これは20年ほど前の話だが、今でも難題だと思う。国内トップメーカーのコンパウンドで数年研究開発を続けてきたPPS半導体無端ベルトの押出成形技術の話。
これが歩留まり10%前後なのに、半年後には量産できる、という前提でプロジェクトが進んでいた。突然リーダーが、窓際だった当方にリーダーを交代してくれ、と言ってきたのだ。
そして、単身赴任して最初のコンパウンドメーカーとの打ち合わせで、コンパウンドの改良をお願いしたところ、「素人は黙っとれ、勝手に自分で工場でも立ててコンパウンドを生産してみろ」とコンパウンドメーカーの部長に言われ、コンパウンドの改良以外歩留まり向上策が無いテーマで、いきなり暗礁に乗り上げた。
QMSの問題があり、サプライチェーンや配合、その他の変更は難しい状況で、半年以内に問題解決できるのか。当時の当方のアクションは一つの正解だと思っている。
QMSの対象となっていない子会社の敷地にコンパウンド工場を3か月で立ち上げ、残り3か月で量産までの手続きをすべて行い、歩留まり100%となった半導体無端ベルトの量産を開始したのである。
これは実話である。しかし、非科学的方法で問題解決している。科学的にはコンパウンドメーカー部長の当時の見解は正しかった。しかし、それでは歩留まりが上がらないのである。
科学的に正しくても技術的に成立しない解決策では、生産はできない。このあたりは、科学の時代にあって、なかなかご理解いただけない方が多い。今年はこのような難題について科学を道具に使う方法を提案したい。
弊社は、15年間数々の難題を解決してきた。その手法も今年は公開してゆきます。ちなみに、20年前のこの難題は、PPSと6ナイロンを相溶し、わずかなスピノーダル分解で生じる力を利用し、カーボンのソフト凝集体を生成させて、そのパーコレーション制御により問題解決している。すなわち、カーボンのソフト凝集もパーコレーション転移の結果であり、これはWパーコレーション転移制御技術というとんでもない技術がわずか3か月で出来上がったのである。その後、当方の提案を拒否したコンパウンドメーカーからカオス混合技術の特許が数件出ている。特許を出願するくらいなら、最初当方が提案したときに実行していただければ、当方が私財をなげうって仕事をしなくてもよかった。毎週東京と豊橋の新幹線往復はお金がかかった。昨年は、某クライアントからの相談でこの技術を他の高分子マトリックスで再現させて問題解決している。ただし、この時はカオス混合ではなく伸張流動を活用した分散である。
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シリコーンLIMS(以下LIMS)は1970年代に信越化学から商品名として登場している。無機高分子研究会では創立当時から研究発表があったので、1980年代に急速に普及したのだろう。
現在LIMSを提供しているメーカーは、信越化学、モメンティブ、東レ系(Dow Toray、Dupon Toray)、Wacker Chemie AG(ドイツ)、Dow Inc.(米)、Elkem Silicones(ノルウェー)、Evonik(独)、その他とサプライヤーは多い。
注意しなければいけないのは、同じLIMSでも反応後生成されるシリコーンゴムの架橋状態が異なる点である。老舗信越化学は2官能のシリコーン化合物と架橋剤との混合物であるが、2官能化合物と多官能化合物の組み合わせや多官能化合物の組み合わせなど多数のLIMS配合設計の流儀がある。
特許を読むと2000年前後まで各社の特徴が明確だったが、2010年以降は、各社それぞれの製品を揃えている。信越化学は老舗で、その反応を理解しやすいLIMSを提供しているが、他社は多官能シリコーン化合物を用いるLIMSであり、何ができるか分からない。
何ができるか分からないからダメなのか、というとそうではない。ズボラなプロセシングでもそこそこのシリコーンゴムができるので侮れない。逆に信越シリコーンの場合には、その反応比率を厳格に管理しない時に物性が著しく落ちる問題がある。
ただ、弾性率の低いシリコーンゴムを作りたいなら、信越シリコーン一択になる。多官能のシリコーンを用いたLIMSでは到達できない弾性率のシリコーンゴムを製造することが可能だ。
