20年近く前、すなわち早期退職前に担当した中間転写ベルトの開発は、データサイエンスを積極的に取り込んだモデルベース開発の集大成となった。
数理モデルにより、開発ターゲットのふるまいを企画段階に考察する手法は、研究開発を成功させる有効な方法である。数理モデルとしてどのようなものを考えるかは、技術者の力量によるが、力量が高ければ、アジャイル開発も可能となる。
タグチメソッドや多変量解析による考察は数理モデルで設計する一手法である。中間転写ベルトでは、6年近く前任者が国内トップメーカーと共同開発を続けたデータが存在したので、当初これらのデータを多変量解析で処理している。
その結果、コンパウンドに問題があるとの結論に至り、カオス混合をコンパウンドメーカーへお願いすることになるのだが、QMSの仕組みもあり、量産まで半年という状態で頭を抱えた思い出がある。
そこでパコレーションシミュレーションをみなおし、6ナイロン相にカーボンを分散させ、それをPPSに分散させたベルトを押出成形してモデルベースデザインを実証するのだが、必死だった。
カオス混合装置を手作りし、それでPPSと6ナイロンが相溶し、わずかにスピノーダル分解が起きる機能で形成されたカーボンのクラスターがドメインをつくり分散した理想的なコンパウンドを創造した。
センター長に予算交渉し、コンパウンド開発のために中途採用1名と職人1名、当方含めて3名でコンパウンド工場立ち上げプロジェクトグループを立ち上げた。
その後は以前書いているので省略するが、モデルベース開発は、研究開発を著しく加速する。企画から量産立ち上げまで半年で、コンパウンドだけでも数億円の利益の出る技術が完成できるのだ。
数理モデルで現象を考察するコツは、ただ、ひたすら黙って現象を観察すればよい。会議で「素人は黙っとれ」とコンパウンドメーカー部長に言われたのだが、その結果当方を黙らせるために工場見学の機会ができた。
ところが、二軸混練機のラインが稼働しているだけの何の工夫もない工場だったので、これでは歩留まりをあげるコンパウンドを生産するまでに時間がかかると納得している。今タイヤ工場の見学が難しくなったが、ゴム工場のコンパウンドラインは技術を感じることができるラインである。
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今やPythonは技術者のスキルとして常識になりつつある。そこでとびきり入門のセミナーを技術情報協会主催で開催するのでPythonを御存じない方はご活用ください。
https://www.gijutu.co.jp/doc/s_305208.htm
弊社でもPython入門セミナーを開催していますが、プログラム作成に重点を置き、インストールや環境設定は簡単な説明となっています。コンピューターに詳しい人はこちらのセミナーが良いかもしれません。ホームページでご確認ください。
技術情報協会のセミナ-につきまして弊社へお問い合わせいただければ割引がございます。
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導電性微粒子を絶縁体高分子に分散し半導体高分子を設計するときに、導電性微粒子の導電性が銅と同じくらい高いと10の9乗Ωcmの材料を安定に製造することが難しくなる。
これを昨日書いたようなシミュレーターで考察すると、半導体高分子を安定に製造するためのアイデアが容易に見えてくる。数式でシミュレーションしていたのでは直感的にアイデアへつながらない。
すなわち、非科学的なシミュレーターであっても良いアイデアが出てくるのだ。むしろ数式で考えるよりも良いのかもしれないと思っている。科学的にこだわっていてもアイデアが出なければ仕方がない。
詳しくはこのホームページで募集してるセミナーを受講していただきたいが、希望者がいれば土日に開講することも可能である。土日であれば一人でも特別サービスで1万円で講義を行っている。
平日が3万円なのに土日が1万円であることを不思議に思われるかもしれないが、平日は企業の方の受講を想定し、土日は個人のスキルアップを目標に受講されるのではないかと期待している。
当方は企業を退職するまで土日に勉強していたが、このようなセミナーがあれば便利だと思っていた。自分が受講したいと思っていたので、今それを実現している。土日はストレス解消に弊社のセミナーを受講してみてはいかがでしょうか。是非お問い合わせください。
