合成された高分子をそのまま使用するケースは少ない。ほとんどの応用分野では添加剤も含め何らかの化合物と混合して用いる。高分子と添加剤、あるいは他の高分子との混合では、合成時に添加したり合成後でも均一混合が可能な場合、例えばラテックス以外では混練機を用いる場合が多い。
混練技術についてアカデミアの研究者が少ないため実技経験者の知恵に頼らなければいけない分野である。このような技術で困るのは、混練した材料の経験が異なると考え方が異なる場合だ。例えば樹脂技術者とゴム技術者では水と油ぐらいに考え方が異なっている部分もある。退職5年間のわずかな経験でこのようなことを書くと叱られるかもしれないが、一流樹脂企業の技術サービスと激論した経験(注)からこの結論に至った。
混練時に働く力で重要なのは伸張流動と剪断流動であり、このあたりまでは意見の相違が無いが、ガラス繊維補強樹脂を混練した技術者はじめフィラーを分散した技術者と動的加硫や特殊な分散を行っている技術者、そしてゴム材料技術者ではプロセス設計の考え方になると様々な見解が出てくる。聞いていると、それぞれの材料がうまくいったときの経験を話しているに過ぎない。
ゴムや樹脂、あるいは射出成形用セラミックス前駆体を混練した経験から、ゴム材料技術者の考え方に軍配を上げたくなる。他の混練技術者が間違ったことを言っているわけではない。根底に混練がうまくいっていないときに配合を検討しても無駄であるという認識があるのかどうか、ということである。換言すれば樹脂の混練を行っている人で、混練に疑いを持っている人は少ない。しかし、ゴムの材料技術者はロール混練条件に不安を感じている人が多い。話していて分かるのである。
退職後の2年前たまたま学会でT社の樹脂技術者と話す機会があった。カオス混合を研究しているという。混練技術を検討するとこの技術にたどり着くのではないかと、初めて意見が一致した。写真会社に勤務しているときに出会っておれば、無理をして混練プラントを作ることもなかった、と悔しい思いをした。
話して気がついたことだが樹脂技術者の間で混練技術が見直されている気配を感じた。起業後しばらくは電池やミドリムシに注力しようとしたが、うまくゆかなかった。急遽混練技術に力を入れ始めたが、小さな仕事がいくつか舞い込むようになった。樹脂材料のプロセシングで困っている方は弊社へ相談されますとすっきりします。
(注)写真会社に在職中、ケミカルアタックが原因ではなく混練プロセスに問題がある、という指摘をケミカルアタックによる破壊ではない証拠とスの入ったペレットとともに示しても、D社の技術サービスはケミカルアタック説を主張し続けた。議論が平行線になったので、中国までD社の現場を見に行った。
案の定混練プロセスは管理されておらず、混練機の制御盤の温度が設定値を20℃以上はずれていても生産を行っていた。ペレットのスの原因は混練時の温度が高すぎたためと推定されそれをD社に説明したが、20℃程度は大丈夫、と混練の問題を認めない。そもそもペレットにスが入っていたりDSCに一部分解が進んでいるような兆候が見られても混練温度に疑問を持たないというのはおかしいと思うのだが。
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32年間の材料開発で、セラミックスや金属、高分子材料まで担当し、金属以外の2つの材料分野で日本化学会や写真学会、化学工業協会、印刷学会などから賞を頂ける技術を研究開発成果として出すことができた。学位論文にはセラミックスと高分子材料のプロセシングがまとめられており、審査してくださる大学を探すのに苦労した。その過程で学位取得の裏側事情も知ることになり、学位というものが世間で評価されない理由も理解できた。
30歳を過ぎるまで物事の裏側事情など考えずに純粋に生きてきたが、学位取得の苦労で学問というものにも裏があるという現実に愕然とした。今は年を重ね、世間の多少のことには驚かなくなったが、当時はその裏側事情に接する度に驚きが新鮮な興味に変わっていった。
