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2021.08/07 真夏の夜の夢ではない

昨晩男子400mリレーの決勝が行われたが、あっけない幕切れだった。ただし、これは次に夢を持たせてくれる結果でもあった。なぜなら、仮にあそこでバトンミスが無かったとしても、予選のタイムを見れば現在のメンバーの状態でメダルを取れなかったことは明らかだからである(注)。


まず、結論を書くが、今回日本陸上短距離メンバーの調子は全員悪かった。その理由は不明だが、各個人のオリンピックの成績を見ればそれがあきらかである。


桐生選手がだれの責任でもない、と言ったが、全くその通りで、全員何をやっていたんだと言いたくなる状態でオリンピックに臨んでいる。


これは陸上だけではない。水泳も大橋選手の金二つが光っているだけで、他の選手は金メダルが期待されながらも、またとれたかもしれない実力がありながらも、予選落ちとか惨憺たる結果である。


食事準備が原因で起きた暴力事件や不倫、芸能人との恋愛問題などオリンピックに至るまで問題が多かった。今回のオリンピックではメダルラッシュが話題となっているが、その一方で大きな期待外れと、男子競泳陣のような予想された結末に注目したい。


不倫その他が原因で才能が有りながらおそらくだめだろうと当方は予想していた瀬戸大也選手は、決勝4位が最高の成績だった。残念だったのは、この成績に満足した顔が大きなTV画面に映し出されたことだった。おそらく彼はもうこれ以上伸びないと思われる。


人生長く生きてくると、いくつか人生の踏ん張りどころで頑張ることの重要性が分かってくる。当方は踏ん張る必要のないところでも踏ん張ってきたので、人生に少し失敗したところがあった、と後悔しているが、一方でいつでも踏ん張ったおかげで実力以上の力を出せた瞬間を幸せ体験として思い出すことができる。


現在の年齢になっても踏ん張ることが習慣となっているので、時折その疲れがどっと出ることもあり、寿命を心配して反省することが多くなった。


人生だれでも平等に何らかのピークの時期が存在する、と思っている。そのピークの瞬間を自分が栄誉を得たいと思う分野ではどのあたりなのか知る必要がある。ピークを過ぎてからの踏ん張りはしんどいだけである(しんどいが踏ん張る習慣がついていると何とも言えない気持ちが湧いてくる。)。


自分の強みとそのピークの瞬間と、そして栄誉を得たい分野のレベルを十分に意識することができれば、あとは、それらを基に踏ん張りどころを冷静に計算し、踏ん張ると効率が良い。


もしこれができれば、涼しい顔をして「運が良かっただけ」と謙虚に応えることができ、大きな栄誉と人格者となる人生を悠々と歩むことができるのではないかと思う。しかし、それが如何に難しいかは400mリレー男子決勝をみれば明らかである。


ピークの瞬間であるかもしれない時期に色恋におぼれていてはもちろんダメである。若い時はストイックであれ、とは亀井勝一郎の名言である。


(注)予選のタイムは38秒16で決勝進出8チームで最下位。これを彼らはバトンのテクニックで1秒以上縮めようと考えたようだ。ここに彼らの現在の悪い状態が現れている。桐生はじめ各選手の状態についてはスポーツニュースにコメントが書かれている。ここでは過去データとの比較から。リオ五輪(2016年)で日本は37秒60で銀メダル、ドーハ世界選手権(2019年)37秒43で銅メダル、ちなみに今回金メダルのオリンピックレコードは37秒50であり、もしドーハの記録を出せていたら、金メダルを取れていたのだ。ここで金メダルだけが人生ではない、と言ってしまったら訳が分からなくなる。金メダルをとれる才能、強みがあってもそれを取れないのは、ストイックな努力をしていないからだ、という人がいるが、それでも取れないのが金メダルである。今回の陸上の結果は、自分たちのピークをその瞬間に持ってこれなかった悲劇である。これを成功させるためには周囲の助言、コーチングが重要となってくる。自分では気がつかない、あるいは見えないところがあるからだ。実れば実るほど頭を垂れる稲穂かな、人生謙虚であれ、は亡くなった母の言葉であるが、周囲の助言は謙虚でなければ聞くことができない。