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パーコレーションの数理モデルについては、1950年代から数学者たちに議論されてきた。すなわちこの分野のクラスター理論は60年以上の歴史がある。
コロナウィルスの感染シミュレーションもこの分野の成果であるが、おおもとはカリフォルニアで発生した森林火災の問題と言われている。
パーコレーションの閾値についてはn次元まで求められており、数理モデルとしては研究しつくされた感が強い。40年ほど前に出版されたスタウファーの教科書には、歴史も含め詳しい解説がまとめられている。
しかし、材料屋がこの教科書を読むと現象を具体的に把握しにくい。グラフで示されているので現象の振る舞いを納得はできるのだが、もう少し直感的なモデルは無いのか40年ほど前に教科書を読みながら考えた。
10x10x10のブロックを絶縁体高分子とみなし、この一部を導電性のブロックで置き換えてゆくモデルを考案し、プログラミングして動かしてみたところ、パーコレーションの振る舞いを再現できた。
非科学的なモデルではあるが、このモデルの考察で幾つか技術開発成果を出している。それをセミナーで公開しているので、一度このホームページのセミナー欄を見ていただきたい。
大型コンピューターの時代には、コンピューターを湯水のように使うことができなかったが、今はコンピューターを用いるコストがほとんどかからなくなった。
ゆえに、難しい方程式を解くことが要求される問題でも、コンピューターで直感的なモデルのプログラムを動作させて解くことができるようになった。これもDX進展の恩恵だろう。
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1980年から1990年にかけて高分子の緩和現象に対する科学的アプローチに変革が起きている。レオロジーについてダッシュポットとバネの数理モデルによる研究が否定されたのだ。
そして、20世紀末に当時名古屋大学教授土井先生をリーダーとしたOCTAプロジェクトにより高分子シミュレーターOCTAが登場している。
このOCTAは無料開放されており、高分子物理についてこのOCTAに実装されたライブラリーでシミュレーション可能である。ただし、OCTAでできるのは科学の形式知で明らかな現象だけである。
換言すれば、これから研究しようとする高分子物理について形式知による予測が可能だということを示している。ただし、このような予測はOCTAに限る必要は無く、現象の回帰や予測を多変量解析や、流行の機械学習で行っても良い。
もちろん過去に否定されたダッシュポットとバネのモデルを持ち出して技術開発を行っても良い。ただし、この時緩和現象の問題を知っているという前提である
ところで、マテリアルズインフォマティクスではディープラーニングばかりが注目されているが、タグチメソッド(TM)もマテリアルズインフォマティクスである。
基本機能とその制御因子はじめ調整因子など各因子の体系ができれば、企業の貴重なノウハウとなる。そして新技術を開発するときにそれを利用すれば、開発スピードが上がる。
モデルベース開発(MBD)が注目される理由の一つに開発スピードの向上がある。これがどのくらいスピードアップするのかというと、例えばPPS半導体ベルトの開発に5年以上かかっても歩留まり10%いかない状態だった。
コンパウンドのパーコレーション制御がうまくできていなかったためで、これをシミュレーションで問題解決した後に、中古の二軸混練機部品を買い集め工場建設後量産開始まで半年で歩留まり100%を実現している。
もちろんコンパウンド工場の最適化はTMで行っている。このようにMBDによる開発スピード向上は著しい。この他に弊社では豊富な事例を開示している。
試作段階で原因がわからず20ロット以上も無駄なコンパウンドを量産試作した結果を解析し、たった30分で問題解決した実績もある。
科学の形式知に忠実なOCTAのようなシミュレータだけでなく、独自の数理モデルによる予測や回帰、分類などをフロントローディングで実施し、最適条件を目標に技術開発を行うMDBの一番の特徴は、開発スピードが速くなる、という長所である。
開発成果が得られたならば、人材育成のためにゆっくりとそれを題材に研究を行う、というマネジメントも良い方法だ。答えが分かっているので研究もやりやすい。半導体治工具用高純度SiCの学位論文もそのような手順で完成している。