高分子材料技術にも裏側事情があり、例えば成形技術とコンパウンド技術の関係は面白い。前者の学会に参加し、その技術分野の最終ゴールを質問すると「どのようなコンパウンドでも成形できる技術」という回答が返ってくる。もの凄い理想であると同時にこの学問は永遠に完成しない、だから研究者は食いはぐれは無いだろう。学問として正しいゴールかどうかは知らないが、研究テーマに困らないゴールである。
後者は担当している材料により研究者の答は様々で、新材料を追求するというミッションを答える研究者が多い。高分子には多数の種類があるので組み合わせは無限に近く、こちらもテーマに困ることなく永遠に研究開発を継続できる分野である。
ところでタイヤのような高性能なゴム製品のプロセシングには未だに生産性の悪いバンバリーとロールが混練プロセスで用いられている。しかし、樹脂材料やTPEでは生産性の高い二軸混練機が用いられる。高性能ゴムに生産性の悪い混練プロセスが用いられているのは、そのプロセシングを用いなければ性能を出せないからである。すなわち、この事実は混練プロセスがコンパウンドの性能に大きく関わっている、ということを示している。
退職前の5年間外部の樹脂メーカーと性能の悪い樹脂について何度も議論したが、混練技術に問題は無い、と最初に必ず回答が返ってくる。すなわち樹脂の性能品質がお客様のニーズに合わない原因として混練技術は最初に除外事項とされてしまうのである。純粋な若僧であれば樹脂メーカーの技術者をうっかり信じてしまうが、成形技術を担当した時はその様な年齢ではなかった。
納期が目前に迫っていたあるテーマで、混練プロセスの中古機を買いそろえ3ケ月で生産立ち上げを行う、という離れ業をした。その時には同じ材料メーカーの原料を用いながら混練プロセスを変更しただけで、それまで樹脂メーカーが実現できていなかった性能を簡単に実現できた。
混練プロセスの変更に伴うコンパウンドの価格は、内製化のため原料の価格と設備の固定費で決まる。この時、樹脂メーカ-が混練プロセスを変更したくなかったのはコストへの影響のためだが、わずかなコスト上昇を躊躇したために、お客様の内製化という決断を引き出し市場を失うという結果になった。
混練プロセスの変更は利益を圧迫するので対策として採用したくない、というのが裏事情である。お客は混練プロセスなど知らないから問題ないとごまかせば、それで済む、と安直に考えたのか、その樹脂メーカーの技術レベルが低かったのか知らないが、どんなことがあっても混練プロセスを変更したくない、という裏事情が樹脂技術にはあるようだ。
混練プロセスの変更は多くの場合コスト上昇となるが、この時の内製化技術ではコストへの影響を最小限とする方法で対応した。退職した会社から特許がすでに公開されているが、二軸混練機の先に弁当箱のような装置をつけただけである。ゆえに生産性への影響はほとんど無くコスト上昇は弁当箱の固定費分程度である。この弁当箱のような装置にはゴム技術で学んだ知識が詰められている。この弁当箱に興味のある方は問い合わせください。
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昨日まで中国の華南にある某会社に依頼されコンサルティングをしてきた。日本企業とは取引が無く中国国内の市場で成功している樹脂会社だが、そこで生産されている製品品質は日本の100円ショップのそれよりも劣っていた。しかし、それでも中国国内の市場で成功しているので中国のお客様の品質基準を満たしていることになる。
市場で成功していても経営者はそれなりの問題意識を持ち依頼してきたわけだから、向上心は旺盛である。恐らくこのような企業は指導すれば、1年程度でそこそこの品質を作れる会社になる可能性がある。
問題は、中国市場のお客様の品質感覚である。上海のデパートの樹脂製品は、海外製品が多いので品質がそれなりに見えた。しかし華南の市街にある雑貨店に並ぶ樹脂製品の品質は日本の100円ショップよりも明らかに劣っている。それでいて日本の100円ショップよりも値段の高い製品が存在する。このような市場へ同価格で高品質の製品を投入すれば確実に目立ち、さらに売り上げを伸ばすだろうと思った。
