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2013.10/12 第54回電池討論会で面白かったこと

今週は3連休になり、今日はその初日。今週は久しぶりに刺激の多い1週間だった。特に電池討論会は面白い発表が幾つかあり、楽しむことができた。その中でもJFEテクノリサーチの発表は、半沢直樹の倍返し以上の面白さであった。

 

JFEテクノリサーチの発表のどこが面白かったのか。それはLiイオン二次電池の負極材料として注目を集めているシリコン(Si)を扱っていたからではない。ただそれだけならば、AKB48をゲストに迎えた歌番組と同じで大した魅力は無い。AKB48のセンターがその番組で突然卒業発表するという程度の衝撃も越えた面白さである。

 

Liイオン二次電池でSiを負極に用いた時には、カーボン負極のようなインタカレーションではなく合金化によりLiイオンが安定化する。かつてソニーが「Liイオン二次電池」と「イオン」という言葉をわざわざ用いたのはLi金属を用いていないので安全をアピールするためと言われているが、これは安全で高容量のLi二次電池を設計するときの設計指針でもある。

 

すなわち、Li二次電池では、Li金属の形態で析出しないように設計することが二次電池の安全につながる、という考え方である。Si負極ではインタカレーションではなく、合金化によりLiを安全な形態にでき、さらに高容量化できるので注目を集めている。ちなみに最も高容量化できる負極はLi金属を用いたときであるが、Na金属やLi金属は水分と接触すると発火するので負極に用いることはできない。

 

現在のところLi二次電池を高容量化するのにSiが最も安全な負極材料であるが、Liイオンを合金化すると体積膨張が生じ負極がぼろぼろになる。ゆえにLiイオンを安定に合金にできるSi負極材料はそれなりに工夫した設計が重要になる。この材料設計において、技術的に試行錯誤で有望な材料を試験して見つけてゆく方法とJFEテクノリサーチの発表のように科学的に一歩一歩攻めてゆく方法がある。電極材料は後者の方法が良いように思うが解析技術や装置において一企業では難しくアカデミアの仕事と思っていた。

 

昨今のアカデミアの状況は企業の開発に近いような研究をされている先生が多く、やや残念に思っているが、アカデミアも30年前に比較すると厳しい状況になってきたので仕方がないのかもしれない。しかし、JFEテクノリサーチで行われたような研究はアカデミアから発表があるべき内容と思われる。そのくらい質の高い研究発表であった。

 

その内容については先日書いたが、LiイオンがSi結晶と合金化するときのメカニズムに関わる研究で、Si結晶の特定の面からLiイオンがSi結晶内に拡散するという内容である。充分な分析データを解析して得られた結論であるが、この結論はSi負極の研究が、Si単結晶を用いる半導体分野の研究や有機合成における有機金属であるSi化合物を用いた合成反応とつながってゆく面白さがある。この面白さはAKB48の突然の解散劇(はまだ行われていないが)よりも面白い。

 

すなわちある程度は予想されたが、実際に起きた現象は筋書きからずれていた、という面白さである。LiイオンがSi単結晶と合金化する機構については、Si単結晶のエッチングや、Siの種結晶を用いた結晶成長、あるいはSi基板上におけるGaNの結晶成長などを観劇してきた人には筋書きが見えていた。しかし実際に演じられた結果はむしろ有機金属化合物の反応機構までつながる面白さがあったのである。

 

JFEテクノリサーチの発表は、麻里子様の卒業発表よりも数段おもしろかった。アカデミアではなく企業の研究である点にも注目すべきである。今の日本は産業界がアカデミアに負けないぐらい基礎研究の力をつけているのである。技術が科学を先導する時代なのかもしれない。

 

 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料

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2013.10/11 ボーイング787のLiイオン二次電池その後

昨晩高校の同窓生で東京在住者が毎月集まる東京旭丘会月例会(旧東京愛知一中会)の当番だった。そこでボーイング787の機長を務めた同期の小川良君(今年すでにJALを定年退職)に講演をして頂いた。彼はフジテレビの「矛x盾」で放送された飛行機マニアとJALの対戦にJAL代表として美人の客室乗務員町田さんと一緒に出演したTV映えのする二枚目である。

 

講演内容は同窓生対象なので表題の話題以外に彼の機長として、あるいはJALの元社員としての興味深い飛行機の話が大半であった。ただ、表題の話題については技術という側面を分かりやすくプレゼンテーションしていたことと、以前本欄で紹介したこともあるのでここで話の一部を取り上げた。

 