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2021.08/06 5000人を超えた

昨日東京都の感染者が5000人を越えたという。しばらく4000人台で推移すると思っていたら、あっさりと記録を更新した。これでは、本当に1万人になる可能性が高い。昨日書いていて半分信じていなかったが、間もなく1日1万人を超えて、インフルエンザの大流行と同じ状態になる。


TVでは、オリンピックとの関係が疑われたりしているが、おそらくオリンピックは精神的な影響に留まり、オリンピック関係者が1万人越えの犯人ではないだろう。


政府ではロックダウンという声も出てきたが、遅いと思う。ここまで来たらある一定数は不幸にも死を覚悟してもらうような状態である。そのうえでロックダウンだろう。現実は手遅れ状態なので政府は覚悟している死者の数を宣言すべきである。


重症化リスクの低い患者は自宅待機、などという婉曲的な表現ではなく、助かりそうな人だけ入院してもらう、と明確に宣言したほうが国民に伝わる。ただし、このような宣言は許されないが、今厚生省の出している指針は同義と思われる。


ワイドショーでは、感染症の専門家が政府の対応を責めていたが、まさにこの状態は政府の責任が大きいと言わざるを得ない。おそらく来年まではコロナの流行は収まらないと思われ、今年予定されている選挙では自民党の大敗が予想されるが、どのような政権となるか不明な日本の現実も悲しい。

 

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2021.07/17 小山田圭吾問題

日本には反社会的行為でも被害者が訴えなければ犯罪とならないルールがある。当方の会社内でFDを壊され業務妨害された事件もそうであるが、被害者が訴えない理由を考えなければならない。また、このルールゆえに隠蔽化される可能性が高い時に、被害者はしばしば自死を選び、その死でもって事件の事実を社会に訴えたりする。


例えば、財務省の問題や、STAP細胞における研究所建物内の自死、電通の新入社員の自死、トヨタ自動車におけるパワハラの自死、そして6月にはJOC経理部長の不審死など最近の事例だけでも多い。しかし、これらの自死まで至る事件でも遺族が訴えなければ、事件にならないのである。


STAP細胞における研究者の自死では、他の研究者の著書から研究所内で何が起きていたかが書かれており、書かれた内容が事実であれば、明らかな犯罪行為も存在している。著書の内容から証拠を裁判所に提出できそうな事件もあるが、著者ならびに配偶者がそれをしないのもその気持ちを考慮すると当方は同類の被害者としてうなずくことができる。


当方も当方の残した住友金属工業とのJVの仕事を発展させて30年も事業を継続された方々の存在を考えるとこれを裁判所まで訴えるという気持ちには至らなかった。ただし、当方が退職してから始められた仕事、とか当方ではない人物が「私が発明した研究です」と名乗り出られたなら、当方の転職理由を公にしないわけにはいかなくなった。


すなわち、今の日本は、それを信じたくないと思っても、黙って我慢していては悪がのさばる世界のようである。当方の研究をあたかも当方が転職してからなされたようなことを学会賞に提出した証拠や、当方の研究に全く携わっていなかったのにトップネームで自分の研究のように書かれた論文が存在し、これらの醜い行為の証明をすることが可能である。


そもそも人間社会の欲望の醜さについて芥川龍之介はじめ多くの小説家がフィクションとして表現しているが、小山田圭吾の犯した罪は、たとえそれが訴えられていないあるいは学生時代と言えども謝罪だけで許されるような行為ではない。さらにそれを社会人になってから自慢するに至っては、正気ではない。