しかし、朝早く帰路の空港の喫茶店でサンドウィッチを頼んだら、待たされたあげくとんでもない見栄えのサンドウィッチが出てきた。食パンの端部(みみ)が使われているのだ。さらに目玉焼きとハムがはさまれているのだが、それが焦げている。炭にまでなっていないが黒焦げだ。店員にクレームをつけたかったが、複雑な中国語を話せない。
100円ショップの樹脂成型品よりも品質の劣る製品が売れる国である。焦げた目玉焼きやハムなど平気なのだろう。さらに食パンのストックが無かったから昨日の残りのみみでサンドウィッチを作ったのは良いアイデアとでも思ったのかもしれない。毎晩接待されたレストランは日本以上のサービスもあり高品質であった。品質のばらつきの大きな国である。このような国で売れていても自社の品質に問題意識を持った社長は優れた経営者だろう。
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SiCには結晶系の異なるα-SiCとβ-SiCの2種類が有り、α-SiCは積層形態でさらに多数の結晶に分類される。これをポリモルフィズムというが、セラミックスの力学物性を考えるときに立方晶であるβ-SiC以外の結晶ではその異方性が問題となる。
無機材質研究所へ留学したとき、最初に担当した仕事は、6H型SiCの線膨張率に観察される異方性を計測する仕事であった。四軸回折計に取り付けた6H型SiC単結晶にレーザーを直接照射し、昇温しながらX線回折を計測して結晶の座標を決め、線膨張率の異方性をその場観察したのだが、とても企業でできる実験ではない、と思った。
しかし、科学としては異方性の存在とその大きさを実験結果で示す必要があり、その異方性の割合が物性にどの程度影響を与えているのか明らかにするのは重要な仕事である。重要な仕事と分かってはいても何度も失敗をすると、何故この仕事をしなければいけないのか、と当時は考えることがあった。
おそらく自然科学の研究は、先人のこうした悩みや苦労の積み重ねの賜物なのだろう。a軸とc軸の線膨張の温度依存性というたった一つのグラフを作成するために3ケ月を費やした。樹脂補強ゴムの開発では、2ケ月で50以上ものグラフを書いた。そしてその結果3ケ月後には商品化できる配合処方が完成した。
学位論文の1ページにこの時のグラフがあるが、時々眺めては科学と技術について考えるヒントになっている。科学は真実であれば何年経ってもその価値は変わらないが、技術はいつでも新しい技術に置き換えられ、やがて忘れ去られてゆく。
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アイドリング時と高速走行時の両者で振動吸収できるゴムを樹脂補強ゴムで30年以上前に開発した。この時勉強になったのは、同一配合であってもプロセスが異なると耐久試験の結果に大きな差が出る、という経験をしたことだ。この経験のおかげで高分子材料を配合処方だけでなくプロセス履歴も総合して眺める習慣がついた。
ゴムの耐久試験方法は幾つかあるが、スクリーニングの段階で行う評価法として繰り返し引張耐久試験法が用いられる。エンジンマウントの場合には圧縮永久歪みが耐久試験として重要だが、最初のスクリーニングは繰り返し引張耐久試験法を行うのが良い、と習った。
繰り返し引張耐久試験法は圧縮永久歪み試験よりも過酷である。しかし、スクリーニングで過酷な試験を行っておけば、商品化の段階で行われる品証評価でトラブルを防ぐことができると教えられた。また、過酷な試験法はエラーの検出感度が高い試験でもある。
この高い感度のおかげで、新入社員の1ケ月は何度もロール練りの工夫をすることになった。すなわち、レオロジー特性は良好でも耐久試験に通過しないサンプルばかり作っていた。その結果耐久試験とプロセスの関係が体に染みついた。