ボーイング787が最新鋭機として他の767や777はじめその他の7シリーズと比較しどこが優れているのか、という話の中でバッテリー不具合対策が紹介された。あくまでも同窓生対象なので、プレゼンテーションでは難解な技術用語は飛び出さず分かりやすい説明であったが、ここでは技術的に翻訳して要約する。

 

バッテリー事故では新聞でも紹介されたように原因解明には時間がかかり終結までの見通しが不明であった。但し、バッテリーそのものは本欄で紹介したようにGSユアサの技術力で、エラーが起きても火災を引き起こすまでに至らなかった(注1)。

 

そこでバッテリーに予想される不具合108項目(実際に発生するかどうかは別にして科学的に考えられることすべて)を再度見直し、対策が不十分と改めて判定された80項目(すでに対策が取られていてもリスクがあると思われる項目)すべてに新たに3重の対策を施したという。その一例が写真とともに紹介された。

 

この話は品質工学のFMEAという手法を3重に行っている、という内容である。このFMEAという手法は、科学の時代でも科学で解明されていない現象を含む技術の品質保証ではメーカー各社どこでも行っている“はず”の手法で、経験が積み重ねられれば品質の信頼度を急激に高めることができる。108項目についても初めてのフライト前に当然行われていた。しかし原因不明の事故が起きた、ということで重要な80項目についてさらに3重に対策を行った、という。一例では過剰品質といえるところまで行っていた(注2)。JALの安全に対する厳しさが伺われる説明であった。

 

電池というものは、イオンの拡散という現象で科学的に説明ができるが、その耐久性も含め、科学的に完全に説明がつかない現象も多数存在する商品である(高度な技術の商品は皆この問題を抱えている)。本欄で科学と技術を科学技術という曖昧な言葉で集約するのではなく、技術開発でそれぞれの目的が異なる点を重視している一因であるが、科学の成果と思われている商品すべてが実は技術の成果で創られており、その中には現代の科学で解明できない現象が商品に含まれている問題に改めてここで取り上げたい。

 

技術の成果に科学で解明されていない現象が含まれているかもしれないのでFMEAというヒューマンエラーを防止する対策を行うのである。ただ、ここで注意しなければいけないのはFMEAそのものは科学的視点で行われている、ということだ。すなわちFMEAを行っても科学で理解されない現象が起きればせっかくの科学的論理で導かれた対策をくぐり抜けてエラーが発生する。このようなエラーは科学で理解できないので「経験」という行為を積み重ねる以外に防げないのである。

 

ゆえに市場でエラーが発生する度にFMEAを繰り返しているのがメーカーの品質管理のやりかただが(注3)、それを一気に3重まで一度に行う、というやりかたは初めて聞いた。だからボーイング787は今無事に飛べるのである。

 

傾斜のある土地にタンクを並べその最上段に1個だけセンサーをつけて安心して汚染水を垂れ流していた東京電力はJALを見習うべきである。科学の初歩的な学力があれば分かる現象でミスが発生する間抜けな状態(注4)というのはFMEAが行われていないことを意味している。

 

(注1)飛行機には発電装置が8基あり、これがすべて壊れたときにさらに2基あるバッテリーが使われる、という安全に安全を重ねた多重の対策が成されている。ゆえに新聞で報道された事故で飛行機が墜落することは無いそうだ。

(注2)関連メーカー技術者を含めた企業の横断的プロジェクトで推進された、ということでGSユアサの技術者も加わっていたはずである。

(注3)車のリコールは恥ではなく技術を高める活動の一つである。ゆえにそれを隠蔽するのは罪だけでなく技術開発を放棄している行為である。

(注4)今回の汚染水漏洩は、連通管と同じ原理に設計してセンサーを1個にした、というならば間抜けな対策である。傾斜した連通管で一つだけセンサーをつけるならば傾斜した最も低い位置にある管にセンサーを1個取り付けるのが常識である。傾斜した連通管の最も高い位置に取り付けたのは、「間抜け」か「意図的」なのかどちらかである。もし後者ならば犯罪である。永遠に水を貯めることができるタンクと称して汚染水をこっそり垂れ流すことができるので今回の事件は犯罪の可能性もある。犯罪でなければ東電の技術者は中学生レベルと見なすべきである。

 

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2013.10/10 ハイブリッド車

第54回電池討論会では、電気自動車やハイブリッド車の話題もあった。環境問題の解決策として電気自動車は取り上げられるが、電気自動車が使用する電気の発電方式が火力発電であると、その普及が必ずしも環境対策にならない場合がある、との指摘があった。これは日本の脱原発の動向とともに考えなければならない問題だろう。以前問題になっていた給電スタンドについては都市圏で電気自動車を使用する限り解消されたとの説明があったので、そろそろ普及期を考慮しての問題提起と思う。

