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2014.03/31 高分子材料の電気特性(4)

以前この欄で導電性微粒子を分散した高分子材料のインピーダンス変化について説明したが、フィルムのインピーダンス変化はパーコレーション転移と関係している。すなわち、パーコレーション転移の閾値近辺でインピーダンスは大きな変化を示す。この性質を利用して、パーコレーション転移の閾値推定を行う事ができる。

 

凝集粒子が分散した場合でも、凝集粒子の状態が変化しなければ、凝集粒子でパーコレーション転移が生じればインピーダンスは大きな変化を示す。面白いのは、凝集粒子の形態でパーコレーション転移を生じていないときに、凝集粒子の密度を上げるとインピーダンスに変化が現れる。

 

すなわちフィルムのインピーダンスを測定すると導電性粒子の凝集状態までも知ることが可能となる。一般的に凝集状態の密度は体積分率で0.6前後で有り、凝集状態の内部ではパーコレーション転移が生じている。これをうまく制御して、凝集状態の内部の密度を下げて体積分率で0.2未満にすると凝集状態でパーコレーション転移が起きていないから、面白い現象を観察することが出来る。

 

導電性粒子を増やしたり、外力を加えたりして凝集粒子の内部でパーコレーション転移を起こさせ、さらに凝集粒子のパ-コレーション転移まで起こさせるWパーコレーション転移を発生させるのだ。直流抵抗ではこの場合の現象をうまくモニターできないがインピーダンスではうまくモニターでき、面白い変化となって現れる。

 

面白い、といっても、ただ導電性粒子の添加量に対するインピーダンス変化が二段の変化になるだけだが、初めて測定したときには感動した。なぜか感動した。

 

 

 

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2014.03/30 高分子材料の電気特性(3)

高分子にカーボンが分散されたときに、カーボンは一次粒子まで分散されることは稀で、大抵は凝集粒子の状態で分散する。凝集粒子の抵抗は、凝集体の密度で変化する。この凝集粒子内では、ホッピング伝導で電子が流れるので、凝集粒子も電子伝導性の粒子として扱うことが可能である。

 

しかし、カーボンを分散した高分子のインピーダンスを計測すると、凝集粒子中の伝導現象でイオン導電性を仮定しなければいけない現象に遭遇する。その現象が観察されたからどのような問題が生じるかは、材料の応用分野により様々である。

 

電気抵抗の線形性が崩れたり、VI特性にヒステリシスが現れたり、誘電緩和の緩和時間が長くなったりといった現象が観察されるが、これらの現象が品質に悪影響を与えなければ凝集粒子中の導電性が電子伝導であろうがなかろうが問題にならない。

 

しかし個別の品質特性で予期せぬ電気特性の問題が生じたら、この凝集粒子の導電性の問題について考えてみると良い。悪いことばかりではない。凝集粒子の接触抵抗により導電性が大きく変化する、という現象は、押出成形でフィルムを製造するときにうまく活用すると、フィルムの電気特性を引取速度で制御する技術となる。

 

このあたりの詳細は相談して欲しいが。とかくカーボンを分散して半導体フィルムを製造する技術では、電気抵抗の不均一さ、ばらつきで悩まされる。製造プロセス因子でその悩みを少しでも解消できるとしたらありがたい。

 

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2014.03/29 高分子材料の電気特性(2)

難燃剤は赤燐で、加水分解されなければ絶縁体、と安心しきっていたそうだ。しかし、赤燐は加水分解されればリン酸を生成する。表面が加水分解された赤燐は、10の3-4乗Ωcm程度の導電性を示す。

 

パーコレーション転移を起こせば10の6乗Ωcm程度まで絶縁性高分子の電気特性を変化させる。このように高分子マトリックスに絶縁性フィラーを分散する時には、その表面抵抗がどのような性質を持っているのか調べなくてはいけない。さらにパーコレーション転移という現象がどのような現象なのかも理解しておかなければならない。

 

面白いのは、高い絶縁性の2種の高分子をブレンドした時に、高分子に不純物が含まれており、相分離して界面にその不純物が偏積する現象が起きたときである。10の10乗Ωcmレベルまで抵抗は下がる。すなわち100倍程度導電性が上がるのだ。このことは以外と知られていない。また学術的に確認することも難しい(できないことは無い)。ただ、これまでの経験から、推定している現象である。