その内容が公開された時に当方はあまりにもおぞましいいゆえに信ぴょう性について記事を疑ったが、先日本人はそれらすべてを認め謝罪したのである(注)。


オリンピックが1週間後ということもあり、関係者がみそぎのために謝罪させたのだろうと思われるが、その内容が謝罪だけで許される問題と考えている組織委員会もおかしい。


また、当方は知らなかったが、WEBで調べると過去にも同じ問題で小山田氏は訴えられており、事前に問題を関係者は知っていた可能性が高く、過去の問題だからと甘く考えていたようだ。


オリンピックとは、例え完璧な遂行が難しいとはいえ人間の理想を追求して開催された時に、始めて誰もが納得する感動的ですばらしい大会になるのだ。


最近JOC会長の過去の行動が記事として取り上げられ、「世界の山下」の評判がガタ落ちだが、ここは国民栄誉賞に恥じない勇気を示してほしい。


もし、このまま何ごとも無かったように東京オリンピックで彼の作品が使われるようであれば、単に国民不在のオリンピックと言うだけでなく、それこそオリンピック貴族を満足させるための開催だった、という汚点を歴史に残すことになる。


プログラムが完璧に遂行されたオリンピックと最後まで理想を追求しようと努力した痕跡の残る不完全なオリンピックとどちらが感動を歴史に刻むのだろうか。東京の感染者がこのまま増え続けた場合の判断も同様である。


これは、国民の多くが反対しているにもかかわらず遂行する日本政府にも責任の一端があり、あくまでも開催する大義を求めるならば、理想を追求してこそ日本国家の政府である。



 

(注)武藤事務総長の無責任な「知らなかった発言」が昨日なされたが、2019年にも大問題となっていた男である。誰にも知られなければ、あるいは被害者が声を上げなければ犯罪ではない、という論理を武藤事務総長は公言したのである。作曲者として決まった時に、WEBで氏名をいれて確認すれば、何が問題か分かったことである。世界から「およそオリンピックにふさわしくない人間であると知ってて採用した」、と言われても仕方がない状況である。但し、五輪関係者はじめ政府の方々が小山田圭吾と同様の悪である、すなわち同じ穴のムジナであれば、今回の武藤事務総長の発言を理解できる。サブカルチャーの世界を十分に理解していないととんでもない恥をかく。時間が無くても対応すべき問題である。おそらくさらなる爆弾ニュースがオリンピック開催までに爆発する可能性がある。

*本件、19日夕方に小山田氏の辞任が発表された。

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2021.07/02 靭性を上げるには(2)

複合材料について、1980年代のセラミックスフィーバーの時に研究が進んだ。理由は、金属の繊維補強材料として、セラミックス繊維が多数開発されたからだ。当方も傾斜組成のC-SiC繊維で補強されたアルミニウムを瞬間芸で開発している。


この時に形式知として繊維補強により靭性が向上することが明らかになった。その形式知は繊維補強セラミックスとして応用され、さらに繊維だけでなく、超微粒子でも靭性の向上する事例が見つかっている。


部分安定化ジルコニアは、結晶転移により破壊エネルギーを緩和させて靭性を向上させているが、学生の時に面白い授業を聞いたおかげで、この部分安定化ジルコニアの靭性向上メカニズムを早くから知っていた。


その授業では、部分安定化ジルコニアで製造された湯呑茶碗を床に落としても割れないことを実演していた。ところが、当方が受講した年に教授が10数年間の授業と同じように湯呑茶碗を床に落としたところ粉々に割れたのだ。


教授の説明では長年落とし続けて、結晶がすべて転移したために、割れたとのこと。部分安定化ジルコニアではこのようにすべての結晶が転移してしまうと靭性は低下する。


複合材料による靭性向上手段も同様の現象を示す可能性があるが、微小亀裂を修復するアイデアも出てきているので、部分安定化ジルコニアよりも信頼性が高く、メンテナンスを行えば高靭性を保てる高強度材料ができると思う。


例えば自己修復ポリマーが研究されているが、この分野へ応用すると面白い成果が出ると期待している。例えば炭素繊維複合樹脂では、低融点樹脂を分散したマトリックスの複合材料とすることで、亀裂が入った時に外からコてをあてて修復する発明が開示されている。