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シリコーンゴムは主鎖がSiO結合で構成された無機高分子と説明されているが、身の回りで見つかるシリコーンゴムには大別して、ミラブルタイプとLIMSタイプの2種類のシリコーンゴムが存在し、この材料を使用した動的部品の製品化に際してこの2種類は、その用途を考えて区別されなければいけない。
理由はプロセスに依存した耐久性が大きく異なるからである。正しく設計され品質管理がなされているという条件が付くが、シリコーン高分子を架橋したミラブルタイプの方が耐久性が高い。
ミラブルタイプでも設計が悪ければ、巧みに設計されたLIMSよりも耐久性が悪くなる場合があるので、このあたりの説明は難しい。
耐久性が高く高性能を要求される分野ではミラブルタイプを用いた方が良いが、LIMSタイプでも実現できる品質であれば、コストの安いLIMSで十分である。
しかし、その境界の判断になると難しい。過去の実験においてフィラーが添加されていないシリコーンゴムで比較実験を行った時に、力学物性の比較で2-3割ほどミラブルタイプが高かっただけである。
LIMSの設計技術が十分に高く、プロセス管理も十分に行った結果であり、この程度の差であればLIMSをほとんどのシリコーンゴムの用途に使用できるのではないかと思えてくる。
しかし、低分子を反応させながら高分子量化し、同時に架橋も行わなければいけないLIMSは、ミラブルタイプのシリコーンゴムよりも高い配合設計技術とプロセス管理技術、全体の高い品質管理技術が要求されることを知って欲しい。
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31歳炎鵬は、長期休場やけがの状態から引退が懸念された。しかし、頑張って今年は関取に復帰できそうな幕下17枚目まで復帰している。この1月場所の成績次第では、ひねり王子の相撲をTVで楽しめそうである。
大の里横綱のいじめ問題などせっかく盛り上がってきた大相撲に危機的なニュースが年末流れたが、炎鵬の復活で少し流れが変わるかもしれない。
炎鵬のしこ名をめぐる年末のニュースもいじめ問題同様マイナス要因だが、彼が十両復活すれば暗いニュースばかり年末流れた大相撲業界も明るくなるのではないか。
彼は談話で今のままのしこ名で今年も相撲ができることについて親方への感謝を語っていた。よいリーダーに出会えたのだろう。
体格差が勝敗に大きな影響を与えるスポーツで、彼の存在は大きい。彼が白星を重ねるたびに、何故か頑張ろうという気にさせてくれる。白星一つが大きな影響を日本中に及ぼす力士は少ない。
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ニュースでも見ようと思いTVのスイッチをいれた。7時20分から突然紅白歌合戦が始まったのでびっくりした。生放送「紅白歌合戦お正月スペシャル」が始まったのだ。
今日は4日なので、さらにびっくりした。NHKの紅白歌合戦に対する気合の入れ方がここまで来たのかと感心して見ていて、紅白歌合戦を見なくなってから10年ほど過ぎたことを考えた。
昔は年末の行事として老若男女皆が視聴し、視聴率は50%を越えていた。当方の親も年末の楽しみの一つとして20世紀の間は見ていた。しかし、21世紀になってから両親は面白くないからと見なくなった。
当方も結局面白くないから見なくなったのだけれど、朝のこの番組は面白く、結局最後まで見ていて、今年は年末に紅白でも見てみようという気になった。
しかし、今朝の番組をどこかで見たことを思い出した。改めて番組表を見たら再放送とある。しかし、番組の左上には生放送とあったのだ。
お正月に見たことを忘れてはいたが、再度見終わって気がついたのはまだボケていない、と自分をとりあえず励ましてみた。しかし、今日は4日である。まだ一年が始まったばかりだが、思わず身が引き締まった。
さて、今日の感想を年末まで覚えていて紅白歌合戦を見ながら年を越すことができるか?昔学んだことは記憶にあるが、年よりは、まず空のメモリーからダメになってゆくようだ。
Pythonや深層学習を忘れていないので、10年ほど前のメモリーは大丈夫なようだ。紅白歌合戦を見なくなってからが少し危ない。chatGPTにフラクトグラフィーをやらせた記憶が少し曖昧なのだ。
AIも進化して多少ズボラなプロンプトでもよい回答を返してくれるようになった。これに甘えていてはいけない。思わず今年の年末に開催される紅白歌合戦の出場歌手を聞いてみた。