樹脂補強ゴムはTPEの仲間であるが、一般のTPEは二軸混練機で製造される。昔はコポリマーのTPEが多かったが最近はコストの安い動的加硫されたTPEが増えている。新入社員時代に開発した樹脂補強ゴムは二軸混練機で動的加硫して製造することも可能であるが、バンバリーとロール混練で製造された材料に比較すると極端に性能が悪い。
耐久試験は100倍異なり、圧縮永久歪も10倍以上異なる。同一処方でこれだけ圧倒的な物性の差を体験すると高分子材料におけるプロセシングとは何か、という問題意識を持たないほうがおかしい。バンバリーとロール混練のプロセスを用いた場合でも、ロール混練の技が未熟であると耐久試験で10倍、圧縮永久ひずみで4倍ほどの差が出る。
このテーマのあと高分子の難燃化技術開発を担当し、その難燃化技術で見出した高分子材料変性技術を用いた高純度SiCの開発をスタートするのだが、防振ゴムの開発で体験した高分子のプロセシングの効果は強烈な印象として残っている。セラミックスの開発に比較すれば短期間であったが、ロール混練に関しては職人並みの技を身に着けた。
ロール混練で悩まれている方はご相談ください。
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東京モーターショー2013で樹脂製ボールベアリングを見つけた。すでにハンドルの部品として実用化され、軽量化とコストダウンに寄与しているそうである。エンジニアリングプラスチックスの用途として過酷な使用環境である。実用化するためには、それなりの信頼性試験が要求されたと思われる。
樹脂は軽量化とコストダウンを実現する手段として自動車部品に使用されていることは知っていたが、金属部品しか使用できそうもない、と思っていたところにも樹脂が入ってきている。かつてセラミックスフィーバーの時に、自動車部品にセラミックスが普及したが、その置き換わったセラミックス部品の幾つかは、また耐熱合金に市場を奪われている。ファッション機能だけで普及した部品はコストダウンの波に勝てないのである。自動車部品の樹脂化は軽量化とコストダウンの2つの目的でどんどん進んでいるようだ。
国内の汎用樹脂事業は、統合に次ぐ統合で苦戦が続き、エンプラ分野も一部はコモディティー化が進み、コスト競争に移ってきている。素材会社は大変だが、部品メーカーは技術力があればそれなりの商売ができているのかもしれない。
ここで技術力とは評価技術である。すなわち自動車分野では軽量化とコストダウンの目的のため、金属から樹脂に置き換える動きは今後も続くが、その時に金属なみの信頼性を樹脂で確保できるかどうかが鍵になり、そのためには信頼性試験をうまくできなければならない。金属材料と同じ評価試験を行うのは当然だが、樹脂の弱点が信頼性に影響を与えていないかどうかを見るための評価技術が重要となる。
この評価技術は樹脂の問題点をよく理解していなければ構築できない。高分子科学についてはアカデミア以上の経験が要求される難しい分野である。評価技術で悩んだら弊社へご相談ください。自動車部品メーカーと精密機器メーカーで高分子材料の開発から評価技術開発まで多くの実績があります。
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モーターショーの一角で「Smart Mobility City 2013」を開催している。未来の自動車社会の提案コーナーだが、新聞等のニュースに登場した事柄以外に目新しい展示物は無い。車が都市と市民を結ぶ、というのがテーマのようだがすでに描いた夢の焼き直しを見ているようだ。
年をとったせいかもしれないが、わくわく感の少ないショーである。車の自動運転が全面に出てきて今後開発されるであろう技術を見せるような展示を期待していたが、特許の問題もあるのか、自動運転に関しては話題の中心になっていない。
自動車好きにはモーターショーは重要な催し物であるが、自動車も巻き込む大きなイノベーションが社会で起きているときには、それがメインテーマになり、各社そのテーマにちなんだ展示があったが、昨日も書いたように今年はそれがよく見えない。車の自動運転は大きなイノベーションのように思うのだが。