 

PPSにナイロンとカーボンを分散したときには、単純にカーボンのパーコレーション転移だけで抵抗変化を説明できない。ナイロンの状態によりマトリックスの抵抗が1000倍近く変化するためだ。インピーダンスなどを測定するとそのあたりの現象は見えてくる。もし興味のある方は実験してみて欲しい。

 

この系では、分散しているカーボンの凝集状態でも全体の抵抗は変化する。すなわち、カーボンの抵抗は1-10Ωcm程度の導電体であるが、凝集体になると接触抵抗の影響により10の4-6乗Ωcm程度まで導電性は変化する。高分子中でカーボンが分散しているときに一次粒子まで分散している例は珍しい。大抵は凝集粒子として分散している。その結果、パーコレーションの扱いも、1Ωcm程度の粒子のパーコレーションを考えていてはだめで、凝集粒子1個の導電性を問題にしなくてはいけない。

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2014.03/28 高分子材料の電気特性(1)

白川先生により導電性高分子が発見され、その分野の研究が進み、多くの導電性高分子が開発された。高分子半導体技術なども実用化され始めた。ここでは絶縁性の一般の高分子について考えてみる。

 

高分子材料の多くは比誘電率が3前後の誘電体である。導電性を直流で計測するためには精密な電流計が必要になる。高電圧を印加すれば電流が増加するので計測可能と言われるが、高分子材料のVI特性の線形性は材料により異なる。

 

誘電率が3程度の高分子材料は、10の13乗Ωcm以上の体積固有抵抗を示す絶縁体であるが、誘電率が3.5以上の高分子材料になってくると10の12乗Ωcm前後になってくる。すなわち一応絶縁体領域であるが、高誘電率の材料になってくると絶縁性と詠っていても10の11乗Ωcm程度の半導体領域の抵抗を示すようになってくる。

 

注意しなければいけないのは、フィラーを添加したときである。絶縁性のフィラーを添加したつもりでもフィラーの添加により材料の抵抗が変化する場合がある。これはフィラーとマトリックス高分子との界面の問題が大きいが、10年以上前に富士通のハードディスク問題を引き起こしたのは表面が一部加水分解され導電性になっていた難燃材を用いたためである。

 

このとき材料メーカー担当者にはパーコレーション転移の恐怖が分かっていなかったらしく、実験室で問題が無かったのでそのまま市場に出したらしい。実験室で問題が無くともパーコレーションの閾値は容赦なく下がる。当時の原因解析では、成形体の中でフィラーの再分配が生じ、表面付近に難燃剤の量が増加した状態になっていたという。その結果、パーコレーション転移が生じ半導体領域まで本来絶縁体で無ければならない材料の抵抗が下がった。

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2014.02/22 パーコレーション転移(13)

酸化スズゾルは、その合成条件を変えるとコロイドの分散状態が変化する。酸化スズゾルは1-2nm程度の一次粒子が金魚のウンコのように、繊維状につながった粒子として分散しているが、合成条件が変わるとこのウンコ状のつながりが枝分かれした形状になったり、網目のようになったり様々である。濃度が1-2%であれば繊維状が大半であるが濃度が上がって7%程度になると網目状につながった凝集体が観察される。


実用的には濃度の濃い粒子が必要だが、10%以上の濃度にすると短時間でゲル化するので塗布液として使いにくい。7%前後がポットライフも長く使いやすい。ところがこの7%前後の濃度では網目状の構造が多くなり、その結果粘度の制御が難しくなる場合がある。


粘度をコントロールできても網目状の構造のばらつきがパーコレーション転移に影響し、帯電防止性能のばらつきにつながる。厄介なのは、帯電防止性能に差があっても表面比抵抗に違いが見られないことがあるのだ。


すなわち帯電防止層の品質評価に表面比抵抗が使われるが、それで品質管理できない、という事である。しかし、100Hz以下のインピーダンスであれば、クラスターのでき方を検出できるので帯電防止性能の品質評価に用いることが可能である。また、タバコの灰付着距離とも相関するので、実技評価を省略できる。


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2014.02/21 パーコレーション転移(12)