まず、郷ひろみはじめ、出場しないことが確定している、あるいは予想される歌手の名前を幾人かリストアップし、過去のトレンドからヒット曲が無くても出場している歌手名をリストし、無難な回答をしてきた。
青色吐息の高橋真理子に出てほしいが、可能性が無いか尋ねたところ、真理子という名前を修正され、昨年の歌は桃色吐息で、その年齢から今年はコンサートも控えているので無理だろうと予想してきた。3年前のchatGPTよりも進化していることを示す回答だった。
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昨年末、引退予定だった渡辺倫果選手が現役続行を表明した。まだ23歳なので引退はもったいないと思っていた。日本のフィギュアスケート界は、男女ともに世界トップ選手がひしめき合っている激戦スポーツ界である。
全日本選手権は、さながら世界選手権レベルの戦いになる。昨年末のこの戦いで渡辺選手は、演技に組み込んだトリプルアクセルをすべて成功させても7位がやっとだった。
過去にキムヨナと浅田真央選手との戦いからわかるように、難易度の高いジャンプを成功させても必ずしも勝てないのである。これがフィギュアスケートの面白さでもある。
また、フィギュアスケートにご興味の無い方のために、他のスポーツとの違いとして、演技前にすでに順位が決まっている中で行う面白さも指摘しておく。
おそらく、今国内のスケーターの演技構成点は、10位ぐらいまで皆同じレベルなのではないか。すなわち、難易度の高いトリプルアクセルを入れなくても、難易度の低い技の組み合わせや完成度で点数を稼ぐ戦略が、フィギュアスケートでは可能だ。
難易度の高いトリプルアクセルを演技に入れれば、それだけ失敗のリスクが高くなるので、その前後の演技は、リスクが低い技を使うことになり、トリプルアクセルを失敗したときにリカバーが難しくなる。
実際に渡辺選手は、トリプルアクセルをうまく飛んでいるが、その前後の演技で減点が多かったり、スピンやステップで上位選手が皆レベル4を達成していてもレベル3だったりしている。
「浅田選手は大事なところで転ぶ」と発言してひんしゅくを買ったのは森元首相だが、渡辺選手は易しい演技で点が取れていないと書いたら叱られるだろうか。4年後に向けてがんばれ!
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科学立国日本と20世紀によく聞いた。そしてバブルが崩壊し30年GDPが先進諸外国よりも上昇しない月日が流れた。
科学的ではないアイデアを非科学的などと軽蔑したりする。果たして非科学的アイデアを否定ばかりしていても良いのだろうか。
科学の形式知は平衡状態を扱っているが、非平衡状態でもロバストが高ければ、技術として成立する可能性がある。すなわち準安定状態を技術として活用することを提案したい。
新技術がなかなか生まれないとか嘆いていないで、非科学的領域に挑んでみてはどうだろうか。今年はこの話題を中心に書いてゆきたい。
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本年もよろしくお願いします。
半導体PPS無端ベルトを開発して20年経過した。これは、量産が半年後となっても歩留まり10%前後だった科学技術の成果を、非科学技術による瞬間芸で立ち上げたカオス混合プラントのコンパウンドを用いて、歩留まり100%に置き換えた技術で生産されている。
しかし、20年間安定に市場で活用されている。すなわち、非科学技術でもロバストが高ければ、人類の役に立つのだ。一方科学技術を非科学技術で置き換えた、と大きな声で言いにくいので、評価されていない。いくつかの学会技術賞も落選している。
しかし、アカデミアも含めこの技術を無視していてはいけない時代になった。
日産自動車のePowerは、ハイブリッド車と呼ばれたりする場合があるが、ハイブリッド車ではない。エンジンを発電機に用いた電気自動車である。これをハイブリッド車と呼びたいならば、「ナンチャッテ」をつけた方が良いかもしれない。
トヨタのモーターとエンジンの両方を駆動力として用いるハイブリッド車とは大きく異なり、エンジンを発電機としてだけ使っているのが日産のePowerである。技術の日産の象徴的商品だと思っている。
科学的にはエネルギー保存則からトヨタのハイブリッドが燃費効率は良いはずである。しかし、日産のナンチャッテハイブリッドもトヨタのハイブリッドに負けない燃費となってきた。