その中で燃料電池車の説明に小便小僧を用いて、排出されるのは水だけ、とこの先は説明の必要がないアクションを見せられたのには驚いた。やや***である。かわいい小便小僧ならばまだ良いが、スクリーンも兼ねているので3m以上もある巨大な「小便怪物」である。それが水を排出する前に不気味に目を光らせる。この展示の評価については意見が分かれるかもしれない。
自動車にあまり興味が無い当方にとっては、感動が少ないモーターショーだが、部品メーカーの展示に面白い提案が幾つかあった。例えば西館のデンソーのブースである(注)。電気自動車が普及したときの街の様子を展示し、非接触による給電方式などすでに公開された技術以外に全てが電気自動車となったときに生じる問題のソリューションを提案していた。
詳細は足を運んで見て頂きたいが、車のエネルギー源をガソリンから電気に置き換えたときに充電時間の問題以外に、様々な問題があり、その解決に幾つか細かいインフラが必要になる。それを模型でうまく説明していた。地味な内容だが、この展示を見に行くだけでも勉強になる。さすが自動車部品大手のデンソーである。社会的使命を心得ている。
車好きならスバルのブースが面白い。新車レヴォーグのデザインとそのスペックを見るとすぐに買いたくなるかもしれない。また、エクシーガはクロスオーバーSUVとして置き換わる。そのデザインが運転したくなるかっこよさだ。昔スバルのデザインや内装は今ひとつだったが、最近のスバルは別会社のようだ。
(注)デンソーは東館にもブースを構えている。
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弊社は電子出版社として東京モーターショーのプレス発表に参加した。プレス発表初日は布をかぶっている新車も多い。それぞれプレス発表の時間になるまで隠されているのだ。
かつてセラミックスフィーバーの時には、あらゆるメーカーがこぞってセラミックス部品を展示し先進性をアピールしていた。いすゞ自動車は、セラミックスエンジンを搭載し公道を世界で初めて走行したセラミックスアスカを展示していた。環境問題が話題になったときには、環境対応が各社の目玉になっていた。
今年は、統一テーマになるような話題がなく、メーカーによりアピールポイントが異なるが、自動車に移動手段以外の付加価値をつけたことや、日本車ではターボチャージャーによる燃費改善や、気筒数を減らして燃費改善を行ったりした欧州車と同じような燃費改善技術の発表があった。ハイブリッド車一色のトヨタのレクサスにもターボ車が登場した。自動走行の話題を期待して参加したのだが自動走行については、大きなテーマにはなっていない。
恐らく未来も自動車は移動手段の道具として活用され、無くなることはないだろう。だから移動手段以外の付加価値の提案、というのは納得できるが、各社アイデアが陳腐である。思わず吹き出しそうになったのは、トヨタ自動車の運転者と自動車が対話をしている映像。助手席には誰も乗っていない。
確かに独身者が増えているので、一人で車を運転する人が増えるだろう。しかしその寂しさを解消するために車との対話というのはあまりにも悲しい未来のような気がする。お友達のような車というのは人口減少や高齢化、独身の増加という社会現象を考えたときに時代の流れに沿った提案であるが、何か寂しくそして笑える複雑な提案だ。
10年以上前には家族の時代、というメッセージを発信していたメーカーがあり、家族のために車を中心に楽しさを提案していた。これにはほほえましさがあったが、一人で運転し、車と対話を行っている映像には、未来に対する夢というよりも暗さがある。助手席にパートナーを乗せて欲しかった。
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高純度SiC前駆体は、フェノール樹脂とポリエチルシリケートを酸触媒存在下で反応させて均一混合を実現している。有機無機複合材料の合成手法として30年以上前には画期的な方法だった。この30年間に京都大学中條先生や東京理科大阿部先生、郡司先生その他無機高分子研究会に関係されている諸先生方により、様々な有機無機複合材料の新しい合成手法が提案された。