これも自己修復と呼べるが、学会で報告されている自己修復性は、分子の一次構造が修復するポリマーで、より微細な構造の修復も可能と思われる。

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2021.07/01 靭性を上げるには(1)

弾性率と靭性の関係について、昨日経験知を説明したが、硬くて靭性も大きな材料が欲しければ複合材料で創り出す以外に手段はない。以前硬くて振動吸収の良い材料を創り出すために樹脂補強ゴムが考え出された話をこの欄に書いた。


このような材料は、物性が二律背反の材料であり、科学的に考えるのは難しい。経験知に基づく技術で初めて創り出せる。技術で作り出された二律背反材料について科学的に解析し、新しい形式知を見出すことは容易だが、科学で不明確なものを創り出すには、人間の創造力に頼る以外に方法はない。


創造性は誰にも備わっているはずだが、自己啓発でもしなければ衰えてしまう。但しどのような分野で創造性が発揮されるかどうかは、日々の営みの中でその人間の能力がどのように発揮されているかによるのだろう。


絵を描くことを強く希望せず、日々の営みの中で仕方なく絵を書いていても創造性は発揮されない。これが才能によるのかどうかという議論があるが、脳みその重量にそれほど差はないので、やはり自己実現意欲の強い方向に才能は磨かれると思う。


絵を描くことは難しいが、カメラを被写体に向けてシャッターを押すことは誰でもできる。写真の良いところは、経験知がうまくまとめられており、カメラの性能が著しく人間の能力を超えてしまったので、ニコンカメラを使って経験知に従えば誰でも創造性豊かな写真を撮ることができる。


ただし、その写真が万人に支持される創造性の賜物かどうかは、フォトコンテストで確認してみなければわからないが、自己満足できる、そこそこの写真が撮れるのが最先端のデジカメである。


当方は、ペンタックスカメラで幾つかフォトコンテストで入賞している。世界的な大会では一等をとり、それを最後にフォトコンテストを卒業した。当方はニコンとペンタックスを使い続けてきたが、なぜかニコンカメラでの入賞は1度だけで、それもキャノンが後援だったフォトコンテストの二位である。このコンテストでペンタックスを使っていたら何位だったのだろうか。


おそらくペンタックスカメラには写真を撮る意欲を掻き立てる無形の性能があるのではないか、と思っている。ただ、ピント性能などはニコン製のカメラより劣る。ピント性能は、雑誌のテスト結果を見ても未だにニコンの最先端デジカメがトップである。


それでもペンタックスファンがペンタックスを使い続ける理由は、写真を撮る文化を追求し続けている姿勢をカメラから感じるからだろう。ただ、ニコンカメラが高いから、と言う理由ではないことをペンタックスからニコンに乗り換えようとして、結局両方を使うことになった経験から理解している。ペンタックスでしか撮れない写真が確かにある。


ところで、この年齢でギターを弾き始めたが、写真撮影のようにうまくならない。しかし、才能が無いとは思っていない。才能に責任転嫁するのは神様に責任を押し付けるようなもので、自己責任が叫ばれている現代の視点では加齢に見合う努力をしていないことが原因と考えなければいけない。ただし、加齢に見合う努力をしたときに寿命を縮めるのではないかという恐怖もある。


ギターの腕は上がらないが、新しいメロディーを創造することはできる。カラオケでは常に新しいメロディーを創造しているのだが、これはただ音程を外しているだけではないかと言われてしまう。しかし、正しくチューニングされたギターから新しいメロディーが出てくれば、音程が外れた、と指摘されないだろう。


リズムとコードの組み合わせについてはほぼ無限である。聞きなれたメロディーでもリズムを少し変えてやると異なる雰囲気となる。練習をしながら新しい発見があると上達速度が遅くても飽きない。粘り強く、まさに靭性豊かな練習である。


ただ、これもリズムを外した結果の発見、と考えると少し情けなくなる。積極的に新しいリズムを作りながら(弾きやすいテンポで練習しているだけだが)練習していると考えると、意欲は上がる。レゲエだってそのように生まれたのかもしれない。