 

ハイブリッド車は電気自動車普及までのつなぎ、とその登場時から世間で思われているが、産総研の方のこの講演を聴き、少し認識を変える必要を感じた。個人的な話題になるが、おそらくこの2-3年の間に車を買い換えるとしたら人生最後の車になるかもしれないので、車関係の講演を選んで聞きマイカー選択について考えてみた。

 

ハイブリッド車といえばその登場時トヨタの独壇場であったが、ホンダがその市場に参入すると面白い比較広告がトヨタからPRされた。それは二人乗り自転車の比較広告で、老人と子供の乗った自転車と筋肉もりもりの若者が二人乗った自転車との競争である。大変分かりやすい広告であった。しかしこの公告の甲斐無くホンダのハイブリッド車は市場に歓迎された。

 

今年になってスバルからXVというSUVのハイブリッドが登場した。スバルはトヨタとの提携関係にあるので、トヨタ方式のハイブリッド車が登場したのかと思ったら、ホンダ方式でモーターが小さいハイブリッド車であった。ただホンダと異なるのはエンジンと直結していないので、モーターだけの走行も可能になっている。

 

ハイブリッド車に関してはメーカー発表の燃費と実燃費の違いが問題にされており、やや胡散臭い車と思っていたが、スバルはハイブリッド車の魅力としてターボチャージャーのような役割として捉え、燃費向上を考えていない、と新車発表時に説明があった。この潔さに魅力を感じ、試乗してみると、2000ccの排気量であるが、一クラス上の車のような運転感覚である。

 

プリウスはどちらかと言えば電気自動車的な未来感覚であったが、スバルXVはターボチャージャー付きの車をさらに改良したようなガソリンエンジン車という感覚のハイブリット車である。アクセルを踏み込めばポルシェと同じ水平対向エンジンの気持ちよい加速感である。WRXのような過激さはないが、アクセルに対する加速感の応答が自然である。加速感としてはホンダのCR-Zも面白いハイブリッド車であったが少し気恥ずかしさがあり購入を見合わせたが、XVは大人のハイブリッド車という印象を受けた。問題は車高の高さである。

 

トヨタの比較広告でハイブリッド車はトヨタというイメージを持っていたが、ホンダやスバルのようにエンジンをモーターでアシストするハイブリッド車という発想も悪くない。ターボチャージャーのような低回転域の非力さが無いので高排気量の車を運転しているような錯覚になる。

 

プリウスでも実燃費はカタログ値の60%から70%である。ハイブリッド車という技術を燃費改良という視点ではなく、ガソリン車の性能向上という発想で活用したスバルXVは、人生最後に選ぶ車の候補に考えても良いのかもしれない。実燃費もプリウスより1-2割悪いだけである。同じ価格で二クラス上の車という印象を与えるXVの商品価値は高い。少し値段は高いがホンダの話題の車アコードにも試乗してみたい。

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2013.09/27 電気粘性流体開発で技術について考えたこと

電気粘性流体用傾斜組成粒子の開発では、その分野の科学情報に一切触れること無く、当時世界最高の応答性と電気粘性効果を有する電気粘性流体用粒子を創り出すことができた。また電気粘性流体の增粘問題では科学情報だけでなく、そもそも電気粘性流体とは何かについて社外に公開される情報程度の知識以外は提供してもらえなかったにも関わらず技術で問題解決できた。

 

同じ会社の中でこのような状態で良いのか、というマネジメント上の問題はここでは議論をしない。たまたまおかしな研究開発マネジメントの状況で科学情報が無くとも技術を創ることができた貴重な体験で、当時技術について考えたことをまとめる。

 

電気粘性流体を3年以上研究開発していて何故各種問題を解決できなかったか、という疑問がでてきたが、增粘の問題を解決した後や傾斜組成の粒子を創り出したときにプロジェクトリーダーから褒められたのではなく責められたので問題解決できなかった原因を理解できた。

 

すなわちプロジェクトリーダーは電気粘性流体の研究情報を隠し持っているのではないか、という疑いをもち、傾斜組成の粉体を開発できたときにすぐに情報開示を求めてきた。電気粘性流体の論文情報など全く持っていなかったのだが、実験のお手伝いをすればどのような機能が必要なのかは技術者であれば誰でも分かる、と回答した。しかし、必要な機能が分かってもメカニズムが解明されなければ問題解決できないはずである、というのがプロジェクトリーダーから返ってきた言葉であり、これは典型的な科学の思想である。

 

機能を実現するために試行錯誤を行っただけだ、と技術の姿を答えてもその方法論を否定されるだけであった。科学と技術について哲学的議論を行いお互いの考え方の溝を埋めるべきであったが、上下関係でこのような議論は難しくなる。

