにそれを許可した人の責任が伴うことを考えると、老若男女誰もが目にするところに、女性の下半身を見上げるような表現を許可した鉄道会社に問題があるように思います。明らかに女性の下半身を見上げるような表現は、その方面の趣味人以外の大半の日本民族にはそれを受け入れる精神構造にはなっていないことを考えるべきであった、と思います。
表現者は、表現の社会へ与える影響も考慮しなければなりません。たとえそれが感覚から生まれたもので斬新な表現として伝えたくても人類の幸福を損なうような表現(今回は不快感ですが)であればその時代の人類の許容できる芸術表現とはならないからです。表現者の責任とはそこまで考えた上で、自分の作品をどのように公開するのか決めなければなりません。表現の自由は大切な概念ですが、それは鑑賞者の存在を考えた時に表現を公開する場所に制約が加わるケースが出てくることを前提にしなければなりません。鑑賞者の幸福を奪う権利を表現者には与えられていないからです。その判断を表現者に求めることが難しい場合には、作品展示を許可する立場の責任は大きくなります。何の制限もない公共施設に展示される芸術作品については、作品展示を許可する立場の方が事前に厳格なチェックをすべきで、それは表現の自由をどのように考えるのかと言う議論とは異なる問題だと思います。
現場で作品を見ていないのに批判ばかり書いてしまい作者には申し訳ないですが、新聞に掲載された写真を見る限り、天井ではなく、床展示だったなら撤去までに至らなかったのではないか、と感じました。床では表現の意味が変わるので、あくまで見上げる位置の展示を希望と言うのであれば、鑑賞者の制限を加えられる場所に展示すべき作品と感じました。おそらく事前にデザインの打ち合わせがあったはずで、そこで誰も今回の事態を想定できなかったとしたならば、表現の自由よりも公共事業者として大きな問題があるように思います。
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軟質ポリウレタンフォームの難燃化技術を開発しました時に、1.高分子を炭化促進して難燃化する方法と、2.燃焼の熱で高分子を溶融させドリッピング現象を発生させて難燃化する方法があることを知りました。1の場合には高分子を炭化促進するための触媒の添加が不可欠で、通常はリン酸エステル系難燃剤や気相に滞留し炭化を促進するハロゲン系難燃剤などが用いられます。2の場合には、溶融しやすいように可塑剤や低分子の添加が検討されますが、これだけでは不十分で1と同様の難燃剤を併用します。
1の方法で、可燃性高分子の大半を燃焼時に炭化できる技術があれば、2の手法の出番は無くなりますが、高分子の物性を損なわないように高い難燃化レベルを達成することは不可能なので、現実的な技術開発を可能とするように用途に応じた難燃化規格が設定されており、この難燃化規格を前提として2の手法の経済的優位性が出てくる場合があります。
やや乱暴な表現ではありますが、大半の高分子は実火災では燃えてしまうので、高温にさらされた時に火源とならない程度の難燃化レベル(例えばUL94-V2)の高分子材料を使用できる用途では、1の手法よりも2の手法により難燃剤の添加を減らすことができるのでコストを削減することが可能となり技術的に優れた手法ということもできます。
軟質ポリウレタンフォームをドリッピング手法で自己消化性となるように難燃化設計しました時に少量の難燃剤添加が必要で、TCPPであれば10%ほど添加しなければなりませんでした。この時LOIは19程度であり、ドリッピング手法で材料設計されていなければ空気中では自己消化性を示さないレベルです。類似処方でドリッピング促進していない軟質ポリウレタンフォームの場合には、TCPPを10%添加するとLOIは19程度なので自己消化性を示しません。TCPPを25%ほど添加しますとLOIは21となり、自己消化性を示すようになります。この比較からドリッピング手法で材料を変性すると難燃剤の添加が半分以下で自己消化性になる、と理解していました。
PETの難燃化を検討するチャンスがありましたので、ドリッピング手法で難燃剤レスにより自己消化性樹脂ができないかチャレンジしてみました。UL94-V2レベルであれば、炭化しやすい樹脂をブレンドすることで難燃剤レスによる自己消化性樹脂ができることが分かりました。燃焼している試料の下に置かれた硝化綿を燃焼させてはいけないUL規格で、ドリッピング手法による難燃化樹脂を検討するには勇気が必要でしたが、軟質ポリウレタンフォームの難燃化経験がありましたので自信はありました。技術開発では過去の経験が自信につながるので、若い技術者の成功体験は新しい技術にチャレンジできる技術者育成のために重要です。
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朝のテレビ放送で町の本屋減少の話題を取り上げておりました。1997年に約2万2千件あった本屋が2011年には約1万5千件に減少し、すでに一軒も本屋の無い町が20町村を越えたとのこと。インターネット等情報伝達手段が変わったことによる、との解説がなされていましたが、そもそも本屋の役割は単なる情報販売店だけではなかったはずです。本屋の減少は、日本人が立ち読みも含め読書をしなくなった、すなわち読書人口が減少したためでは、と思っています。弊社では、電子出版を開店するに当たり、単純に本を電子化するだけでは面白くないと思いまして、読書人口減少に歯止めをかけるため、読んで楽しくなる本、例えば声の出る本や読者の質問で成長する本、電子セミナー等提案してまいりました。さらに面白い試みが出来ないかさらに新しい企画を検討中です。
しかし、読書をしなくなった根本の原因が、考えることを敬遠する風潮にあるとするならば、新しい企画も意味のないものになってしまいます。朝の放送でコメンテータがこの意味に近い発言をされた時に、ドキリとしました。「人間は考えるアシである」とはパスカルの言葉ですが、もし考えることを辞めてしまいましたら人類の進歩は無くなります。3.11の大震災以降は問題山積みの状態で、考える作業を止めたならば進歩どころか復興もできません。
退職する前の数年間に気になりましたことがいくつかあり、その中の一つに若い人たちが現場で遭遇する現象について「深く考えない姿勢」というものがあります。研究開発の現場では、仮説で制御された実験あるいは改良するために有効に働く因子を見つけるための実験計画に基づく実験が行われているのですが、必ずしも期待通りの結果になるとは限りません。期待通りの実験結果が得られたとしても実験計画には入っていない不可解な現象が現れたりします。前者の場合には、業務上の義務でもあり問題設定をして一応考えますが、後者の場合に備考欄にメモだけでも書かれていれば良い方で、問題となる現象が無かったかのごとく報告をする人がいます。
退職するまで可能な限り現場に出ることを心がけていましたので、実験計画とは直接関係ない現象について報告しない理由を聞きましたときに、現象に気がつかなかった、という回答には、「よく観察するように」とアドバイスしてきましたが、現象に気がついたが考えるのが面倒だ(とまで、さすがに明確には言いませんが、それに近い無難な言い訳をします)という回答には、何度も絶句させられました。仮にその時の業務とは無関係の現象でも予期せぬ現象がなぜ発生したのか考えておくことは、他の機会にその考えた経験が生きる場合が多いので、それは技術者が成長するために大切な習慣だと思っています。
業務とは無関係という理由とモラールへの影響も考え、注意する程度に終わっていたのですが、朝のテレビ放送を見て、そのような管理者の姿勢を反省しなければいけなかったのでは、という思いに駆られました。32年間、技術者として磨いてきた問題解決のノウハウを「問題は「結論」から考えろ!」という電子セミナーで公開しましたのは、若い技術者の方々に「考える」という作業の参考になれば、という思いからです。本セミナーにつきまして、弊社へお申し込み頂ければ、貴社の風土に合わせたプログラムでご提供するサービスも用意しておりますのでお問い合わせください。
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