酸化スズゾルのパーコレーション転移を制御して18vol%という低添加率で10の9乗Ωcmの体積固有抵抗を有する帯電防止層を開発したが、これは特公昭35-6616という昭和35年の特許の実施例をトレースした成果である。
インピーダンスの異常からパーコレーションの閾値を評価する方法を考案するアイデアも生まれた。そのアイデアから多数の特許を出願し、改めて昭和35年に公告となった技術領域の権利を取り直した。
温故知新の典型例だが、世の中にはこれよりもすごい事例が外にもある。例えば難燃性の評価試験器のコーンカロリメータは、1917年米国のThortonが発見した酸素消費量と発熱量の関係が基になっている。60年以上経ってからこの研究成果の再確認がなされ、コーンカロリメータの開発に至っている。
コーンカロリメータは、有機物の燃焼時に消費される酸素の量1kgに対して発生する熱量が13MJとほぼ一定であることを利用し、燃焼時の発熱量を酸素センサーで求める装置である。1993年にはつくばでこの評価技術に関する国際会議まで開かれている。そして現在建築材料の規格にまで取り入れられている評価装置である。
火災という現象に関して科学的に取り組める方法を提供した装置でもある。この評価装置の面白いところは、発熱量の変化を酸素の消費量でモニタリングしているので微妙な現象の変化までうまく捉えることができる点である。温度は強度因子なので、大きな物体の燃焼物に関して温度で発熱量を推定することは難しい。発熱量という容量因子を同じ容量因子である酸素の消費量でモニターしているので評価装置として成功した。
このコーンカロリメータを用いた研究はかなり進んだようで、理想的な難燃剤の作用機構のあるべき姿まで描かれるようになった。この装置が無い時代に燃焼時にガラスを生成するポリウレタンの難燃化システムを開発したが、その時用いたのはTGAとLOIである。
大容量熱天秤という科学的に怪しい装置があったので重宝した。一般の微量で測定する熱天秤の結果と少し測定値がずれたり、重量減少のプロファイルが変化したりするが、測定原理が分かっていれば技術分野には便利に使えた。
コーンカロリメータは、大きなサンプルで実験できるので実火災で発生する現象に近い状態で難燃性の効果を評価することができる。また、その測定原理も科学的に指示される。このような評価装置では技術と科学をつなぐ重要なデータが得られる。
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高分子にカーボンブラックを分散し、その分散状態を制御する技術に関して、1992年に東工大住田教授の論文でパーコレーションとの関係が記載されている。特に住田教授の論文を調べたわけではないが、住田教授が行われた外部セミナーの資料に添付されていた論文である。
相分離状態で観察されるカーボンの分散に関して議論した論文であるが、特許ではパーコレーションという現象でありながらその言葉と結びつけていない技術が20年以上前から出願されていた。すなわちパーコレーションという現象も技術が科学よりも先行していた。
カーボンを分散して製造するゴム製のスイッチは、早くから実用化されていたが、これもパーコレーションという現象とカーボン粒子の形態をうまく活用した技術である。カーボン補強したゴムの弾性率がばらつく現象もパーコレーションと関係している。しかし、これらの技術事例はパーコレーションという現象でありながら、その科学的内容が明らかにされないまま用いられてきた。
科学の時代なので現在活用されている技術がすべて科学的に明らかになっている、と信じている人もいるかもしれないが、実際には科学的に明らかになっている現象の方が少ない。それらの現象を科学的に明らかにすれば、また新しい技術の発展を期待できる分野が多数存在する。
アカデミアの研究は無駄な物が多い、と批判される方がいるが、学会発表を見る限り本当に無駄な研究は半分くらい、と思っている。毎年日本化学会年会に参加しているが、半分程度は何らかの価値を見いだせる研究である。世間で批判されるほど日本のアカデミアはひどい状態ではない。
セラミックスから天然物合成、高分子合成、高分子物性まで様々な分野を技術として扱い、幾つかは科学的研究も行って学位を取って、学会の研究を眺めてみると、研究を評価する側の責任の重さを考えたりする。表面的に見ればムダと思われる研究でも、技術で遭遇した現象と結びつけると頭の上に電球が灯ったような感動を覚えることがある。そのような研究は無駄な研究では無いはずだ。
世の中の技術の中には、アカデミアの研究テーマとなるようなネタがたくさんあるので、アカデミアの先生も技術を勉強されると面白いのではないかと思う。