研究開発で隘路に陥った時にどれだけ気持ちを強く持てるか、と言われたりするが、心の強さを上げるのに意思の力を上げることは難しいが、粘りっ気あるいはテキトー、柔軟さを持たせることは心の視点を変えるだけで良い。心の靭性は材料の靭性を上げるよりも容易である。今日からでも失敗しない技術開発を実践できるノウハウを書いてみた。

 

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2021.06/29 材料の強度(2)

靭性とは粘っこさ、応力に対してしなやかに、割れにくさなどと表現される。強靭な精神力という言葉から、ストレス耐性の高いモーレツサラリーマンを思い浮かべるかもしれない。靭とはぐっと力がかかった時に柳のようにうまくその力をいなす性質だ。


感覚的には、硬いものは割れやすく、柔らかいゴムのような塊は、金槌でたたいてみても割れずにどこかへ飛んで行く、そのような現象で観察される性質である。


科学的にこの性質を明らかにしようという努力が1960年から1980年頃活発に行われ、その成果は線形破壊力学としてまとめられている。ところが大学ではこの線形破壊力学を教えていない。当方も1970年代に化学系の学生時代を過ごしたが、授業科目に無かった。


金属学部では教えていた大学もあったようだが、化学系の無機材料学科で線形破壊力学を学べる環境は見当たらなかった。このあたりは靭性というパラメーターが形式知として一般的ではないことを表している。


しかし、実務で線形破壊力学について知っているのと知らないのでは現象の見方が異なるので、是非お茶の水の古本屋にでも行って適当な教科書を見つけて勉強してほしい。機会があれば当方が特別講義をしても良いと思っているが、当方の線形破壊力学は少し怪しい内容である。しかし、実務には役立つ、と思っている。

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2021.06/24 弾性率と強度(1)

弾性率と強度は異なるパラメーターであることを御存じない方が多い。その他にヤング率とか、体積弾性率とか、剛性率、硬さ、ポアソン比などと材料物性に関わる周辺の言葉の意味を理解していないと、材料開発を失敗する確率が高くなる。

もっとも失敗することにより、その原因から差異を理解し、経験知が増えてゆくから失敗も無駄ではないが、ボーっと実験をしていると、せっかく得られたはずの経験知を取りこぼすことになる。

技術開発を行っている、と明確に認識しておれば、経験知は確実に増えるが、ボーっと科学をしていますとか、科学技術の開発をしていますと応える様な人は経験知が増えてゆかず、不幸なことに間違った形式知を記憶することになる。

まず、これらのパラメーターは、計測者の力量や計測方法が原因でばらつくことを知っておこう。これは科学において現象を観察するときに、誰もが知っていることである。もしこれが正しく理解されていなかったら、STAP細胞の有名な女性研究者のような未熟な科学者どころか科学者ではないと言われかねない。

計測者の力量や計測方法のばらつきだけでばらついている、と認められて初めて科学で理解された現象として認められ、そこから形式知が生まれる。結晶の弾性率はそのようにして求められた唯一の値である。ゆえに教科書には、弾性率の説明として物質固有の定数などという説明が与えられたりする。

その弾性率の定義は、単位歪当たりの力、すなわち力を歪で割った値である。これが定義されてヤング率や体積弾性率が求められることになる。

ところが、強度は弾性率だけで決まらない。ここを正しく理解していない人が多い。ひどい人になると引張強度から弾性率が求まる、と言って安直に引張試験を行い、得られたSSカーブから適当に計算した弾性率をその材料の弾性率として記載している。

簡単そうに思われる強度と弾性率であるが、アカデミアの先生でもこのあたりをいい加減にされている方がいたりする。ポスター発表の時にSSカーブを見つけるとお決まりの突っ込みをしてみるが、正しく答えられる人は少ない。