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重回帰分析が現象の数理モデルを得る目的として回帰や予測を行うための方法であるが、分類や特徴抽出、パターンニングを行う方法が主成分分析である。
今AIを活用する機械学習、ディープラーニングが注目を集めているが、学習機械をプログラミングしなくても弊社が公開している重回帰分析と主成分分析を駆使すれば同様の数理モデルによる現象解析が可能である。
そもそも、現象を数理モデルで理解する方法としてシミュレーションがあるが、広義には現象を記述できる数式ができればよい。その簡便な方法が重回帰分析や主成分分析であり、データ駆動で行う方法が学習機械を利用するディープラーニングである。
さて、主成分分析であるが、これは多変量解析の手法として知られている因子分析の方法であり、因子分析では各因子の序列がつかないが、主成分分析では、全データの変動を加味して、変動の大きい因子から小さい因子に序列をつけた結果を得ることができる。
心理学の分野では因子分析がよく使われるが、技術開発の分野では変動の大きな、すなわち影響力の大きい因子を見つける作業が重視されるので、主成分分析が便利である。
nを評価項目、mを実験数としてnxmのマトリックスデータを主成分分析にかけると、n個の主成分データに変換される。実験で得られたデータ群の一次独立性は保証されていないが、n個の主成分はお互いに一次独立となったデータマトリックスに変換される。
この性質を活用し、重回帰分析と組み合わせると、一次独立の変数で組み立てられた回帰式を得ることが可能となるので、主成分分析と重回帰分析の両方を自由自在に使えるようにしておくと、一次独立のパラメーターで記述された現象の数理モデルを簡単に組み立てることができる。
弊社では、ディープラーニング以外にも多変量解析の活用だけに絞ったセミナーも準備しているのでお問い合わせください。ディープラーニングだけがデータサイエンスではないのだ。データサイエンスは必要な時に必要な手法を使ってこそ実務で光る。
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重回帰分析は、データサイエンスの手法として理解しやすく、ある商品の機能について影響を与える因子に関する数理モデルを容易に得ることができる。
多変量解析の教科書には、目的変数と多数の説明変数の関係式(重回帰式)が得られると書かれていたりする。重回帰式を求める方法についてよく理解できずあきらめる人もいるかもしれない。
しかし、安心してください、解析したいデータがあれば、それを弊社のサイトに貼り付けるだけで容易に重回帰式を求めることができる。すなわち、重回帰式の求め方がわからなくても重回帰式を得ることができる。
重回帰式が得られたならば、その活用方法を学べばよいのだが、それは弊社のセミナーを受講していただきたい。具体的な事例とともにその活用方法を解説している。
重回帰分析では、偏回帰係数と標準偏回帰係数、寄与率やt値、P値などが得られるのでそれぞれのパラメーターをどのように解析したらよいのか悩むことになる。
弊社では、これを実戦的に説明している。すなわち、手っ取り早く現象について数理モデルを得る方法をわかりやすくセミナーで解説している。
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昨日は日本ゴム協会からの招待講演のため赤坂見附まで電車で出張いたしました。これまでコロナ感染予防のため車移動で出張していたのですが、5類に移行したということで公共交通機関の利用となりました。
まず東上線に乗る時にSUICAが使えなくなっており、びっくりしました。池袋JR窓口で処理をしていただき、丸ノ内線ではSUISUIと改札口を通過できました。
1年以上の利用が無いとSUICAが使えなくなるというルールを知らず大変焦りました。赤坂見附では人の流れができており、とりあえずその流れに乗りましたら目的の出口につくことができましたので、人通りはかなり多かったと思います。
驚いたのは5類に移行してもマスク無しの人が少ないことです。やはり皆感染を恐れての対応をされている。講演もマスクをかけたままでしたが、違和感が無くまだコロナ対策の必要性を強く感じている人が多いことに安心しました。
ニュースでは病原性の低下が伝えられておりますが、2020年の騒動の記憶があり、年寄りが感染したら死ぬ、といった恐怖感は容易に消えません。