91年に写真会社へ転職し、酸化スズゾルを導電性粒子として用いてパーコレーション転移のシミュレーションとパーコレーションとインピーダンスの関係を研究していたときに、部下が住田先生のセミナーに参加した。当方はセラミックスの専門家として写真会社の社内で紹介されていたから、高分子フィルムの表面処理に関しては素人に見られていた。
そんな素人の企画だから軽く見られていたが、住田教授の論文は、怪しいと思われていた開発方針が間違っていないことを示す事例として当時役立ち感謝している。
技術は機能を実現する方法や行為であるから、専門分野よりも問題解決力が大きく影響する。問題解決力があれば専門性は不要といっても良いかもしれない。タグチメソッドの田口先生も類似のことを言われていた。弊社の問題解決法は技術者の問題解決力に大きく貢献します。
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パーコレーションの理論的解析によると、次元によらず無限のクラスターの生成する確率(閾値)が存在する。そしてその確率は次元が高くなると小さくなる。やっかいなのは、どの次元でもサイトで考えた場合とボンドで考えた場合でその確率が異なることだ。
パーコレーションの閾値手前(仮にA領域)と閾値付近(B領域)、閾値を過ぎた確率(C領域)で物性が最も安定なのは、C領域でその次はA領域である。B領域ではばらつきが最も大きく、この領域で微粒子分散系の材料設計をしてはならない。
好ましい材料設計方法は、目的とする複合材料の導電性の1/100から1/1000程度導電性がある異方性の大きい微粒子をC領域の体積分率で添加する方針である。ただし、この設計方針では微粒子が凝集する問題を考えていない。微粒子が凝集する場合にはn次元のパーコレーションが参考になる。
例えば、1Ωcmの微粒子を絶縁体高分子に分散して半導体領域の抵抗を自由に作り出すにはどうしたらよいか。
この問題は、微粒子を凝集体として分散すればよく、凝集状態の見かけの比重を真比重の1%から60%程度まで変化させて分散する。微粒子表面の性質にもよるが、10の4乗Ωcmから10Ωcm前後まで凝集粒子の体積固有抵抗を制御することができる。この凝集粒子をC領域あるいはA領域の体積分率で絶縁材料に分散すれば、10の9乗Ωcmから10の5乗Ωcmまで安定に抵抗を制御できる。
しかし、あくまでもこれは計算上のことで実際にこれを行おうとすると、高分子中に微粒子を分散し制御する技が必要になってくる。ただ、特許をみると偶然この技が使われている場合があるから面白い。
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パーコレーション転移の閾値近傍で材料設計を行うと物性がばらつく、という科学的真理は30年以上前から数学の世界で明らかにされていたが、材料科学分野では1990年代に入ってから普及し始めた。
1980年代まで材料科学分野では、混合則とか複合側とか呼ばれている電気抵抗の直列接続と並列接続のときの抵抗計算式とよく似た式が使用されていた。
1991年になり雑誌「炭素」で、コンピューターシミュレーションする方法が公開され、手軽にパーコレーション転移のシミュレーションができるようになった。科学の世界ではすでに7次元で生じるパーコレーション転移について数値解析が行われていた。
多次元のパーコレーションが実用上意味があるのか、というと実用上の意味は不明だが、多次元空間を実空間の現象に翻訳して活用することはできる。
例えば、凝集粒子で生じるパーコレーションの問題である。クラスターの生成を凝集粒子内で生じるクラスターと凝集粒子そのものが形成するクラスターの2種考えなければいけない場合である。単純には6次元のパーコレーションを考えることになるであろう。
しかし、これを科学の真理そのままで理解しようとするとかなり難解で盆休み程度の短期間で凡人には理解不能。また、理解できたからといって他人に説明するときに6次元のパーコレーションを説明するにしても難しい。天下り的に結果がこうだからこうなる式の説明しかできない。
凝集粒子の問題については、すでにある一定のクラスターが生成している塊が分散するモデルを考えると直感的に理解しやすい。すなわち、多次元空間で考えるのではなく、あくまで重量分率と体積分率の関係を用いて3次元空間で考えるのである。そうすると凡人の頭でもすっきりと理解可能である。