学生で正しく答えられる人に出会ったことは無い。これは偏差値とは相関していない。指導教官の力量と関係していると思っている。偏差値が低い大学でも優れた科学者とみなせる先生の指導であれば、形式知について学生は正しく答える。今の時代、大学の偏差値と社会での活躍は相関しなくなっている。

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2021.06/23 樹脂の調達

高分子材料に限らず、あらゆる商品の価格は需要と供給の関係で決まるのは昔から知られている。一方で生産側の都合で、価格を操作する場合もある。例えば市場のシェアをとるために価格を下げて競争力を上げる場合だ。

過去の高分子材料の価格は、そのような歴史の中で価格が決まってきた。しかし、20世紀末から材料メーカーも価格競争ではなく、部材として付加価値をつける競争をするようになった。

ところが組み立てメーカーにとって材料メーカーの川下への進出が迷惑な場合がある。すなわち部材のスペックから、ノウハウが漏れるような場合である。

かくしてそれまで良好だった材料メーカーと組み立てメーカーの関係が崩れることになる。樹脂の価格にそれが反映されるようになったのは20年ほど前からである。転職を経験してみて高分子材料の価格が単に使用量だけで決まっていない複雑な背景があることに気がついた。

一方でコモディティー化した材料は国内材料メーカーにとってお荷物商品となりその淘汰が進んだ。これをグローバル化の側面だけで考えていると国内材料メーカーは、将来の存続が難しいと思っている。

企業の成り立ちは、時代の状況とその国の政治や企業間の関係にも影響を受け、国家ごとに特徴がある。中国や台湾で仕事をしてきてそのように感じた。そしてこれが樹脂の価格にも影響を受けるのだ。

長くなるので具体例を示し、樹脂について組み立てメーカーはその調達戦略を変更する必要があることに気がついてもらいたい。

一定量調達する必要がある時に樹脂を内製化したり、その調達先との関係について従来と異なる視点で見直しを行うなどの少し大胆な戦略を選ぶ必要がある。

組み立てメーカーが樹脂を内製化できるわけがない、と材料メーカーは見下しているとオイルリファイナリーからバイオマスリファイナリーに変化している流れに押し流される可能性がある。

オイルリファイナリの例となるが、フィルム成形可能なPPSは、2000円/kg以上の価格で国内では取引されている。中国では10年前これが1000-1500円/kg程度だったが、何故か最近は2000円/kgという価格を提示してくる。

PPSは高く見積もっても月tベースであれば600円前後でも中国では利益が出る樹脂と過去に聴いていた。これ以上はここで書かないが、PPS部品を国内で製造していては人件費以外の要素も加わり中国メーカーと競争力が無くなってゆくことは明らかである。

本日の内容が分かりにくい方は、弊社へ問い合わせていただきたい。やや刺激が強い内容となるのでここでは書けない。ただし、機密事項ではなく今世界で起き始めた変化でもある。

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2021.05/19 ワクチン接種登録ソフト問題

大規模接種センターの接種予約登録ソフトについて、昨晩架空予約者に法的措置を取るとの国からの公式談話があった。二つの新聞社が取材のために架空の番号で不正アクセスを行ったためらしい。

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どのような罪になるのか興味深いが、国はソフトウェアー納入業者にも法的措置を取るべきである。昨日使用したところ明らかにプログラマーの手抜きと思われる杜撰さが目立った。

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発注した担当者の能力の問題もあるかもしれないが、受注側も用途を理解していながらあのようないい加減なソフトを納入しているのは、今の時代、詐欺のようなものである。

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もし新聞社が国から訴えられたなら、その新聞社は国と納入業者を訴えるべきである。少なくとも新聞社が社会正義を理由に不正アクセスをしたというならば、是非今回の用途が分かっていながら杜撰なソフトを納入した業者について、その責任を裁判で明らかにする義務があると思うので、国から訴えられる前に納入業者をPL問題で訴えてほしい。

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工業製品のPL問題では、意図しない用途で工業製品を使われて事故が起きた場合でもメーカーの責任が問われる時代である。ソフトウェアーについてもその用途で明らかに必要な対策動作をしない手抜きのプログラムを納入した業者と発注側の責任について問題にすべき時代だと思う。