 

確かに科学的にメカニズム解析に成功したならば、その機能実現のためのヒントは得られるかもしれない。だから仮説を持って科学的に仕事を進めることの重要性が20世紀に言われ続けてきた。しかしメカニズムが分からなくとも、経験を活用してモノを創り機能をテストしながらその実現を試みる、というアプローチも科学的ではないが有効な手段である。電気粘性流体の粒子よりも優れた成果であるヤマナカファクターもそのような方法で見つかっている。iPS細胞の生成機構など分からなくても消去法で4組の遺伝子を実験を担当した学生が決定しているのだ。その実験を認めている山中博士は並の科学者ではない、ノーベル賞が本当に似合う研究者だ。

 

科学では「なぜ」という問いを発し思考を深めてゆくが、技術では「どのように」という問いでそれを行う点が異なる。この問いの違いで頭に浮かぶアイデアや現象を前にしたときの取るべきアクションが変わる。科学では「なぜ」の繰り返しで真理に迫る単調な作業となるが、技術ではよりよい機能を実現できる方法を求めダイナミックに作業を展開する。ヤマナカファクター発見の時に、非常識と思われるすべての遺伝子を一つの細胞に放り込んだ行動のように、大胆な作業が技術の特徴である。

 

ヤマナカファクターに比較するとゴミのような電気粘性流体の增粘の問題では、手元にある界面活性剤類似の化合物も含めすべてについて增粘した流体と組み合わせて改善の兆候を探索した。傾斜組成の粒子では、傾斜組成以外に超微粒子分散微粒子や微小コンデンサー分散微粒子など創ってみて電気粘性効果を確認し、電気粘性流体に必要な粒子の構造解析を行っている。

 

科学的に電気粘性流体のメカニズムを解析しようとしたのではなく、電気粘性効果を機能させるために様々な複合構造の微粒子を試し、どのような構造で機能が実現されるのか探した。科学と技術では問う目的、思考の方向が異なるのである。どちらが優れている、と比較する対象ではなく、研究開発で早く製品にたどり着ける方法となると技術となり、その機能実現において活用された自然現象の真の姿を問うのが科学である。

 

技術開発を行った後、科学的研究を行えば、守るべき基盤技術が明確になり、その伝承が容易となる。科学の研究が無い場合には、行為そのものを伝承することになり、特公昭35-6616に書かれた技術のように伝承されなくなるリスクが生まれる。技術と科学は目的が異なり、研究開発では両方必要である。

 

技術では科学よりも再現性のロバストが厳しく問われる。これは再現性のロバストが製品のコストに関わるからである。再現性のロバストが低い技術は実用性が無いものとして棄却される場合が多い。同じ機能を実現する技術が複数存在していた場合に技術の難易度よりもロバストの高さが重視されたりするケースもある。反応条件における論理的規則性が不明で消去法や試行錯誤で決めなければならない場合でも決まった反応条件でロバストが高ければそれは立派な技術である。iPS細胞を実現した力は科学ではなく技術であった。技術が先行し科学的に研究された一例である。

 

消去法で見出したり試行錯誤で創られた技術を軽蔑する科学者もいるが、消去法や試行錯誤は立派な機能実現のための一つの方法で、弊社ではそれを効率よく行うプログラムを提供している。消去法や試行錯誤も効率良く行えば、科学的な問題解決法に迫る方法になる。

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2013.09/25 電気粘性流体用傾斜組成粒子

電気粘性流体は絶縁オイルに半導体粒子を分散したデバイスである。この半導体粒子は、帯電しやすく放電しやすい物質であり、さらに電流を流さないぐらいの高抵抗であることが望ましい。雑用係として外部から調達された粉体を評価しながらその必要な機能を想像した。

 

このような物性は均一で単相の物質では実現できない。電流を流さないくらいの高抵抗で表面を設計しなければいけないが、そうすると誘電体となり放電が困難となる。粒子の内部は10000Ωcmくらいの体積固有抵抗で電荷移動が容易な材料でなければ電荷の急速な拡散が難しい。この両者を満たすのは、表面を10の12乗Ωcm程度の絶縁体で設計し、内部は10000Ωcmとするが、粒子内部に抵抗の傾斜をつけると二律背反の電気特性を実現できるのではないか、と想像した。

 