凝集粒子のクラスターが均一である、そしてそのクラスターは確率に依存しないという仮定を暗黙のうちに置くことになるので、やや科学的な正確さには欠けるが、実務にそのまま展開できる表現で科学の真理を正しく理解することは重要である。このような科学の理解の仕方は、科学を技術へ展開するときに便利である。但し不正確さの原因となる前提条件を忘れないこと。
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パーコレーション転移について不変の真理として重要なことは、パーコレーション転移の閾値近傍で材料設計してはならない、という点である。
例えば絶縁体高分子と導電性微粒子を混合して10の9乗Ωcmから10の4乗Ωcmの領域の材料を閾値近傍の添加量で設計するときに、導電性の高いカーボンを使用すると材料設計が難しくなる(できないわけではない。安定に設計する方法はある。)。
それでは、この領域の材料を設計するにはどうしたらよいのか。それはパーコレーション転移のシミュレーションから解が出てくる。詳細は弊社に相談して頂きたいが、何も考えずに閾値近傍の添加量で混合すると材料の抵抗が、大きくばらつく。また仮に実験室で安定に目的の抵抗の材料ができたとしても量産段階で制御できなくなることもある。
半導体領域の材料設計でなくとも注意が必要な場合として、絶縁体材料を設計したいが、その材料が持っているある機能が必要なために導電性化合物の配合をしなければいけない、例えば難燃剤として添加したい材料が導電性化合物の場合である。
これは、10年以上前に発生したF社製のハードディスクが短期間で使用不能になった事故が有名である。原因はハードディスクのコントローラーが突然誤作動するようになったことだ。ハードディスクのコントローラーは樹脂パッケージのICで、難燃性の機能を付与するために赤燐粒子が添加されていた。
赤燐粒子の表面は一部加水分解していてリン酸を生成し導電性がある。そのためシリカ等で粒子の表面処理を行っている製品もある。教科書にも書いてある話である。しかし、実験室の評価では表面が導電性になっていても絶縁性を確保できていたので、そのまま生産に入ったようだ。
仮に実験室で安定に分散できる技術ができたとしても、パーコレーション転移の閾値近傍で微粒子を配合したならば、必ずばらつきが大きくなるという科学の真理を思い出さなければならない。閾値近傍より添加量が少なくても、成形段階で分散状態が変化し、樹脂表面に偏在してクラスターを形成することもある。
科学の真理は、時として新たな発見でひっくり返ることもあるが、科学の時代における技術開発では、まずそれを重視しなければならない。それを信じた上で、その真理に挑戦する技術開発を行うならば意味のある結果を期待できるが、真理を忘れて技術開発を行うと失敗する。このあたりは無謀な登山と冒険家の登山の違いに似ている。
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1990年頃までパーコレーション転移の科学が普及していなかった化学の世界で、パーコレーションという現象を記述する方法は、混合則という数式であった。
すなわち、電気抵抗の直列接続と並列接続になぞらえた式を中心に、様々な式が提案されていた。1980年代の日本化学会の年会におけるアカデミアからの発表でも混合則が使用されており、数学の世界で誕生したパーコレーションの考え方は普及するのに、議論開始から30年以上かかったことになる。
絶縁性オイルに半導体粒子を分散した電気粘性流体の研究開発を担当したときにパーコレーション転移の世界を知った。同じ時期に東工大の研究者から、高分子微粒子分散系の現象を考察するときに混合則ではなくパーコレーションの考え方を用いた報告があった。
写真会社に1991年に転職し1年間ほど時間に余裕があったのでパーコレーションの科学について勉強した。数値計算では実際のパーコレーションと一致しないような印象を受けたので、立方格子をモデルとして使用し、Cでシミュレーションプログラムも作成した。
プログラムが完成したころ、雑誌「炭素」に類似のシミュレーションプログラムがあるのを見つけた。発表時期からほぼ同じ頃に同じ事を考えていた人がいたことがわかった。
パソコンが16ビットから32ビットへ移行するときで、手軽にコンピューターシミュレーションができる環境ができた時期で有り、パーコレーションのシミュレーションに関する研究報告が増えてきた。
ある雑誌のコラムには、パソコンの普及でパーコレーションの研究が進んだ、と書かれていたが、これは認識違いで、30年以上前に数値解析で数学者達は基礎研究を完成させていた。1990年頃にはn次元空間におけるパーコレーションの研究が完了していた。