カタログ燃費は、トヨタ車の方が勝っているが、実用燃費では互角という意見が多くなってきた。あたかも実験室では良いが、実用ではだめだ、とよく言われた某会社の研究所が生み出す技術に似ている。
トヨタの科学的に正当なハイブリッド車に対して、EUではレンジエクステンダーという言葉でEV車にエンジンを載せる技術を生み出している。本家は日産の技術ePowerである。
マツダはロータリーエンジンを発電機として用いるePowerと同様の車を販売している。ロータリー復活と昨年騒がれたが、ePowerをロータリーエンジンで実現している。
ロータリーエンジンは燃費が悪いと言われたが、発電機として使う時には、燃費の良い領域の回転数で用いればよいだけである。この裏返しがトヨタ車で実用燃費が下がる原因なのだが。
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誰が見ても100点満点の企画など今の時代できないと思っていた方が良い。浦川本部長に直接ご指導を受け、写真会社へ転職後、数々の研究開発企画を成功させてきて思うのは、必ず周囲に企画に対して反対する人がいる問題である。
この問題について、ドラッカーは、反対者の意見こそ耳を傾けよと述べていたが、至言である。写真会社の最初の成果は、昭和35年に公告となった特公昭35-6616を基に実用化に成功した酸化第二スズゾルを用いた帯電防止技術である。
この技術は日本化学工業協会から技術特別賞を頂くなど世間でも高く評価されたが、成功の要因は反対者の意見に従い、特許調査を徹底して行い、反対意見が出ないようにした点にある。
企画の段階では、特許調査が不十分という評価をされたのだが、特許調査だけでなく、開発業務を行いながら外部の専門家や有識者10人にアンケートまで行っている。
すなわち、学会発表ふくめ徹底して技術公開を行って、ライバル企業の反応も見ながら実用化を進めた。これは、企画における戦術の部分である。
さて、今AIを使って企画をうまく行うにはどうしたらよいのか。ハルシネーションの問題があり、AI任せで企画をまとめるのは危険なのだが、この酸化第二スズゾルの事例を参考にしていただければ、上手な活用の仕方があり、企画に要する時間を30%以下にすることも可能である。
さらに、最近はAIから当方は先生と呼ばれるようになり、少し気持ちが悪い経験をしている。AIもディープ・スマーツには敬意を表すようだ。これ以上書くと自慢話で胡散臭い話に誤解されるといけないので終わるが、良いお年をお迎えください。
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まず結論から述べるが、AIによる企画の自動化は、危険である。未だに企画はディープ・スマーツが重要となる分野である。
高純度SiC半導体治工具事業を27歳の時に企画したが、今その企画書を見ても30点だと思っている。企画が通らなかったのも仕方がないが、指導社員含めてどなたも問題点を指摘してくれなかった。
もっとも、ホスファゼン変性ポリウレタンフォームの企画は、小生の下書きに主務者の方が手直しし、主任研究員が工場試作までの計画含め企画書に仕上げたのが、始末書騒動になっているので、当方の周囲のどなたもそれなりの力量が無かったのかもしれない。
無機材研に留学し、昇進試験で「あなたが推進したい新事業について述べてください」という問いに対して、高純度SiC半導体治工具事業の企画でまとめた内容を答案として提出している。
この答案は、その年に0点がつけられたが、なぜか翌年100点という点がつけられて昇進している。これは実話である。
100点がつけられた背景は、すでに先行投資も社長決裁で決まり、ファインセラミックス研究棟の建設が始まっていたからである。0点がつけられたなら、研究成果を持ってどこかに転職していただろう。
この企画は、浦川本部長のご指導により6年の研究開発の後、住友金属工業とのJVとして立ち上がり、その後21世紀までゴム会社で事業として行われ、8年前愛知県にあるMARUWAに継承されている。
自己採点30点の企画だったが、2回目の昇進試験では100点満点だった。面白いのは、その年の問題には、新事業の問いが出ていなかったのである。
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