傾斜組成の機能をどのように実現するのか。これは導電性物資へ絶縁体を拡散させ、表面に絶縁体の濃度を高め内部に向けて絶縁体の濃度を傾斜組成にすると実現できる。金属へアルミナなどの酸化物を拡散させるのは難しいが、有機物に金属アルコキシドの形態で拡散させることは容易である。そこでフェノール樹脂球にTEOS(テトラエチルシリケート)を拡散させてそれを炭化することにした。TEOSは熱分解するとシリカになる。

 

フェノール樹脂は難黒鉛化カーボンとなるが高温度で炭化すれば10000Ωcm程度の抵抗になることが知られていた。そこで直径1μm程度のフェノール樹脂球を購入しTEOSを1日含浸させその後酸触媒で処理し表面に薄いシリカ薄膜ができるようにした。それを1000℃以上で炭化させたところ、表面から0.2μmまでシリカが傾斜組成で分散した炭素球を製造することができた。

 

この傾斜組成の炭素球を絶縁オイルに分散させて電気粘性流体を製造し、その特性を評価したところ応答性が優れ、低電圧でも高い電気粘性効果の得られることが分かった。耐久性も良好で当時世界一の性能であった(恐らく今も世界一かもしれない)。

 

この発明に電気粘性流体に関する先端の科学情報は活用されていない。外部から調達された材料を用いた性能が低い電気粘性流体の計測を行った経験だけである。その経験において機能を実現する方法を過去の経験から学んだ二律背反の材料設計手法(ゴム会社の内部で流行語でもあった)で練り上げた。すなわち科学情報が無くても経験でモノを創り出すことができるのである。

 

たまたま重要文献が機密扱いとなっており社内の他部署の担当者には先端の科学情報を見せてもらえない状況で、経験だけでモノを創る体験すなわち純粋の技術で機能を実現した。有機化学から無機化学分野まで幅広く実験を行ってきた豊富な経験で身についた技術は科学情報が無くても新しい「モノ」を創り出せるまでになっていた。

 

傾斜組成の粒子開発に成功したので、傾斜組成と異なり均一に絶縁体超微粒子が表面に出るように半導体相に分散した微粒子を実験したところ、傾斜組成の粒子よりも性能は低かったが、外部より購入している粒子を用いた電気粘性流体よりも性能は高かった。この結果を受けコンデンサーが分散した微粒子は恐らく超微粒子分散粒子よりも性能が高いだろうと想像した。近くで見ていた、かつて高純度SiCを一緒に開発していた若手技術者が自分が創ってみたい、と言ったので指導した。結果は傾斜組成の粒子の場合と同様で、期待通り超微粒子分散粒子よりも性能は高かった。

 

このように技術による開発は、同じ経験を共有している人には容易に伝承できる。科学ではまず思想の理解から始まり、科学的論理による議論となる。議論に納得したところで技術が伝わる。しかし、経験の無い人に経験の成果を伝承できる便利さが存在する。ただし非科学的な現象を扱った技術を伝承することが難しい。経験からアイデアを生み出し技術とする手法や非科学的な現象まで含んだ技術の伝承は弊社の研究開発必勝法プログラムで効率良く学べます。

 

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2013.09/24 電気粘性流体用3種の粉体が生まれた状況

電気粘性流体は、半導体微粒子を絶縁オイルに分散させて製造する。電場をかけると半導体微粒子が帯電して電極間に並び、そのため懸濁オイルが流動性を失ってあたかも固体のように振る舞う。電場を取り除くと粒子の帯電が無くなり、もとの流動状態に戻る。電場でその粘性を制御できる流体である。70年ほど前にウィンズローにより発見されウィンズロー効果として知られていた。

 

しかし単純な半導体微粒子では電気が流れたり、高抵抗であれば微粒子が帯電したままになり流体の機能を失ったりする。すなわち電気粘性流体をデバイスとして活用するためには絶縁オイルに分散する微粒子の設計が重要になる。

 

このテーマはゴム会社に勤務して10年目に携わるようになった。電気粘性流体の重要な機能を発現する微粒子を社外から調達し開発していたために、テーマがうまく進捗せず、さらにゴムからの抽出物で增粘する問題を抱えプロジェクトがひっくり返りそうになっていた。不幸にもそのお手伝いをすることになった。不幸の理由は特に書かないが、お手伝いメンバーには重要な科学文献を見せていただけないなど開発に協力するうえでの制限があった。プロジェクトのメンバーは、頭ではなく労働力だけを求めていた。

 

しかしプロジェクトの状態を見ると、科学的に運営が進められていたが、機能粒子を外部から調達するなどの体制になっており重要な基幹技術の担当者が欠損していた。いわゆる常識的な、科学で電気粘性流体を解明し材料設計するという方針でプロジェクトが運営されていた。これは表現を変えれば技術が無いので科学的に技術を創りだそうとしている運営である。ところが電気粘性流体の增粘の問題では增粘メカニズムの科学的解析ができたが、プロジェクトに技術が無いため(注)に界面活性剤では対策できないという結論を出していた。