n次元空間のパーコレーションの研究は何に活かされるのかよく分からない研究であるが、真理を追究するのが科学なので、面白い研究であれば、実用性など無視してどんどん研究は進む。科学の世界とはそういうもので、その結果パーコレーションの不変の真理というものが見いだされてきた。
パーコレーションの世界で、この不変の真理とは、次元が高くなればなるほどパーコレーション転移の閾値の確率が小さくなること、また粒子のアスペクト比が大きくなればなるほどやはり閾値の確率が小さくなることである。そして、確率過程でパーコレーション転移は生じるので、閾値近傍では、物性のばらつきが大きくなる。
<明日へ続く>
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パーコレーション転移という現象は、高分子に粒子を分散するときに物性変化の現象として観察される。例えば粒子が導電性であれば、パーコレーション転移で微粒子を分散した高分子の電気抵抗が大きく変化する。この時弾性率も同様に変化する。
弾性率の変化はせいぜい数10倍までだが、電気抵抗は1/1000まで変化するのでかなり昔から注目されていたらしい。パーコレーション転移という名称はあたかも電気が抽出されるような転移という意味で、コーヒーを抽出するときに使用するパーコレーターにちなんで命名された。
パーコレーション転移を制御する技術は1990年頃までノウハウとして伝承されていた。科学の世界では、数学者達が1950年代頃取り上げていた、という記録が残っている。ボンド問題とかサイト問題とか呼ばれていたらしい。
このボンド問題とかサイト問題の呼び名は、粒子のつながり(クラスター)の考え方から由来しており、クラスターのできかたが、立方体を仮定したときに、稜でつながりを考えるのか、面心に存在する粒子のつながりで考えるかにより、転移が生じる確率が変化した。そのため数学者達の関心を呼び、研究が進められた、とスタウファーの教科書に書かれている。
また、パーコレーション転移は、粒子が真球であるのか、短径方向と長径方向の比(アスペクト比)が1以上異方性を持った粒子なのかにより発生確率が異なっている。例えば、発生確率を高分子に微粒子を分散したときの、微粒子の占める体積分率で表現すると、真球の場合には、0.35前後に臨界確率(閾値)が存在し、ボンド問題とサイト問題ではその値が異なる。
クラスターをどのように捉えるかにより転移の閾値が異なるので、真理を追究するのが目的である科学、とりわけ数学の世界で研究が大きく進歩した。数学の世界から30年以上遅れ、化学の世界でも1990年前後からパーコレーション転移について研究されるようになった。
<明日へ続く>
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大学の非常勤講師はある意味悲しい役割である。教育者としての役割や研究者の役割はあるようで無い。特別講義は単位をもらえるものだと学生は期待して参加している。大学の先生方ができない授業をしようと意気込んで準備をしても、学生は前が空いていても後ろへ集まり、授業が始まればスリープモードへ。
2000年頃から少し雰囲気が変わり前の方にすわる学生が出てきた。出身地を尋ねると日本ではない。皆留学生だ。すなわち日本の学生は後ろへ座り、留学生は前の席に座って講義を聴く状態で中央に聴講者はいない、まるでダイスウェル効果の大きい樹脂にカーボンを分散し押し出したときの樹脂の断面写真のようだ。
変化は着席の様子だけでなく、講義終了後に質問が届くようになったことである。質問は講義終了直後の時もあるが、自己紹介の時に記載したアドレスへ電子メールで来る。しかしこの質問をする学生も皆留学生だけである。うれしいのは授業を熱心に聞いていてくれたことが伝わるメールがあることだ。今まで聞いたことがない授業で大変参考になった、別の話を聞きたい、などと書かれていると、メールの返事にも力が入った。
講義では必ず科学と技術の話を入れる。科学の無い時代でも技術は進歩した話だ。科学はその進歩を加速したが、必ずしも順調に速度アップしてきたわけではないことを話す。イノベーションの波が大きな進歩をもたらしたこと、イノベーションを起こすために不断の努力が必要なことなど話す。「マッハ力学史」がネタ本だ。
日本人には受けないのだが、留学生にはこの話がうけた。恐らく授業に臨む意識が異なるのだろう。授業中に寝ている日本の学生を叱りたいが、非常勤講師の立場では難しい。せいぜい近くまでいって、反省を促す程度のことしかできない。熟睡をしているわけではないので疲れて寝ているわけではない、と思う。講義がつまらないから寝ているのである。しかし、そのつまらない講義でも、留学生には歓迎された。