分子レベルでハイブリッドにする方法以外に多段湿式法という超微粒子を均一に混合する手法もセラミックス合成において有機無機ハイブリッドと同様の効果があることが見いだされた。すなわち新しいセラミックス材料を合成するときに分子レベルまで均一に分散していなくてもナノオーダーレベルの超微粒子を用いれば同様の効果が得られるらしいことが分かってきた。
ここで「らしい」と書いたのは、高純度SiCの反応機構解析を行ったときに、前駆体中にエアロゾルのシリカを混合した場合には、気相反応が少し関与することが観察されたからである。しかし、多少反応機構が変化しても生成するSiCの形態に大きな影響は無かったが、シリカ源としてエアロゾルの割合を増やすと、SiC化の条件によってはウィスカーが生成する場合がある。フェノール樹脂とポリエチルシリケートから合成した場合には、どのようなSiC化の条件でもウィスカーは生成しない。
このように前駆体の構造(分子レベルで均一になっているのか、超微粒子で構造を作っているのか)は生成物に多少なりとも影響を与えるが、工業的見地からは経済性が優先される。ナノオーダーの超微粒子でも分子レベルで均一に分散した場合でも生成物に大きな影響が無ければ、経済的に有利な手段が選ばれる。一般に金属アルコキシドの価格は高い。
そこで超微粒子を有機化合物と均一に混合する新しい経済的な手法が意味を持ってくる。写真会社に転職してこのような問題意識も有り、ゾルをミセルに用いたラテックス重合技術というアイデアを煮詰めていた。また、セラミックス合成の前駆体以外の用途として、薄膜にセラミックス超微粒子の持つ機能を付与したい場合にもこの方法は有効である。たまたま転職した写真会社でこの技術を実用化しなければならない状況になった。1991年の話である。
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炭化珪素(SiC)は半導体に分類されるが、高純度SiCは絶縁体である。かつてセラミックスフィーバーの時にはベリリアを助剤にして高熱伝導性のICパッケージも製造された。
SiCは共有結合性が80%以上なので、助剤無しでは焼結しない。SiCを焼結するときには助剤が必要で、その結果できた焼結体は半導体になる。助剤を工夫すると体積固有抵抗を下げることが可能で、導電性をあげてセラミックスヒーターを設計することができる。
セラミックスフィーバーの時に反応焼結SiCで製造されたヒーターが販売されていた。1500℃前後まで空気雰囲気下で使用する電気炉にはこのSiCヒーターが使用されていた。
しかし、このヒーターの純度は低く高純度雰囲気が必要な電気炉には使用できない。そこで高純度のSiCヒーターを開発した。SiCはホットプレスを用いれば、ほとんどの元素に助剤作用を見いだすことができる。高純度SiCの純度を活かした焼結には、高純度Siか高純度Cあるいは高純度のジメチルポリシランを助剤として用いることが可能である。
Cを助剤にして高純度SiCをホットプレスで緻密化する技術は、高純度SiCが開発されたときにその焼結性確認の手段として実現されていた。高純度SiCを合成するときにカーボンが1%前後過剰になるように前駆体を調整すると、カーボンとSiCが均一に混合された状態で高純度SiCが得られ、これはそのままホットプレスで緻密化できる。
さらに合成時にアルミニウムイソプロポキシドを均一分散して得られた粉体は、焼結条件を工夫すれば常圧焼結も可能で、SiCヒ-ターを常圧焼結で製造できた。このAl添加常圧焼結SiCヒーターの面白いところはPTC特性を示したことだ。ただ、その後の研究で中途半端なPTC特性であり、実用性がないことが示された。ゆえに高純度SiCヒーターはフェノール樹脂を助剤に用いてホットプレスで製造されたヒーターだけが実用化されている。この基本特許の権利も消滅した。
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