 

試行錯誤で增粘の問題を解決したら、それ以上はプロジェクトメンバーで行うから、ということになり雑務が回ってきた。成果が見えてくると功労者を排除し生え抜きを大切にしようとするマネジメントである。お言葉に甘えて雑務を行いながら、見いだされた界面活性剤の位置づけを知るためにカタログの多変量解析を行い情報提供したり、傾斜組成の粒子や、超微粒子分散粒子、コンデンサー分散粒子といった電気粘性流体用3種の粒子を雑務を終えた定時後創ってみた。

 

重要な科学論文を見せていただけないので、科学的ではなく見よう見まねで電気粘性流体の機能を実現できる3種類の粒子設計を行った。雑用という立場で多くの電気粘性流体を扱うことができたので経験の蓄積を行う事ができた。つまらないと思われる仕事でも誠実に真摯に行う意味がここにある。

 

 

(注)ゴム会社には基盤技術として界面活性剤の技術が存在した。社内の公開されたプレゼンテーションを聞けば毎年1-2件はその関係の技術を含んでいる発表があり、他部署のプレゼンテーションを聞けば技術の共有化が可能であった。ただ、多くの会社で同じような状況と思われるが、他人のプレゼンテーションを技術の共有化の機会として動機づけされていないためにここで紹介したようなことが起きる。また、科学的に基盤技術を構築し、とよく言われるが、すでに書いてきたようにおかしな考え方である。もし科学的にプロジェクトを推進しなければならないなら、最低1名技術者をメンバーに入れるべきである。企業において科学的訓練を受けた研究者だけで開発を行うと「モノ」はできない。企業のプロジェクトでは早い段階から企業内で育成された技術者を入れるべきである。学位を持った技術者であれば科学と技術の両方を推進できるので便利である。「なぜ」を追究する分析的研究者では「モノ」を創り出すことはできない。科学的に当たり前の結論を出すだけである。うまくいかないときにはうまくいかないことまでも科学的に説明するおかしな状況も生まれる。しかしそのおかしな状況に気がつかない研究部門の経営者も何人か見てきた。科学という思想は重要である。ただし「ものづくり」の行為を尊重しない思想重視の考え方には問題がある。ものづくりの行為にうまく科学を取り入れる手法が弊社の研究開発必勝法プログラムである。

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2013.09/23 電気粘性流体とゴム6

電気粘性流体の增粘の問題はHLB値の異なる界面活性剤を検討し、良い結果が得られなかったので、界面活性剤では解決できない問題である、と結論が出されたらしい。らしい、と書いたのは実際の実験方法等を見ていないからだ。O/WあるいはW/Oタイプすべて検討されたと当時説明を聞いたが、添加するだけで確認できる実験なので、再度技術的に検討することにした。

 

理由は、科学的に説明されても、機能を実現しようという試みあるいは気迫を感じられなかったから。説明に必要なデータはきれいにグラフ化され、論理的に効果の無かった説明が展開されている。しかし、それはHLB値を中心に議論されているだけで、それ以外の科学的に不確かな要因について仮説は記載されていなかった。

 

技術とは機能を実現しようとする行為であり、科学的に完璧に否定された結論に対してはその結論を尊重しなければならないが、完璧でないならば新しい発見を求めて、その結論に技術で挑戦する価値がある。

 

電気粘性流体の增粘の問題は、HLB値という指標だけでは解決できないことが分かった。しかし、このHLB値は低分子あるいはオリゴマー程度の分子の長さであれば、教科書に書いてあるようなきれいなミセルを形成し、科学的な効果を期待できるであろう。しかし高分子量になったときにミセルの形態をどのように考えれば良いのだろうか。

 

科学的解説からある程度の推定は可能だが、教科書には書かれていない。また、その結果を図示しても様々な分散状態を描くことが可能である。今目の前で起きている現象は、SP値の異なる様々なゴムの添加剤がオイルの中に分散しその結果增粘しているのである。もし、そこへ新たな成分を添加したときに、ゴムからの抽出物が粒子との相互作用を起こさないように新たな相を形成する、という想像あるいは妄想は、科学の世界で論じられた他の現象から推論すると起こりうる可能性が高い。

 

技術とは機能を実現する行為であり、機能を実現できる可能性があればそれを試みるのは大切な使命である。すなわち技術的開発姿勢とは、機能を実現できそうな行為を全て試みようとする姿勢である。科学で完璧に否定された現象については可能性が無い、と考えるのは現代の約束事であるが、完璧でなければその結論に挑戦したときに新しい発見がある。