客員教授や非常勤講師の経験は技術の伝承を考えるのに参考になると同時に魅力的な授業を考えることで自己の成長にも大変役だった。しかし、スリープモードに入る学生には申し訳ないことをした、という思いはある。教師には「いつやるか」「それは今でしょ」というようなスキルが求められている時代なのだろう。
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1970年代公害問題の影響で化学系の学部の偏差値が軒並み下落した。その化学系学部は1960年代には石油化学発展の波に乗り花形学部だった。現在は工学部全体の偏差値が下がったままである。製造業のほとんどが中国や東南アジアへ出て行き、国内の産業構造が大きく変化しているので大学の偏差値が影響を受けるのは仕方がない。
しかし今や技術者はボーダーレスの時代に突入し、世界中の技術者との競争にさらされている。そのような状況で大学の偏差値が下がり続けている現実を見ると、就職難は当たり前のように思えてくる。
一方で、社会で活躍している技術者達の出身大学は様々である。出身大学の偏差値など無関係という雰囲気すらある。地方大学で客員教授をさせて頂いた時にびっくりしたことが一つあり、偏差値が低くても、東大にいるぐらいの優秀な生徒が二人や三人いるのである。地方大学でも優秀な先生がいらっしゃるのでこれを不思議なことと思ってはいけないのだろう。
問題は、学生の質のばらつきの大きさである。理系でも微積分を満足にできない学生から量子力学の問題まで解ける学生を相手にどのような講義を行えば良いのか。研究者と教育者の両面を期待されている大学の先生のご苦労は大きいだろうと、講義をしながら考えた。
まともな講義をすると、半分以上睡眠モードに入る。しかし笑い話をすれば、睡眠モードの学生は無視できる程度になる。お祈りをして高純度SiCができた話は、結構受けた。授業の感想を作文に書かせたところ、半分以上の学生がこの話題について書いてきた。180分の授業で10分の話しか聞いていただけなかったことになる。
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技術開発を行うときに、いつでも科学的情報がすべて手に入るとは限らない。科学の時代の今日においても科学的に明らかにされたことだけで技術開発が可能な分野は限られる。
無機材料の固体物理は20世紀かなり科学的に進んだ分野である。有機材料科学の分野と無機材料科学の分野の技術開発について、32年間に両方を担当することができたのは幸運だった。有機材料科学例えば高分子科学の分野は、C-C結合でつながった材料の科学と捉えることが可能である。一方無機材料科学はC以外の様々な元素が織りなす材料科学と捉えることができる。
無機材料科学は、金属材料科学とセラミックス材料科学に分けられ、セラミックス材料科学は、金属材料科学以外の無機材料という分野である。例えば、ガラス材料はセラミックス材料科学に分類されるし、カーバイド系材料は主にセラミックス材料科学で取り扱う。この分類は科学の歴史の中で自然にできたものだ。その分類の歴史を見ると、かつて科学と技術2つの違いを科学者が意識していたように思われる。現代は有機無機ハイブリッドなどクロスオーバー材料の研究も盛んで、材料科学の垣根はなくなっている。
ところで金属材料科学は、純粋に金属だけを扱う風潮があるように見える。セラミックスフィーバーの時に東北大学の金属材料を研究されている先生にお話しを伺う機会があったが、金属材料工学については20世紀に研究のネタがなくなるのではないか、と言われていた。金属ガラスがその後生まれるのだが、これが最後の大きな研究と言われていた。その先生は、セラミックス材料工学の扱う範囲が広いにもかかわらず、研究者が少ない点やその他の批判を述べられていた。
その後大学の講座なども含め国立大学のリストラが行われ、大学の講座の看板から何を研究しているのか分からない時代になった。無機材料科学の一分野である無機固体物理については学問が完成した、と言われる研究者もいるぐらい進歩したようで無機固体物理を前面に出した講座はほとんど見られない。現在の半導体産業において日本が壊滅的状況に至っていることと関係しているように思われる。例えばCPUは、材料科学と言うよりも回路の設計技術が重要であり、科学よりも技術の比重が高い。
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