帯電防止材料としてイオン導電性材料を用いた場合に表面比抵抗を計測すると、抵抗が安定するまでに時間がかかる場合がある。例えばポリスチレンスルフォン酸を帯電防止材料として使用すると、10の10乗程度の抵抗に安定化するまで2分程度かかる場合も存在する。


ところが30秒以内で安定化することもあるのだ。この両者のサンプルについて100Hzのインピーダンスを計測すると異なる値になる。同一添加量でもこのような現象が生じるので、おそらくイオン導電性材料でもインピーダンスの値でパーコレーション転移のクラスターを検出している、と推定した。


すなわち、100Hz以下のインピーダンスの値を用いると、同一帯電防止材料についてパーコレーション転移で生じるクラスターの大きさを計測できる可能性がある。もちろんこの結果は科学的ではない。なぜなら、昨日までクラスターの大きさとインピーダンスの関係を実験値ではなく推定で述べているだけである。


ただ、技術としてこの推定された事実を用いると、帯電防止層の品質管理を行う事ができる。(続く)


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2014.02/20 パーコレーション転移(11)

電子伝導性の帯電防止材料であれば一次元のシミュレーション結果でパーコレーション転移におけるクラスターの生成とシミュレーション結果はうまく合ったが、イオン導電性材料の場合には抵抗成分の値についてシミュレーションで少し実際の測定値にバイアスを大きくかけないといけない。


これはイオン導電性材料では電荷移動にイオンの拡散が必要なためであり、帯電防止材料の静電容量と抵抗の両者の値を直流で計測できないためだ。電子伝導性材料では材料の静電容量を無視することが可能である。ゆえにシミュレーションにおける静電容量の変化はクラスターの大きさの変化と一致する。


しかし、イオン導電性材料ではイオン導電性材料自身も静電容量を持ち、マトリックスに分散しているその形状により静電容量の値は変化する。この変化が大きいためにインピーダンスの値に影響を与える。


面白いことにイオン導電性材料も電子伝導性材料も、タバコの灰付着テストの結果を100Hzにおけるインピーダンスの値と灰付着距離との関係で整理すると一本の直線に乗る。すなわち、帯電防止材料の種類によらず100Hzのインピーダンスを計測すれば灰付着テストにおける灰付着距離を推定できるのだ。(続く)


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2014.02/19 パーコレーション転移(10)

数多くの測定データをA先生にお見せしたところ、単純に静電容量が効いている結果ではないか、といわれた。さっそく直流抵抗とコンデンサーの組み合わせモデルを使った数値シミュレーションを行おう、ということになった。


1次元のモデルでは、抵抗とコンデンサーの数が問題になる。この総数をNとし抵抗の数をnとすればコンデンサーは(N-n)となる。そしてその配置を工夫すると一本の回路は容易に数式化できる。これがNとおりあるとして、Nを無限大にすると式が完成する。


完成した式について解くとシミュレーションが完成する。


おもしろいのはこの程度の雑なシミュレーションで実験結果をうまく説明できたのだ。三次元抵抗分布のシミュレーターを開発していたので同様の方法で抵抗とコンデンサー二元系のシミュレーションを行わなければいけないのか、と心配していたが、技術の理解なのでこの程度で良い。


このシミュレーション結果を用いてコンデンサー成分を大きくしてゆくと低周波数領域の周波数の異常分散が大きくなる現象を説明できた。すなわち、導電性微粒子の距離が小さくなってゆくと導電性粒子間で形成される静電容量は大きくなり、低周波数になればなるほど大きなインピーダンスとなる。


一方このような現象の場合に直流で表面比抵抗を計測すると抵抗は下がってゆく。すなわち導電性粒子の抵抗は変化しなくとも、クラスターが形成されると静電容量が大きくなって低周波数になればなるほどインピーダンスが上がるという現象が起きることになる。


数値シミュレーションの結果から周波数のインピーダンス依存性を調べた多数のデータはパーコレーションでクラスターが形成される過程を調べた結果であることが分かった。


この結果から、帯電防止材が異なると、すなわち導電性材料の抵抗が異なると表面比抵抗の値が同じでも100Hz以下のインピーダンスが異なる現象が生じることも理解できた。また、同一材料でもクラスターが小さいならば表面比抵抗が同一でも100Hz以下のインピーダンスが異なることも推定できた。すなわち100Hz以下のインピーダンス変化をみれば、同じ帯電防止材料を使用しているときのパーコレーション変化をうまくモニターすることが可能となる。(続く)