 

この電気粘性流体の問題解決で得られた新たな技術は、その後写真会社でゾルをミセルとして活用し、ラテックスを合成する技術につながっている。外国の研究者によるゾルをミセルとして活用した科学的論文の発表は2000年に入ってからであるが、写真会社の特許は1995年頃に出願されている。科学よりも先行している技術が存在するのである。

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2013.09/22 電気粘性流体とゴム5

電気粘性流体の增粘の問題は、第三者から見たらいい加減な実験で解決策が得られたことになる。さらにすでに市販の界面活性剤を検討し、結論を出した後だったので立腹された人もいたようだ。問題は解決されたのだが後味の悪い結末だった。何でも科学的に問題解決できる、と信じているとこのような状況でパニックになる人もいるようだ。

 

科学は真理を追究するのがその使命であり、機能を実現することを使命とする技術とは異なる。科学は哲学であり、ある一つの思想に過ぎない。19世紀以降科学の発展により技術開発のスピードは飛躍的に向上したが、17世紀以前にも技術は存在した。道具を使い始めた段階に技術は生まれたのである。科学は技術開発のスピードを早める役目を果たしたが、「ものづくり」は人間の営みの一部、技術が行ってきたことである。技術とは機能を実現しようとする行為そのものである。

 

すなわち試行錯誤は人類が昔から行ってきた技術の歴史に裏付けられた由緒正しき技術的方法である。試行錯誤でも頭を使う。この方法で大切なことは体中を動員し、汗をかいたときにすばらしい結果が得られることが多いことだ。セレンディピティーとして特殊な能力のように表現されているが、誰でもコツを体得すればできることなのだ。17世紀以前に人類が行ってきた実績がそれを裏付けている。科学は、それを効率良くできるようにする思想を示したに過ぎない。

 

ゆえに科学的に解明されていない、あるいは科学的に解明しようとすると膨大な時間がかかる場合には、いさぎよく試行錯誤で技術を創り、結果を出し、結果に対して科学的考察を与えた方が効率的だ。科学を否定しているわけではない。科学は思想に過ぎないのでその活用が重要でモノを創るのは技術である。社会生活でも一つの思想にこだわっていると問題解決できなくなるように科学的という思想にこだわると問題解決できないケースがあるのだ。「やってしまった方が早い」というKKD信奉者が胸をはるシーンも多い。

 

有名な事例としてヤマナカファクターの発見がある。ノーベル賞級の大発見は非科学的方法で生まれている。大量の遺伝子を一つの細胞に組み込んだり、その遺伝子から宝くじよろしく消去法的に4つのヤマナカファクターを見いだしているのである。ヤマナカファクター発見では一瞬科学的思考を捨てた点をよく学ぶべきである。繰り返すが科学を否定しているわけではない。科学的ということにこだわると解決できない、あるいは解決スピードが遅くなる問題があることを指摘している。

 

17世紀以前の技術は技術者も職人も区別なく技術を創り出してきた。現代はヤマナカファクター発見のように科学を活用しながらスピードアップしながら創造する行為を行う技術者が技術開発の中心である。タグチメソッドが技術開発のツールの一つとして普及したが、これは職人も含め誰でも技術開発ができるようになるからである。弊社の問題解決法も機能実現を容易にできるように独自ツールとメソッドを提供している。

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2013.09/21 電気粘性流体とゴム4

電気粘性流体のオイルでゴムに配合されている添加物が抽出されて增粘する問題は界面活性剤の添加で解決された。このような問題は界面活性剤で解決する以外に方法を思いつかないのだが、担当者は、あらゆるHLB値の界面活性剤で失敗したのでそれ以外の科学的な方法を探索していた。

 

目の前で起きている現象は、様々なSP値の物質が微粒子とオイルで構成された流体に微量抽出されて增粘しているのである。電気粘性流体というデバイスではオイルは必須成分であり、この問題の解決手段によっては用途が限定されることになる。すなわち汎用的な技術手段で解決する必要もあった。

 

界面活性剤は、様々な物質が開発されている。また洗剤のビルダーに見られるようにその技術手段にはノウハウも存在する。しかし、教科書にはHLB値程度の説明しかされていない。すなわち界面活性剤の活用を科学的に考えるときHLB値が一つの指標になる。しかし、目の前では様々なSP値の物質が微量オイルの中に抽出され增粘しているのである。

 