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リスキリングで重要になってくるのは、「技術の方法」に対する理解である。すなわち、技術というものをどのように認識するのか、ということだ。
これが日本の経営者あるいは企業幹部の多くは科学を中心に捉えており、技術は職人のものと勘違いしている。ゴム会社で当方の上司となった人の大半はこのような考え方だった。
科学と非科学の境界は時代により変わると言ったのは哲学者イムレラカトシュであるが、科学で体系づけられた形式知の中に、科学で厳密に証明ができない経験知が紛れ込んでいるためである。
ゆえに科学技術の中に、経験知だけで組み上げられた技術も数多く存在するはずである。このような技術は、残念ながら非科学的な技術となるが、暗黙のうちにこれも科学として認めている、あるいは誤解している人が多い。
すなわち、新技術を生み出しているのは科学者ばかりではない。日本で新技術を生み出せない人を職人と呼んだりして、「大学を卒業しても職人にしかなれない人がいる」と職人を馬鹿にした発言を平然とする経営者もいる。
このような経営者を認めた場合に、非科学の技術を生み出すような人材をどのように呼べばよいのだろうか。日本では、技術者とも科学者とも呼べないのである(注)。
リスキリングの狙いは、職人の養成ではない。職人の養成には職業訓練学校が存在する。日本で新たに進めなければいけないのは、新技術を生み出せる人材を養成するためのリスキリングでなければいけない。そのためには、技術に対する正しい理解が必要だ。
(注)弊社では、技術者にも科学者にも学んで役立つ問題解決法を低コストで提供しています。リスキリングのために弊社の問題解決法を導入するとリスキリングを円滑に進められます。
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実務における問題解決法のセミナーの類としてロジカルシンキングは今でもニーズがあるロングセラーのテーマである。一方今時当たり前の回答しか出せないTRIZやUSITは人気が無い。このようにセミナーのテーマには時代により流行り廃りがある。
データサイエンスについてはこれから人気が出るセミナーのテーマではないかと予想しているが、データサイエンスという表題はある意味抽象的でわかりにくいのではないかと心配している。
また、最近はビッグデータが話題になり、その処理を機械学習で行う方法に注目が集まっている。AI人気もその類である。
しかし、実務の現場で5個以上100個未満のデータに対して機械学習で処理を行うというのは、期待値に対して得られる結果の寄与率は低い。
このような小規模のデータ群に対しては多変量解析による処理が最適である。但し、重回帰分析や主成分分析にも限界があり、非線形データに対する対応にはひと工夫が必要になる。
ただ、機械学習と異なる点は、弊社でも重回帰分析と主成分分析の処理プログラムを公開しているように、すぐに解析ができる無料で動作するプログラムが解放されていることだ。
ちなみにこのホームページのプログラムでは、エクセルデータを張り付けるだけで解析できる。機械学習でもデータ処理の目的は、分類か回帰、あるいは予測であり、その目的であれば、まず何も考えずデータを処理できる点で多変量解析は機械学習よりも簡便だ。
また、実務でデータサイエンスを使うとよいシーンを整理してみても、とりあえず手元のデータから何がわかるのか、を知りたいときが多い。ただその時に機械学習のプログラムを作成し解析を進めたい、というケースは少ないのではないか。
少なくとも当方が32年間サラリーマンとして勤務していた時に多変量解析とタグチメソッドがあれば十分だった。機械学習に取り組んだのは退職直前の時間ができた時である。
(注)多変量解析を機械学習に含めている記述が成されている論文や教科書が存在するが、それは一つの考え方に過ぎない。多変量解析には機械学習のような専用のプログラムを組む必要は無く、汎用の多変量解析でデータ処理し、人間の頭でデータマイニングを行うのが基本である。多変量解析は1960年代から知られており、1970年代にはいると心理学分野で大型コンピューターによる解析がおこなわれるようになった。また新QC7つ道具として紹介されたのも1970年代であり、ディープラーニングよりも古くから親しまれている方法だ。
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