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2014.02/18 パーコレーション転移(9)

100Hz以下のインピーダンスが増加すると帯電防止性能が向上する、という現象は、電気化学の素人からみると驚くべき結果だが、電気化学の専門家からは、帯電後の放電が直流的に起きるのではなく交流のように起きている、と考えれば当たり前の結果ではないか、となる。


すなわち自然現象を眺める時に、眺めている人の知識や経験が現象理解に重要であることを理解できる。同じ現象を見てもその現象を支配している本質の知識が無ければ見落としたり、現象の理解ができなかったりする。


この逆もあり得るわけで、現象の本質について知識がありすぎるために見落としてしまう、あるいは新しい考え方ができなくなってしまう、という場合だ。STAP細胞の発見はまさにその例で、小保方さん以外に同じような実験を行っていても皆STAP細胞のヒントを見落としていたが、小保方さんは素直に現象を捉えイノベーションに結びつく発見を行った。


知識があっても無くても自然現象における新しい発見を見落とすことになる。発明や発見を左右するのは知識の量ではなく自然現象との関わりあいに対する意欲だろう。このインピーダンスの実験は、疑問を持った若い担当者とその疑問に答えられなかった上司が、特許出願だけでなく科学的にも現象を明らかにしたいという意欲を持ったことにより始められた。


低周波数領域のインピーダンスと灰付着距離との相関が普遍的な真理かどうか確認するために入手可能なフィルムを使い多数の実験を行い精度を高めた。その結果、相関係数が1に近いデータ群が得られた。一方、サンプル数が増えるにつれ、表面比抵抗とゴミ付着距離との相関は小さくなっていった。(続く)


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2014.02/17 パーコレーション転移(8)

帯電防止の実技テストの一つ、タバコの灰付着テストとは、温度と湿度などテスト環境が定まったところでフィルム表面をゴムでこする。そして帯電したこのフィルムをテスト直前にタバコを吸い発生した灰を集めた上にかざす。2mほど上から徐々に帯電したフィルムをおろしてゆき、タバコの灰がフィルムにつき始めた距離を測定する。


テスト方法からわかるように帯電しやすく放電しにくいフィルムの場合にはこの距離が長くなる。帯電しやすくても放電もしやすいフィルムの場合には、タバコの灰との距離を縮めてゆく過程で徐々に放電するので灰付着距離は短くなる。


帯電防止処理された写真フィルムの場合には0となる。帯電防止性能が悪くなるに従い、その距離は伸びる。すなわち帯電防止性能が悪いフィルムの場合には、遠い距離からタバコの灰を吸い寄せる傾向がある。


まったく帯電防止されていない絶縁体フィルムの場合には、低湿度の環境でこの実験を行うと2mの高さでもタバコの灰を吸い寄せる。初めてこの実験をしたときには、帯電現象のあまりの能力にびっくりした。


さて、帯電防止性能があがると灰付着距離は短くなり、0となった場合には帯電防止性能に優劣をつけられなくなる。表面比抵抗が10の10乗Ω程度で0となる場合もあれば、10の9乗Ωでも0とならない場合がある。この理由がよく分かっていなかった。だから帯電防止フィルムの開発において実技テストを欠かすことができなかった。


すなわち市場品質を再現できる科学的手法が20年前に知られていなかったのだ。経験を積んだ技術者であれば、表面比抵抗や誘電緩和、電荷減衰速度その他の帯電防止に関する電気的評価から市場品質の推定ができたようだ。しかし、実技テストの結果と相関する電気パラメーターが見つかれば、実技テストが不要になる。


インピーダンスの評価はそのような狙いで始めた。最初からパーコレーション転移との関係を調べるために開発したのではない。しかし、インピーダンスが増加すると灰付着距離が短くなる現象に若い人が疑問を持ち質問にきた。インピーダンスは交流の抵抗なのに、なぜ抵抗が上昇すると帯電防止性能が向上することになるのか、という疑問である。


ちょうど福井大学客員教授のお話を頂けたときなので、A先生と共同で帯電防止性能とインピーダンスとの関係について研究を始めた。(続く)


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