幸運なことに耐久試験が終わった段階でゴムに配合された添加剤全てがオイルに抽出されているわけではなく、抽出されている量が微量であったことだ。様々なSP値の微量の成分のために增粘という現象が引き起こされていたので、問題解決は容易だと感じた。すなわちオイルと粒子と微量成分の集団の3種が独立で運動できるようにすれば良いのである。オイルの中で微粒子と抽出された微量成分の粒子が相互作用無く分散しておれば、增粘をわずかにできる。これが技術的なあるべき姿となる。

 

增粘したオイルを10ccずつ試薬瓶に入れ、そこへ1%程度界面活性剤を添加したものを50種類用意した。高純度SiCの前駆体合成条件を検討したときの1/6の実験数であるが、3種類ほど界面活性剤を添加しただけで粘度が下がった試薬瓶があり、観察された状態が頭で思い描いていたようになっていたので成功を確信した。

 

しかし、サンプル数が多かったので、振盪機を使うのをやめとりあえず各サンプル瓶を1日に10回ほど手で振り、80℃のオイルバスに放り込んで帰宅した。翌朝サンプル瓶を回収し観察したところ5種類ほど粘度が下がっており、そのうち2種類はほとんど粘度上昇が解決された状態になっていた。いい加減な実験であったが、技術的に確かな解決策を見いだすことができた。

 

ちなみに見いだされた2種類の界面活性剤は、界面活性剤として市販されている試薬ではなく、親水性基と疎水性基でできたブロックコポリマーであった。親水性基といっても水にわずかに溶解する程度の構造であり、一般の界面活性剤において分子設計するときに用いられる基ではない。界面活性剤として販売されていない化合物であったが、分子構造が界面活性剤と呼べる構造だったので検討に用いた。

 

試行錯誤の実験では、考えられること全てを実施することが重要である。それで解決できなければ、「今」問題解決できる技術手段は無い、という結論になる。もし界面活性剤で解決できなければ、ゴムの表面コーティングであらゆる手段を試す予定であった。表面コーティングの実験は時間がかかる。今回の実験は、たった1日で結論が得られる実権であった。

 

科学的に否定された実験であったが、1日でできる実験なので気楽にあらゆる材料を試すことができた。科学的に考えれば、表面コーティングの手段が可能性が高く、期待されていた実験でもあった。一方界面活性剤の技術手段で解決ができた場合に報告をしにくい雰囲気があった。

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2013.09/20 電気粘性流体とゴム3

電気粘性流体のオイルでゴムに配合されている添加物が抽出されて增粘する問題は界面活性剤の添加で解決された。このような問題は界面活性剤で解決する以外に方法を思いつかないのだが、担当者は界面活性剤で失敗したのでそれ以外の科学的な方法を探索していたようだ。例えば配合剤無添加のゴムを試したり、ゴム表面をガソリン用ゴムホースと同様に表面コーティングしたりして耐久試験を行っていた。

 

配合剤無添加のゴムでも加硫剤は添加しなければならないのでやはり電気粘性流体の增粘は生じた。この場合も加硫剤を何種も検討したらしいがいずれも効果が無かったようだ。表面コーティングも增粘するまでの時間をのばすことはできたが目標の耐久時間を達成することができなかった。絶縁オイルの種類を変える検討も同様の結果であった。わずかな抽出物で增粘していた。また抽出物の中にはゴムの低分子成分も含まれていたケースもあった。

 

界面活性剤を検討してだめだったので科学的に考えられることを全て試してみたそうだ。技術の問題を解決するときに試行錯誤というセレンディピティーを活用する方法を忘れているようだ。すなわちゴムからの抽出物で增粘しているので、このような問題は界面の問題であり、それを解決できるのは界面活性剤が最も良い手段である。そのほかの手段はたとえ科学的な手段といえどもゴムの表面コーティング以外は何らかの大きな副作用が存在する。

 

問題解決にあたり解決手段が限られる場合には、その限定された手段で汗を流す以外に解決の道は無い。このとき他の手段を有識者に聞き試すことは構わないが、その時の手段は技術的に実現可能性のある場合だけ解決手段として採用すべきである。例えば配合剤無添加のゴムという手段はゴムの役割を考慮すれば、たとえ科学的に正しくとも技術的な対応策とならないからである。

 

配合剤無添加のゴムを検討したおかげで、低分子成分のゴムの抽出物も增粘に関与しているらしいことも分かってきたからムダでは無い、と説明していたが、それは考え方の問題で、機能実現のために効率の良い開発を進める視点に立てば、無駄な実験である。すなわち抽出物の解析から、早い段階に様々なSP値の物質が電気粘性流体のオイルで抽出されていたのである。オイル用ゴムホースよりもさらに過酷な条件でゴムとオイルが直接接触しているデバイスで発生している問題だ。

 

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