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MS-DOSの時代でも今回のような入力データをチェックしない、あるいは管理しないソフトなど当方は作ったことがない。MZ-80Kで作ったお遊びソフトでもエラーを検知し入力画面に戻ったとしても、元の入力データを保持しており昨日のプログラムの動作よりまともだった。

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ところが今回の登録ソフトは入力データのチェックをしないだけでなく、アクセスが多い時には入力データをクリアしてまた入力を求めるといった信じられない時代遅れの動作をしていた。

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国の提供するサービスプログラムについては、本来プログラムのお手本となるぐらいの動作をする品質であるべきで、そのレベルに到達した時にIT立国と呼べるのではないか。起業後、e-TAXはじめ国のサービスプログラムを利用する機会が多くなり、そのソフトウェアーの出来の悪さに泣かされてきた。

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現在の日本は40年以上前の当方のプログラムスキルより低レベルと言いたくなるような状況である。ただし、当方は、プログラムスキルを主要な生活の糧とはしていない。日々の営みに必要なスキルの位置づけである。今回のプログラムは、その視点で見ても品質の低いソフトウェアーである。

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例え無料でも国のサービスプログラムとして使ってはいけないレベルであり、このようなサービスプログラムを堂々と防衛庁のサイトで公開している感覚は、明らかにおかしい。新聞社を訴えて十分に司法の場で吟味していただきたい。

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なお、立憲民主党枝野代表は、この問題について早々と防衛庁を批判していたが、その内容は能天気な内容だった。本来は、プログラムのPL問題として訴えられた新聞社に「檄」を飛ばすレベルが原点となる、もっと過激な発言をしていただきたかった。

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そうでないとこの欄の内容が過激な印象を与える困った状態である。「IT立国JAPAN]と言えるように、国のサービスプログラムは、常に最高品質のソフトウェアーで提供していただきたい、というのが当方の思いであり、本欄の趣旨である。

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「新聞社に国は感謝すべき」という発言は、攻めの野党党首としていかがなものか。いい加減なソフトが自衛隊のサイトで公開されている、という事実だけでも国民は震え上がらなえればならないシュールな光景である。

 

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2021.05/04 溶媒としての高分子

添加剤のブリードアウト現象を考察するときには、高分子を溶媒としてとらえている。そこで発生する問題に気がついているかどうかが、問題発生時にすぐアイデアが出てくる人とそうでない人に分かれる。

この分かれ道は頭の良し悪しではない。高分子の気持ちを忖度できるかどうかである。どちらかと言えば、その人の人間性とも関わるかもしれない。これは冗談ではなく、経験知に基づき書いている。

まず低分子溶媒に低分子を溶解するときの現象を復習していただきたい。物理化学の教科書を読むと理想溶液の話が出てくる。すなわち、低分子の溶解でも実際の現象が形式知からずれる場合があることを教科書は配慮して説明している。

低分子がつながって高分子になることを考慮すれば、教科書の溶解理論と実際が大きくずれてくることはすぐに想像ができる。いや、想像しなければいけない、と書き直す。

低分子の溶解性について熱力学で議論するが、そこではSPを理解する必要が出てくる。高分子の添加剤を選択するときにも高分子の一次構造からSPを計算するが、高分子のSPは実験で求めることをお勧めする。

計算で求めたSPが現象と一致する確率は60%前後というのが当方の経験知である。ゆえに、計算でSPを求め配合設計したがブリードアウトの問題が発生して困っている、と嘆く必要はない。一致しない確率が40%のパラメーターを用いた結果であると理解できれば安心できる。

ブリードアウトの問題については、まず、どのような手順で配合設計したのか振り返り、目の前で起きている現象を冷静に眺めるところから始める。

そして、コンパウンディングから射出成型あるいは押出成形プロセスで、高分子がどのような気持ちで添加剤の溶媒としてふるまっていたのか考えてみると原因が見えてくる。

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